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マジックフェスト・京都2019

観戦記事

準々決勝:徳山 善彦(兵庫) vs. 覚前 輝也(大阪) ~これが平成のカウブレードだ!~

伊藤 敦

徳山「トップ8、なんだか錚々たる方々が揃ってますよね……」

 トップ8プロフィールを記入している間、徳山がそう話しかけてきた。渡辺 雄也、原根 健太、ペトル・ソフーレクと名だたるプロプレイヤーたちが揃ったトップ8に、場違いな自分が紛れ込んでしまったと、そう思って気後れしているのかもしれない。

 だがそんな徳山に、私はこう答えた……「それでもあなたのデッキが、トップ8の中でおそらく最もカッコいいデッキですよ」と。

 それを聞いて徳山は嬉しそうに語った。

徳山「友達のデッキなんですけど、前日完成して『これめっちゃ良いな~!』ってことで使うことにしたんですよ」

 やがて対戦相手である覚前が席に着くと、ジャッジから準々決勝以降はデッキリストが公開になる旨が告げられ、互いに相手のリストを確認する。

徳山「このデッキ、リストがバレると弱いんですよね……」

覚前「え、まさかグルール!? 結構当たりたくない。あ、《クロールの銛撃ち》がメインに4枚入ってる。それはありがたい」

 だが覚前は、徳山の異色すぎるデッキリストを見ても動じない。それはおそらく、MTGアリーナ月間トップ8までの道のりは、徳山のようなデッキも含めて様々なローグデッキを打ち砕く旅だったはずだからだろう。

覚前「確かにこんな感じのデッキ、やってて当たったかも」

 やがて確認時間が終わり、対戦開始の時が訪れる。

 MTGアリーナ最強のプロプレイヤーである覚前は、はたして徳山のデッキをも難なく乗り越えることができるのか。

 
徳山 善彦 vs. 覚前 輝也
 
ゲーム1

 徳山の《踏み鳴らされる地》タップインゴーに対し、覚前は《狂信的扇動者》を走らせる。対して徳山は2ターン目もタップインからの《ショック》でこれを打ち取るが、覚前はなおも《ヴィーアシーノの紅蓮術師》を送り出す。

 徳山は3ターン目も土地をフルオープンでパス。覚前は《血の墓所》アンタップイン、《ギトゥの溶岩走り》プレイ、《魔術師の稲妻》本体、《ショック》本体という動きで《ギトゥの溶岩走り》に速攻を持たせて2体でアタックするが、これにも《稲妻の一撃》が合わせられる。

 とはいえ、3ターン目にして徳山のライフはすでに残り10点。しかも徳山の場にはクリーチャーが1体もおらず、グルールらしい苛烈な攻めも見せられていない。これはさすがに渋い回りか、とそう思われた。

 徳山の4ターン目のアクションも《成長室の守護者》で、これは《ヴィーアシーノの紅蓮術師》をブロックして即相打ちとなる。戦闘後に覚前は《ゴブリンの鎖回し》を送り出し、徳山の残りライフは9まで落ち込む。

 
徳山 善彦
 

 だがここから、ゲームは急速にクライマックスへと向かう。

 《ゴブリンの鎖回し》をエンドの《稲妻の一撃》で屠った徳山は、ついにその本性を露わにし始める。

 レギサウルスの頭目》! まずは挨拶代わりとばかりに速攻の恐竜・トークンで3点を入れる。

 返す覚前のアクションは、メインでの《危険因子》。

徳山「4点受けます」

 残りライフ5点。だが徳山は、4点ものライフを支払うというその選択に対して何らの躊躇もない様子だった。

 なぜなら、実はこの時点ですでに徳山の勝利は確定していた(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)からだ。

 徳山は解き放つ。前のターンに既に引き込んでいた、抑えきれないほどの暴威を。

 原初の飢え、ガルタ》!!

 この程度の文字サイズでは到底表現しきれない、12/12トランプル速攻という極限の暴力が、15点も残っていた覚前のライフを一瞬にして消し飛ばした。

徳山 1-0 覚前

 

 2点+3点+19点。

 思わず「今は『イクサランの相克』の発売直後だったか?」と勘違いしかけてしまうほどに、原始的でかつ暴力的な決着。

 こんなことが、まさか起こっていいのか。

 いいのだ。それこそ、スタンダード環境はこれほどの多様性を許容する素晴らしいバランスで成り立っているということの証左なのだから。

 
ゲーム2

 1ターン目はお互い《血の墓所》と《踏み鳴らされる地》のタップインで消化すると、続く2ターン目も互いにセットランドをしてターンを返すのみ。

 ひょっとするとこのまま除去を構え合う展開になるのではないか……とも思われた。

 だがその静寂は、唐突に破られることになる。

 徳山の後手3ターン目のアクションは、野生の律動》。ヤヴィマヤの火》にもたとえられるこのカードの着地は、徳山がこれから展開するクリーチャーのポテンシャルが「暴動」によってすべて一段階引き上げられるということを意味している。

 すなわち覚前には、もはや立ち止まっている猶予はないということ。対応で唱えた《危険因子》で徳山が4点のダメージを受けることを選択すると、覚前のアクセルは急激にトップギアに入る。

 
覚前 輝也
 

 返す覚前は《ギトゥの溶岩走り》、《魔術師の稲妻》、《舞台照らし》と一気に唱える。公開されたのは《溶岩コイル》と《リックス・マーディの歓楽者》というこのターンには唱えられない2枚で、少し残念な気分になりながらも《ギトゥの溶岩走り》で速攻2点アタック、さらに《血の墓所》タップインでターンを終える。徳山のライフは、一気に残り11点にまで沈んだ。

 徳山は《》セット、1マナ残しでグルールの呪文砕きを2回の「暴動」で5/5にして召喚。追放領域に見えている《溶岩コイル》だけでは沈まない防壁を作る。

 覚前は少考ののちに《ギトゥの溶岩走り》でアタック。徳山が《グルールの呪文砕き》でブロックすると、第2メインの《溶岩コイル》との合わせ技でこれを排除。さらに追放されていた《リックス・マーディの歓楽者を送り出し、《稲妻の一撃》を捨ててまでさらなるクロックを求める。

 だが徳山はこの《リックス・マーディの歓楽者》をエンド前の《ショック》で排除すると、5マナからレギサウルスの頭目を送り出す。「暴動」は速攻を選択し、突如として出現した7点クロックが覚前に襲いかかる。

覚前「……5枚目の土地置いて終わりです」

 だが、返す覚前にはアクションがない。

 そしてこれを見た徳山は、覚前にさらなる絶望を突きつけにいく。

 成長室の守護者

 そう、サーチ能力は《野生の律動》で得た「暴動」で+1/+1カウンターを置いたとしても誘発する。すなわち6マナから、カウンターを置いてライブラリーの中から《成長室の守護者》をサーチ。プレイ。カウンターを置いて《成長室の守護者》をサーチ。

 プレイ。最後は速攻で、9点ものダメージが覚前に叩き込まれる。残りライフは4。

徳山「終わりです」

 徳山のライフは依然として11。だが3/3の《成長室の守護者》が2体立っている以上、速攻クリーチャーを引いたとしても打点にならない。はたして覚前には、ここから11点を削りきるプランがあるのか。

覚前「……エンドに」

 《稲妻の一撃》。《稲妻の一撃》。そして《ショック》!

 手札はすべて使いきったものの、これで徳山のライフは残り3点。

 覚前のラストドロー……は、《溶岩コイル》。これではダメだ。

 だが、まだ手はある。《危険因子》の「再活」だ。徳山には、もはや選択肢はない。

 3枚ドロー。

覚前「……負けました」

 その手の中には、《ヴィーアシーノの紅蓮術師》が握られていた。あと1点が、足りなかった。

徳山 2-0 覚前

 

覚前「《リックス・マーディの歓楽者》出したの、ミスだったかなー……」

 《舞台照らし》で追放された《リックス・マーディの歓楽者》を出したために手札の《稲妻の一撃》を捨てざるを得なくなり、おまけに2/2本体は《ショック》と交換されて何らのダメージソースともならなかった。

 もし追放されるがままに任せていたら。覚前のその後のドローを見る限り、おそらく打点は足りていた。「使えるリソースを使わない」という一見バカげた選択が、実は正解だった。赤単を使い込んだ覚前にしては、らしくないミスと言える。

 だがもしかすると、対戦し慣れていないアーキタイプとの対戦であることが、覚前の脳容量に負荷をかけていたのかもしれない。その意味でも、徳山のデッキ勝ちという側面は強かったことだろう。

徳山「《野生の律動》と《成長室の守護者》とのコンボは、デッキを作った友達いわく、『平成のカウブレード』らしいですよ」

 確かに何となく動きは似ているかもしれない。だが色が違いすぎるし、そもそもカウブレードは平成だろ!というツッコミは……そろそろ平成も終わることだし、やめておくことにするとしよう。

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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