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マジックフェスト・京都2019

観戦記事

準々決勝:前羽 秀昭(岐阜) vs. 加藤 健介(東京) ~焼き払え!恐怖の古代兵器ニヴ~

Hiroshi Okubo

 『ラヴニカの献身』環境もいよいよ末期に差し掛かり、スタンダードのメタゲームは円熟の様相を呈するかと思われた。

 蓋を開けてみれば、メタゲームブレイクダウンを見れば明らかな通り、円熟とは程遠い「カオス」と呼称するのがふさわしい環境だった。環境初期ならいざ知れず、『灯争大戦』のリリースも1か月後に迫るこの段になってこれほどに数多くのデッキが存在する環境も少ないだろう。

 BIG MAGICユニフォーム契約プレイヤー・加藤 健介(東京)はそんな雑多な環境の中で、自ら「古代兵器」と称す「ジェスカイ・コントロール」を使用していた。そう、《パルン、ニヴ=ミゼット》と《ドミナリアの英雄、テフェリー》をフィニッシャーに据えた、前環境ではよく見かけたあのデッキだ。

 「《アダントの先兵》1枚に負ける」「『ラヴニカの献身』でオルゾフカラーの強力なコントロール向きカードが収録された」などの事情もあって最近のコントロールデッキはエスパーカラーに移行していったが、加藤は友人と調整したこの古代兵器で見事にプレイオフまで勝ち進んでいたのだ(ちなみに2日目に進出したジェスカイコントロールはわずかに2名のみ)。

 温故知新に活路を見出したのは加藤の慧眼がなせる業か。スイスラウンドをともに戦い抜いてきた相棒を手に、加藤はトップ8の舞台で戦う。

 一方の前羽 秀昭(岐阜)は若干聞き慣れない名前だが、それもそのはず。少し前までアメリカに在住していたらしく、ここ数年の記録だけを見るならば国内グランプリよりもむしろアメリカグランプリに出場した回数のほうが多いという、日本人のプレイヤーとしては一風変わった経歴を持つ。マジック歴も長く、17年前のグランプリ・札幌2002の時点ですでにグラインダーとして各地の大会に参加していた古豪だ。

 マッチの開始前には「最近は家族に月に1回くらいしかマジックさせてもらえないんですよ」と小言を漏らして加藤の笑いを誘ったが、しかし直近のプレイの頻度など前羽の強さを語る上では大きな意味は持たないだろう。そこにいるのは過去数度プロツアーに出場し、マジックの本場で鍛え上げられた実力派。それ以上も以下でもないのだ。

 そんな前羽の使用デッキは「赤単」。説明不要、古いも新しいもなく、マジックの歴史とともに脈々と生き残ってきたこの完成されたアーキタイプは、ある意味で古豪にふさわしいチョイスと言えるかもしれない。

 関東の強豪と世界に羽ばたく古豪。ここで勝利をつかみ、準決勝へと駒を進めるのはどちらになるのか!?

 
前羽 秀昭 vs. 加藤 健介
 
ゲーム1

 まずは《狂信的扇動者》で挨拶とばかりに加藤のライフを削り、《ヴィーアシーノの紅蓮術師》を追加する前羽。対する加藤は《溶岩コイル》で応戦し、前羽のクロックを押し止める。

 ならばと前羽は加藤に《魔術師の稲妻》を撃ち込み、加藤はこれを一息の間を置きながら《吸収》で打ち消す。が、前羽は続くターンに《実験の狂乱》!

 是が非でも通したいこのエンチャントを設置することに成功し、ひとまずは前羽がイニシアチブを得ると、加藤も負けじと《ドミナリアの英雄、テフェリー》を戦線に送り込んでアドバンテージ合戦の構えを見せた。

 返すターンには前羽が《狂信的扇動者》でプレイヤーに・・・・・・1点ダメージを与え、《舞台照らし》でアドバンテージを広げる。さらに《ヴィーアシーノの紅蓮術師》と《ギトゥの溶岩走り》を戦線に追加し、《ドミナリアの英雄、テフェリー》の忠誠度を減らしにかかる。

 しかし、ここで加藤は《ギトゥの溶岩走り》に《シヴの火》。《ドミナリアの英雄、テフェリー》を守ってターンを迎え、《万全 // 番人》の《番人》で4/4飛行・警戒のブロッカーを用意して前羽の攻撃を阻む。

 
前羽 秀昭

 攻撃が通らなくなってしまった前羽は、仕方なしにライブラリートップから火力をめくって《ドミナリアの英雄、テフェリー》を陥落させるが、前羽にとってはずいぶんと時間を稼がれてしまった形だ。この間にマウンティングの体勢を整えた加藤はすぐさま二の矢を継ぐ。

 《パルン、ニヴ=ミゼット》。前羽はこれに歯噛みしながらなんとか火力で処理するが、加藤もドローを得ながら前羽の盤面を壊滅させ、なおもスフィンクス・トークンのクロックが止まらない中で加藤の優位が揺るぎないものとなっていく。

 万事休す。前羽にとってのラストターンには加藤のライフは13点も残されており、《実験の狂乱》によってもたらされる火力だけで押し切るには多少無理がある。恐る恐るライブラリートップを確認し、何度も土地の枚数を数え、そして投了を宣言した。

前羽 0-1 加藤

 
ゲーム2

 《ギトゥの溶岩走り》《遁走する蒸気族》とクリーチャーを並べる前羽に、《溶岩コイル》で応じる加藤。ひとまずは危険な《遁走する蒸気族》を処理するも、前羽は《舞台照らし》でアドバンテージを得ながら《宝物の地図》を設置して長期戦に備える。

 さらにと前羽が《実験の狂乱》を唱えて加藤を攻めにかかるが、これには加藤も《呪文貫き》で応じ、逆に《ドミナリアの英雄、テフェリー》を叩きつけて体勢を整えていく。

 要所で妨害に阻まれて思うように動けない中、厄介なプレインズウォーカーの登場に頭を抱える前羽。手札の《再燃するフェニックス》を戦場に降り立たせ、続くターンに《ドミナリアの英雄、テフェリー》の元へと攻勢を仕掛ける。

 この《再燃するフェニックス》こそ《万全》で除去する加藤だったが、残る《ギトゥの溶岩走り》の攻撃と《魔術師の稲妻》のダメージによって《ドミナリアの英雄、テフェリー》を失うこととなった。

 だが、今の前羽には先ほどのように《実験の狂乱》があるわけではない。《ドミナリアの英雄、テフェリー》の処理に時間とカードを使わされた前羽に対し、十分な時間とリソースを獲得した加藤は《再燃するフェニックス》を処理するためだけに《轟音のクラリオン》2枚をつぎ込む派手なプレイを見せる。

 
加藤 健介

 前羽が毎ターントップデッキを恐る恐る覗き込んでいる間にも、加藤は着々と2枚目の《ドミナリアの英雄、テフェリー》を設置。さらに《パルン、ニヴ=ミゼット》を呼び出して完璧なマウンティング体勢を整える。

 方や手札切れ、方や環境最強のフィニッシャー2枚を従えている状況。絶望的なリソース差が前羽の希望とライフを溶かしていった。

前羽 0-2 加藤

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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