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マジックフェスト・千葉2019

観戦記事

第14回戦:中道 大輔(東京) vs. 島津 直史(東京)〜23年の想いを込めた一戦〜

小山 和志
中道 大輔(写真左) vs. 島津 直史(写真右)

23年間くらいですかね……マジックが日本で出た直後からプレイしているので」

 中道大輔に、世間話程度にマジックのプレイ歴を尋ねると、驚きの回答が返ってきた。

 長きにわたりマジックをプレイしてきた中道は、その過程の中で草の根のトーナメントや、WPNプレミアムトーナメントなど数多くの大型大会で実績を残してきた。各種記事のみならず、実際に対戦した、会場で顔を見かけたことがあるなど、読者諸兄の方々の中には、彼の名前を知っている、見覚えがある方も多いだろう。

 高い実力を持ちながら幾度も壁に阻まれてきた――長いマジック歴の中で初となるグランプリの決勝ラウンド進出が目前に迫っている。中道は、12勝1敗同士の第14回戦、勝利すればグランプリトップ8がほぼ確定する試合に臨まんとしている。

 今、マジックを通じてできた多くの仲間達に見守られながら、フィーチャーマッチエリアに足を踏み入れた。

 その中道の対戦相手となるのが、初日全勝を果たした島津直史だ。

 MTGアリーナで磨いてきたという実力は間違いなく本物だ。

 最終ラウンドよりひと足早く、ミシックチャンピオンシップへの出場権利、そしてトップ8を手中に収めるのはどちらのプレイヤーか。

ゲーム1

 中道が《破壊的穴掘り》からスタートし、続くターンにはもともと2枚分あるアドバンテージを《翼ある言葉》でさらに拡充していく好調なスタート。

 島津は《要塞ガニ》で地上を固めるが、土地が《》4枚で止まってしまっている。

 中道は《雲族の予見者》でクロックを用意しつつ手札を減らさない。そして《進化する未開地》から《平地》を調達し、《風の憤怒、カイカ》のための白マナも確保する。

 ここで5マナ目にして《》を引き込めた島津。《秘本綴じのリッチ》で手札を循環させ、中道の攻勢を捌くための手段を模索する。

 だが、中道からはやはり《風の憤怒、カイカ》がプレイされる。

 これには島津から《殺害》が飛ぶが、中道は《ショック》を島津に打ち込み、置き土産のスピリット・トークンを残していく。

 ここに至ってなお、手札が5枚ある中道。島津はダメージを1点でも軽減すべく、スピリット・トークンに《送還》を打ち込むが、《秘本綴じのリッチ》を《チャンドラの憤慨》で失い、島津の手札は1枚。

 マナフラッド気味となってしまった島津は何もできずターンを返す。

 中道は《チャンドラの火炎猫》《焦がし吐き》2体と連続で展開し、島津のライフは5まで落ち込む。

 もはや、これまでか。

 そう思われたが、8マナに到達した島津はおもむろにフルタップ――

 中道が最も恐れていたであろう1枚が降臨する。

 この盤面を一気に掌握する強力レアに、中道は《予期》で残り5点を削るための策を模索する。

 《ゴブリンの密輸人》で《チャンドラの火炎猫》の攻撃を通し、島津の残りライフは3。だが、これにより島津がマリガンで失ったアドバンテージを一気に取り戻す。

 島津にとって盤面が苦しいのは間違いない……だが、ライフを残り1点にしつつも《雲族の予見者》を《血の取引者、ヴィリス》で除去(先ほど、スピリット・トークンに《送還》を打ってまで守った1点のライフがここで生きた)。そうして得た手札から《牙の魔術師》をプレイし、自身のクリーチャーを4体にしてからプレイしたのは――

 これで中道の盤面を空にしつつ、自身の盤面には《血の取引者、ヴィリス》のみと、ライフは1ながらも一気に状況を逆転させる。

 中道は残り1点を削りきれるか。

 中道は《焦がし吐き》2枚を再展開、そして《大気の精霊》を展開すると、島津の《血の取引者、ヴィリス》の攻撃を自身のライフを3にしつつスルー。《苦しめる吸引》があればその瞬間に島津の勝利が確定するが……その手に《苦しめる吸引》はなく、中道が1本を奪取。

中道 1-0 島津


中道 大輔
ゲーム2

 中道が《チャンドラの火炎猫》、島津が《男爵領の吸血鬼》を展開し、これらが相討つ立ち上がり。

 中道は《群れる猛犬》、2体目の《チャンドラの火炎猫》と軽量クリーチャーを並べていくが、島津が繰り出すのは《濠のピラニア》《療養所の骸骨》《要塞ガニ》と、中道のクリーチャーたちをシャットダウンできる防御に秀でたクリーチャーたちだ。

 中道は《焦がし吐き》と、追加戦力がやはり小型のクリーチャーなのに対し、島津は《骨まといの屍術師》で徐々に盤面を押していく。

 さらに、中道は土地が4枚でストップしてしまい、島津がゾンビ・トークンと《骨まといの屍術師》で攻撃へと繰り出し始める。

 中道は《予期》《翼ある言葉》で手札を補充し、《骨まといの屍術師》自体は処理すると、遅ればせながらついに待望の土地を引き込んだ中道は《風の憤怒、カイカ》!

 この《風の憤怒、カイカ》本体は島津が《苦しめる吸引》で処理するが、中道は《ショック》でゾンビ・トークンを処理しつつ、1/1ながら航空戦力を生成する。

 ジリジリとした展開が続く。土地が6枚で止まっている島津が繰り出した《小走り犬》に対し、中道は《血の取引者、ヴィリス》を見越して《金縛り》で処理すると、《炎の精霊》を追加する……が、現状を打破できない。

 結果、島津は8マナに到達せず。《牙の魔術師》により中道のライフを少しずつ侵していき、《精神腐敗》で手札をも攻めていき、青黒らしく盤面を固めたままで押していく。


島津 直史

 中道は2枚目の《金縛り》で《牙の魔術師》を寝かせるが、島津はこれを《送還》で救出、再展開したところで中道のライフは13となっていた。

 しかし、ここから中道が反撃を見せる。《雲族の予見者》から《新米紅蓮術師、チャンドラ》!

 クリーチャーのサイズが小さく積極的に攻めることのできない島津は、《牙の魔術師》の能力を2度使い《新米紅蓮術師、チャンドラ》を処理するが、ここでダメージレースが逆転してしまう。

 そして、中道はフルアタック。

 これで島津のライフが4まで削られ、さらに《大気の精霊》が追加される。

 ようやく8マナ目、《血の取引者、ヴィリス》にたどり着いた島津だったが、残りわずかとなったライフを守り切ることはできないのだった。

中道 2-0 島津

中道 大輔 Wins!

 試合後、負けた島津は開口一番、「楽しかったー」と口にした。

 敗北を喫した島津にはなお、残されている1戦を勝利で終えればミシックチャンピオンシップの権利、そしてトップ8進出の可能性も残されている。この敗北を次戦に活かすべく、そして何より勝者を称えるべく爽やかに感想戦を行う。

 それに中道も笑顔で応じ、互いの健闘を祈りあった後、中道はフィーチャーマッチエリアから退出し仲間の待つプレイエリアへと向かっていく。

r14_nakamichi_postgame.jpg

 派手な抱擁でもなく、歓声が上がるでもなく。仲間たちは中道を静かに迎え入れる。しかし、その労いの言葉、祝福の言葉には万感の思いがこもっているようだった。

 念願を果たした中道、しかし彼の旅はまだまだ続いていく。23年間の歩みを背に、決勝ラウンド、そしてその先へと。

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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