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グランプリ・千葉2018

トピック

『アンリミテッド』ロチェスタードラフト。出るか、パワー9!?

Yuichi Horikawa

 今回のグランプリ・千葉2018で、もっともアツいサイドイベントがあった。

 それは、『アンリミテッド』によるロチェスタードラフト(※)だ!

※ロチェスタードラフトとは、このグランプリ本戦のようなドラフトではなく、ピックが完全に公開されているドラフト。また、ピックの順番も特殊で、2005年2月のプロツアー・名古屋2005までは、プレミア・イベントでも採用されていたフォーマットのひとつだった。

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 1993年8月に最初のセットとして登場したのが最も古いブースターパック『アルファ版』だ。

 しかし、これの印刷数は多くなく、当時『アルファ版』は、瞬く間に売り切れとなってしまった。

 そこで、これを改訂し黒枠仕様の302枚のカードからなる『ベータ版』セットを発売するも、同年の年末に早々売り切れとなってしまった。

 さらなる増版が必要となり、続いて登場したのが、『ベータ版』と同じ302枚のカードで白枠仕様となった『アンリミテッド』だ。

 そう『アンリミテッド』には『ベータ版』と同じ種類のカードが入っており、多くのパワーカードがパックから飛び出す可能性があるのだ。

 その中には、《Black Lotus》をはじめとしたパワー9と呼ばれるカードはもちろんのこと、《Underground Sea》等の各種デュアルランド、さらには、《Time Vault》や《Chaos Orb》など、数々の貴重なカードが収録されている。

 しかし、このイベント、誰もが参加できるわけではない。この3日間のグランプリ会場で開催された「『アンリミテッド』ロチェスタードラフト予選」に勝ち抜かねば、参加できない。

 予選イベントが開催された回数は、8回。そう、各予選の優勝者1名だけが、このエキサイティングなイベントに参加できるのだ。

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 こちらが、予選を突破した8名の参加者だ。

 さて、前置きが長くなってしまったが、皆が待ち望んでいるであろうカードをピックする様子に、そろそろ移ろうと思う。

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 今回のドラフトは、通常通りプレイヤーがパックを開封するのではなく、ジャッジがパックを開封し、それを全員が見える場所に置き、順番にピックしていく形式だ。数々のグランプリのヘッドジャッジを務めてきたリカルドさんが、この役をおこなっていたが、彼もあまりのパックの貴重さに手が震えていた。

 では、パックの中身を順番に公開していこう。

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 1パック目。《不明の卵》がレアカードだ。このパックには、エキスパンションシンボルもなければ、レアカードがどれかの表記も無い。

 また、パックからはランダムに基本土地が出る。例えば、アンコモンが出るべき場所に基本土地が出た場合、そのパックはアンコモンが1枚少ない状態になる。これは、レアカードの場所でも例外ではなく、レアが無いパックが出る可能性もあるのだ。

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 2パック目。《魔力奪取》がレアカードだ。

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 3パック目! もう、答える必要はないだろう! そう! パワー9だっ! 会場は割れんばかりの熱気と歓喜の声が飛び交った。

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 《Ancestral Recall》。{U}で、3枚のカードが引けるインスタント。説明不要の強さ! あまりの興奮に私の手も震えていたため、この写真を撮るために、相当の枚数を撮影した。

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 もちろん、このパックのファーストピックは、このカードだった。

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 《破裂の王笏》がレアカードだ。今では考えられないが、《チビ・ドラゴン》はかなり優秀なアタッカーだ。

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 《機械仕掛けの獣》がレアカードだ。

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 で、で、で、で、でたーーーーーーっ!!!

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 まさかの、《Black Lotus》だ!! 誰もが知っていると言っても、過言ではないこのカードが、新たに1枚、地球の空気に触れた瞬間だ。

 約25年という長い年月、パックの中で今か今かと待っていた《Black Lotus》は、この瞬間産声をあげて、この千葉に解き放たれたのだ。

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 これには、このパックのファーストピックプレイヤーも嬉しさが爆発していた。

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 彼は、壊れやすい宝石を取り扱うかのように、両手でそっとピックしていた。私自身も、まさか目の前で《Black Lotus》がパックから飛び出すとは思ってもいなかった。そして、6パック目にしてパワー9が2枚と非常に濃いドラフトだ。

 続いてのパックに移ろう。

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 《Tundra》だっ! そうっ! デュアルランドだっ!!

 いったいなんなんだ、この『アンリミテッド』ドラフトは!

 まさに、25周年の記念にふさわしい大盤振る舞いのカードの数々だ! まさか、2018年に新品のデュアルランドがお目見えするとは、何が起こるか分からないものだ。

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 もちろん、ファーストピックはこのカード。さすがに、ご満悦。

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 8パック目。《Blaze of Glory》がレアカードだ。ここで、3分の1のパックが開封され、ピックの順番は折り返しになる。

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 《奈落の王》がレアカードだ。当時このカードに憧れを持っていたプレイヤーも多いのではないだろうか? ザ・悪魔といえるこの外見は、幼少の私を魅了したカードのひとつだ。

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 《高潔のあかし》がレアカードだ。

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 《不吉の月》がレアカードだ。黒いクリーチャーを後押しする、なかなかに強力な1枚。当時このカードを使って構築していたプレイヤーも多いのではないだろうか?

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 《Mox Ruby》がレアカードだ。

 モッ、モッ、モッ、モッ《Mox Ruby》だって!!

 何枚パワー9出てくるねん、このドラフト!!!

 あまりの興奮に思わず、関西弁が飛び出すぐらい、度肝を抜かれた。さすがに、もうパワー9は出ないだろうと、油断した矢先の《Mox Ruby》だった。

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 このパックのファーストピックプレイヤーも大興奮だ! そりゃ、そうだ! だって、《Mox Ruby》だもの。

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 もちのろんで、《Mox Ruby》をピック。

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 さて、続いてのパックは、《Savannah》だ。

 そうか、《Savannah》か……。

 いや、《Savannah》だっ!!! またも、デュアルランドが飛び出した!!

 ちょっと待ってくれ、このままでは、私が持ちこたえられそうもない(?)。

 あまりの貴重なカードの連続に、会場は割れんばかりの歓声だった。

 次のパックへ移ろう。

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 《ほとばしる魔力》がレアカードだ。決して弱くないカードだが、会場では何となくほっと一息つけた感じだった。

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 《停滞》がレアカードだ。この特徴的なアートと、効果で、忘れられない1枚になっているプレイヤーも多いのではないだろうか? 個人的な話になるが、中学生の私がはじめて行ったカードショップで、初の対戦相手が使っていたデッキが、これを使ったロックデッキで、何もできなくされてライブラリーアウトで負けたのは、今では良い思い出だ。

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 《生命の色》がレアカードだ。ここで、16パック目となる。

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 あれだけあったパックも、残り8パックとなった。プレイヤーに残されたファーストピックは、1人1回ずつを残す限りとなった。

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 《臨機応変》がレアカードだ。

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 《狼の血》がレアカードなのだが、即決で《氷の干渉器》がピックされた。このカードは『ドミナリア』でも再録され、ここでも猛威を振るったカードの1枚だ。

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 《Sedge Troll》がレアカードだ。沼をコントロールしていると3/3になるトロールだ。また、{B}で再生できるなど、赤いクリーチャーでありながら、黒と密接な関係にある面白いクリーチャーだ。

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 タッ、タッ、タッ、タッ、タッ!!

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 《Timetwister》だっ!!!! 20パック目にして、またもパワー9が登場!!

 こんなに出ていいのかっ!?

 ちなみに、この《Timetwister》は唯一、統率者戦で使用可能なパワー9だ!

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 なんと、このカードは、《Savannah》をピックした中村修平さんの元へ。

 さすが、殿堂プレイヤー。パワー9とデュアルランドをともに引き寄せた。

 皆さんついてこれているか? 私は会場で、「すごすぎやろ、このドラフト!?」とドキドキがずっと止まらなかった。

 残すところは、4パックのみだ。

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 《Braingeyser》がレアカードだ。X枚カードを引くことができるソーサリーだ。非常に強力な1枚。

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 《Chaos Orb》だとっ!!!

 これも、非常に希少なカードだ!

 効果が大変にユニークで、このカードを物理的に今プレイしている所から少なくとも1フィート高い位置ではじき、《Chaos Orb》が水平に1回転以上した場合、それが触れているすべてのトークンでないパーマネントを破壊するという、とんでもない効果のカードだ。

 『Unstable』の《Slaying Mantis》のモデルになったのが、このカードだ。

 驚くべきことは、この《Chaos Orb》は実際のトーナメントで使用されていたということだ。

 マジックの初期、そう太古の昔、このカードの効果を避けるために、クリーチャーやパーマネントをテープで垂直な壁に張った等の逸話が、まことしやかに今も語り継がれている。

 そんな《Chaos Orb》が、現代に新たな息吹として芽生えた。

 しかもだっ!!

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 このカードは、あの《Black Lotus》を手にしたプレイヤーの元へと旅立っていった。

 どちらか一方だけでも、大変すごい状況なのだが、まさか、この2枚がドラフトで、同じプレイヤーの元に行くとは、今後一生見られないだろうと私は思う。

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 《ハルマゲドン》がレアカードだ。土地をすべて破壊してしまう強力な白のソーサリー。また、特筆すべきは、このパック内の基本土地の多さだ。5枚以外は、すべて基本土地と、今では考えられないパックだ。

 しかし、当時は、こういったパックも重宝されていたそうだ。今でこそ基本土地を手に入れるのは難しくはなくなったが、このころは基本土地を手に入れることが難しく、レアカードと《》10枚をトレードするなど、基本土地を揃えるのも一苦労だったそうだ。

 そして、いよいよ、ラストの1パックだ。

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 レアカードは《》だっ!

 えっ!? 《》っ!?

 この記事の冒頭に記載した内容を覚えているだろうか? この『アンリミテッド』のパックは、ランダムに基本土地が入っていることがあるのだ。

 レアも例外ではない。

 最後の最後で、その状況が生まれてしまい、残念ながらこのパックにはレアカードは存在しなかった。

 最後にオチのつく、ドラフトとなってしまったが、非常に緊張感のあるピックだった。

 ロチェスタードラフトという特殊なドラフトだったので、通常のピックよりも時間がかかり、1時間半ほどピックはおこなわれていた。しかし、その多大な緊張感から、現場ではその時間が何倍にも感じ、誰もが3時間も4時間もピックしていたような感覚だった。これも、『アンリミテッド』の持てる魔力なのかもしれない。

 さて、ドラフトなので、もちろんこの後に対戦を行う。

 なんと優勝者には、『ベータ版』のアンカットシートが贈られる!!

 これは、負けられない戦いと言えるのだが、構築模様は非常に和やかで、カジュアルイベントとのような和気あいあいとした雰囲気の中、デッキが構築されていった。

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 ゲームは意外にスピーディーで、カードプールにクリーチャーが少ないこともあり、呪文の打ち合いや、少ないクリーチャーを守ったり、墓地から回収してもう一度戦場に出したりといったゲーム展開が多かった。

 まさに、古の大魔導士同士の戦いといったところだ。

 そして、そんな太古の戦いを制し、決勝にコマを進めたのは、この2人だった。

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 長岡崇之さん(大阪)。

 グランプリのトップ8も何度か経験され、マジック歴も20年ほどとベテランのプレイヤーだ。

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 デッキは、青黒タッチ白の除去コントロールデッキといった形だ。

 《黒死病》と《翡翠像》の強力なコンボを搭載したデッキである。

 飛行クリーチャーである《大気の精霊》もこの環境では、力強いクリーチャーだ。

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 対するは、廣瀬祐貴さん(東京)。

 プロツアー参加経験もあり、マジック歴も17年とこちらも非常に強力なプレイヤーだ。

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 こちらも、青黒に1色をタッチしたデッキだ。

 このデッキにも《黒死病》がとられており、この環境でのこのカードの強さが良く分かる。

 ティムの愛称で知られる《放蕩魔術師》が2枚とられているのも特筆すべき点だ。

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 そんな、2人の戦いを見ようと多くのギャラリーが集まっていた。

 驚くべきことに、殿堂プレイヤーが3人も彼らの戦いを見つめていた。

 そんな、多くのプレイヤーが注目するゲームを制したのは……

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 長岡さんだ!

 おめでとう! ほんとうに、すばらしいプレイングだった。

 最終戦は、お互いに土地を並べ合い、除去や打ち消しを警戒するゲームだったが、最終的には長岡さんの《黒死病》と《翡翠像》のコンボが決まり、上空から《大気の精霊》が廣瀬さんのライフにとどめを刺すことになった。

 ゲームを見ていて感じたのは、《大気の精霊》が今の何倍も強いクリーチャーだったと言うことだ。

 4/4というサイズは《稲妻》で破壊することができず、これを倒すことのできるカードは非常に少ないという点だ。

 また、《黒死病》や《生命吸収》そして《恐怖》と、黒い呪文が非常に強力だった。

 っと最後に、少しこの環境の雰囲気を紹介させてもらった。

 今や『アンリミテッド』のパックは大変に貴重なものになっている。

 もし、このイベントが無ければ、これらのパックはゲームをプレイされていただろうか?

 もしかすると、まだまだどこかでパックとしてカードたちは日の目を見ず、ずっと保管されていたかもしれない。

 子どものころガラスケースの向こうに展示されていたカードや、使いたくても使えなかったカードが目の前でプレイされているのは、何か懐かしい友人の活躍をテレビやニュースで知ったようなうれしい感覚だった。

 私は、この瞬間に立ち会えて本当に良かったと思っている。

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 こんな貴重な体験をさせてくれるのも、マジックの魅力のひとつだと、私は思う。

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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