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日本選手権2018

観戦記事

準々決勝:朴 高志(愛知) vs. 原根 健太(東京)

Moriyasu Genki

 日本選手権2018は全13回となる予選スイスラウンドを終え、予選敗退者たちの多くが会場を後にした。

 残るのはサイドイベントのいくつかに参加するプレイヤーたち、決勝トーナメントに残ったプレイヤーを応援する者たち、いくらかの運営スタッフと、そして8人の戦士たち。

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 トップ8進出を決めた原根 健太と朴 高志が相対しながら準々決勝の準備を進めていた。

 両者、腕を組みデッキリストを眺める。ここからの戦いは「デッキリスト事前公開制」に切り替わり、互いに知らないカードが出てこなくなる。ゲーム展開はより俯瞰的に繊細になっていくことになる。

原根 健太 - 「青黒ミッドレンジ」
日本選手権2018 スイスラウンド5位 /スタンダード(2018年9月8〜9日)[MO]
7 《
5 《
4 《霊気拠点
4 《水没した地下墓地
4 《異臭の池
2 《廃墟の地
-土地(26)-

4 《光袖会の収集者
4 《機知の勇者
1 《人質取り
3 《スカラベの神
2 《奔流の機械巨人
-クリーチャー(14)-
1 《暗記+記憶
4 《致命的な一押し
2 《アルゲールの断血
2 《検閲
2 《本質の散乱
1 《喪心
2 《大災厄
1 《至高の意志
4 《ヴラスカの侮辱
1 《死の権威、リリアナ
-呪文(20)-
3 《強迫
1 《菌類感染
1 《冥府の報い
3 《否認
2 《歩行バリスタ
1 《喪心
1 《魔術遠眼鏡
2 《本質の摘出
1 《バントゥ最後の算段
-サイドボード(15)-

 インタビューにて赤黒に対しては「わずかに有利」と答えた青黒ミッドレンジの原根。

朴 高志 - 「赤黒アグロ」
日本選手権2018 スイスラウンド4位 /スタンダード(2018年9月8〜9日)[MO]
14 《
4 《泥濘の峡谷
4 《竜髑髏の山頂
2 《霊気拠点
1 《
-土地(25)-

4 《ボーマットの急使
4 《屑鉄場のたかり屋
2 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ
4 《ゴブリンの鎖回し
2 《ピア・ナラー
3 《再燃するフェニックス
2 《熱烈の神ハゾレト
2 《栄光をもたらすもの
-クリーチャー(23)-
2 《木端+微塵
3 《削剥
2 《キランの真意号
2 《無許可の分解
3 《反逆の先導者、チャンドラ
-呪文(12)-
4 《強迫
3 《チャンドラの敗北
2 《マグマのしぶき
2 《魔術遠眼鏡
3 《大災厄
1 《領事の旗艦、スカイソブリン
-サイドボード(15)-

 そして現行スタンダードの絶対的王者、赤黒アグロの朴。2人は75枚のうち絶対に1項目も見落とすまいと、睨むような顔で紙を見ていた。

 原根は書かれている項目を指折り数えるしぐさをみせる。朴はリストに顔を寄せては離す。原根と朴との間には視線のやり取りも会話もない。同時に進む準々決勝4卓のうち、最も静かに準備がすすんでゆく。

 リストの確認が終わり、ゲームの始まる寸前に口を開いたのは朴だ。

「当たるのめっちゃひさしぶりですよね」

原根「グランプリ・東京(2016)以来だね」

「そうだそうだ、それで、負けたんだ」

 2人の競技プレイヤーが向かい合えば、過去の戦いの話に及ぶのは常だろう。朴にとってみれば数年越しの雪辱戦のようだ。しかし原根も前人未到の連覇を目指し、ここで負けるわけにはいかない。

ゲーム1

 スイスラウンド4位の朴が先手を選んだが、後手2ターン目、原根の《アルゲールの断血》が最初のアクションだ。原根はこのカードについて(対赤黒に対する)「キープ基準」と断言する。

 朴はこのアドバンテージ装置が正常に機能し始める前に、速やかにゲームの終了を目指さなければならない。《ゴブリンの鎖回し》プレイにてスタートを切ると、《反逆の先導者、チャンドラ》と続ける。

 速いとは言えないが確実にプレッシャーを仕掛ける朴に対し、原根は《アルゲールの断血》こそ置けているものの、土地事情が辛く反応できていない。《アルゲールの断血》を起動して3枚目の土地を置くが、いずれも《》だ。手札では《機知の勇者》といった青いカードたちが行き場をなくしている。

 
朴 高志

 朴は《ゴブリンの鎖回し》による攻撃と《反逆の先導者、チャンドラ》の[+1]能力による2点ダメージを繰り返し入れる。

 一瞬にして尽きる気配を帯びてきたライフを支払いつつ、再び《》。

 《ヴラスカの侮辱》で《反逆の先導者、チャンドラ》を追放こそするが、朴の陣営には2体目の《ゴブリンの鎖回し》が登場する。

 すでに1体目の《ゴブリンの鎖回し》のアタックを受け続けていた原根のライフに、ゲームを続ける猶予はなかった。

朴 1-0 原根

 サイドボーディング中も、ひたすら静かに時間は進んでいった。

 サイドボードのインアウトを終え、シャッフルの音があたりに鳴り響く。

ゲーム2

 原根、今度は2色ある土地6枚と《アルゲールの断血》で力強くキープ。特に先手とあっては「悪くない」といえるスタートのようだ。原根は《アルゲールの断血》の「対赤黒性能」において、それほどの信頼を置いている。

 朴は《屑鉄場のたかり屋》スタートから、3ターン目に《大災厄》(手札追放モード)をプレイする。その結果として原根によって目の前に公開されたカード群に、声を挙げた。

「まじか、全部土地!?」

 原根は初手から、まだ1枚の呪文も引いていなかった。

 そのまま続く4ターン目、朴は《ボーマットの急使》を追加して攻撃を仕掛ける。原根はここで《屑鉄場のたかり屋》に《致命的な一押し》を当てて、クロックを遅くしていく。

 朴は翌ターンも《ボーマットの急使》を追加して、わずかだが確実に原根のライフを削っていく。原根は《ボーマットの急使》1体に対して《ヴラスカの侮辱》を差し向けるが、これは生け贄に捧げられてライフ回復を回避された。

 原根はゲーム開始時からの「土地まみれ」の手札を刷新するため、《機知の勇者》をプレイ。朴はこの《機知の勇者》を《木端+微塵》で破壊して、戦線をこじあける。

 「永遠」でゾンビとして復活した《機知の勇者》も、引きこんだ《無許可の分解》で破壊すると、さらに続く《機知の勇者》も2枚目の《木端+微塵》で破壊して、原根に余裕のある行動を取らせない。

 こうしてカードの交換を続けつつ攻撃を通してきた朴の《ボーマットの急使》は、その「腹」のなかにカードを4枚貯めていた。

 朴の残る1枚の手札は、《再燃するフェニックス》。プレイするには、1マナ足りない。彼はここで影響力を持てない《再燃するフェニックス》よりも、《ボーマットの急使》を起動して見えない4枚を手札に加えることを選んだ。この冒険の結果、朴の手札には《再燃するフェニックス》をプレイできるのに十分な土地は来た。

 しかし、来すぎた。4枚の内訳は、《》3枚と《キランの真意号》1枚。朴はこの《キランの真意号》を設置しつつ、次なるビッグアクションを待つ。

 原根は再び《機知の勇者》を「永遠」。この時点で、原根のライフは残り3点。すでに《アルゲールの断血》は《アクロゾズの神殿》に「変身」している上、《機知の勇者》を「永遠」してなおマナは余っている。

 序盤の「土地まみれ」は、今「潤沢なマナソース」となって原根のゲームを支えていた。

 朴の墓地には2枚の《木端+微塵》があるが、《アクロゾズの神殿》によるライフ回復を乗り越えられるだけの威力を生み出せない。原根は《スカラベの神》を着地させ、《アクロゾズの神殿》とともに「繰り返し利用できる」ライフ回復装置として朴の動きを牽制しつつ、速やかに盤面を支配していく。

「負けですね」

 《アルゲールの断血》に始まり、《アクロゾズの神殿》に終わった。

朴 1-1 原根

ゲーム3

 朴は《ボーマットの急使》で先手1ターン目スタートを切る。《屑鉄場のたかり屋》、《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》と続けて好調だ。

 原根も2ターン目には《ボーマットの急使》に《致命的な一押し》を当てつつ《大災厄》(クリーチャー追放モード)で《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を追放していく。

 朴はストレートに《反逆の先導者、チャンドラ》を展開。これには原根も《ヴラスカの侮辱》も合わせるが、《屑鉄場のたかり屋》の攻撃を止められず、ライフを残り9にした。

 朴が《ゴブリンの鎖回し》を着地させて、原根のライフは残り8。

 
原根 健太

 原根はここで渾身の《アルゲールの断血》を着地させた。

 朴の《ゴブリンの鎖回し》に《喪心》を当てたが、《屑鉄場のたかり屋》の攻撃は通して残りライフを5に。

 アップキープに《アルゲールの断血》が《アクロゾズの神殿》に変身すると、朴の勢いを削ぎ切ったと判断した原根は《スカラベの神》を戦場に送り込んだ!

 朴の手札は《木端+微塵》のみで、この《スカラベの神》を打ち倒す術を持たない。それでも《屑鉄場のたかり屋》で攻撃をしかけ、《スカラベの神》に3点のダメージを入れる。

 そこへ手札の《木端+微塵》を放っても、《アクロゾズの神殿》でライフを回復され、ターン終了時に原根の手札に戻る《スカラベの神》は次ターンまた出てくだろう。そのアクションには何の意味もないと判断した朴は、《木端+微塵》を手札に留めてターン終了を宣言した。

 原根も、《スカラベの神》の能力は墓地の《屑鉄場のたかり屋》によって牽制されているので、動きはない。ただ、朴の側のマナベースにも多少、不都合があった。《屑鉄場のたかり屋》を戻すための黒マナ源が《竜髑髏の山頂》と《霊気拠点》1枚ずつしかなく、《微塵》のための黒マナを準備しようとすると《屑鉄場のたかり屋》の起動はできない。

 原根も青マナに窮している状態であったため、《廃墟の地》で朴の《竜髑髏の山頂》を割った。原根は《》を、朴は(対応して《竜髑髏の山頂》から黒マナを生み出しつつ)、《》を持ってくることで、原根にも朴にも損のないアクションだ。

 損のないアクション……のはずだった。

 朴の「まじかコイツ!!」という叫びが辺りに木霊した。

 朴は溜息を大きくつき、《ボーマットの急使》によって裏向きに追放されているカードの4枚の背を見た。それで原根も事情を察する。「初めて見ました」と、つぶやいた。

 朴が持ってきたのは、《》。1枚採用しているはずの《》が、ライブラリーになかったのだ。デッキ公開制という都合上、この「アクシデント」を原根も理解した。

 土地事情が変わり、朴は大きな予定変更を迫られた。生み出した黒マナを消費して《屑鉄場のたかり屋》を能動的に戻さざるをえない。盤面にクリーチャーを用意できたものの、《スカラベの神》の能力起動に対する枷が外れたことの方が大きい。

 原根は朴の墓地からクリーチャーを呼んでは《アクロゾズの神殿》で「食べる」ことを繰り返し、ライフを潤沢に回復させていく。

 やがてどんな攻撃と《微塵》を組み合わせても圏外となったライフの値をみて、朴はゲームを畳んだ。

朴 1-2 原根

試合後

「めっちゃ欲しかった!」

 朴が《ボーマットの急使》で追放した4枚のカードには、もちろん《》がある。そして《スカラベの神》を撃ち落とせる《無許可の分解》の姿もあった。「裏向きに追放される」という性質上、この「噛み合わなさ」がどこかで巡り合うことは仕方ない。

「2年連続、やっちゃってくださいよ」

 スタンダードもドラフトも「練習不足だった」と明言しながらもトップ8に進出した朴は、最後に原根を応援した。もちろん原根にとって2年連続となる日本選手権優勝をやっちゃってくださいよ、という意味合いだ。

 インタビューにて「特定の大会で10割勝てる人はいないんだよ」と話した原根だが、日本選手権という大会に限れば彼の勝率はこれで2年合わせて9割に達するほどだ。いやが応にも、偉業への期待が集まってきている。

 前人未到の日本選手権連覇に向け、あまたのプレイヤーの想いを背負い、原根は準決勝に駒を進める。

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RESULTS

対戦結果 順位
最終
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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