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グランプリ・静岡2018(レガシー)

観戦記事

第8回戦:篠原 元(大阪) vs. 津村 健志(東京)

Hiroshi Okubo

 いつの間にやら2018年も残すところ1か月となり、いよいよ年の暮れに差し掛かる。今年もマジック界ではさまざまな出来事があり、それらを列挙するだけで結構な読み応えのある文量の記事が1本書けてしまうことだろう。だが、中でもこの第8回戦のマッチカバレージで話題とするのに最も相応しいものといえば「グランプリ初日のラウンド数の変更」に違いない。

 2018年からは、グランプリ初日のラウンド数が9回戦から8回戦になった。これはスムーズなトーナメント進行のために生まれたルールだが、なにもこの恩恵を受けるのはジャッジや運営スタッフだけではない。2日間に渡る長丁場を戦うことになるプレイヤーにとっても、余力を残した状態で初日最後の試合に臨むことができるのだ。

「こんな風に(フィーチャーされている中で)やることないから緊張する(笑)」

 対戦テーブルに着いたプレイヤーの一人、篠原 元(大阪)は落ち着かない様子で、しかしどこか揚々として一人ごちる。関西のKMCを中心に活動するデッキビルダーで、これまで目立った戦績こそないものの少し変わったデッキリストを愛好するプレイヤーだ。その独特のデッキチューニングは一部界隈からは根強い人気があり、今日もオリジナリティ溢れる「スティール・ストンピィ」を駆ってここまで無敗で勝ち抜いてきた。

 相対するのはご存知マジック・プロツアー殿堂顕彰者であり、Hareruya Prosに所属する津村 健志(東京)である。デッキはいかにも津村らしい(?)アドバンテージカード満載で対戦相手の心を折る「グリクシス・コントロール」をプレイしており、対面に座す篠原同様ここまで全戦全勝。それどころか今日は1度のマリガンさえしていないと言うのだから、デッキも乗りに乗っているようだ。

 ここを勝てば初日全勝として、グランプリ上位入賞に向けて大きく弾みをつけることができる。試合前に固く握手を交わすと、両者ともに気力十分といった様子でゲームを開始した。

 
篠原 元(写真左) vs. 津村 健志(写真右)
ゲーム1

 先攻の津村が《》をプレイするのみでターンを終える静かな立ち上がりを見せるのに対し、篠原は《古えの墳墓》から《鋼の監視者》を、続いて《裏切り者の都》から《歩行バリスタ》をX=2でプレイする。ヴィンテージさながら、と言うのはいささか言い過ぎだが、わずか2ターンの間に4マナを揃えた篠原が津村に脅威を差し向ける。

 だが、篠原の苛烈な展開を前にしても津村は悠然と構えていた。3ターン目に土地をプレイし、《コラガンの命令》で《鋼の監視者》と《歩行バリスタ》の両方を一度に除去。さらに続くターンに《トーラックへの賛歌》で篠原のリソースを奪い、差を広げていく。

 
津村 健志

 1対2交換を繰り返されてしまった篠原だったが、まだ継戦不可能と呼ぶにはほど遠い。2体の《ファイレクシアの破棄者》をプレイして津村のデッキに入っているであろうプレインズウォーカー2種――すなわち《最後の望み、リリアナ》と《精神を刻む者、ジェイス》の起動型能力を封じると、さらにトップデッキした《歩行バリスタ》を叩きつけ、津村のライフを果敢に攻め立てる。

 篠原のアーティファクト・クリーチャーたちから数度のアタックを受け、ライフが6まで削られてしまう津村だが、今なお悠然とした姿勢を崩さない。やがて十分なマナが伸びると、篠原の号令に合わせて《瞬唱の魔道士》をプレイ!

 これによってフラッシュバックされるのは当然の《コラガンの命令》。篠原の《歩行バリスタ》と《ファイレクシアの破棄者》を除去する。

 さらに返すターンには《精神を刻む者、ジェイス》をプレイし、残る1枚の《ファイレクシアの破棄者》をバウンスして《コジレックの審問》で即座にディスカードを要求。篠原は手札も盤面もともに空っぽになり、対する津村は《精神を刻む者、ジェイス》をコントロールしているという「グリクシスコントロール」の黄金パターンに突入する。

 こうなるとゲームは一気に津村のペースだ。《精神を刻む者、ジェイス》が毎ターン強烈なアドバンテージを稼ぎ出し、篠原のドローも《コラガンの命令》でロックする。

 万事休す。一度は津村を土俵際まで追い詰めた篠原だったが、この状況を覆す手段はない。

篠原 0-1 津村

ゲーム2

 ここまでマリガンしなかったと語った津村が、初手を見て珍しく小考する。その手札には除去、クロック、そして《意志の力》と完璧なカードが揃っていたのだが、肝心の土地が1枚しかない。静かに手札を手繰り、やがてキープを宣言した。

 ゲーム1同様、篠原から動き出した。2ターン目の《アメジストのとげ》こそ《意志の力》で打ち消されてしまうも、続けてもう1度《アメジストのとげ》。津村もこれはさすがに通さざるを得ず、続く《鋼の監視者》と《歩行バリスタ》も通る。

 
篠原 元

 だが、今日の津村は絶好調だった。ワンランドキープから都合よく土地を引き続けてきた津村は4マナで《コラガンの命令》。《アメジストのとげ》と《歩行バリスタ》を除去し、何とか体勢を立て直す。

 だが、返す篠原も負けじと、珍しい土地である《高層都市の玉座》を起動して「統治者」の権利を得る。マナが伸びきったあとは手札の消耗が激しく、息切れしやすい「スティール・ストンピィ」にとっては非常に相性のいい1枚と言えるだろう。

 ――が、それは統治者で居続けられるならば、である。津村は篠原の唯一のクロックだった《鋼の監視者》に《コラガンの命令》を打ち込み、《最後の望み、リリアナ》で《悪意の大梟》を回収。やがて飛行クロックで統治者の権利を簒奪すると、かえって埋めようのない差が広がるばかりだった。

篠原 0-2 津村

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