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グランプリ・静岡2017春
準々決勝:Qi, Wentao(中国) vs. 宮本 盟大(東京)
By Hiroshi Okubo
全15回戦のスイスラウンドを終え、トップ8による決勝ラウンドが開始される。
さっそく本カバレージでフィーチャーする2人を紹介しよう。
宮本 盟大(東京)。
普段は新宿区のマジック専門店「晴れる屋」で店頭に立ちつつプロツアー出場を目指して仲間たちと腕を磨いている彼は、今回グランプリトップ8という最高の形でプロツアー出場権利を獲得した。
念願叶った今日、フィーチャーテーブルにやってきた宮本を祝福すると、彼はありがとうと一言置いてこう言った。
宮本「でも、最高じゃないよ。この後3回も試合が控えてるんだから」
今時珍しいこの熱血漢はハッキリとそう断言する。宮本はいつだって、まるで呼吸をするかのように自然体で、それでいて強く激しく、あまりにも大きな夢と目標を吐き出すのだ。時に空回りしながらも、無垢なまでな真剣さでマジックに取り組む。それが宮本の魅力であり、周囲を惹きつける求心力なのだろう。
その宮本が口にした「あと3回」。その言葉が意味することとはすなわち、このグランプリで勝利を収めることに他ならない。前環境から長らく愛用している「マルドゥ機体」のアップデート版リスト、「マルドゥ・バリスタ」を手に必勝を誓う。
だが、話はそう簡単にはいかない。
宮本の前に立ちはだかる難関はチー・ウェンタオ/Qi, Wentao(中国)。
チームリミテッドで開催されたグランプリ・北京2015で8位に入賞した経験もあるマジックエリートは、この準々決勝の舞台でもリラックスした様子で戦いに臨もうとしていた。
神戸に5年間住んでいた経験もあるそうで、試合前に互いのデッキリストを交換した際も日本語で書かれたデッキリストをすらすらと読み、対戦相手である宮本とも活発に意見を交換する。ミラーマッチですね。サイドボードに《粗暴な協力》?etc...
これが強者の余裕というやつか......そう思いながら耳をそばだてていると、いつしか話題はサイドボードの《粗暴な協力》の「増呪」のモードの話からまったく別の話題にシフトしていた。
宮本「北京在住なんですか......北京っていろいろおいしいものありますよね?何がオススメっすか?」
チー「まぁ、やっぱり北京ダックですかね。あとは......辛いものは食べられる?」
宮本「大好きです! 北京行ってみたいなぁ......」
......これが強者の余裕というやつなのか?
チー・ウェンタオ/Qi, Wentao vs. 宮本 盟大 |
試合展開
第1ゲーム
宮本が北京ダックの話を掘り下げようとしたところで、ジャッジから試合開始の合図が出される。
和やかなムードから一転して険しい表情を浮かべる2人のマッチアップは、チーが《スレイベンの検査官》、宮本が《模範的な造り手》を用意するところから動き出す。
チーが先攻の利を活かして《歩行バリスタ》を着地させ、宮本の《模範的な造り手》を除去すると、宮本が第2ターンに呼び出した《屑鉄場のたかり屋》の脇をチーの《スレイベンの検査官》が通り抜けていく。
まずまずの滑り出しに思われたが、第3ターンに土地が止まってしまったチーはアクション数の差で宮本に押されてゆく。宮本の《発明者の見習い》と《屑鉄場のたかり屋》のクロックに対して2体の《スレイベンの検査官》で防戦を挑むが、宮本が次々に展開するクロックに対応しきれない。
ライフをゴリゴリと削られるチーだったが、命からがら《大天使アヴァシン》までたどり着いて反撃に転じる。チーの《大天使アヴァシン》のアタックに対して宮本が《キランの真意号》でブロックに向かうと、対応して2枚目の《大天使アヴァシン》をプレイしてイニシアチブを確保する。
攻守が逆転してしまった宮本だったが、手を止めて落ち着いて思案する。ダメージレースでチーに先行している今なら......小考しつつ、チーの《スレイベンの検査官》を含む総攻撃に対して《発明者の見習い》でブロックを行い、《大天使アヴァシン》をあえて「変身」させて《屑鉄場のたかり屋》ですれ違いのダメージレースを挑む。
宮本 盟大 |
宮本の意図に気付いたチーも《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》でトークンの防御陣を築きながら素早くゲームを決めにかかるが、すでにそのライフは宮本の射程圏に入っていた。
宮本「《歩行バリスタ》、X=3」
序盤に削られすぎたライフがここにきて響く。
残りライフ3のチーにとってこれを通すことは死を意味する。そして、その状況を覆す手段をチーは持っていない。
チー 0-1 宮本
第2ゲーム
第1ゲーム同様《スレイベンの検査官》からスタートするチーに対し、宮本がプレイしたのは《屑鉄場のたかり屋》。これを《ショック》で除去したチーは返すターンに《異端聖戦士、サリア》を呼び出して宮本に迫る。
宮本が負けじと《異端聖戦士、サリア》を《粗暴な協力》で除去して《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をプレイすると、チーは《反逆の先導者、チャンドラ》でブロッカーを排除しながら《屑鉄場のたかり屋》と《スレイベンの検査官》で《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を処理する。
互いに一歩も譲らない一進一退の大接戦、幾度かのプレインズウォーカーの応酬と《大天使アヴァシン》を巡ったせめぎ合いを経て消耗戦に突入すると、チーが放り投げた《歩行バリスタ》が猛威を振るい始める。宮本が用意するクリーチャーを片端から除去し、徐々にそのライフを削る。
除去を引きたい。何でもいい。あの《歩行バリスタ》を何とかしなくては。
祈りながらカードを引く宮本だったが、トップデッキは宮本に応えなかったようだった。第1ゲームで宮本に勝利を届けた《歩行バリスタ》が今度はチーの下に勝ち星をもたらし、準々決勝の行方は第3ゲームへ引き継がれることとなる。
チー 1-1 宮本
第3ゲーム
宮本の《屑鉄場のたかり屋》に《ショック》を。チーの《経験豊富な操縦者》に《致命的な一押し》を。互いのクリーチャーに除去を撃ち込み合う「挨拶」を済ませると、チーが第4ターンに《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をプレイする。
宮本も後を追うように《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をプレイし、第2ゲーム同様激しいマウントの奪い合いが勃発する。
チーが宮本の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を打ち倒すと、宮本も負けじと《無許可の分解》や《屑鉄場のたかり屋》を駆使してイーブンな盤面を取り戻し、宮本が《豪華の王、ゴンティ》で《歩行バリスタ》を奪ってアドバンテージを得ると、チーも《大天使アヴァシン》で宮本の盤面を崩壊させる。
チー・ウェンタオ |
宮本がその《大天使アヴァシン》を処理したころには、チーも宮本もリソースのほとんどを出し切っていた。《屑鉄場のたかり屋》によって継続的にクロックを用意できる宮本に対し、チーも必死でブロッカーを用意しつつ、《無許可の分解》やチャンプブロックを駆使してライフ差を埋めていく。
気が付けば互いのライフは宮本2対チー1。互いにデッキトップに勝負を委ねる激戦の中で――
チーが大きく息を吸い込み、吐く。
そして、引き込んだその1枚をそっとテーブルに置く。
《ショック》、本体。
2点火力が準々決勝の幕を引き、宮本が右手を差し出した。
チー 2-1 宮本
1点1点のライフを奪い合うスリリングな試合を終え、固い握手を交わした2人は両者とも歯を見せて笑う。
宮本「いい勝負だった。またやりましょう!」
チー「ええ。今度、グランプリ・北京に遊びに来てくださいよ」
ついでにおいしいお店をご案内しますよ、と付け加えたチーは準決勝へ向かわんと中座する。
席を立つチーの背にあったのは強者の余裕などではない。
新たな出会いの喜びと、好勝負を制した充足。
そして、この戦いの勝者に受け継がれた宮本の熱い想い――
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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