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グランプリ・静岡2017春

観戦記事

準々決勝:佐々部 悠介(東京) vs. Je, Sungeun(韓国)

By 矢吹 哲也

 2700人を超える膨大な数の選手たちから勝ち抜けるのは、容易なことではない。事実、予選ラウンド15回戦をわずか2敗で終えても、トップ8へ入賞できるのは一握りだ。今ここにいる8人は、実力だけでは測れない幸運を味方につけていると言えよう。

 「日本のグランプリは、本当に難しいです」と、流暢な日本語で話しかけるジェ・スングン/Je, Sungeunは、その「難しい」グランプリへ遠征した上で自身初のグランプリ・トップ8入賞を果たし、興奮した様子だ。対する佐々部 悠介も今回初めてのグランプリ・トップ8入賞。自身の記録をさらに伸ばすべく、戦いへ赴く。

 「機体」同系となった両者は互いのデッキリストを確認するが、「ほとんど同じでやるべきことは変わらない」という結論に至った。それでも、ジェは佐々部のサイドボードに搭載された《停滞の罠》を気にしている様子で、何度となく「Stasis Snareか......」とつぶやいていた。

 この場にいる8人は、まだ誰も頂点の景色を知らない。今はただ、目の前に立ちはだかるライバルを倒すのみだ。

 ジェが「楽しみましょう」と声をかけ、試合は始まった。

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佐々部(写真左)vs. ジェ。2719人の頂点を決める決勝ラウンドでも、大切なのは「楽しむこと」だ。

ゲーム展開

 先手のジェが1ターン目《模範的な造り手》、2ターン目《キランの真意号》と最高の立ち上がり。同じデッキを使う佐々部だからこそ、これが意味するものはわかる。「これは負ける」と言いつつも前髪に息を吹きかけ気合を入れ直した佐々部は、こちらも《キランの真意号》から《異端聖戦士、サリア》と展開し、ジェの攻勢を阻まんとする。

 ジェはさらに《模範的な造り手》を加えて、序盤から強打を繰り出す。佐々部の《異端聖戦士、サリア》にも構わず攻撃に出たジェは、《模範的な造り手》を1体失いながらも佐々部の残りライフを早くも6点へ。

 しかし後続が出てこない。やや性急な攻めを見せたジェだが、彼の残り手札は土地で埋まっており、長期戦は許されなかったのだ。佐々部は《キランの真意号》同士の相討ちでジェの攻め手を失わせ、ここからジェはただ土地を並べていくことになった。

 一方の佐々部は2枚目の《キランの真意号》を用意し、《屑鉄場のたかり屋》2体で反撃に出る。アーティファクトも出せない状況のジェの《模範的な造り手》では、佐々部の残りライフを削りきれず、形勢は見事に逆転した。

 なおも土地を引き続けるジェ。手札の《無許可の分解》もアーティファクトがなければダメージに繋がらない。《乱脈な気孔》も起動して攻撃に向かったが、逆に佐々部の《無許可の分解》を受けて残りライフでも並ばれた。

 佐々部は《鋭い突端》を起動して全軍で攻撃。チャンプ・ブロックですべてのクリーチャーを失ったジェは、最後のカードも土地であることを示して肩をすくめた。


高速の攻めにも挫けず勝機を掴んだ佐々部。

 「機体」同系の第2ゲームは、風景が一変する。苛烈な消耗戦の始まりだ。

 佐々部は1ターン目《スレイベンの検査官》、ジェは2ターン目《屑鉄場のたかり屋》でゲームを始めると、佐々部は《致命的な一押し》でそれを対処し、1点のダメージを刻んでいった。ジェが放った《グレムリン解放》によって生み出されたグレムリンにも、佐々部は2枚目の《致命的な一押し》を差し向ける。

 ジェは返しのターンに《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を呼び出し、同盟者・トークンを戦線に加えてターン終了。佐々部はそこへ《無許可の分解》を撃ち込み、迎えたターンにこちらも《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を繰り出した。

ゲームの勝敗を分ける最強指揮官同士の戦い。

 再び同盟者・トークンを生み出してターンを渡したジェに対し、佐々部の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が[+1]でクリーチャー化し、同盟者・トークンとともに自ら攻撃に向かった。ジェは《大天使アヴァシン》で受けて立ったが、佐々部はそこにも《無許可の分解》を放つ。これでジェの《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は同盟者・トークンのダメージを受け、忠誠度を2へと減じた。

 ジェはまたしてもトークンを生み出して終了。「もう1枚(アヴァシン)あんの?」と苦笑いする佐々部に対し、「攻撃してみればわかります」とジェは不敵に笑う。

 佐々部はこちらもトークンを生み出すに留め、ターンを渡した。今度はジェの《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が反撃に出るが、佐々部はそこへ《停滞の罠》を差し向けた。

 しかしジェはすぐさま2枚目の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を送り出し、佐々部が《先駆ける者、ナヒリ》を着地させた返しのターンにはギデオンを「紋章」に変えて同盟者たちを強化し、反撃を加えた。この動きに、「3枚目もあんの? きっつ」と漏らした佐々部だが、ダブル・ブロックで1体を討ち取り、続けて《先駆ける者、ナヒリ》の[-2]能力でジェの戦線を崩壊させた。

 ジェも《苦渋の破棄》で佐々部の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を退場させると、3枚目の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をプレイ。しかし佐々部は全軍で攻撃し、さらに《歩行バリスタ》の砲撃を加えてこれを退ける。

 ついに手札が枯渇したジェに対し、佐々部は盤面に残った《先駆ける者、ナヒリ》の[+2]能力で手札の質を上げ、有利を手繰り寄せていく。《グレムリン解放》によって佐々部の盤面にグレムリンが2体加わり、防御も固い。

 それでもジェは《乱脈な気孔》と《鋭い突端》を起動して《先駆ける者、ナヒリ》へ攻撃。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が残した「紋章」はクリーチャー化した土地へも力を与え、ダブルブロックで《乱脈な気孔》を討ち取ることを選んだ佐々部の《先駆ける者、ナヒリ》の忠誠度を一気に削り取った。

 そして続くターンに《無許可の分解》を引き込んだジェは、ついに《先駆ける者、ナヒリ》を退場させることに成功した。いよいよ両者の戦場からプレインズウォーカーが姿を消し、盤面の奪い合いは再び振り出しに戻った。


長い消耗戦にも挫けず粘り強く戦うジェ。

 ジェは《鋭い突端》を起動して攻撃に向かったが、佐々部は《大天使アヴァシン》を瞬速で繰り出し、この攻撃を完全に阻んだ。さらに迎えたターンに反撃後、《歩行バリスタ》を繰り出すと+1/+1カウンターをすべて本体火力に注ぎ込んで墓地へ落とし、《大天使アヴァシン》の「変身」を――すなわちジェの敗北を予告した。

 最後の1枚となったドローを机に一度伏せ、覗き込むように見る......ジェはターンを渡した。《大天使アヴァシン》が「変身」しようと、致命打を与えようと襲いかかる――そこでジェが手札から差し出したのは、《無許可の分解》!

 勝負はまだ終わらない。ジェは《屑鉄場のたかり屋》を墓地から戻し、しかし佐々部も《停滞の罠》で攻撃を防ぐ。ジェは続けて《模範的な造り手》を送り出すが、佐々部はそれを《リリアナの誓い》で対処した。

 そしてついに、ジェの動きが止まった。

 一方の佐々部は、満を持して《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》と《キランの真意号》を盤面へ。長きにわたる消耗戦は、これにて決着したのだった。

佐々部 2-0 ジェ

佐々部 悠介がジェ・スングンを2連勝で下し、準決勝へ!
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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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