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グランプリ・静岡2017春
準々決勝:桐野 亮平(岡山) vs. 渡邉 祟憲(宮城)
By 宮川 貴浩
いよいよ始まる決勝ラウンド。何度近くに居合わせても、この張り詰めた空気がたまらない。ここからデッキリストが公開になるというのも、独特の雰囲気を生み出すのに一役買っているだろう。
陽気に談笑をしながら、あるいは緊張をほぐすかのように言葉を交わしながら、各テーブルでデッキリストの確認が行われている。この卓では、二人のプレイヤーが静かに1枚の紙を見つめていた。
「同じような構成ですね。結局アヴァシンが強い」
一通り相手のデッキリストを確認し、渡邉が口を開いた。
「すべてをまくれますからね。勝つときはアヴァシン」
と桐野も同意する。
互いに十分すぎるほど勝負の肝を知っている両者。戦前の予想通り、《大天使アヴァシン》が勝負を決めるのだろうか。
ゲーム1
後手番の上にマリガンを喫した桐野は、土地に不安のある6枚の手札をキープし、占術で《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を下に送る。
《スレイベンの検査官》、《キランの真意号》と先手の利を活かしてマウントをとる渡邉に、桐野の《屑鉄場のたかり屋》は問題にはならない。《致命的な一押し》、《停滞の罠》、《大天使アヴァシン》と、桐野に逆転の糸口をつかませないカードも、ダメ押しをするカードも揃ってきている。
3枚目の土地が引けず次の戦力も《屑鉄場のたかり屋》となった桐野に、渡邉はその片割れを《致命的な一押し》で処理し、《模範的な造り手》でゲームを締めにかかった。
渡邉の戦場にはオープンになった5マナ。アタックしてくる《キランの真意号》。桐野はわかっていても《致命的な一押し》を撃たざるを得ない。そして、飛び出す彼女。
桐野は《模範的な造り手》こそ《歩行バリスタ》で除去するが、ライフは残り9でフルタップ。そして、渡邉のもとには残った9点クロック。
桐野は「こうするしかないんだけど......」とこぼすものの、スタンダードという環境でその先があろうはずもなく、すばやくサイドボーディングに移行した。
桐野 0-1 渡邉
「楽しい楽しいサイドボードの時間ですね」と口を開いた桐野。ミラーマッチには自信ありということだろうか。渡邉は「重いカードをいっぱいプレイできるから面白いといえば面白いですけど」と笑ってこれに答えた。
サイドボーディング後は互いに除去とプレインズウォーカーがありったけ投入され、メインとはガラリと変わった展開になることが予想されるこのマッチアップ。両者の切り替えに注目だ。
ゲーム2
桐野は《グレムリン解放》、《停滞の罠》、《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》という初手をキープ。渡邉は《スレイベンの検査官》からスタートした。わずか1マナだが、サイドボーディング後のゲームでも貴重なアーティファクトとアドバンテージを供給してくれるいぶし銀だ。
しかし、今度は渡邉がマナスクリューに見舞われる。調査もむなしく土地が見つからず、苦し紛れに出したX=1の《歩行バリスタ》は即《致命的な一押し》で墓地に蹴り落とされる。こうなると桐野の《キランの真意号》がじわじわと存在感を発揮してくる。
ようやく待望の黒マナを手に入れた渡邉が《精神背信》で自分の運命を覗き見ると、そこに映し出されたのは《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》、《グレムリン解放》、《停滞の罠》、《霊気拠点》。渡邉は危ない、といったふうに声を上げると、《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》に退場を願った。
しかし、真打は俺だとばかりに桐野のもとに駆け付けたのは、この大会の、いや今のマジックの主役と言っても過言ではない《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》。すぐさま《キランの真意号》にエンジンがかかる。
渡邉は悩んだ末《キランの真意号》を《グレムリン解放》で対処したが、渡邉がマナを出せないときだけクリーチャー化し、そうでないときはトークンを出す《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》がどうにもならない。頼みの綱の《大天使アヴァシン》も《停滞の罠》にかかってしまい、万事休すかと思われた。
ところが、このゲームにはまだ見せ場があった。渡邉も《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を引き当てたのだ。盤面だけ見れば、ほぼ五分の状態になる両者の戦力。
だが、このマッチアップで真に重要なのは「どちらが攻めているか」だ。先に自由に動ける桐野は、除去を贅沢に使いすぐに渡邉の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を破壊することに成功すると、《苦い真理》で一気にアドバンテージ差を広げる。
桐野は《大天使アヴァシン》には《無許可の分解》、逆に《無許可の分解》には《大天使アヴァシン》で対応し、《歩行バリスタ》に致死量の弾丸を装填して渡邉を投了に追い込んだ。
桐野 1-1 渡邉
プレインズウォーカーが生き残ることで終結しそうなこのマッチ。最後にプレイヤーとともに立っているのはどのプレインズウォーカーだろうか。
ゲーム3
ともに《スレイベンの検査官》からアクセルを踏みはじめ、その後はドローゴーをし合う展開になった両者。違うのは、桐野が順調に土地を伸ばしているのに対し、渡邉が土地3枚で止まってしまっているということだ。渡邉はディスカードに追い込まれ、《致命的な一押し》を諦める。
桐野の《キランの真意号》こそ《グレムリン解放》した渡邉だったが、ようやく引いた土地も黒マナを供給せず、彼の口から思わずため息がもれた。その視線の先には、《死の宿敵、ソリン》の姿が。
ゲーム中盤、渡邉の《大天使アヴァシン》連打を《無許可の分解》連打で許さない桐野は、《先駆ける者、ナヒリ》を着地させ、手札を回してついに《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を手に入れた。今度こそ勝負あったか。
しかし、このゲームもまだまだ終わらなかった。とうとう登場を許された渡邉の《死の宿敵、ソリン》が自らの忠誠度と引き換えに《先駆ける者、ナヒリ》を葬ると、続く《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》も2枚目の《死の宿敵、ソリン》が生き残ることを許さない。
渡邉は《死の宿敵、ソリン》から授かったライフを使って《苦い真理》でリソース差を埋めようとし、桐野もまた《苦い真理》でそれを振り切ろうとする。二人の間をクリーチャーが、除去が、プレインズウォーカーが目まぐるしく飛び交い、両者の有効牌はついに底をついた。
その末に桐野がたどり着いたのは――《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》!
毎ターン1枚ずつアドバンテージ差が開いていき、最後までこの状況を打開するカードを引けなかった渡邉は、桐野が《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》の奥義起動を宣言すると同時に、無念さと充実感の入り混じった笑顔で右手を差し出した。
桐野 2-1 渡邉
桐野、エンジン全開で準決勝へ!
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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