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グランプリ・名古屋2018

戦略記事

チーム石村/瀧村/市川のデッキ構築~強豪と呼ばれる所以~

Hiroshi Okubo

 プレイヤーミーティングが終わり、参加者にカードプールが配られる。リミテッドグランプリ特有の、痺れるような緊張の瞬間だ。

 いよいよ幕を開けたグランプリ・名古屋2018、そのフォーマットはチームリミテッドだ。国内ではグランプリ・静岡2017秋からおよそ1年ぶりとなるこの競技は、ただでさえ難解と言われる『ラヴニカのギルド』で行なわれる。プレイヤーの張り詰めた面持ちも納得と言えよう。

 誰もがおそるおそるといった様子で配られたカードプールをチェックする中、落ち着いた様子、慣れた手つきで――さながらルーチンワークをこなすかのように手渡されたカードに目を通すチームがあった。それこそ石村 信太朗、瀧村 和幸、市川 ユウキの3人である。

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 類稀なるリミテッド巧者として知られ、国内のプロたちも信頼を寄せる強豪・石村。プロツアー『戦乱のゼンディカー』で優勝し、現在もプロシーンの一線を走る瀧村。今年6月に開催されたグランプリ・シンガポール2018で優勝したことも記憶に新しく、動画配信者としても知られる市川。言わずと知れた強豪である彼らにしてみれば、今さらグランプリで硬くなるなどといったことはないだろう。

 個々もトップクラスの実力者である彼らがチームを組んだとあれば注目は必至だ。はたして彼らはどのようにしてこの大会に臨むのか? 今回はデッキ構築を行なう3名、「the sun」の様子を伺った。

デッキ構築

 市川がカードの束を各人に仕分けていく。瀧村が緑のカードを中心に手繰り、続けて黒いカードに手を伸ばす。石村は白と赤、市川は青のカードを順番に確認し、3人の間に多色のカードが広げられる。ここまで流れるような作業だ。

thesun_sealed1.jpg

瀧村「(色の)担当とカードの並べ方も、事前に決めていたので」

 瀧村は語る。完璧に役割分担がなされた彼らは、何を話すでもなく黙々と手元にあるカードをマナ・コスト順に並べ替え、プレイアブルなカードを仕分けていく。

市川「青は強くない。ディミーア(青黒)はキツそうに見えるな」

 やがて3人がカードを並べ終えると、市川が口を開いた。その後「でも、イゼット(青赤)は絶対にやりそう」と3人の間に並べられた《パルン、ニヴ=ミゼット》と《弾けるドレイク》を指さしながら続け、石村と瀧村も頷きを返す。「ゴルガリもやるかな」「白は除去だけは強いね」とそれぞれにカードプールへの所感を交換し、いよいよ色決めの相談が始まった。

 なんとなくデッキの形を起こし、まずは市川の言う「ディミーアが無理そう」であることを確認する。《巧みな叩き伏せ》や《致命的な訪問》といった優良除去に《家門のギルド魔道士》や《夜帷の捕食者》といったそこそこのカードには恵まれているのだが、肝心の勝ち手段の部分が乏しく、カードの枚数も足りないようだった。「サードデッキって感じだね」と市川が発言すると、石村と瀧村がそれを認めた。

 ここで市川が小さく苦笑を漏らしながら「まさかのエース不在か」と呟く。3人の間でディミーアが最有力候補だったようだ。要となる指針を失ってしまった瀧村たちだったが、しかし当然ここで思考を止めることはない。テーブルに広げられたカードプールを見渡す石村が、冷静に色分けの所見を述べていった。

thesun_sealed2.jpg

石村「イゼット、ゴルガリはほぼ確定。赤いカードはイゼット寄りだからボロス(赤白)は厳しそうだけど、緑とカードを分ければナヤ(赤緑白)かセレズニア(緑白)も組めそうですね」

 百戦錬磨のリミテッドプレイヤーである石村の言葉を受け、市川と瀧村はさっそく動き出した。イゼットは先に市川が言っていた通り《パルン、ニヴ=ミゼット》のような爆弾レアもあり、除去やドロー呪文にも恵まれていたおかげで見る見るうちに形になり、石村のセレズニアも《希望の夜明け》や《不和のトロスターニ》といった強力なレアの脇を《議事会の騎兵》や《乗馬兵の飛行》といったカードが固め、あっという間にデッキの形になっていく。

 最初に瀧村が語っていた通り、あらかじめチーム内の役割は完璧に分担されているようで、3人がそれぞれの作業を並行して進めているため構築のスピードが圧倒的に速い。ましてや個々人の力を見ても会場トップクラスのチームだ。構築時間開始から10分も経つころには、市川のイゼットと石村のセレズニアはほとんど完成し、あとは数枚のカードを検討していくのみという状態になっていた。

 軽快にデッキを構築する2人の横で、1人頭を抱えていたのが瀧村だ。《千の目、アイゾーニ》という爆弾クリーチャーを中心に、《陰惨な生類》や《ゴルガリの拾売人》といったアドバンテージ源もあるのだが、いかんせんカードが足りていない。そんな瀧村を見て、石村が声をかける。

石村「セレズニアは呪文余ってるのでアブザン(白黒緑)は組めそうです。あとは《ギルド会談》があるのでスゥルタイ(黒緑青)にするのもいいかもしれません」

 石村の言葉を受け、瀧村が思案を巡らせる。アブザンかディミーアか、脳内で具体的なイメージを組み上げるとさっそく自身の構築しているゴルガリにディミーアの多色カードを加え、スゥルタイデッキを組み上げていった。アドバンテージカードも妨害も増え、見る見るうちに強力なコントロールが出来上がっていった。

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 こうして3人のデッキの叩き台ができ、残り時間は33分となった。「あと13分くらいやれるね」と瀧村が述べ、ここからは互いのデッキをより深く検討していく。さすがというべきか、リミテッド巧者である石村のセレズニアは非常に強力なデッキとなっており、その検討に残り時間を消費されることはなかった。続いて市川と瀧村のデッキの調整に時間がつぎ込まれ、並行してサイドボードカードも割り振られていき、これまでと打って変わって活発に議論を交わし、目に見えてデッキが強化される。

 その後も交わされる議論の密度に、思わず時間の感覚がおかしくなってしまっていたが、時計に目をやるとここまでの経過時間は35分ほど。そのころには3人ともデッキ構築をほとんど終えており、余裕をもってリストを記入し始めていた。


 縮められる時間を極限まで縮め、デッキの微妙な調整やサイドプランの試案作成に構築時間の比重を置く。まさしく圧倒的な個の力と、的確な役割分担がなせる業といえ、鮮やかとさえ言えるようなデッキ構築が幕を閉じた。ここまでの域に達するのに、どれだけの綿密な努力があったのか想像するに難くない。強豪が強豪たる所以、その一端を垣間見る思いだ。

石村 信太朗(「the sun」A席)
グランプリ・名古屋2018 1日目 / 『ラヴニカのギルド』チームシールド (2018年10月13日)[MO] [ARENA]
7 《
7 《平地
1 《寺院の庭
2 《セレズニアのギルド門
-土地(17)-

1 《癒し手の鷹
1 《報奨密偵
1 《デヴカリンの造反者
1 《鋼胴の甲虫
1 《天空の斥候
1 《ヴァーナーディーの盾仲間
2 《刃の教官
1 《レーデヴの勇者
1 《突撃するロック鳥
1 《議事会の騎兵
1 《パルヘリオンの巡視兵
1 《スマーラの森整形師
1 《薔薇たてがみのケンタウルス
1 《不和のトロスターニ
1 《乗馬兵の飛行
-クリーチャー(16)-
1 《大群の力
1 《希望の夜明け
2 《光明の縛め
1 《群れの好意
1 《芽吹く更生
1 《議事会の裁き
-呪文(7)-
1 《ボロスのギルド門
1 《第10管区の守備兵
2 《追われる証人
2 《奨励
1 《降格
1 《ハズダーの司法官
1 《捕食
1 《正義の一撃
2 《都市の楽園
1 《ケンタウルスの仲裁者
1 《押し潰す梢
1 《絡み爪のイトグモ
1 《内省のための小休止
1 《セレズニアのロケット
1 《刎頸の友
1 《用心深いオカピ
1 《世界魂の巨像
1 《蝋燭の夜警
1 《罪人逮捕
1 《宇宙粒子波
1 《レーデヴの守護者
1 《野生の角獣
2 《駐屯地の兵長
1 《押し入る荷役獣
1 《盾連携
1 《ロクソドンの修復者
1 《包囲ワーム
1 《樹木園の精霊
-サイドボード(32)-
瀧村 和幸<(「the sun」B席)
グランプリ・名古屋2018 1日目 / 『ラヴニカのギルド』チームシールド (2018年10月13日)[MO] [ARENA]
5 《
3 《
3 《
2 《ディミーアのギルド門
3 《ゴルガリのギルド門
1 《ギルド門通りの公有地
-土地(17)-

1 《雇われた毒殺者
2 《泥棒ネズミ
1 《家門のギルド魔道士
1 《壁過の達人
1 《管区の案内人
1 《冷酷なゴルゴン
1 《疫病造り師
1 《背骨ムカデ
1 《囁く工作員
1 《ゴルガリの拾売人
1 《夜帷の捕食者
1 《よろめく根茎
1 《光を遮るもの
1 《千の目、アイゾーニ
-クリーチャー(15)-
1 《死の重み
1 《静かな隠し矢
1 《ギルド会談
1 《巧みな叩き伏せ
2 《致命的な訪問
1 《席次 // 石像
1 《ギルドパクトの大剣
-呪文(8)-
1 《骨の障壁
1 《落とし格子の蔦
1 《悪意ある噂
1 《夜の子
1 《ナルコメーバ
1 《切断された糸
1 《思考消去
1 《囁く情報屋
2 《ディミーアのロケット
1 《闇刃の工作員
1 《往時軍の強兵
1 《気前のいい野良猫
1 《ゴルガリのロケット
1 《有毒ガス
1 《なかったことに
1 《概念の雨
1 《オクランの暗殺者
1 《隠された影
1 《張り出し櫓のコウモリ
1 《感情化粧師
1 《地底街のネクロリスク
1 《地底街の反乱
1 《野生の角獣
1 《陰惨な生類
1 《クロールの食料隊
1 《活胞子ワーム
1 《腐れ巨人
-サイドボード(28)-
市川 ユウキ(「the sun」C席)
グランプリ・名古屋2018 1日目 / 『ラヴニカのギルド』チームシールド (2018年10月13日)[MO] [ARENA]
7 《
6 《
2 《イゼットのギルド門
2 《ボロスのギルド門
-土地(17)-

1 《火小僧
1 《気難しいゴブリン
1 《ヴィダルケンの催眠術師
2 《ピストン拳のサイクロプス
1 《ディミーアの密告者
1 《跳び蛙
1 《弾けるドレイク
1 《霧から見張るもの
1 《パルン、ニヴ=ミゼット
-クリーチャー(10)-
1 《軽蔑的な一撃
1 《溶岩コイル
1 《急進思想
2 《直流
1 《イゼットのロケット
1 《音波攻撃
1 《薬術師の眼識
1 《嵐の行使
1 《高熱仮説
1 《反転 // 観点
1 《完全 // 間隙
1 《反応 // 反正
-呪文(13)-
2 《最大高度
2 《松明の急使
1 《眩惑の光
1 《最大速度
2 《ゴブリンの鍵師
2 《確実な一撃
1 《ボロスの挑戦者
1 《火想者の研究
1 《初々しい補充兵
1 《軍勢のギルド魔道士
1 《狂った怒り
1 《選択的な罠
1 《原因不明の消失
2 《霜の壁
2 《ウォジェクの護衛
1 《ボロスのロケット
1 《栄光の好機
1 《溶解区のミノタウルス
2 《重力殴打
2 《瓦礫帯の猪
1 《捕獲球
1 《悪賢い隠蔽
1 《実験の狂乱
1 《槌落とし
1 《詩神のドレイク
1 《賽銭ガニ
1 《街見張りのスフィンクス
-サイドボード(35)-
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RESULTS

対戦結果 順位
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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