EVENT COVERAGE

グランプリ・京都2015

観戦記事

第6回戦:齋藤 友晴(千葉) vs. 岡田 渉(東京)

By 矢吹 哲也

legacy

【名詞】【可算名詞】
1. 遺産,遺贈(財産)
2. 受け継いだもの,遺物

「研究社 新英和中辞典」より引用

 レガシー、それは脈々と続くマジックの歴史そのもの。

 かつてその力を振るった強力なカードやアーキタイプは遥か現代まで受け継がれ、グランプリというマジック最高峰のイベントにて一堂に会することになった。レガシー構築でのグランプリは今大会が日本初開催となるが、その舞台にこの国の歴史を色濃く残す京都の地が選ばれたのは、深い趣を感じずにはいられない。

 そして今、このフィーチャー・マッチ・エリアでも歴史あるプレイヤーたちが対峙する。


岡田 渉 vs. 齋藤 友晴

 1999年のデビュー以来16年にわたりマジックと付き合ってきた齋藤。積み重ねてきた戦績は言うに及ばず、さらなる歴史を刻むためこの大会に臨む。そして岡田は、そんな齋藤を上回る古豪だ。試合前の両者は記憶をたどるように会話を繰り広げ、岡田が18年ほどマジックを続けていることを確かめた。

 ともにマジックの「これまで」を良く知る両者が、「これから」のグランプリ優勝を目指して対決する。

それぞれのデッキ

「やー、何で来るかわからないな」 試合前のシャッフル中、岡田のデッキについて述べる齋藤。岡田のカード資産は豊富で、どんなデッキでも組んで会場に持ち込めるという。

 そんな岡田が選択したのは、「青白全知」。《実物提示教育》や《全知》、《引き裂かれし永劫、エムラクール》といったキー・カードに加え、《僧院の導師》や《剣を鍬に》を採用した形だ。

 一方の齋藤は、青赤2色の「デルバー」、《秘密を掘り下げる者》デッキ。「当たりや引き運に左右されにくいものを使いたかった」と、試合後に齋藤は語る。日本初のレガシーでのグランプリということで、様々なプレイヤーが様々なデッキで参戦することを見据え、安定感を取った形だ。

ゲーム展開

 先手は岡田。初手をじっくりと吟味し、キープを宣言。《汚染された三角州》から《》を持ってくると、《定業》からゲームをスタートした。

 対する齋藤はこちらも《汚染された三角州》を出し、ターンを渡す。岡田は《Tundra》をセットして《思案》。続けて《ギタクシア派の調査》を放つと、齋藤の手札が明るみになった。

「見せたくないなー」と言いながら公開された齋藤の手札は、《Force of Will》4枚、《目くらまし》1枚、そして《二股の稲妻》というもの。さらに続く岡田のターンに《すべてを護るもの、母聖樹》が出てくると、齋藤は大きくため息を吐く。

 岡田は《定業》、《時を越えた探索》でさらにライブラリーを掘り進める。大きなアドバンテージ差をつけられ苦しい表情の齋藤は、《渦まく知識》から《秘密を掘り下げる者》と続け、反撃を試みる。

 岡田の手からさらに《時を越えた探索》が放たれ、「生きた心地がしない」と漏らす齋藤。だが岡田も「いやいや、よくスカるんですよ」と返す。ドロー・カードを何度も唱えている彼だが、どうやらキー・カードを引き込めないでいるようだ。変身した《秘密を掘り下げる者》で攻撃した齋藤は、一縷の望みをかけて《秘密を掘り下げる者》を2枚追加。手札ゼロの状態で岡田のターンを受け入れる。

 岡田の手から、さらなる《時を越えた探索》。ライブラリーを7枚見ると、安心した様子でカードを選択し――《全知》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》へと繋いだ。


レガシーならではの強力なドロー・カードの数々を駆使する岡田。

 古豪たちの話はサイドボーディング中にも広がる。

岡田「これだけ長くやってるけど、草の根合わせて一回も当たったことないよね?」

齋藤「いや、さすがに当たってるでしょ。僕とのマッチなんか覚えてないんだなぁ」

 談笑を交えながら、ゲームを楽しむ両者。ギャラリーの注目が集まろうとも、緊張の色は見られない。

 2ゲーム目は岡田がダブル・マリガンを強いられ、苦しい立ち上がり。齋藤の1ターン目《秘密を掘り下げる者》へ《剣を鍬に》を差し向けるが、齋藤は《目くらまし》で対応する。

 盤面に《若き紅蓮術士》を加えた齋藤の攻勢を受け続けながらも、岡田はドロー・カードで手札を整えると《実物提示教育》を放った。やや驚いた表情を見せた齋藤だが、これに対応して《ヴェンディリオン三人衆》。岡田の手札に控えていた《全知》をライブラリー・ボトムへと送った。その後《実物提示教育》が解決されると、岡田は土地、齋藤は《僧院の速槍》をそれぞれ戦場に繰り出した。

 そして返しのターン、齋藤は2枚目の《僧院の速槍》を追加し、《血染めの月》で「果敢」を誘発させてフル・アタック。ライフを一気に奪い去られた岡田は、残り1ターンの命になる。

 祈るようにドローしたカードは......《渦まく知識》。そこからさらに《思案》を引き込むと、突如として岡田の道が開けた。再びの《実物提示教育》が通り、《全知》が戦場へ。《狡猾な願い》、《定業》、《思案》、《時を越えた探索》――様々なドロー・カードを連打し、勝利に必要なパーツを集めていく。

 が、しかし。ライフと盤面で圧倒されている岡田は、単純に《引き裂かれし永劫、エムラクール》を唱えるだけでは勝てない。必要なパーツは遥かに多く、引けども引けども集まらないのだ。《全知》が戦場に出てしまった時点で敗北を覚悟した齋藤だったが、コンボの失敗を祈りじっと待つ。

 そして、そのときが訪れた。大量の青いドロー・カードを消費し、多くの時間をかけて繋いだコンボは途切れた。ついに有効なカードが手札から尽きた岡田は、肩を落として投了を宣言したのだった。


決定的に思える一撃を受けても、最後まで諦めない齋藤

 第3ゲームは序盤から両者の間に火花が散った。2ターン目、岡田の《思案》に齋藤が《紅蓮破》を合わせると、岡田は《呪文貫き》。迎えたターンに齋藤は《若き紅蓮術士》を繰り出すが、岡田は《剣を鍬に》でそれを除去する。

 《思案》と《定業》でライブラリーを掘り進める岡田。齋藤は《僧院の速槍》で攻勢をかけるものの、岡田の2枚目の《剣を鍬に》がそれを阻む。

 齋藤の《時を越えた探索》に対応して、岡田は《衝動》。互いに手札を整えた両者だが、残り時間が迫っていた。

 岡田は《僧院の導師》をプレイ。手札の枚数を確認した齋藤は《Force of Will》で打ち消しにかかるが、岡田は《狼狽の嵐》を持っていた。《僧院の導師》が戦場に出たところで、規定の試合時間が終了。両者は延長ターンに突入する。

延長ターン1:齋藤はドロー後、そのままターンを渡した。

延長ターン2:岡田は《すべてを護るもの、母聖樹》から《実物提示教育》を放ち、《全知》を戦場へ。《僧院の導師》がトークンを生み出す。

延長ターン3:齋藤は再び、ドローのみでターンを返した。齋藤のターン終了時、岡田は意を決して手札に残った《狡猾な願い》を唱えるが、齋藤はこれを《Force of Will》。それでも、《僧院の導師》が再びトークンを生み出した。

延長ターン4:岡田の最終ターン。彼は引き込んだ《思案》を唱え、《僧院の導師》とトークンの「果敢」を誘発させて総攻撃。しかし齋藤のライフはまだ豊富にあり、倒し切れない。

延長ターン5:齋藤もドロー後手札を吟味したが、引き分けを回避するすべは見出だせなかった。こうして、この試合は両者痛み分けという結果になったのだった。

齋藤 1-1-1 岡田
  • この記事をシェアする

RESULTS

RANKING

NEWEST

サイト内検索