EVENT COVERAGE

グランプリ・神戸12

読み物

Round 9: 大森 健一朗(兵庫) vs. 田村 亮(三重)

By Yusuke Yoshikawa  グランプリ・プロツアーの歴史を重ねてきた、神戸という街。  初日全勝を懸けて戦うのは、直近のグランプリ・神戸2011でトップ4に入賞した戦歴を持つ、地元・兵庫の大森 健一朗だ。構築・限定問わず結果を残し続けるのは、実力のなによりの証だろう。  対するは三重の田村 亮。彼もまた、グランプリで名を見ることが多いプレイヤーだ。  最後の一歩を駆け抜けて、2日目の朝を迎えるのはどちらか。 Round 9
Game 1
 ダイスロールで勝った大森が先手を宣言。大森がすぐに、田村が少考してそれぞれキープして、全勝への挑戦が始まった。  田村の《内陸の隠遁者》からゲームが始まり、そのターンの終了時に大森が《待ち伏せのバイパー》で応える。  これを立たせて待つが、《内陸の災い魔》へと変身させた田村は《炉の小悪魔》でこれを排除、攻撃にかかる。  続く大森の《電位式巨大戦車》には即座に《裏切りの血》を浴びせ、9点の打撃を与えるとともに、大きな《電位式巨大戦車》をタップ状態にさせる。  大森は《ケッシグの出家蜘蛛》。 「死んだら起きますんよね...」  田村はやわらかな口調で確認するようにつぶやく。 「ライフは?」 「ライフ?8ですね」  確認の後、田村は総攻撃。《内陸の災い魔》と《ケッシグの出家蜘蛛》が予定通りにぶつかったところで、田村は《茨群れの頭目》でブロックされなかった《炉の小悪魔》を+3/+3してダメージを優先させる構え。  大森がブロッカーを呼んだところで、《マルコフの大将軍》。  田村は微笑みを絶やすことなく、押し切ってみせた。 大森 0-1 田村
Game 2
大森 健一朗
大森 健一朗
 再びの先手・大森が《錯乱した助手》、田村が《軽蔑された村人》と、マナ加速でゲームのギアを一段上げる立ち上がり。  大森は増えたマナを利して《ケッシグの出家蜘蛛》《ホロウヘンジのゴミあさり》と並べていく。この過程で、《高まる残虐性》が墓地に。  対して田村には特にアクションがなく、変身した《月傷の狼男》がただ待つのみ。  ターンを返す意思表示に、大森は少し首をかしげ、自分のドローを経てもう少し考えてから《ケッシグの出家蜘蛛》《ホロウヘンジのゴミあさり》で攻撃に向かう。  ここに田村の《茨群れの頭目》が迎え撃ち、自身を強化して《ホロウヘンジのゴミあさり》を撃退する。  《エルドワルの切り裂き魔》を加えての攻撃に、《錯乱した助手》でブロックして相討ち。  戦場には《ケッシグの出家蜘蛛》のみと、戦力を失った格好の大森だが、《茨群れの頭目》に《スキフサングの詠唱》で攻撃を減速させる。  そしてキャストされた《ソンバーワルドのドライアド》に、少し困った顔の田村。  いまはまだ、2/2でしかないが...  大森は次いで《狼狩りの矢筒》、これを《ケッシグの出家蜘蛛》に構えさせ、《月傷の狼男》を撃退。  ゲームがどんどん収束点に向けて減速していく。  はたしてその時が訪れた。  大森が意を決して土地7枚を傾ける。その手が、《高まる残虐性》に伸びる。対象はもちろん、《ソンバーワルドのドライアド》。 「10個ですか...」 「10個ですね」  事実を確認するやり取りを経て、田村は気持ちを次のゲームに切り替えた。 大森 1-1 田村
Game 3
田村 亮
田村 亮
「ちょっとすみません、考えさせてください」  うーん、と少し唸ったのち、田村はそう断ってまた考えると、マリガンの決断を下した。それを見て、大森も同様にマリガンを宣言する。  ライブラリトップを見て苦笑いしてみせる田村に、見向きもせずにシャッフルをする大森。互いに6枚をキープして、長い1日の最終ゲームが始まった。  田村の《狼に噛まれた囚人》がゲームの急展開を告げる。大森は《猛火の松明》で応えるが、田村が攻撃してパンプアップ、呪文を唱えなかったことでこれが《爪の群れの殺人者》に変身する。  よもや、と思われたが、田村は3枚目の土地を置けない。  これにより潜在的なサイズは2/2へと縮小してしまい、大森の《甲冑のスカーブ》を前に停止を迫られる。  仕方なしの攻撃を冷静に受け止めると、少し考えて《猛火の松明》でこれを除去。  先ほどのゲームを決めた《ソンバーワルドのドライアド》が、今度は田村の手から現れる。  この回避能力はまたも勝負を決めるのか、しかし大森も《暗茂みの狼》で応える。  続くターンの田村の《若き狼》に、大森は少し考えて《骨を灰に》。戦力差を少しでも埋めるべく、田村は自分に1ダメージ与えるだけの《炉の小悪魔》をブロッカーに出すしかない。  大森は《スキフサングの詠唱》で《ソンバーワルドのドライアド》の攻撃を無効化し、自らはコツコツと攻撃を続行する。  田村は4枚目の土地をまだ引けない。  先ほどまでの笑みも変わらないが、どちらかというと苦笑いか。  そうして笑いながら出したのは、またも仕事をしない2枚目の《炉の小悪魔》。  しかし青緑の大森に対し、チャンプブロックは早まることなく、田村はライフ8の状態でも《甲冑のスカーブ》《暗茂みの狼》を通す。意を決したように、大森も《暗茂みの狼》をパンプアップして、田村はライフ3。  続く一手は《電位式巨大戦車》。  田村は4枚目の土地、《》を引いて出したところで、それまでの笑みを消して解決策を模索する。 「ハンドは?」  田村が不意に質問する。 「2枚」 「(その2枚)ずーっと持ってるなあ...」  《扇動する集団》を出してターン終了とした。  大森がいくばくかの暗算をして総攻撃。  《ソンバーワルドのドライアド》が《暗茂みの狼》、《炉の小悪魔》が《電位式巨大戦車》をチャンプブロックして、田村のライフは2となる。  大森は戦闘後に《ホロウヘンジのゴミあさり》を追加し、「陰鬱」の恩恵を得てライフを17と引き上げ、これで大差に。  ようやく引いた2枚目の《》、しかし時既に遅し。田村は諦めたようにターンを返す。  大森が、《扇動する集団》から変身した《野生の血の群れ》を《閉所恐怖症》して、とどめとなる総攻撃をする。  ところが、そこに田村の《しがみつく霧》が提示される。
 「窮地」能力が説明され、そのターンの戦闘ダメージが軽減されるとともに、大森の攻撃クリーチャーがタップ状態に封じられる。  これでは1ターンの猶予を得たに過ぎない。  かに見えた。  そこに現れたるは《地獄乗り》、《炉の小悪魔》を引き連れて一気に突撃。  その能力が誘発し、さらに《野生の血の群れ》の効果を得て、大森のライフを一瞬にして5まで削り落とす。 「一応、ライフが5になるように考えていたんですよ」  まさに自らの窮地を演出してみせた田村。  あれほど戦場を支配していた大森の軍隊が起き上がらない、致命的な1ターン。  大森は、何度も《しがみつく霧》を確認し、勝ち筋を探し、最後にはなんとか自分に認めさせるように戦場を見回したが、そこに求める答えは落ちていないのだった。 大森 1-2 田村  まだ悔しさを隠せない大森が去ってから、9連勝を祝福した知人の言葉に、田村が答える。 「あれ(=《しがみつく霧》)で4ゲーム取ってるから」  その笑顔の裏には、大いなる狙いが秘められていた。  このプレイヤー、明日も油断ならない。
  • この記事をシェアする

RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

RANKING

NEWEST

サイト内検索