EVENT COVERAGE

エターナル・ウィークエンド・アジア2019

観戦記事

レガシー第5回戦:柳澤 由太(大阪) vs. キリト ケイスケ(山梨)~《レンと六番》+《不毛の大地》=?~

森安 元希

 『モダンホライゾン』で登場した《レンと六番》。

 スタンダードを経由せず「エターナル・フォーマット」で直接新しいカードが使えるようになるという触れ込みの新セットは、まず「ホガーク(《甦る死滅都市、ホガーク》)」という怪物デッキをモダンに生み出したが、レガシーにも多大な影響を与えていた。

 そのうちの1枚が《レンと六番》だ。

 モダンでも元々成立する「フェッチランド」との相性はレガシーの多色デッキにおいても強烈なシナジーを誇る。加えてレガシーで使える《不毛の大地》の「使い回し」はそれだけで勝てる相手もいるほどだ。

 結果として「《レンと六番》を採用した3~4色マナベース+《不毛の大地》」というデッキタイプが複数発生することとなり、第5回戦のフィーチャー・テーブルでもそのミラーマッチとなった。

 キリト ケイスケの「4色デルバー」対、柳澤 由太の「4色レオヴォルド」だ。

 柳澤はグランプリ・静岡2018(レガシー)にてトップ8入賞経験を持っている。当時は「白青石鍛冶」を使っていたが、《レンと六番》が加入したこのレガシー大改革期にあっては、「4色レオヴォルド」としてその波に乗ることにしたようだ。

 デッキ名である《トレストの使者、レオヴォルド》自身はもちろん、《悪意の大梟》や《コラガンの命令》など、盤面への影響とリソースの保持を両立させるカードの採用が多いのが特徴だ。

 キリトの「4色デルバー」も「《レンと六番》+《不毛の大地》パッケージ」を採用しているが、デッキコンセプトの方向性は《秘密を掘り下げる者》や《稲妻》などで積極的にライフレースを仕掛けていくのが特徴だ。

 サイズ面では「4色デルバー」の方がパワー/タフネスに優れるクリーチャーが多いが、接死能力などでサイズ面を無視できるクリーチャーは「4色レオヴォルド」が得意とする。

 どちらがより自分の得意とするフィールドへ持ち込めるかが「キー」となりそうだ。

 
柳澤 由太 vs. キリト ケイスケ
ゲーム1

 後手キリトの《不毛の大地》が柳澤の《Tropical Island》を割るが、先手の柳沢は2ターン後にはデュアルランドを2枚セットして《レンと六番》をプレイした。

 早速、墓地の土地・カードを回収し《不毛の大地》で破壊された分の損失を「なし」にする。

 《不毛の大地》との強烈なシナジーを誇る《レンと六番》は、相手の《不毛の大地》に耐性を強く持てる点も隆盛を極める理由の1つだ。

 
柳澤 由太

 キリトは、この《レンと六番》を放置できない。デュアルランドしかマナソースを持たないデッキにおいての負けパターンである「《不毛の大地》ハメ」を食らってしまうことになる。自らのメイン・フェイズ中に《突然の衰微》で《レンと六番》を破壊し、被害を最小限に抑えた。

 柳澤はセットランドの前に《悪意の大梟》をプレイ。これはキリトは《Underground Sea》を戻して《目くらまし》で打ち消すが、続く《不毛の大地》セットからの能力起動で、残った《Tropical Island》が破壊される。

 結果として前のターンの《レンと六番》の一度だけの起動が、キリトのマナ・ベースを攻め続けることになった。

 キリトはそれでも《秘密を掘り下げる者》をプレイしてライフレースを仕掛けようとするが、《コラガンの命令》でこの唯一の攻め手が破壊されて、さらに墓地から《悪意の大梟》が回収されたあと2体目の《レンと六番》までも一方的に着地されてしまう。

 《悪意の大梟》を前に《タルモゴイフ》のサイズでコンバットを有利に運ぶという勝ち筋を取ることも難しく、キリトはゲームを畳むことを選んだ。

柳澤 1-0 キリト

 
ゲーム2

 「《レンと六番》+《不毛の大地》」の脅威がいきなり明らかとなったゲーム1は、これを一方的に決めることができた先手の柳澤に軍配が上がった。しかし先手・後手が入れ替わるゲーム2ではゲーム展開は大きく変わることとなる。

 キリトは1ターン目《秘密を掘り下げる者》、2ターン目に《思考囲い》で柳澤の《レンと六番》を落としつつ2体目の《秘密を掘り下げる者》をプレイした。

 いきなり後手に回った柳澤だったが、《疫病を仕組むもの》は手札にかかえている。この2体の《秘密を掘り下げる者》が次のターン変身せず、かつ「3枚目の土地を間に合うように引く」ことができれば、まだわからない。しかし貴重なこのターンの《思案》プレイで見えたライブラリーの上3枚は振るわなかったようで、シャッフルを選択する。

 キリトの目線でも柳澤の「土地2枚と手札の《疫病を仕組むもの》と、変身していない2体の《秘密を掘り下げる者》」という状況には、もちろん良い思いはしていない。

 アップキープにライブラリーの一番上を確認するが……「ふふはっ」と笑った。《秘密を掘り下げる者》、変身せず。しかし《定業》でカードを上に残して次のターンの変身を予約しつつ、《タルモゴイフ》を追加して柳澤の《突然の衰微》を使わせていく。

キリト「土地引かれてたら、やばかったですね」

 運命の3ターン目、柳澤は3枚目の土地を引くことができなかった。《渦まく知識》から《Underground Sea》を置いて、ターンエンドを宣言する。

 キリトはアップキープ、すでに「知っている」《赤霊破》を公開した。

 2体の《秘密を掘り下げる者》が《昆虫の逸脱者》に変身する。さらに《タルモゴイフ》、《グルマグのアンコウ》を続けざまに追加するキリト。流石にこのダブル・アクションには「えー! つよー!」ともらす柳澤。

 《昆虫の逸脱者》1体は《リリアナの勝利》で対処こそするものの、極端な劣勢から脱出できていない。ここで劣勢を跳ね返すために、カードを一気に使うこととなった。

 柳澤は《疫病を仕組むもの》(接死)と《タルモゴイフ》を戦闘で相打ちにし、《紅蓮破》で《昆虫の逸脱者》を破壊、さらに2枚目の《リリアナの勝利》で《グルマグのアンコウ》を生け贄に捧げさせて強引に盤面を更地に戻す。

 ここからいわゆる「トップデッキ勝負」までの均衡状態になるかと思われたが、既にキリトは追加の《グルマグのアンコウ》を引き込んでおり、優位を決して手放さなかった。柳澤は《グルマグのアンコウ》の再登場に「待って待って待って」と冗談半分にみずからの劣勢を表現したが、笑顔と裏腹になかなかこの《グルマグのアンコウ》を止め切れない。

 さらにキリトは《冬の宝珠》と《レンと六番》を続け、可能な限り隙を見せないように「優勢の定着」を意識しているようなゲーム展開をとっていく。

 
キリト ケイスケ

 《コラガンの命令》から《疫病を仕組むもの》を回収し戦闘力の上ではほぼ互角に持ち込んだ柳澤だが、《レンと六番》のアドバンテージに対しては解答が用意できていない。

 やがて《タルモゴイフ》を引き込んだキリトが、柳澤がブロッカーとして立てている《疫病を仕組むもの》を《稲妻》で落とし、ライフへの侵攻を再開すると速やかにゲームは終焉を迎えた。

柳澤 1-1 キリト

 
ゲーム3

 先手2ターン目、柳澤の《レンと六番》に対し、《青霊破》を当てて打ち消すキリト。そのままキリトは後手2ターン目に《レンと六番》をプレイして、着地させる。

 序盤の主導権は完全にキリトが握る形となったが、次手の《秘密を掘り下げる者》が《赤霊破》で破壊されると、ここから攻め手に欠いて動きらしい動きがとれなくなってしまった。

 キリトの動きが鈍ったところで、柳澤は形成逆転の手を打ち出していく。《グルマグのアンコウ》、そして《トレストの使者、レオヴォルド》と続ける。

 キリトも《レンと六番》によるアドバンテージを守るために《グルマグのアンコウ》を立てるが、これには柳澤が《リリアナの勝利》で応えて、《レンと六番》も更地の戦闘で破壊する。

 中盤は柳澤のゲームメイクが決まった形となった。だが、ゲームはまだ動いている。

 キリトは再び《グルマグのアンコウ》《レンと六番》とプレイをつづけ、柳澤の次手である《悪意の大梟》を落としつつ盤面を再び五分に持ち込む。

 そしてキリトは《思案》から《真の名の宿敵》にたどりつき、プレイした。盤面に何もない柳澤はこれが通ってしまうと《リリアナの勝利》以外ではそうそう対処することが難しいが……5マナから《意志の力》をプレイして、これを打ち消した。

 結果的にはこの打ち消しが決め手となり、続く柳澤の《レンと六番》と《瞬唱の魔道士》のアドバンテージ・カードを前に、キリトはゲームを畳まざるを得なくなった。

柳澤 2-1 キリト

 
試合後

キリト「ウィル(《意志の力》)って、残しておくんですね」

柳澤「2枚だけ。前は全部抜いてたんですけどテンポで負けること、多くて」

 ゲーム3は柳澤が先手をとったゲームだ。レガシーのサイドボーディングで比較的よく見かける説明の1つに「先手のときは《意志の力》を抜く、後手のときは《目くらまし》を抜く」というものがあることを踏まえての感想戦だ。

 もちろんそうした説明が間違っているというものではなく、先手でカードの消費が激しい状況では《意志の力》の代替コストのための青いカードの確保が難しく、後手ではセットした島・カードを手札に戻すというテンポ面での損失がゲームに響きすぎるという理屈に基づくものだ。

 柳澤は当然それらを理解している。「4色レオヴォルド」を使う上では「対・4色デルバー戦」においては序盤の動きが相手の方が小回りが利きやすく、その差が響いてゲームを落としやすいことが多く、これまでの定石に反する形のサイドボーディングを行うという自身の結論に至っていた。

 実際、ゲーム3開始の前のサイドボーディング中においても最後までさわっていたのはこの2枚の《意志の力》であり、ゲーム開始初手から持ち続けていた《意志の力》を代替コストでのプレイを我慢し続けて《真の名の宿敵》というキラーカードにピシャリと当てることができたのは、明確に柳澤の手腕によるものだ。

 《レンと六番》という新たな相棒を率い、実力者・柳澤が全勝街道の真ん中を突き進む。

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

サイト内検索