EVENT COVERAGE

2019ミシックチャンピオンシップⅥ(リッチモンド)

インタビュー

新たなる殿堂プレイヤー リード・デューク

小山 和志
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「待たせちゃってごめんなさい」

 彼を待っていたのはほんの少し、対戦結果記入用紙を提出するわずかな時間だけだというのに、新たな殿堂プレイヤーとなったリード・デュークはインタビューを申し込んだ我々の前に急ぎ足で駆けつけてくれた。

 少し前まで顎にたくわえていた髭を綺麗サッパリ剃り落としたからだろうか、29歳という年齢よりも若い印象を受ける(付け加えておくと、180cmを遥かに超える高身長でもある)。

 94%

 圧倒的な得票率でマジック・プロツアー殿堂入りを果たしたデューク。2019年唯一にして現行制度では最後の殿堂顕彰者ということになる。

(参考:新時代へ――マジックとeスポーツ

 セレモニーを終え、少しプレッシャーが解けたこともあるのだろうか。まるで少年のような屈託の無い笑顔で、デュークがインタビューに応じてくれた。

 

リード・デューク インタビュー

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――殿堂入り、改めておめでとうございます。今の気持ちを聞かせてもらっていいですか?

デューク「ありがとうございます。とても名誉なことだと感じています。そして、殿堂プレイヤーになったということは、若い世代に対して良き先達、模範にならなければいけない、ということでもあります。それはただマジックのトーナメントで勝利をおさめるよりも重要なことです」

――マジックを始めた時のことを聞かせてください。

デューク「私がマジックを始めたのは1995年、5歳の時のことでした。兄の影響でした」

――その時から、なぜこんなにも長くマジックをプレイしてきたのでしょうか

デューク「私が小さい頃は、マジックを好きな理由は大きなドラゴンなどファンタジーの世界観やアートに惹かれていたからです。それから大きくなるにつれて、競技プレイや知的スポーツとしてのマジックのトーナメントに参加し、自らを磨き、ベストを尽くすということを学ぶのがより大事になっていきました」

――これまで、長きにわたりトーナメントに参加してきて、最も思い出に残っていることは何でしょう?

デューク「最も大きな思い出は、プロツアー・チームシリーズをチームメイトとともに制覇したことです。自分を助けてくれて、ともに努力した友人たちとチームとして成功を収めるのは、単に自分が勝つよりも価値があり、楽しいことです」

――あなたのコミュニティについて聞きたいのですが、今でもなお地元のお店でプレイすることはあるのでしょうか?

デューク「ええ、もう何年も地元のお店でマジックをプレイしていますよ! 最近では週末に遠征することが多いため、プレリリースに参加することが主にはなっていますが、今でもお店でマジックをするのは大好きです」

――あなたはもはやとても有名なプレイヤーですし、地元のお店では人気者ですよね?

デューク「とても嬉しいことです。私のプレイを見たり、記事を読んでくれている人に会うと、コンテンツを作ったり他のプレイヤーにマジックを教えたりすることをこれからも続けていこうと強く思わせてくれます」

――マジックを始める、という点ではMTGアリーナの登場で比較的容易になりました。一方でテーブルトップ(紙)のマジックも引き続き多くのファンがいます。このふたつの「マジック」の関係性についてはどう思っていますか?

デューク「私は紙でマジックをプレイすることや、遠征しては競技トーナメントでプレイし、そこで人々と顔を合わせて出会う経験が大好きです。MTGアリーナはそういった理由とはまったく異なる点で素晴らしいと思います。手軽にたくさんマジックを楽しめますし、私にとってはアリーナを通じて多くのユーザーにプレイを見てもらえます。どちらか、ではなくふたつの『マジック』がもたらしてくれる異なる素晴らしい体験にとても興奮しています」

――テーブルトップ→MTGアリーナの流れはもちろん、MTGアリーナから始めたプレイヤーがテーブルトップのマジックを始めようとする話も多々聞きます。そういったプレイヤーにアドバイスをお願いできますか?

デューク「そういった質問は所属チームでコンテンツを作っている関係上、よく寄せられますね。『MTGアリーナからマジックを始めたんだけど、紙でプレイしたい』という内容ですよね。最も重要なのは、顔を合わせてプレイすることを怖がらないでください、ということです。ゲームの手軽さで言えば、MTGアリーナはとても簡単に楽しいゲームをプレイすることができます。ですが、紙のマジックはそれぞれのターンの進行など気をつけてプレイしなければいけません。ですから、より注意深くなる必要はあります」

――殿堂プレイヤーとなったことで、今後あなたを取り巻く環境は変わると思います。これから、どのようにマジックと付き合っていかれるのでしょうか?

デューク「今、幸運なことに私はマジック・プロリーグに所属していて、世界選手権にチャレンジできる状況です。世界のベストプレイヤーたちと対戦することが大好きですし、今は自分を奮い立たせて、挑戦し続けて行きたいと思います。もし自分がMPLプレイヤーでなくなったら……そうですね、私はマジックを通じて素晴らしい経験を得てきました。なので、新しいプレイヤーたちが同じような経験を味わえるよう、彼らの先生のような存在になれればと思います」

――ありがとうございます。最後に、日本のファンにメッセージをお願いできますか。

デューク「ありがたいことですね……いつかまた日本に行って、できるだけ多くの日本のプレイヤーの方々とお会いできれば嬉しいです。日本のプレイヤーにはいつも刺激をもらっています。本当にありがとうございます!」


 インタビューを終えるとデュークは爽やかに続く対戦へと向かっていったが、惜しくもこのミシックチャンピオンシップでは初日敗退となってしまった。

 しかし、これは単なる1つのイベントの結果であって、彼はこれからも戦い続ける。

「競技トーナメントで戦い、自らを高めることが好きなんです」

 デュークはくり返しこう語ってくれた。

 その言葉通り、彼はミシックチャンピオンシップ敗退直後に併催されているグランプリにエントリーし、トーナメントでのプレイを続けている。

 ミシックチャンピオンシップを終え、帰路に着いた私たちが見たのはあまりにも驚くべき、しかしいつもの彼だった。

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 MPLプレイヤーかつ殿堂顕彰者である彼にとって、通常のプレイヤーに比べて比較的グランプリで得るものは少ない。さらに今は、長い調整を経たミシックチャンピオンシップが終わったばかりで疲労困憊のはずだ。それでも、彼は最高峰の舞台と変わらぬ熱量で情熱を注ぎ、トップ8まで勝ち上がっていたのだ。

 そこにいたのはMPLプレイヤーや殿堂顕彰者といった肩書きを抜きにした、マジックをただ愛している1人の少年だった。

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RESULTS

対戦結果 順位
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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