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2019ミシックチャンピオンシップⅥ(リッチモンド)

戦略記事

2019ミシックチャンピオンシップⅥ(リッチモンド) スタンダード部門アーキタイプ勝率一覧と注目のデッキ

Frank Karsten
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2019年11月10日


 

 テーブルトップのミシックチャンピオンシップでは、リミテッド(ブースタードラフト)と構築フォーマットの両方で活躍した者が栄光を掴む。それでも単純に、スタンダード部門で最も活躍したデッキへの興味は尽きないため、分析してみた。

 以下の表は、10試合以上行われた全アーキタイプについての、不戦勝と引き分けを除いた予選ラウンドにおける勝率の一覧である(同系戦は含まれる)。1列目は今大会の環境全体に対する総合勝率、2列目は「食物」に分類されたデッキに対する勝率、3列目はその他のデッキに対する勝率を示している。

アーキタイプ総合勝率対「食物」勝率対「食物以外」勝率
スゥルタイ・食物51.1% (691-661)49.8% (417-421)53.3% (274-240)
シミック・食物53.7% (372-321)50.8% (231-224)59.2% (141-97)
バント・食物49.4% (127-130)48.5% (79-84)51.1% (48-46)
ゴルガリ・出来事48.7% (114-120)48.3% (72-77)49.4% (42-43)
ジェスカイ・ファイアーズ47.0% (79-89)48.1% (50-54)45.3% (29-35)
ティムール・荒野の再生45.6% (72-86)43.0% (43-57)50.0% (29-29)
スゥルタイ・サクリファイス68.2% (75-35)59.4% (41-28)82.9% (34-7)
アゾリウス・コントロール45.1% (32-39)43.2% (19-25)48.1% (13-14)
ラクドス・サクリファイス49.4% (40-41)48.2% (27-29)52.0% (13-12)
グルール・アグロ50.8% (32-31)47.7% (21-23)57.9% (11-8)
セレズニア・出来事50.8% (32-31)52.5% (21-19)47.8% (11-12)
エスパー・屋敷の踊り41.4% (12-17)27.8% (5-13)63.6% (7-4)
4色サクリファイス40.0% (18-27)30.0% (9-21)60.0% (9-6)
ジャンド・サクリファイス51.4% (18-17)43.8% (7-9)57.9% (11-8)
ラクドス・騎士56.0% (28-22)56.3% (18-14)55.6% (10-8)
4色食物52.2% (12-11)56.3% (9-7)42.9% (3-4)
グルール・出来事66.7% (20-10)65.2% (15-8)71.4% (5-2)
イゼット・フラッシュ38.5% (5-8)40.0% (4-6)33.3% (1-2)
シミック・フラッシュ61.5% (8-5)50.0% (3-3)71.4% (5-2)
スゥルタイ・エレメンタル34.8% (8-15)30.0% (3-7)38.5% (5-8)
ティムール・プレインズウォーカーズ70.0% (14-6)75.0% (12-4)50.0% (2-2)
エスパー・コントロール37.5% (6-10)55.6% (5-4)14.3% (1-6)

 以上の結果から、今大会を迎えるにあたり私が提示していた2つの疑問に対する答えが得られた。

最強の《王冠泥棒、オーコ》デッキは?

 勝率68.2%という他を圧倒するパフォーマンスを見せたのは、「スゥルタイ・サクリファイス」だった。とりわけ、「食物」デッキに対しても好成績を上げているのが目を引く。「スゥルタイ・サクリファイス」は使用者をトップ8に送り出すことはできなかったものの、この数字を見るに、《大釜の使い魔》と《魔女のかまど》、《パンくずの道標》によるエンジンは今大会における台風の目を生み出したと言って差し支えないだろう。

「食物」デッキを打ち倒すデッキは現れるのか?

 《王冠泥棒、オーコ》を採用しないデッキの中にも、ごくわずかながら「食物」デッキに対して好成績を挙げたものがあった。《王冠泥棒、オーコ》を打ち倒す期待を込めて作られたデッキのほとんどはそれを実現できなかったが、いくつかの例外はあり、中でも「グルール・出来事」は特筆すべきだろう。このデッキは今大会において、特に優れた対「食物」勝率を記録したのだ。

 「スゥルタイ・サクリファイス」と「グルール・出来事」については、すでに2日目メタゲームブレイクダウンで取り挙げた。デッキリストを含めて詳しく紹介しているので、ぜひそちらをご覧いただきたい。

王冠泥棒、オーコ》も《エッジウォールの亭主》も使用しない刺激的なデッキたち

 2019ミシックチャンピオンシップⅥ(リッチモンド)を支配したのは、《王冠泥棒、オーコ》デッキだった。それらは初日のメタゲームのうち69%もの勢力を築き、2日目には71%に勢力を増し、トップ8の75%を占めるに至った。そしてトップ8の残りの席には、《エッジウォールの亭主》が座ることになった。だがスタンダード環境には、他にもさまざまなデッキがある。例えばコントロール使いたちは、「ジェスカイ・ファイアーズ」や「ティムール・荒野の再生」、「アゾリウス・コントロール」、「エスパー・屋敷の踊り」を手に取る選択肢があるのだ。

 スタンダードの深さをさらに示すために、今大会における注目のデッキをいくつかご紹介しよう。どれも好成績を残し、刺激的なものばかりだ。

Guillem Salvador Arnal - 「ジャンド・サクリファイス」
2019ミシックチャンピオンシップⅥ(リッチモンド) / スタンダード (2019年11月8~10日)[MO] [ARENA]
3 《
1 《
3 《
4 《血の墓所
4 《草むした墓
4 《踏み鳴らされる地
1 《ロークスワイン城
3 《寓話の小道

-土地(23)-

4 《大釜の使い魔
4 《金のガチョウ
3 《楽園のドルイド
4 《波乱の悪魔
4 《真夜中の死神
3 《フェイに呪われた王、コルヴォルド

-クリーチャー(22)-
4 《魔女のかまど
4 《害悪な掌握
2 《アングラスの暴力
2 《パンくずの道標
3 《ゴルガリの女王、ヴラスカ

-呪文(15)-
2 《恋煩いの野獣
1 《残忍な騎士
3 《虐殺少女
3 《強迫
2 《夏の帳
2 《暗殺者の戦利品
1 《炎の一掃
1 《戦慄衆の将軍、リリアナ

-サイドボード(15)-

 ギエム・サルヴァドール・アルナル/Guillem Salvador Arnalは、《大釜の使い魔》と《魔女のかまど》を駆使してスタンダード部門8勝2敗の成績を収めた。《金のガチョウ》は採用されているものの、《王冠泥棒、オーコ》の姿はなく、代わりに「2ターン目《波乱の悪魔》」を目指している。

 ジャンドにしている主な理由は、《フェイに呪われた王、コルヴォルド》の採用だ。このカードは『エルドレインの王権』ブースタードラフトには収録されていないが、「Brawl decks」に収録されているため、スタンダードで使用できる。「ジャンド・サクリファイス」で運用するとあっという間に手がつけられない脅威となり、その相性の良さから採用されている。

 例えば、5ターン目に《フェイに呪われた王、コルヴォルド》をプレイし、戦場に出たときの能力で土地を生け贄に捧げるとしよう。続けて《魔女のかまど》で《大釜の使い魔》を生け贄に捧げると、《大釜の使い魔》を戦場に戻すのに使える食物が生成される。この一連の動きだけであなたはカードを3枚引き、7/7の飛行持ちを手に入れ、次のターンにはさらなるアドバンテージを生み出すぞとプレッシャーをかけられる。驚くべきシナジー満載のこのデッキは、プレイしていてとても楽しいのだ。

Jiří Vaněk - 「ラクドス・騎士」
2019ミシックチャンピオンシップⅥ(リッチモンド) / スタンダード (2019年11月8~10日)[MO] [ARENA]
8 《
7 《
4 《血の墓所
4 《試合場

-土地(23)-

4 《熱烈な勇者
4 《漆黒軍の騎士
3 《穢れ沼の騎士
4 《黒槍の模範
4 《リムロックの騎士
1 《真夜中の騎士団
4 《砕骨の巨人
4 《誓いを立てた騎士
2 《真夜中の死神
1 《残忍な騎士

-クリーチャー(31)-
2 《害悪な掌握
4 《エンバレスの宝剣

-呪文(6)-
2 《エンバレスの盾割り
3 《強迫
2 《レッドキャップの乱闘
2 《害悪な掌握
2 《ドリルビット
4 《実験の狂乱

-サイドボード(15)-

 今大会で「ラクドス・騎士」を選択した5人のプレイヤーは、スタンダード部門総合成績28勝22敗を記録した。特に好成績を収めたのが、イジー・ヴァニェク/Jiří Vaněkの7勝3敗だ。『エルドレイン王権』導入後のスタンダードが始まった当時は「マルドゥ・騎士」の方が人気を集めていたが、現環境にはびこる《害悪な掌握》を避けるためと安定したマナ基盤のために、「ラクドス」を選ぶプレイヤーが多かった。

 2色のマナ基盤になったおかげで、現在良い立ち位置にいる《誓いを立てた騎士》を採用できるようになっている。《誓いを立てた騎士》は大鹿に変えられても+1/+1カウンターが残るため優位を取られず、またそのパワー/タフネスとダメージを軽減する能力のおかげで、《意地悪な狼》や《探索する獣》に対して有利に戦えるのだ。3マナ域のカードで4マナ域のカードを制することができれば、ゲームを有利に進められるだろう。

 さらに、「ラクドス・騎士」は1マナ域や2マナ域で速いクロックを形成し、《エンバレスの宝剣》で決着させる真っ直ぐなアグロ・デッキである。そしてヴァニェクのデッキのサイドボードは特にユニークで、サイド後このデッキは、対戦相手への干渉手段と《実験の狂乱》を前面に押し出したコントロール・デッキに変わるのだ。

 純粋なアグロ戦略が通用しないと思われる場合は、このサイド・プランが大いに役立つだろう。例えば私なら、後手のときはこうした変化を検討したいところだ。

Jheng Yu Jhang - 「グリクシス・動員」
2019ミシックチャンピオンシップⅥ(リッチモンド) / スタンダード (2019年11月8~10日)[MO] [ARENA]
1 《
3 《
2 《
4 《湿った墓
4 《蒸気孔
2 《天啓の神殿
4 《血の墓所
2 《血溜まりの洞窟
1 《ヴァントレス城
3 《寓話の小道

-土地(26)-

3 《煌めく監視者
1 《残忍な騎士

-クリーチャー(4)-
4 《戦慄衆の侵略
4 《害悪な掌握
2 《リリアナの勝利
1 《否認
2 《魔性
2 《神秘の論争
4 《蔓延する蛮行
2 《薬術師の眼識
3 《永遠神の投入
2 《発見 // 発散
2 《イゼット副長、ラル
2 《戦慄衆の将軍、リリアナ

-呪文(30)-
3 《正気泥棒
3 《強迫
3 《否認
2 《魔術遠眼鏡
4 《肉儀場の叫び

-サイドボード(15)-

 「ジャンド・サクリファイス」や「ラクドス・騎士」のようにスタンダード部門で好成績を残したデッキもあれば、うまくいかなかったデッキもある。例えばジェン・ユー=ジャン/Jheng Yu Jhangは2勝5敗で今大会を終えた。だがそれでも、彼の「グリクシス・動員」デッキはユニークかつ刺激的で、何か一風変わった予想外のデッキを求める方のために取り挙げる価値があるだろう。

 このデッキの核となる部分は、《戦慄衆の侵略》と《煌めく監視者》、《蔓延する蛮行》の「動員」パッケージだ。今大会でこれらのカードを採用したのはジェン・ユー=ジャンただ1人だが、それらは互いに優れたシナジーを生み出す。「動員」カードが増えれば増えるほど、《戦慄衆の侵略》による絆魂付与を実現しやすくなり、また《蔓延する蛮行》で盤面を一掃しやすくなる。すべてのカードが、互いを強化するように構成されているのだ。これにはニコル・ボーラスも大満足だろう(たとえ彼自身が採用されていないことに不満を感じても)。

Jake Durshimer - 「水没した秘密・ケシス」
2019ミシックチャンピオンシップⅥ(リッチモンド) / スタンダード (2019年11月8~10日)[MO] [ARENA]
1 《平地
1 《
1 《
1 《
3 《神聖なる泉
1 《神無き祭殿
2 《静寂の神殿
2 《寺院の庭
4 《繁殖池
1 《神秘の神殿
3 《湿った墓
1 《草むした墓
1 《疾病の神殿
2 《睡蓮の原野
2 《寓話の小道

-土地(26)-

4 《迷い子、フブルスプ
3 《万面相、ラザーヴ
4 《隠された手、ケシス
2 《不屈の巡礼者、ゴロス

-クリーチャー(13)-
2 《夏の帳
4 《水没した秘密
4 《ビヒモスを招く者、キオーラ
4 《時を解す者、テフェリー
3 《王冠泥棒、オーコ
3 《伝承の収集者、タミヨウ
1 《神秘を操る者、ジェイス

-呪文(21)-
2 《虐殺少女
2 《狼の友、トルシミール
2 《夏の帳
3 《霊気の疾風
4 《ケイヤの誓い
2 《覆いを割く者、ナーセット

-サイドボード(15)-

 ジェイク・ダーシマー/Jake Durshimerはスタンダード部門でプレイした3試合とも勝利を挙げることはできなかったが、もし最も刺激的なデッキに賞が与えられるなら、それは彼のものだろう。

 彼のデッキはローテーション前の「ケシス・コンボ」を彷彿とさせる――伝説ルールを活かして《モックス・アンバー》を戦場と墓地で往復させ、《精励する発掘者》の誘発型能力が《隠された手、ケシス》の起動型能力の燃料を生み出して、ループ・コンボが完成するあのデッキだ。

 《モックス・アンバー》と《精励する発掘者》はローテーションでスタンダードを去ったものの、ダーシマーはその代わりとして独創的なアイデアを見出した。彼のデッキで悪名高き《モックス・アンバー》の役割を果たすのは、《ビヒモスを招く者、キオーラ》だ。そして《精励する発掘者》の役割は、《水没した秘密》が担っている。《睡蓮の原野》をコントロールしていると(《不屈の巡礼者、ゴロス》で探してくることもできる)、《ビヒモスを招く者、キオーラ》のパーマネントをアンタップする能力のおかげで、伝説のカードが墓地に落ち続ける限り《ビヒモスを招く者、キオーラ》を墓地から戦場に出し続けられる。そしてすべてが機能すれば自身のライブラリーをすべて墓地に落とすことができ、最後は《神秘を操る者、ジェイス》でゲームに勝利する。

 ローテーション前と比べると力が落ちたことは否めないが、その芸術性は衰えていない。このデッキをミシックチャンピオンシップの大舞台に持ち込んだダーシマーの勇気に拍手を送りたい。

 

(Tr. Tetsuya Yabuki)

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RESULTS

対戦結果 順位
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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