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2019ミシックチャンピオンシップⅣ(バルセロナ)
2019ミシックチャンピオンシップⅣ 2日目の注目の出来事
2019年7月27日
バルセロナに集った470名のプレイヤーたちには、全員に共通する目標がある――「2019ミシックチャンピオンシップⅣ」のトップ8に入賞することだ。そして2日間にわたって行われた『モダンホライゾン』ドラフト6回戦とモダン10回戦の戦いを経て、8人がその目標を達成した。ミシックチャンピオンシップ王者のタイトルを懸けた日曜日の決戦に臨む8人の紹介と、2日目に起きた注目の出来事をお届けしよう。
2019ミシックチャンピオンシップⅣトップ8入賞者紹介
マニュエル・レンツ/Manuel Lenz
オーストリア・グラーツ出身のマニュエル・レンツは、努力が報われる瞬間を愛し常にハードワークに挑む熱心なプレイヤーだ。マジックを始めたはの『基本セット第7版』の頃、いとこに紹介されてこのゲームの世界に入った。最近のお気に入りのフォーマットを尋ねると、リミテッド、特にドラフトだと即答した。いつも異なるデッキで楽しめるからだという。
そんなお気に入りのドラフト・フォーマットが、彼の成功を支えているようだ。『カラデシュ』ドラフトでは連戦連勝を重ね、『ドミナリア』ドラフトは自身初のミシックチャンピオンシップ・トップ8入賞を果たす後押しとなり、そしてもちろん、今回の『モダンホライゾン』ドラフトもレンツをトップ8入賞に導いた。この週末に向けて、彼は4週間にわたって『モダンホライゾン』ドラフトを練習し、その後構築の練習に切り替えたという。
モダンでは友人たちとともに「ウルザ・ソプターソード」をテストし、大会本番で当たる可能性の高い「イゼット・フェニックス」や「エルドラージ・トロン」、「ジャンド」といったデッキとの対戦を入念に行った。特に感謝したい人物を尋ねると、レンツは最初に「ウルザ・ソプターソード」を勧めてくれたイマニュエル・ゲルシェンソン/Immanuel Gerschensonの名を挙げた。このデッキを使っていて特に気持ちの良い瞬間は、勝利が確定したときだとレンツは言う――戦場に《時を解す者、テフェリー》がいて、手札にはコンボが揃っているときだ。
「厳しい戦いになると思う」と、レンツはこれからの戦いを評した。「ここにいる人たちはみな、努力を重ねてきた人だ。それに、トップ8に入賞するには運も必要だから」
アルヴァロ・フェルナンデス・トレス/Alvaro Fernandez Torres
アルヴァロ・フェルナンデス・トレスのマジック・キャリアの始まりは素朴なものだった。近くにゲーム店がない故郷の小さな町でマジックを学んだフェルナンデス・トレスは、18歳のときにゲーム店がある街へ移り住むことになり、そこでマジックへの情熱を探求し始めたのだ。初めてミシックチャンピオンシップへ参加したのは、2017年のプロツアー『イクサラン』。成功を収めることはできなかったものの、彼はそこで大きな目標を見つけた――「またこの舞台に立たなくては」と。
故郷の友人たちと挑んだチーム戦のプロツアー地域予選で「マジック25周年記念プロツアー」への参加権利を得たフェルナンデス・トレスは、プロツアー本戦でも14位の好成績を収めた――その結果、2019ミシックチャンピオンシップⅣまでの参加権利を手に入れた。そして今、「ヴァロ」ことアルヴァロ・フェルナンデス・トレスは、友人たちの声援を受けて優勝トロフィーを懸けた決勝ラウンドに臨む。
ショーン・ギフォード/Sean Gifford
このトップ8入賞時点で、カナダのショーン・ギフォードはミシックチャンピオンシップの通算成績を22勝22敗2分とした――まさに平均的な成績である。しかし今大会に参加する時点では、10勝20敗であった。つまりこの週末、彼は12勝2敗2分という(本人にとっても初めての)驚異的な成績を収めているのだ。これだけでも驚くべき出来事だが、実はさらなるサプライズがある。なんと彼は、この週末を通して一度も「ホガーク」と対戦していないのだ。決勝ラウンド最初の相手も「赤単フェニックス」であり、少なくとももう1回戦はそれが続くことになる。
ギフォードはtwitch.tv/BlinkyMTGにて配信を行っており、カナダのマジック・コミュニティで積極的に活動している。大西洋を渡った先にも多くのファンが彼の活躍を見守っているのだ。
トラルフ・セヴラン/Thoralf Severin
墓地利用を中心に据えたデッキと新戦力のカードに満ちたこの週末において、しかしセヴランはシンプルに自分の好みを――「緑単トロン」という愛用のデッキを信じ続けた。彼はミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019でもこのデッキを使用しており、そこから1枚だけ《夏の帳》に変えたデッキで今大会に臨んだのだ。
古き良きデッキは再びその力を発揮し、セヴランは自身初のトップ8入賞を果たして「緑単トロン」の良さを知らしめた。余談だが、彼は有名な歌のオーディション番組「The Voice」に挑戦したことがあり、テレビ出演まであと一歩のところまで迫った経験がある。無論、彼の今大会における活躍とは特に関係ないが、そのおかげで彼はスポットライトやカメラを向けられることが苦手な自分に気づけた。それでも、トップ8へ至る道のりの中で彼がフィーチャーマッチ・エリアで見事なプレイを見せたのは言うまでもない。
デイヴィッド・マインズ/David Mines
オーストラリアのマジック・コミュニティを長年にわたって牽引するデイヴィッド・マインズは、これまで何度も自国を栄光へと導いてきた。ワールド・マジック・カップで2度のトップ8入賞を記録している彼は、グランプリの優勝経験も持っている。そんなマインズが最も勝利を夢見るイベントが、ミシックチャンピオンシップだった。次回の参加権利が懸かった今大会で、彼はミシックチャンピオンシップ・トップ8入賞という夢を果たした。あとは2本目の優勝トロフィーを家に持ち帰るだけだ。
ファン・ホセ・ロドリゲス・ロペス/Juan José Rodríguez López
スペイン・グアダラハラ出身のファン・ホセ・ロドリゲス・ロペスは、Magic Onlineにいつもいるプレイヤーとしてスペインではよく知られている。彼がマジックを始めたのは『テンペスト』の頃で、出会いはいとこの紹介によるものだった。好きなフォーマットはブースタードラフトであり、彼はその理由を次のように語る。
「どんなカードを使うことになるかわからないから。強力なカードを引き当てることもあれば、何もなくて酷いデッキになることもある。でも酷いデッキでも勝てるときがあれば、最高のデッキができたと思っても1勝もできないときもある」
今大会に向けても、彼はMagic Onlineでの練習に膨大な時間をかけた。「準備は入念に、本当に入念にやった。とにかくたくさんプレイしたよ。仕事が終わって家に着くなりプレイ、プレイ、プレイ。週末もひたすらプレイ、プレイ、プレイ。友人と出かけて、そこでもプレイ、プレイ、プレイ。ランニング後もプレイ、プレイ、プレイ……僕がここにいられるのは、その練習量のたまものだと思う。僕は決してすごいプレイヤーじゃないけれど、努力をすればうまくいくんだ」
友人たちへのメッセージ:"Marquito, Cazadores de Iguanas (esos fenix buenos de Oli) y los q han estado aqui (Javi, Efren, Duri). Me lo merezco :)"
マーティン・ミュラー/Martin Müller
ワールド・マジック・カップ2014を制し、プロツアー『戦乱のゼンディカー』とプロツアー『アモンケット』の2大会でトップ8入賞を記録しているマーティン・ミュラーだが、その後は伸び悩む時期を感じていた。それでも彼はチームシリーズの仲間たちのおかげでミシックチャンピオンシップへの参加権利を手にし、MPL入りを見据えて最高峰の舞台での戦いに挑んだ。自身3度目のトップ8入賞は、MPL入りを実現するための通過点なのだ。
チャン・ツウヤァン/Zhang, Zhiyang
10年以上のマジック歴を持つチャン・ツウヤァンが、ついにミシックチャンピオンシップの舞台で大きな成功を手にした。グランプリ・北京2018での優勝を含めグランプリ・トップ8入賞5回を誇る彼は、ミシックチャンピオンシップでの成功を目指していた。さまざまな国のプレイヤーが集まるチームの仲間たちとともにMagic Onlineで練習を重ねるうちに、チャンにとってマジックは何よりも面白いものになった。ミシックチャンピオンシップ・トップ8入賞を果たした今の気持ちを尋ねると「ラッキーでしたね」と答えた彼だが、ついに手にした栄光を心から喜んでいるに違いない。
メタゲームとトップ8入賞デッキ
もはや避けては通れまい――《甦る死滅都市、ホガーク》デッキが今大会最も支配的なデッキであると言って差し支えないだろう。「ホガーク」デッキは2日目の使用率も24%と(2番手のデッキと2倍以上の差をつける)高い数値を記録したが、ミシックチャンピオンシップ・トップ8入賞に必要なのはモダンのデッキだけではない。全16回戦の予選ラウンドには、ドラフト・ラウンド6回戦も含まれているのだ。
使用者をトップ8へ送り込んだデッキは以下の通りだ。
- ジャンド:2人
- ホガーク:1人
- 鱗親和:1人
- エルドラージ・トロン:1人
- 赤単フェニックス:1人
- トロン:1人
「ホガーク」は今大会で圧倒的な勢力を築いたものの、その一方で多くのプレイヤーがこのデッキを倒すべく備えていた。ジャンドの復調は《レンと六番》の追加によるものだが、『モダンホライゾン』の登場以降「ホガーク」に警戒されることなくここまで来たことは、まさに注目すべき出来事だろう。また、《最高工匠卿、ウルザ》が登場したことで、モダン創設以来メタゲーム上に入ったり出たりしてきた「《飛行機械の鋳造所》と《弱者の剣》のコンボ(《飛行機械の鋳造所》で《弱者の剣》を生け贄に捧げ、それを戦場に戻すという動きを繰り返すコンボ)」が再び息を吹き返した。《最高工匠卿、ウルザ》が加わったことで、このコンボ・デッキは優れたエンジンと勝ち手段を同時に手に入れたのだ。
「イゼット・フェニックス」は数か月前に倒すべき敵として多くのプレイヤーから警戒されるようになり、今大会のトップ8には使用者を送り込めなかった――しかし《弧光のフェニックス》の姿はそこにあった。《血清の幻視》や《選択》といった青のキャントリップ呪文の代わりに《はらわた撃ち》や《舞台照らし》を採用した「赤単フェニックス」が、ファン・ホセ・ロドリゲス・ロペスをトップ8入賞に導いたのだ。青を排したことで《氷の中の存在》も失ったが、代わりに《僧院の速槍》や《損魂魔道士》が加わり、速度は申し分ない。
もう1つ特筆すべきは、トラルフ・セヴランの「トロン」だろう。これは(小型の)エルドラージも《大いなる創造者、カーン》も採用しない伝統的な「トロン」だ。新戦力としては、サイドボードに1枚だけ『基本セット2020』で登場した《夏の帳》が搭載されている。
「使っていて一番しっくりくるんです」とセヴランはデッキ選択の理由を語る。「それから、『ホガーク』を倒そうとしている『人間』や『エルドラージ・トロン』との相性も良いですし」
マリット・レイジがモダンに降臨
《暗黒の深部》はこのフォーマットで使用できない(モダン創設時に禁止カードに指定されている)が、マリット・レイジが姿を現せないわけではない。
マリット・レイジを呼び覚ましたのは、マジック・プロリーグ選手のクリスティアン・ハウク/Christian Hauckだった。彼は、まずお目にかかれないようなユニークなデッキをドラフトしたのだ。完成した緑青のデッキは『モダンホライゾン』の氷雪テーマに大きく偏ったものだったが、それは《フロストワラ》を中心にしたビートダウン・デッキではなかった。ハウクは《氷山のカンクリックス》4枚と氷雪カードをデッキに詰め込み、対戦相手のライブラリーアウトを狙ったのだ。
その戦略がうまくいかなくとも、《マリット・レイジのまどろみ》がある。その瞬間を伝えるなら、ハウクがトップ16に至る途中のフィーチャーマッチで見せた一幕を、シンプルにビフォーアフターの形でお届けするのが良いだろう。
MPL選手のクリスティアン・ハウクは、まどろみの中にいるマリット・レイジを見つけた……
だが戦場に十分な数の氷雪パーマネントが並ぶと、彼女はまどろみから覚めた。
そしてこの直後、対戦相手が長い眠りにつくことになったのだった。
6 《森》 5 《島》 2 《冠雪の森》 2 《冠雪の島》 1 《冠雪の山》 1 《冠雪の平地》 -土地(17)- 1 《氷皮ゴーレム》 4 《氷山のカンクリックス》 3 《霧氷守り》 2 《フロストワラ》 2 《忌まわしきツリーフォーク》 1 《ナントゥーコの養成者》 1 《思案する魔道士》 1 《ムラーサのビヒモス》 -クリーチャー(15)- |
2 《一連の消失》 1 《アーカムの天測儀》 2 《冬の休眠》 1 《マリット・レイジのまどろみ》 2 《嘘か真か》 -呪文(8)- |
フィンケルの活躍
結果的にトップ8入賞を逃し21位で今大会を終えたものの、長年のマジック・ファンは伝説のプレイヤーの大活躍に画面の前で釘付けになったことだろう。
ジョン・フィンケル/Jon Finkelは、その圧倒的な強さで有名なプレイヤーだ(ミシックチャンピオンシップ/プロツアー・トップ8入賞17回は、他の追随を許さぬ史上最多記録だ)。この史上最強とうたわれるプレイヤーが活躍すると、その大会はさらに盛り上がる。
しかも、フィンケルのかつてのライバルでありこちらも「生ける伝説」と称されるカイ・ブッディ/Kai Budde(ミシックチャンピオンシップ/プロツアー優勝回数歴代最多プレイヤー)が、先月ラスベガスで行われた「2019ミシックチャンピオンシップⅢ(MTGアリーナ)」でトップ4に入賞し、大きな話題になった直後のことだ。
フィンケルとブッディが培った技術は高まり続けており、マジックが誕生して26年を経てもなお、彼らは最高レベルの舞台で勝てる実力を維持している。これからも彼らの活躍から目が離せない。
本日最高の見せ場
ホガークの力
なぜこの週末に《甦る死滅都市、ホガーク》がこれほどまで多くのプレイヤーを惹きつけたのか。その理由を知りたい方は、ぜひこの動画を観てほしい。
トップ8には1人しか輩出できなかったものの(この動画の試合ではイェルガー・ヴィーガーズマ/Jelger Wiegersmaが勝利したが、彼は続く決勝ラウンド進出を懸けた2連戦を落としている)、この信じられないほど強力な初動は否定されるものではないだろう。
トラルフがトップ8入賞への道を突き進む
トラルフ・セヴランは信頼を置く「トロン」デッキで自身初のトップ8入賞を果たしただけでなく、彼らしさを貫き通して2日目を突破した。彼は友人であり「Arena Boys」の相棒であるライリー・ナイト/Riley Knightが偶然にも実況席にいるという完璧なタイミングで、ジョークを飛ばして見せたのだ。
いよいよトップ8ラウンドが始まる――Twitch.tv/Magicでの放送をお見逃しなく!
(Tr. Tetsuya Yabuki)
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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