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渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
第31回:NO.1?グランプリ・上海優勝への軌跡 ドラフト編
読み物
渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
2011.08.31
第31回:NO.1~グランプリ・上海優勝への軌跡 ドラフト編
こんにちは。渡辺です。
今回は前回に続いて、グランプリ・上海の実践編を書いていきます。(リンク先は英語カバレージ)
前回が初日のシールドまでだったので、今回は二日目のドラフトからですね。
初日のシールドの成績は5勝1敗。
TOP8に残るためのボーダーは恐らく2敗1分以上なので、2回のドラフトで4勝1敗1分以上の成績を残したいところ。
今回のドラフト戦略としては、流れを見て空いている色をやるという基本に忠実なドラフト戦略ですが、それに加え「白・黒・緑のいずれかをやる場合は、可能な限り単色に近いものを狙っていく」というもの。
この3色はそれぞれコモンに《鎧の軍馬》《ガラクの仲間》《ソリンの渇き》など低マナ域にダブルシンボルの有能なカードがあり、それらをちゃんと使うためにできるだけデッキの色を寄せたいというのがその理由ですね。
一応練習では白をやった時が一番勝率が良かったので、できれば白をやりたいところですが、そういうのには特に固執せずきちん流れを見てドラフトしていこうと思います。
では1回目のドラフトを見ていきましょう。
1stドラフト
初手は《蒼穹の魔道士》と《嵐血の狂戦士》の2択で《嵐血の狂戦士》。
カードの評価自体はあまり変わらず、色で見たときに赤と青なら赤の方がやりたいという理由から。
そこから2手目《嵐血の狂戦士》、3手目《吸血鬼ののけ者》と取って赤黒の狂喜を意識するものの、続く4手目で《嵐前線のペガサス》、5手目で《踏み荒らし》と割とぐちゃぐちゃ。
その後は《血怒りの吸血鬼》、《漂う影》と確保して黒路線を確保して1パック目終了。
5手目の《踏み荒らし》は上からのサインだと思って確保したのですが、その後緑の流れが悪かったのでただの紛れでした。
あと全体的に赤の流れも悪かったので、上が赤をやってそうな気配。
続いて2パック目。
《精神の制御》を引くも、1パック目で青いカードだけは確保していなかったので泣く泣く《チャンドラの憤慨》。
続く2手目・3手目で《ギデオンの法の番人》を流しつつ《肉体のねじ切り》と《ソリンの渇き》を取って黒を主張します。
その後は4手目で流れてきた《ルーン傷の悪魔》を美味しく頂きながら、《縞瑪瑙の魔道士》《漂う影》などを確保し黒路線まっしぐら。
3パック目では初手から2手続けて《火葬》を取って、足りないマナ域のカードを補充しつつドラフト終了。
できたデッキがこちら。
10 《沼》 7 《山》 -土地(17)- 1 《ゴブリンの付け火屋》 1 《苛まれし魂》 1 《夜の子》 1 《血の求道者》 1 《縞瑪瑙の魔道士》 1 《ゴブリンの長槍使い》 2 《嵐血の狂戦士》 1 《貪る大群》 1 《血怒りの吸血鬼》 1 《稲妻の精霊》 2 《漂う影》 1 《吸血鬼ののけ者》 1 《スランのゴーレム》 1 《ルーン傷の悪魔》 -クリーチャー(16)- |
1 《肉体のねじ切り》 1 《ソリンの渇き》 2 《火葬》 1 《チャンドラの憤慨》 1 《闇の好意》 1 《ゴブリンの戦化粧》 -呪文(7)- |
できたデッキは赤黒の狂喜デッキ。
クリーチャーのマナカーブや除去の枚数などのデッキとしては綺麗にまとまっているのですが、個々のカードで見ると弱いものが多いのがちょっと残念。
2枚の《嵐血の狂戦士》が絡まない限りは序盤に押し切れるような展開にはならないので、赤黒狂喜というアーキタイプで見るなら失敗と言えるかもしれません。
その分、ゲームの中盤以降で強い《漂う影》や《ルーン傷の悪魔》などが入っているので、序盤がダメだった時はそういったパーツで戦う構成になっています。
まぁデッキとしては55点といったところですね。
成績は2勝1敗。
全勝を賭けた3戦目に、《スランのゴーレム》を《精神の制御》されるという友情コンボで負け。わぁい、コンボー。
まぁ全勝できるほど強いデッキではないので、この成績は妥当ですね。
これで10勝2敗。TOP8に残るためには2連勝が必要となりました。
まぁあまり気負わずに、いつも通りやろうという感じで2ndドラフトへ。
2ndドラフト
2ndドラフトのファーストピックは1stドラフトと同じく《嵐血の狂戦士》。
他の候補としては《蒼穹の魔道士》《マーフォークの物あさり》《ソリンの渇き》などがありましたが、1回目のドラフトと同じく赤の狂喜クリーチャーを優先です。
2手目はあまり強くないパックから色合わせで《ゴブリンの投火師》。続く3手目・4手目と《血のオーガ》を続けて確保して、赤路線へ。
その後は《稲妻の精霊》のようなビートクリーチャーを確保しつつ、遅めに流れてきた《隠れ潜む鰐》《殺戮のワーム》を確保して緑に渡りをつけて1パック目終了。
2パック目は赤いカードが全くないパックから《ギデオンの法の番人》。
そこから赤いカードがほとんど流れてこない代わりに《忘却の輪》《雪花石の魔道士》《突撃するグリフィン》といった白の優良カードたちを確保。
恐らく下が赤をやっているのでしょう。
3パック目のファーストピックは本日何回目か分からない《嵐血の狂戦士》。
その後《嵐血の狂戦士》(3枚目!)《血のオーガ》《ショック》と赤の流れが良く、7手目で《血まみれ角のミノタウルス》、8手目で《チャンドラの憤慨》と回ってきてお祭り状態。
《歯止め》や《反逆の行動》といったデッキに欲しかった部分も確保できて、満足しながらドラフト終了です。
できたデッキはこちら。
10 《山》 6 《平地》 -土地(16)- 2 《ゴブリンの投火師》 1 《ゴブリンの付け火屋》 1 《ギデオンの法の番人》 1 《雪花石の魔道士》 1 《ゴブリンのトンネル掘り》 1 《ゴブリンの長槍使い》 3 《嵐血の狂戦士》 3 《血のオーガ》 1 《血まみれ角のミノタウルス》 2 《稲妻の精霊》 1 《突撃するグリフィン》 1 《骨砕きの巨人》 -クリーチャー(18)- |
1 《歯止め》 1 《ショック》 1 《神聖なる好意》 1 《忘却の輪》 1 《反逆の行動》 1 《チャンドラの憤慨》 -呪文(6)- |
できたデッキは赤タッチ白の狂喜ビート。
デッキの完成度は非常に高く、M12環境で今まで組んだデッキの中で一番強いかもしれないというレベル。
レアこそ引けませんでしたが、コモンとアンコモンだけでも十分なパワーを誇るデッキになっています。
このデッキなら95点はあげてもいいですね。
2連勝してから最終戦をIDしてTOP8を確定。
流石にデッキが強すぎましたね。
予選ラウンドが全て終了し、TOP8の発表があった後は写真を取ったりプロフィールを書いたり。
その後小休憩を挟んだ後に決勝ドラフト開始です。
決勝ドラフト
1パック目
初手は《真面目な身代わり》。
他の候補が《ソリンの渇き》くらいしかない弱いパックで、特に迷わずのピック。どんなデッキで使っても強いですし、この後の受けも広くなるカードなので最初手で引けたのはかなり嬉しいですね。
続く2手目は《棍棒のトロール》。
レア抜けで流れてきたパックから単純に一番強いカードを。
他の候補が《地割れのドレイク》くらいなので流石に《棍棒のトロール》を優先。
3手目は《大蜘蛛》。
他の候補はまたも《地割れのドレイク》。
とりあえず緑を主張します。
4手目は《ガラクの仲間》、5手目は《暴走するサイ》。
上のシグナルにしっかりと従う形で、一貫して緑を主張していきます。
その後も緑のカードを取りつつ、8手目に流れてきた《地割れのドレイク》をキャッチして1パック目は終了。
1パック目終了時点ではほぼ緑単。
最後の方でこぼれてきた青いカードを何枚か確保しましたが、序盤の方で青いカードを下家にかなり流しているので返しの青にはおそらく期待できません。
ただ、かなり遅い巡目までカードが流れてきたので、3パック目に青をやる目を残しておきます。
2パック目
2パック目初手は《凄腕の暗殺者》と《棍棒のトロール》の2択で後者を。
1パック目でほとんど見なかった黒をここから始めるのはちょっとリスキーですし、ちゃんと自分の色のカードがあるのでそちらを優先しました。
3パック目に向けて上家に恩を売っておきましょう。
2手目は《大蜘蛛》、一貫して緑のピックをしていきます。
3手目は《極楽鳥》。
既に2枚の《棍棒のトロール》をはじめ重い構成になっているので、序盤のマナ加速が欲しかったのでここで押さえておきます。
1パック目の《真面目な身代わり》と合わせて3色も見据えた受けの広いピックを。
4手目は《ガラクの仲間》
緑の低マナ域を確保。緑をやるならこいつは何枚あってもいいですね。
5手目は《死の印》。特に欲しいカードもなかったので、使われて嫌なカードをカットしておきます。
その後は《帝国の王冠》《不屈の自然》といったカードを淡々とピック。
8・9手目と遅い巡目で《狩人の眼識》《垂直落下》と取れたのは嬉しかったのですが、2パック目終了時点で微妙にカードが足りていない感じです。
《真面目な身代わり》《極楽鳥》《不屈の自然》と受け入れは万全なので、3パック目で何か強力なカードを引きたいところ。
3パック目
そんな感じで迎えた3パック目の初手は《始源のハイドラ》。
疑いようもない強力レアを引けて一安心。
ちょっとだけ《破滅の刃》と悩みましたが、流石にこのクラスのレアを流すのはありえませんね。
続く2手目は《火の玉》。受け入れを広くしていた甲斐がありました。
赤いカードはこれが1枚目ですが、マナサポートは十分なので問題なく使用できます。
次いで3手目も《火葬》、先ほどの《火の玉》で赤をタッチするのはほぼ確定なので、赤のシンボルの薄いカードに手を出しておきます。
4手目は《空回りのドレイク》、軽いマナ域が不足していたのでここで補充。
5手目では《地割れのドレイク》。
何度か流してしまいましたが、青緑で使うこのカードは強いです。
その後は《霜のブレス》《殺戮のワーム》といったカードを確保して、1周してきた《思案》と12手目に流れてきた《予言》でデッキの潤滑油を運よく補充して、ドラフト終了。
できたデッキはこのようになりました。
9 《森》 6 《島》 1 《山》 -土地(16)- 1 《極楽鳥》 1 《魅惑するセイレーン》 2 《ガラクの仲間》 1 《空回りのドレイク》 2 《棍棒のトロール》 2 《大蜘蛛》 1 《真面目な身代わり》 2 《地割れのドレイク》 1 《大いなるバジリスク》 1 《暴走するサイ》 1 《始源のハイドラ》 -クリーチャー(15)- |
1 《思案》 1 《不屈の自然》 1 《垂直落下》 1 《火葬》 1 《狩人の眼識》 1 《霜のブレス》 1 《予言》 1 《帝国の王冠》 1 《火の玉》 -呪文(9)- |
|
決勝ラウンドの舞台で共に戦うことになったデッキは、青緑のファッティ達に火力をスプラッシュしたもの。
《極楽鳥》《不屈の自然》《真面目な身代わり》という3枚のマナサポートがあるので、重い構成ながら土地の枚数は16枚に抑えてあります。
残り3枚という遅い巡目で取れた《魅惑するセイレーン》ですが、2枚の《大蜘蛛》や《大いなるバジリスク》などの守るパーツが優秀なので、このデッキでは活躍してくれるだろうということでメインから投入。
それに伴い、できるだけ早く盤面を作りたいという理由で、メインは《殺戮のワーム》よりも《暴走するサイ》を優先しました。
サイドボードにはカットした《死の印》と《天界の粛清》があり、サイド後から4色目ですが除去を増やせるようになっています。
前述の3枚のおかげでマナ基盤がかなり安定しているので、こういった無茶も何とか許容できます。実際この4色目のタッチ除去のおかげで勝てた試合もありました。
デッキとしては75点といったところ。
それなりの出来ではありますが、最後まで勝ちきるのは難しいと思っていました。
ですが結果は3連勝!
引きの内容が強かったり、相手がマナトラブルを起こしたりと全体的に運が良かったです。
試合の模様は、英語版ですが観戦記事があるので、興味がある方はご覧ください。(敬称略)
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準々決勝: Yuuya Watanabe vs. Kuang Chen
-
準決勝: Yuuya Watanabe vs. Kentarou Ino
-
決勝: Yuuya Watanabe vs. Ryouta Endou
というわけでグランプリ・上海は優勝することができました。
グランプリ級の大きなトーナメントで優勝できたのは久しぶりなので、非常に嬉しいですね。
今年はシーズン前半が不調でしたが、この前のグランプリ・カンザスシティと今回で、プロポイント的にも大分持ち直すことができました。
とはいえシーズンはまだ後半戦に入ったばかり。これから先にもイベントは控えているので、後半戦も頑張っていこうと思います。
(追記:この原稿の執筆後に行われた、先週のグランプリ・ピッツバーグでも渡辺プロは見事2週連続優勝を果たしました!(編集))
とりあえず今週末に開催されるプロツアー・フィラデルフィアで良い成績を残したいところ。
開催2週間前にフォーマットが変更されるという前代未聞のイベントとなりましたが、その短い準備期間の中で参加者達はどのような解答を持ってくるのか。
正解は蓋を開けてみるまで分かりません。
週末のイベントカバレージの更新をお楽しみに!
では今回はこの辺で。
また来週お会いしましょう。
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