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渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
第23回:逆境の第一話?グランプリ・カンザスシティ参戦記 1日目
読み物
渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
2011.06.27
第23回:逆境の第一話~グランプリ・カンザスシティ参戦記 1日目
皆さんこんにちは、渡辺です。
本題に入る前に、一つ触れておきたいことがあります。
このサイトの他のコラムや連載でも話題になっていますが、《精神を刻む者、ジェイス》と《石鍛冶の神秘家》の2種類が7月1日付けでスタンダード構築で禁止となります。
既に色んな所で話題になっているこの話題ですが、個人的にこの決定はあまり喜ばしいものではないと思っています。
コガモ(津村 健志)が言っているように、スタンダードというフォーマットを競技として見るならば、確かにCaw-Bladeと言うデッキは環境でも飛び抜けて強く、かつ支配的なデッキでした。
それだけ見ればこの決定は確かに正しいと思いますが、何もスタンダードをプレイしているのは競技系のプレイヤーだけではありません。
純粋にスタンダードというフォーマットをカジュアルに楽しんでいるプレイヤーだってたくさん居るのです。むしろこういった人の方が競技系プレイヤーよりも多いのではないでしょうか。
そういった方にとって、今回の禁止カード裁定というのは非常に残念だったと思います。
マジックを楽しんでいるユーザーが、愛着のあるデッキを使えなくなったり、せっかく苦労して集めたカードが使えないというのは、一ファンとしてなんとも寂しいものがあります。
とは言っても決まってしまったものは仕方ありません。
自分はカジュアルではなく、競技プレイヤーとして今回の裁定を受け入れることにしました。
次のスタンダードの大きなイベントは日本選手権。
今回の禁止裁定だったり、基本セット2012発売翌日のイベントだったりで、スタンダード環境は混迷を極めそうですが、果たしてどうなることやら。
ちょっと前置きが長くなってしまいましたね。
この連載のメインはリミテッドですし、そろそろ切り上げて本題のほうに入るとしましょう。
今回は先週末アメリカで行われた、現環境でのイベントとしては最後の大型イベントとなる、グランプリ・カンザスシティについてです(リンク先は英語カバレージ)。
鍛冶さんの連載や公式のツイートなどを見て知っている方もいるかもしれませんが、今回のイベントでは準優勝という成績を残すことができました。
最後の決勝で負けた相手は、先週も紹介した「アメリカ最強の男」Luis Scott-Vargas。
久しぶりの決勝だったので気合を入れて臨んだのですが、アメリカ最強の壁は厚く、悔しい悔しい決勝敗退となりました。
とはいえ久しぶりにリミテッドのイベントで好成績が残せたので、今回は長らくやっていなかった実戦編をやろうと思います。
実戦編をやるのはマジックウィークエンド・パリの時以来ですね。
879人のプレイヤーが集まった、グランプリ・カンザスシティ。
1000人越えがお決まりな最近のアメリカグランプリでは若干少ない人数ですか、それでも初日はいつも通りの9回戦。
プロレベルで3BYEを持っているので、実質6回戦の4勝以上で2日目進出です。
今回はシールドの練習はほとんど、というかまったくやってないに等しい状態。
前週に行われたプロツアー・名古屋の準備を最優先にしていたので、その翌週にあるこのトーナメントのために割く時間はほとんどなく、ドラフトに関してはプロツアーのために練習しましたが、シールドに関しては練習無しのぶっつけ本番での参戦となりました。
一応前日に6パック用意して、練習と題して一人でシールドを構築したりしましたが、所詮は付け焼き刃。
正直まったくと言っていいほど自信は無い状態だったので、開き直って「強いパック引けばいいんでしょ!」という心境で発表された構築テーブルへと向かいました。
そうしてもらったカードプールがこちら。
カードの分け方などは前回と同じ仕様です。
{W} | {U} | {B} |
1 《献身的な補充兵》 1 《調和者隊の聖騎士》 1 《高僧の見習い》 1 《枝モズ》 2 《ロクソドンの改宗者》 1 《砕けた天使》 1 《主導権の奪取》 1 《戦争報告》 1 《強制された崇拝》 |
1 《謎鍛冶》 1 《謎の原形質》 1 《ニューロックの模造品》 1 《侵害の魂喰い》 1 《ルーメングリッドのドレイク》 1 《血清掻き》 1 《尖塔の監視者》 1 《尖塔の海蛇》 1 《堕落した決意》 1 《着実な進歩》 1 《水銀の縛め》 1 《防御姿勢》 |
1 《煙霧吐き》 1 《疫病のとげ刺し》 1 《解剖妖魔》 1 《水膨れ地掘り》 1 《囁く死霊》 1 《ドロスの切り裂き魔》 1 《腐食の猟犬》 1 《虐殺のワーム》 1 《汚れた一撃》 1 《喉首狙い》 1 《ゲスの評決》 1 《病的な略取》 1 《法務官の掌握》 1 《瀉血》 2 《邪悪の気配》 |
{R} | {G} | {0} |
1 《ゴブリンの小槌打ち》 1 《焼炉の悪獣》 1 《回転エンジン》 1 《オーガの抵抗者》 1 《堕ちたる鉄術士》 1 《連射のオーガ》 1 《オオアゴザウルス》 1 《圧壊》 1 《石弾化》 2 《核への投入》 1 《金属の熟達》 1 《屑鉄場の斉射》 1 《棍棒での殴り合い》 |
1 《ヴィリジアンの背信者》 1 《グリッサの急使》 1 《テル=ジラードの堕ちたる者》 1 《腐食獣》 1 《ファングレンの匪賊》 1 《最上位のティラナックス》 1 《大槌の接合者》 1 《不自然な捕食》 1 《荒々しき力》 1 《腐食の突風》 1 《地平線の呪文爆弾》 |
1 《鉛のマイア》 1 《胆液爪のマイア》 1 《浮上マイア》 1 《脊柱の飛行機械》 1 《髄掘り》 1 《とどろくタナドン》 1 《ダークスティールの秘宝》 1 《叫び角笛》 1 《ゲスの玉座》 1 《胆液の水源》 1 《清純のタリスマン》 1 《屍気の香炉》 1 《災難の塔》 1 《調和者隊の盾》 1 《皮剥ぎの鞘》 1 《銅の甲殻》 1 《シルヴォクの生命杖》 1 《浸透のレンズ》 1 《ヴィリジアンの爪》 1 《銅線の地溝》 1 《微光地》 |
まずは感染関係のカードの枚数をチェックし、予定調和的に感染で組むのが不可能なことを確認してから色別に強さを見ていきます。
全ての色を見た感想としては、
- 白:全然駄目。ノーチャンス。
- 青:クリーチャー陣がそこそこ優秀だけどスペルが無い。
- 黒:優秀。《虐殺のワーム》を筆頭にカードもそこそこあるので概ねメインカラー。
- 赤:そこそこ優秀。《核への投入》2枚は非常に魅力。
- 緑:駄目。ただし《ファングレンの匪賊》と《地平線の呪文爆弾》はタッチしてでも使いたい。
といった感じ。
まずは赤黒で組んでみて、まぁ悪くない感じに。除去が多く使えるのは○。
次に青黒のパターンも組んでみたところ、クリーチャーは優秀ですが、赤黒に比べて除去が圧倒的に少なくなるのでシールド向きではないと感じて却下。
そんな感じで赤黒路線で構築。
《銅線の地溝》があるので緑の《ファングレンの匪賊》と《地平線の呪文爆弾》も忘れずにデッキへ。
8 《沼》 6 《山》 1 《森》 1 《銅線の地溝》 -土地(16)- 1 《煙霧吐き》 1 《鉛のマイア》 1 《脊柱の飛行機械》 1 《回転エンジン》 1 《囁く死霊》 1 《オーガの抵抗者》 1 《堕ちたる鉄術士》 1 《ドロスの切り裂き魔》 1 《髄掘り》 1 《連射のオーガ》 1 《とどろくタナドン》 1 《ファングレンの匪賊》 1 《虐殺のワーム》 -クリーチャー(13)- |
1 《喉首狙い》 1 《ゲスの評決》 1 《病的な略取》 1 《法務官の掌握》 2 《核への投入》 1 《石弾化》 1 《地平線の呪文爆弾》 1 《胆液の水源》 1 《清純のタリスマン》 1 《災難の塔》 -呪文(11)- |
できたデッキは赤黒タッチ緑。
《虐殺のワーム》や2枚の《核への投入》を筆頭に、パック内の除去カードを全て詰め込んだシールドらしいデッキです。
3色のパワーカードデッキなんで典型的な後手デッキですね。
緑のカードは実質《ファングレンの匪賊》だけなので緑は不要に見えるかもしれませんが、《とどろくタナドン》のライフロス軽減や、《法務官の掌握》をできるだけ活用するために色を増やしたかったので、3色目は使うことにしました。
デッキの点数としては70点くらい。可もなく不可もなくといったところです。
ただ前述の通りシールド構築には自信が無かったので、BYE中に知り合いを捕まえてお互いにデッキを見せ合って、あーだこーだと色々と意見交換をしたりしていました。
構築は概ねこれで良さそうという結論になり、そうこうしている内に4回戦目が始まりトーナメントスタートです。
BYE明けの対戦相手のデッキは青赤。
《法務官の掌握》で相手のデッキを確認したところ、除去あり優秀クリーチャー多々ありの強めなデッキ。
ゲーム内容的には《法務官の掌握》で《戦争と平和の剣》を頂いた返しに、持たれていた《転倒の磁石》を出されてゲームが長引き、手札から《蔵製錬のドラゴン》も出されてボコボコにされておきました。
まぁ相手のデッキ強かったし仕方ないと気を取り直して5回戦。
1本目は事故でさっくり負け。
2本目は相手から4ターン目に《ボーラスの工作員、テゼレット》を出されて、ひいひい言いながら何とか捌いたところで《溶鉄の尾のマスティコア》が出てきて対処できず負け。
ゲームの後で相手のデッキを見せてもらったら、上の2枚に加え《溶鉄鋼のドラゴン》と《大建築家》まで入っている、何とも卑怯くさいデッキでした。
開幕2連敗スタートで後が無くなり、「こりゃ今回も駄目かなー」と弱音を吐いたりして、どんどんナイーブになっていきます。
しかしそんな状態でも何とかできないかと必死に考えるのが我らプロ。わずかでも可能性がある限り諦めてはいけません。
とりあえず自分のカードプールを見渡しつつ今までのラウンド間で得た情報を整理します。
- ほとんどのプレイヤーは後手を選択している。
- それがもう常識になっており、ほとんどのプレイヤーはスローゲームを想定して3色デッキを構築している。
他のテーブルのゲームを見たり、何人かのプレイヤーのデッキを見せてもらったりして、概ねこのようなフィールドになっていると感じました。
そういった点を念頭におき、自分のカードプールをもう一回細かく見直したりして、新たに組み直したのがこちら。
9 《沼》 8 《島》 -土地(17)- 1 《煙霧吐き》 1 《謎鍛冶》 1 《鉄のマイア》 1 《脊柱の飛行機械》 1 《謎の原形質》 1 《侵害の魂喰い》 1 《ニューロックの模造品》 1 《囁く死霊》 1 《ルーメングリッドのドレイク》 1 《血清掻き》 1 《ドロスの切り裂き魔》 1 《尖塔の監視者》 1 《髄掘り》 1 《とどろくタナドン》 1 《虐殺のワーム》 -クリーチャー(15)- |
1 《皮剥ぎの鞘》 1 《銅の甲殻》 1 《ヴィリジアンの爪》 1 《喉首狙い》 1 《ゲスの評決》 1 《病的な略取》 1 《法務官の掌握》 1 《水銀の噴出》 -呪文(8)- |
新しいプランは青黒の回避ビートダウン。
多くのプレイヤーが後手を取ってくるのを逆手に取って、先手仕様の構築です。
最初に組んだデッキではどうしてもスローゲームになってしまい、相手もそれを想定してデッキを組んでいるので、どうやっても相手と同じ土俵で戦うことしかできませんでした。
ですがこの青黒ビートプランなら、相手が想定しているスローゲームになる前に速やかにゲームを終わらせることができるようになります。
問題は除去が薄いこと。
朝のデッキ構築のときに一度組んだこのプランをなぜ採用しなかったかと言うと、単純に相手のカードに触ることが難しくなっているからです。
青黒という色の性質上相手のアーティファクトに触れられず、それはこの環境のシールドにおいては致命的とも言えるかもしれません。
ただ既に自分の成績は2敗の崖っぷち。
この後1度のマッチも負けられないことを考えると、メインボードのスローゲームを見越したプランよりも、こっちのサイド後に攻めるプランの方がまだ可能性があると感じました。
そのサイド後の戦略が見事にハマってその後4連勝!!
相手の後手デッキにビートプランが刺さる展開が多く、サイド後は1本も負けませんでしたね。
ちなみにこのサイドプランをするためには相手が後手デッキであることが分かっていなければやり辛いのですが、この日は先手後手を決めるダイスロールを全て負け、毎回相手が後手を取ってきてくれたので、サイドするときに毎回迷わずに済みました(笑)
そんなこんなで初日は4勝2敗。
開幕2敗したときは同じく2敗していたマーティン・ジュザと「夜飲みに行こうぜ!」とか言って半ばヤケになっていたのですが、諦めなければ何とかなるものですね。
ちなみにジュザはあっさり星になってました。パックがどうしようもないほど弱く1ゲームも取れなったらしいです。なーむー。
このまま二日目のドラフトにいきたいところですが、そろそろ長くなってきたので二日目のドラフトについては次週に持ち越しということにします。
今回はこの辺で。また来週お会いしましょう。
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