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戦略記事

渡辺雄也の「リミテッドのススメ」

第20回:先手カードと後手デッキ

読み物

渡辺雄也の「リミテッドのススメ」

2011.06.06

第20回:先手カードと後手デッキ


 こんにちは。渡辺です。

プロツアー・名古屋

 今週末はプロツアー・名古屋が開催されます。
 世界の強豪たちが一堂に集結するこのイベント、果たしてどんな熱い戦いが繰り広げられるか今から楽しみですね。
 生中継される日曜日の決勝戦はブースタードラフトで行われるので、ぜひ注目していただければと思います。

 僕もこの週末のイベントに向けて、練習に励む日々を送っています。
 大きなイベントに向けての準備をするのは何度やっても楽しいものです。小さい頃の行事の前日の準備のようにワクワクしますね!


 さて今回は、そのプロツアー・名古屋に向けてドラフトの練習をしているうちに、僕が感じたこの環境について書こうかと思います。
 カード単体の評価やアーキタイプごとの話ではなく、練習していて環境全体に対して漠然と感じたことですね。
 ドラフトはカード毎やアーキタイプの研究も大事ですが、その環境に対してどんな認識を持っているかも重要な要素です。

 というわけで今回は新たなるファイレクシア入りのドラフト、この環境の「先手後手」についてです。


先手か後手か

 最初に結論を出してしまいますが、僕の出した結論は「どちらでもよい」です。
 これだけではただの投げ槍になってしまうので、なぜそのような結論になったかを説明しましょう。

 新たなるファイレクシアが入る前、包囲戦までの環境なら僕を迷わず後手を選んでいました。
 僕の認識では前環境のドラフトは序盤から攻めるテンポデッキよりも、後半パワーカードで盛り返すコントロールデッキの方が強いという結論だったからです。

 序盤に攻めてくる感染に対しては《荒廃後家蜘蛛》や《ノーンの僧侶》のような感染に強い感染クリーチャーで相手の攻勢を捌きやすかったですからね。


 では新たなるファイレクシアが入ってどう変わったのか。
 僕を後手フリークからどっちつかず野郎に変えた最大の原因は、ファイレクシア・マナクリーチャー達の存在です。

 《磁器の軍団兵》なんかはどう使っても強いですが、《切りつける豹》や《とどろくタナドン》のような4マナ以上のファイレクシア・マナクリーチャーに関しては、先手と後手で使いやすさと強さが大きく違います。
 先手で攻勢に回っているときは、ファイレクシア・マナによるライフ損失はそれほど気になりませんが、後手で守勢に立っている時は非常に厳しいです。下手をしたらその2点がゲームの明暗を分ける場合もありますからね。

 《侵害の魂喰い》や《強欲な魂喰い》などの「魂喰い」シリーズ等に使用するファイレクシア・マナも先手ではそれほど気にはなりませんが、後手では若干辛く感じることも多いです。やはり先手の方が強く感じるカードですね。
 要はファイレクシア・マナ関連のカードは基本的に先手の方が有効的に使えるということです。

 ではここまで先手の利を挙げておいて、何故僕は最初に「どちらでもよい」という書き方をしたのか?
 確かにファイレクシア・マナのカードがデッキに多い時僕は先手を取るようにしていますが、逆にファイレクシア・マナ関連のカードが少ない場合は後手を取るようにしているからです。

 ファイレクシア・マナによるライフ損失が少ないのであれば、従来通り後手を取ってどっしりと構えるタイプのデッキを組みたいというのが僕の意見です。
 そのような構えるデッキなら、先手の利よりも後手で得られる1ドロー分のカードアドバンテージの方が重要ですからね。


ピックの段階で先手後手を考える

 先手か後手かを意識するのはデッキを作る段階、つまりピックの段階からどちらにするかを決めるようにすると良いでしょう。

 1パック目の新たなるファイレクシアで攻勢に出られるファイレクシア・マナクリーチャーが多く取れたら先手、逆にほとんど確保できなければ後手、というように意識を持つようにすれば、その後のピックの方向性もはっきりします。
 先手デッキなら先手向きの攻めるカードを、後手デッキなら後手向きの守れるカードをといった感じで一貫性を持たせるピックができますからね。

 理想としては、先手向きのカードと後手向きのカードが同じデッキに入らないようにしたいです。

 先手向きのカードの例としては、《回転エンジン》や《銅の甲殻》など、

 後手向きはとしては《絡み線の壁》や《強制された崇拝》が挙げられます。

 僕自身、この環境のドラフトの練習を始めた当初は、前環境の感覚で後手デッキを構築することが多かったのですが、あまり勝率が良くなく、後手を取ったことで負けるゲームというのが前環境に比べてかなり多くなったと感じました。やはり上で挙げたファイレクシア・マナ関連によるものが多かったですね。
 その辺りを考慮して、先手後手の意識したドラフトをしたら、それまでに比べ勝率が格段に上がりました。


相手が後手なら自分は先手

 傷跡と包囲戦では基本的に守るカードの方が強いので、パック数の関係で後手を取るような構成のデッキを組むことの方が多くなるのですが、「相手が後手を取ることを逆手にとって先手デッキを組む」のも戦略としては実に有効です。

 基本に忠実に後手デッキを組むか、それとも周りがそれをやっていると見越して先手デッキをドラフトするか。
 どちらの戦略も存在するので、僕の現状の結論としては「どちらもあり」というものになりました。


 プロツアーという実戦を通してこの認識が変わる可能性はありますが、練習も大詰めに入った今の段階での僕の結論はこんな感じです。
 プロツアー本番ではドラフト中のカードの流れを読んで先手か後手か決めることになりそうですが・・・。

 ちなみに先手デッキが後手デッキのどちらを構築したいかと言われたら、僕は先手デッキを組みたいです。
 後手デッキはゲームを長引かせることを焦点に置いているので、相手の強力レアに対処できずに負けてしまうことがどうしてもあります。
 先手デッキなら相手に強力なカードを引かれる前に勝てる展開にすることが可能なので、自分が1枚で勝てるような強力レアを引かないような時でも勝てる戦略で臨みたいですね。


 冒頭でも触れましたが、週末にはプロツアー・名古屋があります。

 マジックのプロをしている以上はプロツアーやグランプリなどのプレミアイベントで良い成績を残すのが存在意義でもあります。
 今年に入ってからの自分の成績は正直いまいちな感があるので、ここらで一発逆転を狙いたいですね。

 これから週末の名古屋までは持てる時間を全てその準備に当てて、本番に備えようと思います。

 では今回はこの辺で。
 週末に名古屋にお越しの方は名古屋で、そうでない方はまた来週お会いしましょう。


2011年日本選手権予選

プロツアー・名古屋

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