MAGIC STORY

サンダー・ジャンクションの無法者

EPISODE 09

サイドストーリー 血は毒よりも濃く

H.E. Edgmon
Isaac_Fellman_Headshot.jpg

2024年3月14日

 

 サドルブラシの町を見下ろす暗い寝室。蝋燭の光と月の輝きに照らされた中、アニー・フラッシュは自分のものではない寝台から下りた。その瞬間のすべてがどっちつかずな状態で、もはや親しみを装うことなどできなかった。このような時には影が満ちているほうがふさわしいのだろう。彼女が着替えていると、もうひとりが寝床から起き上がった。

 「行かなくてもいいじゃないか」

 「行かなくてもいい」と「行くべきではない」は別の感情だ。そしてアニーは行く必要はないと思っているものの、行くべきであり、行こうとしている。

 「悪いな、ジョーダン。自分のベッドであったまるよ」彼女のブーツの縁には骨とターコイズがビーズ繋ぎであしらわれており、履くとカタカタと音を立てた。

 影が首をかしげる。「ジョディ。僕の名前はジョディだよ」

 「ああ、そうだった。ごめんよ」

 アニーは申し訳ないとは思っていなかった。ジョディの名前を忘れたわけではなく、彼に聞かされ辟易させられた悲しい経歴の細部についても忘れてはいない。ジョディ・カーペンターは1年前、彼が愛した唯一の女性が一緒の寝台でゆっくりと苦しみながら亡くなったとき、自身の古い人生に別れを告げたのだ。

 アニーは立ち上がり、三つ編みにした髪を肩に放り投げた。

 「気にしてないさ」影がにじり寄る。「持ち主が一晩いなくたって君のベッドは問題ないんじゃないか、僕はそう言いたいだけだよ」

 ジョディにもその影にも、アニーが辟易していることは伝わらない。彼女は冷静さを保つことに長けすぎていた。そして彼の誘い文句がアニーの腹を鳴らす。帰宅しなくては、それも早く。

 「勘違いしないで欲しいね」アニーは嘆くように言った。彼女は寝台脇の卓に手を伸ばしてサンダー・ブラスターを手に取った――かつて持ち歩いていたものに比べれば取るに足らないものだが、それでも武器ではある。「私はこれまでに手に入れたもの以外は、欲しがっちゃいない」

 ブラスターを太腿のホルスターに差し込み、アニーはジョディの顔を一瞥した。銀色の巻き毛に深い緑色の瞳、ふっくらした唇に無精髭といった美貌の持ち主だ――しかしアニーは自分が気に留めるほどの美男子にはまだ出会ったことがない。アニーがつきかねないすべての嘘の中にあって、それは真実だった。

 ジョディは眉を吊り上げてあおむけに倒れ込み、枕の上に頭を乗せると露わになっている腹の上で手を組んだ。「僕もそうさ」

 予期せぬ拒絶に、アニーは彼を二度見して聞き返した。「はん?」

 「僕には素晴らしい愛があった。今はただ暇をつぶすだけだよ」彼は肩をすくめた。「だからといって僕の胸に頭を寄せて寝ちゃいけないってわけじゃないよ。僕らは人だからさ」

 そしてジョディは不敵な目配せとともに付け加えた。「仮に僕が君の恋人になりたくないとしてもね」

 「ふうん」アニーはその提案を検討する。自分はここには留まれない、けれどその理由はひとつではない。他の場所で必要とされているだとか、あるいは他人の隣で無防備に眠りにつけるような愚かな心を失ったからだとか。

 それでも。提案を承諾したら物事がどのように変化するかを想像するだけなら、それは世界で最悪の物事ではない。もし自分の人生が、暖かくてごつごつとした手を持つ、素敵で二枚目な男やもめ達と一夜を過ごせるような人生であったならば。

 いや、ない。空想に意味はない。これが現実。

 「またな、ジョディ」彼女は立ち去る前に彼へと帽子を傾けた。背後で、影は忍び笑いしたに違いない。

 階段を下りてサドルブラシの中央広場に出ると、月明りはジョディの埃っぽい寝室よりも明るく感じた。その輝きは眠っている町を曇らせ、アニーの存在だけを際立たせる。いっとき、彼女は世界に自分だけが存在するのだとうそぶく。自分と闇と月と、三者が作る影だけの世界にいる風を。

 そのいっときも過ぎ去ってゆく。アニーは、感覚の外側から静かに忍び寄る遠くの影の動きを捉えた。彼女の頭は町外れにある砂丘の方角を何度か向き、左右で違う彼女の瞳は影の形をよりはっきり認識するために細められた。

 しかし何も見当たらない。アニーが見たと思ったものが何であれ、それは去ったか最初からいなかったかのどちらかだ。砂丘もこの場所と同じく、静かで何もいない。

 不安からアニーは歯噛みをした。自分の天稟である黄金の右目の視覚能力を利用して、砂丘をもっと入念に調べるべきだろうか。

 そんなことを考えただけでもアニーは自分に苛立ち、踵を返して一目散に住家へと向かった。砂丘には何もない。最近は妄想してばかりだ。角を曲がったところに悪鬼が潜んでいるのではないかという考えにつきまとわれている。

 自分自身を弁護するなら、そう思い込んでもおかしくはないだろう。少なくとも今の今まではそうだ。それに、サドルブラシはいかにも寂れた町だが、暗い窓の向こうや玄関に誰が隠れ潜んでいるのかはわからない。早く家に帰らねば。

 ジョディはひとりの人になれるかもしれないが、アニーは武器だ。なまくらにはなれなかった。


 歩いて帰るには長い距離があり、家が見えてくるころにはアニーの腿はひりひりと痛んでいた。戸口に向かいながら、以前から調子の悪かった左足はとりわけ鋭く引きつっていた。この悪地の農場に住むことになってからまだ日は浅いが、それでも我が家だ。おそらくいつの日かこの場所を故郷と呼び、故郷だと感じるのだろう。

 「帰ったよ」彼女は納屋に近づきながら、間延びした声を出した。

 アニーはこれまでずっと動物に囲まれながら生きてきて、様々な生物を飼い慣らす方法を学んできたが、フォーチュンほど彼女を悩ませた動物は他にいない。フォーチュンがどこから来たのか、彼が何なのかも知らないが、フォーチュンはアニーのものであり、アニーはフォーチュンのものだということは分かっている。体高180センチの雄馬といった体格で、粘土のように赤い毛並みと頭蓋から生えた巻き角を持つフォーチュンの瞳は、ひと揃いの峡谷のように深く黒かった。

 「留守番してくれてたかい?」彼女はそう尋ねながら、すり減った爪で彼の首を掻き撫でて労わった。

 この問いかけは修辞的だが、そうではないとも言える。アニーは、自分がいない間にフォーチュンが農場の世話をしてくれると期待しているわけではなかった。それでもだ。彼は嘶いて片足を踏み鳴らし、アニーの瞳をもっと近くでよく見ようと頭を傾けてきた。

 「おいおい。そんなに長く留守にしてたわけでもないだろ」

 フォーチュンは不機嫌そうに、アニーが手を放すまで頭を振り続けた。

 「それに、自分の面倒は自分で見れる。そう怒るな。私よりも心配性なんだな」

 フォーチュンは気分を害したかのように、ゆっくりと頭を後ろに反らした。はいはい。

 「わかったわかった。悪かったよ」アニーはため息をつきながら顔を上げ、農場の母屋をちらりと見た。意識して確認しようとしたわけではないが、彼女の視線はとある窓にまっすぐ伸びていた。その奥で黄色い明りが輝いているのを見ても、驚きはなかった。夜更けにもかかわらず、部屋のカーテンに影が動いた。「あの子、ずっと起きてたのかい?」

 フォーチュンが頷く。

 「わかった。後は私に任せて、少し眠っておきな」アニーは彼の肋をぺちりと叩く。「明日もまた町に行かなきゃならないし、乗ってるときにふらつかれちゃ困るよ。お前さんは万全の状態でもすぐに迷子になるんだから」

 再び腹を立てたフォーチュンは背を向け、小走りで彼女から遠ざかっていった。「私も愛してるさ」アニーはくすくすと笑いながら呟き、自宅に戻った。

 家の中は静かすぎて、アニーのうなじの毛が逆立った。静かなことには何の意味もないと分かっているのに。この家はいつだってこんなふうに静かだ。深夜であっても動物たちが見えないところで動き回り、喉を震わせ鳴き声を交わす悪地とはまるで違う。たとえ寝入っていびきをかいているとしても、どの扉の中にも生命を感じる日没後のサドルブラシとも違う。

 だが、アニーの家に多くの生命は残っていない。夜が更けてくると、ここは墓場のように感じられる。そう思うとアニーは泣きたくなったが、それは許されなかった。もたもたしてはいられない。

 彼女は廊下を進み、ドアハンドルを指で強く握りしめ、中に入る前に身構える。深く息を吸い込み、歯の隙間からゆっくりと息を押し出す。

 持ち主の部屋に入ると、起きていたトミーはベッドに入ったまま窓の外を見つめていた。アニーが入ってきても、彼はわざわざそれを確認しようとしなかった。それは何も珍しいことではない。甥は最近、ほとんどこちらを見ようともしない。けれどアニーには彼を責めることはできなかった。

 その顔はやつれ、褐色の肌は本来の血色よりもずっと青ざめ、黒髪はべたついて側頭部の頭髪は薄くなっていた。一緒に引っ越してきた当初とはまったく異なって。自分の人生とそれに伴う揉め事にトミーを巻き込んでしまった当初とは……

 今、彼女が見て取れるトミーの全身は汗に覆われていた。それでいて歯を鳴らすほど激しく震えており、寝台の側面を握る指の関節が白くなっていた。トミーは震えを止めたがっているのか、それとも静かにしようとしているのだろうか、アニーはそう訝しんだ。どちらであっても出来てはいない。震えながら胸から低いうめき声を発し続け、胸郭の中から苦しく息を鳴らす彼の様子に、アニーは悲鳴を上げて自分の髪を引き抜きたくなるほどだった。

 「今夜は痛むのかい?」アニーは帽子を脱ぎ、寝台の隣にある椅子に置きながらそう尋ねた。その椅子はアニーが自身の部屋よりも多くの夜を眠る場所だ。トミーは顔を歪め、頷いた。まるで彼女の声が痛みを悪化させているかのように。

 トミーは自らのエネルギーをねじ曲げ、アニーから身体を遠ざけようとした。その無言の行為に気づかないふりをしながら、彼女は部屋の隅にある据付の戸棚へと向かう。その中身は棚ごとに包帯、消毒剤、薬草療法の材料などと分かれており、そしてアニーが取り出そうとしているのは多元宇宙の中でも最強の鎮痛剤として知られる、渦巻く青い煙が入った瓶だった。

 瓶の中身は四分の一にまで減ってしまっていた。彼女はため息をつきながら首筋に片手を回し、それをトミーの寝台横まで持っていく。ということは朝から町に向かうことになるだろう。この量であればあと一週間ほどは持つと思われるが、備蓄もなしに薬を切らす危険をアニーは冒すつもりはない。今朝も同じ理由で町へ向かったのだったが、錬金術店は売り切れだった――次の入荷は夜明けになるらしい。ならば自分も夜明けに向かうということ。

 「さあ」彼女は瓶をトミーの鼻下で支えながらコルク栓を抜き、彼が青い煙を肺へと深く吸い込むのを確認した。彼が十分に息を吸ったところで、中身が漏れ出ないようアニーは栓を押し込んだ。

 トミーは身震いをして目を閉じた。それは安堵からか、それともアニーが自分に近づいてきたことに対する嫌悪感からだろうか。

 アニーは彼の寝台横に陣取った。一晩をここで過ごすのだ。


 太陽が昇り、窓の外の世界が淡い青霧に包まれるころ、アニーは眠るという作戦を諦めた。頭が割れるように痛むが、彼女は最後にもう一度トミーに目を向けた――甥は一晩じゅう断続的な痛みに襲われていたが、ようやく深い眠りについていた――そしてアニーは自身の部屋へと廊下を進んだ。

 甥よりもさらに睡眠時間が短くなってしまったが、夜明けに気を失うような贅沢はできない。その考えが頭をよぎると、すぐに彼女は静かに自身を呪った。トミーの苦しみを贅沢だと考えるとはなんと無神経なのか。これは睡眠不足のせいだ。

 寝室の空気は暑くよどんでいたため、アニーは朝の空気を引き入れるために窓を開けた。着替えるだけの時間よりも長くこの部屋にいたのはいつだっただろうか。居宅は何もかもが新しく、まだ我が家らしい生活感は出ていないが、アニーの部屋ほどまったくの無垢な場所はない。亡霊のための場所といってもおかしくはないだろう。彼女は数日間乱されることなく完璧に整えられたままの寝台を一瞥してから、着替えるために衣装棚へと向かった。

 着替えを終えたアニーは長い三つ編みをほどいて髪をとかし、丁寧に編みなおした。ビーズ繋ぎの革紐を編目ごとに織り込み、土から咲く花のように彼女の黒髪に青と白が浮かび上がる。そして鏡の中の自分を確認するために頭を傾けて映り込み方を変え、左右で違う目の眼角に刻まれている日光に晒された目皺を観察した。ひとつため息をつき、アニーは部屋から外へと出た。

 玄関の扉を開けるや否や、彼女は足を止めた。もう少し注意力散漫だったなら、玄関の階段から転げ落ちていただろう。足元に、昨晩には間違いなく存在しなかったはずの籠が置かれていた。控えめな黄褐色の編み細工籠は、まるで行楽に向かおうとした何者かが玄関先で迷ってしまったかのようだ。知らない人物が彼女の家の敷地内を歩き回り、失くした籠を探している。まるでそんな誰かを見つけようとするかのように、アニーは目の前の敷地周辺をざっと見た。

 もちろん、誰もいない。編み籠の蓋を開けて中身を確認すると、まさに行楽に持っていくようなものが見つかった――まだ暖かいパンまるごとに、蜂蜜の瓶、果物の砂糖煮の瓶、塩漬け肉がいくつか。道に迷った行楽客の落とし物でないのならば、贈り物として置かれたに違いない。おそらくジョディが軽食で口説くつもりで立ち寄ったのだ(これまでに受けてきた半端な申し出の中では、この提案はましな方だろう)。

 アニーは籠を玄関の中へと押し込んで、何も問題はないと自分に言い聞かせてみるが、締め付けるような胃の不快感を振り払えなかった。問題なのはジョディがやってきて何かを置いていってくれたことではない――自分は一晩中起きていたのに、誰かが家に忍び寄る音が聞こえなかったこと。

 それは完全な不注意だ。そして不注意はアニーが許せない物事のひとつだった。

 二度と繰り返すまい。


 青い煙の瓶は入荷したばかりだった。さっそく2本手に入れたアニーは、フォーチュンを待たせている馬小屋に戻ろうとサドルブラシの中央広場に向かった。彼女が今日最初に起きてからとっくに1時間は経過しているが、この次元は起き始めたばかりだ。カーテンが開き、犬が吠え、朝食前に喧嘩するからと外に放りだされた子供たち。濃い露の層があらゆるものに付着し、太陽の光が水滴を捉える様は虹色の影を投じる千の小さなプリズムのよう。アニーの口角に、自分のためだけの笑みが浮かんだ。

 「やあ、君がそんな風にできるとは知らなかったな」聞き覚えのある声が彼女を呼び止めた。

 彼女は太くて濃い眉を片方吊り上げ、顔をジョディに向けた。彼は笑いかけながら胸の前で腕を組んでいた――その体はもう裸ではなく、ボタンのついた黒いシャツに隠れていた。

 「何ができるって?」

 「笑顔だよ」

 この男の首を絞めてやろうか。「深読みはよしな。いい一日が過ごせればそれだけでいいんだ。私が笑顔になったのはあんたのおかげじゃない、ジョーイ」

 それでもくじける様子はなく、ジョディの気取った笑みは優越感を増していた。「昨夜はとても楽しかったね」

 「あんたがべたべたし始めるまではね」アニーは肩をすくめた。「それに、ピクニックのバスケット? どうなんだ? 私が美味いパンのためにあんたのベッドにもぐりこむような女だと思ってるなら……」

 ジョディの顔に困惑が浮かび、アニーの言葉は小さくなっていった。彼女は顔をしかめた。知らないふりをしたところで、それは彼にとって何の得があるのか? 正体を隠して行う求愛がうまくいくはずはない。

 「今朝、私の家の玄関に食事を置いていかなかったか?」

 「アニー、君という友達と一緒に過ごすのはとても楽しかったよ。でも睡眠をとるほうがもっと楽しいかな」ジョディは含み笑いをし、その表情にはどこか甘さがあったため、彼女は猜疑心を呼び起こされた。「それに僕はパンなんてまったく焼かないね。町の誰かじゃないのかな。君は木陰の噂話でよく話題になるからね」

 アニーの鼻に皺が寄る。「私は噂なんてされないよ」

 それは少々気に食わなかった。どんなことを言われているのだろうか? 自分がどこから来て何をしてきたのかについて、どんなねじ曲がった話をされているのだろうか?

 「この辺の人たちは、離れで孤立している君たちのことを心配しているよ。たぶん誰かがオリーブの枝を差し出す必要があると思ったんじゃないか――そういう話だよ」

 なんと。

 ああ……それは確かに想像していたものとは違った。アニーはそれを飲み込んだ。この日の朝、胃がねじれてもつれた巣のようになるのは二度目だ。しかし今回は緊張するような感じではない。何か別のものだ。彼女は長いこと感じていなかった何かを、どう直視すればよいのか分からなかった。

 だが考える余裕は与えられなかった。アニーがジョディの言葉に返答する前に、中央広場で一斉に悲鳴があがった。

 彼女は素早く振り返り、目は混乱している方角を探し、早くもブラスターを握ってホルスターから引き抜いた。町民たちが彼女に向かって駆けてきた。親は路上の赤ん坊を拾い上げ、恋人同士が互いを押し合いながら急いでその場を離れようとした。

 彼らの背後から、何か巨大なものがうねり寄った。

 ジョディの手がアニーの胸元を押し掴んでそのまま彼女を雑貨店に引っ張り込んだため、アニーは息が詰まりそうになった。群衆もそのあとに店内へと押し寄せ、アニーは店の奥に追いやられた。彼女は空いた手でジョディの手首をつかむと、いくらかの痛みを与えることを見込みながら力強く押し退けた。自分は助けを必要としていないし、中でも彼の助けは絶対に必要ない。人混みを押しのけ、強引にかき分けて正面の窓に到達したアニーは、今や放棄された中央広場を注意深く見つめた。

 もはやそこは、ほとんど無人だった。少なくとも、人は。

 分厚い鎧のような皮膚の巨大なガラガラワームが、金ぴかの蛇腹でサドルブラシの路地をずるずると這っていく。それが口を開閉すると、巨大な牙が光る。アニーの手は武器を握りしめた。望まない戦いを前に筋肉は緊張しているが、引き下がることはできない。

np0qRvVbbDAx.png
アート:Filip Burburan

 とはいうものの、戦いにはならなかった。怪物は周囲に食物を見つけられず、そのまま進んで広場を抜けて町の逆側まで出ると、元いた砂丘へと戻っていった。

 あの砂丘へ。アニーは昨夜の影を思い出し、息を詰まらせた。もし昨夜、自身の直感に従っていたら、面倒でももっと調査をしていれば、今日こんなことにはならなかったはずだ。

 だが、問題はないんじゃないか。誰かが怪我をした様子はない。

 ジョディは彼女に近づこうと人混みをかき分けたが、アニーは先に外へと抜け出した。彼女は急いで馬小屋に向かうが、早くたどり着きたいと逸る右足の歩調に対して、弱い左足はついて行くのがやっとであり、ほんのわずかに震えていた。馬小屋までたどり着くと、彼女は安堵のため息をつき、その呼吸に糞と干し草の匂いが混じった。フォーチュンは小屋から彼女を見つめ、険しい表情で鼻を鳴らして応じた。

 「あれは嫌だね」彼の顔を優しく撫でながら、アニーはそっと呟いた。「お前さんも怖かったのかい?」

 再び鼻を鳴らす。フォーチュンはアニーの手に頭を押し付け、彼女は指先を彼の角のうねりに沿わせた。

 色々な意味で、フォーチュンは彼女にとって唯一の友だ。彼に何かあれば耐えられないだろう。だが彼は無事だ。何も問題はない。ガラガラワームをもっと早く調査しなかったことについて、アニーが罪悪感を背負うこともない。今回は、放置したことに何の結果も付随しなかった。

 そう考えた瞬間、馬小屋の扉の外から子供の悲鳴が聞こえた。

 フォーチュンとアニーの間にやり取りは不要だ――考えていることは同じ。互いの動きは同期し、馬小屋から出て広場へと戻った。

 群衆も戻り始め、町民たちは広場の中心へと移動していった。興奮が収まってくると、彼女の周りで人々は隣人の様子を確認し、友人を探し、それぞれ抱擁を交わしていた。

 アニーの胸が締め付けられ、だが彼女はそれを無視した。

 広場の中心近くには人だかりができていて、大声で泣き叫ぶひとりの少女を取り囲んでいた。どう見ても9歳よりは幼く、鞭のようにやせ細り、月光のように青白い。骨ばった体が大きく震えていた。

 10歳ほど年上の少年が少女を抱きしめていた。ふたりはどちらも上向きの鼻と、小さなそばかすの顔をしていた。傍観者たちへと彼は説明した。「急いでミラを逃がしたつもりだったのに、あいつが――あいつが来たんです」

 同情の言葉の波が群衆の間を巡った。

 「こうなるって分かってはいたんだ」

 「時間の問題だったのよ」

 「何日か前から近づいとったからのう」

 「ミラ、可哀そうに」

 「ボーも気の毒だったな」

 その会話は自分に向けられたものではない。それでもアニーはその少年、ボーに目を向けて尋ねた。「どうして誰もあれを殺さなかった?」

 ボーは口を開いた。答えに詰まる少年をアニーは黙って見つめた。

 彼の返事がないまま、周りの誰かが言った。「どうやってやるんだよ? あいつを……あんなデカブツを」

 「何だって死にはする」アニーはブラスターの握りを親指でなぞった。

 ミラが再び苦痛の叫び声を上げる。アニーは上着の懐中に手を伸ばし、新鮮な青い煙入りの瓶を取り出した。自分が何をしているのかは意識していなかった。彼女は栓を抜き、前に進んでミラの鼻下に瓶を押し当てた。

 「息を吸って」

 少女はずっと震えたまま、息を吸い込む。アニーは少女を見つめながらも、見ているのは少女だけではなかった。自分の直感を信じて昨晩のうちに問題に対処していれば、こんなことは決して起こらなかっただろう。

 彼女は奥歯を食いしばった。フォーチュンは頭でアニーの肩を叩くが、今は目を合わせはしない。

 瓶に栓をして仕舞い込むと、アニーは言った。「私がやってやるよ」

 「何を?」

 「あれを殺してやる」

 先ほどよりも熱を帯びた別の囁きが広場を駆け巡った。

 ボーはミラをしっかりと抱きしめる。「一緒に行きます。手伝わせて下さい。ミラは僕の妹だから――僕が、僕が何かしなきゃ」

 他にも数人が同意し、志願者を募りはじめた。アニーは喉の焼けるような痛みを務めて無視した。

 無愛想な声で彼女は宣言した。「わかった。明日の夜明けに悪地を出よう」

 感謝の眼差しに耐えきれず、アニーはフォーチュンの手綱を掴むとその場から急いで去った。


 今となっては、あれはとんでもなく馬鹿な決断だった。

 間延びしたような時間が過ぎていくほどに、自分は一体何を考えていたのだろうとアニーは思い始めていた。あのガラガラワームは大きな問題ではあるが、自分の問題ではない。自分の身は――ほとんどの場合――自分で守ることができるし、気軽に力を貸すこともない。それでも彼女は、夜のうちにと翌朝のために砂丘に持ち込む背負い袋の中身をまとめていた。彼女は謎めいたあの行楽籠から塩漬け肉を取り出して放り込んだ。

 実のところ、自分があんなことをした理由はよくわかっている。それは、ミラを見ていたのに、トミーを見ていたからだ。蛇の毒を受けた少女に視線を向けながらも、自身の甥のこと、そして彼女自身の軽率で愚かな失敗のせいで甥が抱えている慢性的な苦痛のことを考えていたのだ。

 あれを殺したところで自分とトミーの関係が改善されるわけではない。しかしアニーはあの蛇に、自身の失策によってトミーの命を危険に晒すこととなった相手、凶暴な地獄拍車団の首領、アクルの顔を見たこともまた否定できなかった。もしかするとあの怪物を殺すことで、あの夜以来付きまとってくるアクルの一部を殺せるかもしれない。

 とんでもなく馬鹿な決断。だが取り消すには遅すぎる。

 彼女の歩みは廊下の向こうから聞こえる低いうめき声によって中断された。アニーは躊躇うことなく作業を放棄し、甥の部屋に向かった。彼女は戸棚に入っている青い煙の瓶に手を伸ばしながら尋ねた。「痛むかい?」

 ところが彼女がトミーに瓶を差し出しても、彼は首を逸らし、不快感を表すかのように上唇を丸めた。

 「薬が要らないのかい?」

 「いらない」トミーは苦しそうな声を発した。

 アニーは眉をひそめ、甥の表情に隠された無言の説明を理解しようとした。

 「疲れるんだ……いつも」苦労して言葉を発するとき、彼の指の関節は骨のように白くなる。

 青い煙には、疲労という副作用が伴う。けれどそのお陰で、苦痛の中でも眠ることができる。トミーにとってなくてはならないもののはずだ。とはいえ、疲労に嫌気がさした彼がそれを少し減らしたいと考えるのは、驚くことではないだろう。農場に引っ越してきて以来、彼はそのほとんどをこの部屋で過ごしているのだ。それでもアニーは不安になった。

 「わかったよ」彼女は説得したくてもしない。トミーは成長しており、彼の選択は彼のものであって、自分がしてやるべきではない。

 瓶を仕舞いながら、彼女は言った。「明日は留守にするよ。サドルブラシを恐怖に陥れてるガラガラワームの退治に手を貸すことになってね」

 トミーは反応しなかった。アニーはいそいそと戸棚の中身を片付けた。彼女は簡単には揺れ動かないが、トミーは努力しなければ震えてしまう。「明け方にカウボーイ志望者たちと出発する。いつ戻るかは分からない。まあ、明日の内には戻れるだろ」

 彼はまだ何も言わない。とうとうアニーは戸棚を閉めて振り返ることにした。トミーの顔は石のように固まっており、表情は読み取れなかった。

 沈黙が長引き、アニーはできることはやったとして部屋を出ることにした。トミーを歪めているのは、彼の体の痛みなのか、それとも心の怒りなのか。彼女には判断がつかなかった。いずれにせよ、すべては自分に返ってくるのだ。


 「なあ、あんたはここで一体全体何をしてんだい?」翌日。アニーが玄関に足を踏み出すと、ボーたちと一緒にジョディが待っていた。思わす口から最初に出てきた言葉がこれだった。

 男やもめは気にせず笑う。「悪いけど、君が一行を率いると聞いて戸惑ってね。これは年寄り連中のお出かけじゃないよね?」

 思わず、アニーはほんのわずかに微笑みを浮かべた。「なら思い出させてやるよ、じいさん。私らの中でブラスターを持ってるのはひとりだけだ」

 彼の笑みが顔に広がった。「わかったわかった。僕は旅立つ英雄たちを見送りに来ただけさ」

 旅立つ英雄。そんな言葉を聞くと顔から眼が完全に飛び出しそうになるが、それが彼の狙いなのだろう。だが言い返す前に背後の扉が開いた。そして振り返ると、言うべきだったかもしれないすべての言葉は消し飛んだ。

 歩行杖を脇に挟み、トミーがそこに立っていた。顔は青ざめ、息は乱れているが、立ち上がっていた。

 「お前」トミーは唸るような声を上げ、骨ばった指をボーに向けた。

 「僕?」元々青白いボーの頬は、残るわずかな色も失った。

 「叔母さんと一緒に帰ってくるんだ。でなければ許さない。聞こえたか?」

 「うん――いや、ええと、はい、ちゃんとわかった。叔母さんに何もないようにする――それでもし何かあったら、たぶん、うん、僕はやられて死ぬ」

 「いいだろう」トミーは腕を下げた。

 今のやり取りをどう受け止めればいいのか、アニーはわからなかった。この朝が何百もの異なる結果へと進むことは予測できていたが、こんなことが起こるとは思っていなかった。トミーとの関係からは――不愛想ながらの――愛情が消え去って久しかった。またそれを感じ取ることができ、彼女は泣きたくなった。それに……大勢の他人の前で愛情を注がれたことで、自身も一皮むけてやろうと思った。

 「よし、やろう」彼女はついに吼え、フォーチュンを連れてワーム退治へと出発した。


 アニーは1時間足らずで結論づけた。ボーは今まで出会った中で最も愛すべき、そして最も迷惑な人物だと。こんな若者が砂丘へガラガラワーム狩りになど向かうものではない。そして彼もそれを分かっているようで、そのせいか会話を止められないほど緊張しているようだ。日の出までに、アニーはボーの人生の物語を知り終えた。

 「それで、僕らの親は何か月か前に死んじゃったんです。その――実際にお父さんが死んじゃったのは7年前だけど、お母さんは今年のはじめに。ともかく、それでそういうことがあって。だから、僕らはみなしごなのかな。それとも――わからないです、僕はもう子供じゃないから、みなしごじゃないのかも。それにミラもみなしごじゃないと思います、僕がついてますから。とにかく、僕らだけ。僕らには僕らふたりしかいないんです。ああ――うん、僕らと町の人たち、ですね。僕らが初めて町に来た時にみんなでお母さんを助けてくれたし、お母さんが死んじゃったときも助けてくれました。本当に僕らだけだったら、どうしてたかわからないです。だけど、本当に自分しかいなくなるなんてことはないですよね? そんな風になったら誰も生きていけないですから」

 誰も生きていけない、そうだろうか?

 故郷の人々は、遠い昔からボーの気持ちを分かち合ってきた。アニーに人生をくれた故郷の地では、誰もが家族であり、家族がすべてだった。自分たちはサドルブラシの人たちの世話になっている、ボーはそう言った――故郷とはそうするものなのだろう。子供の世話は全員の務め。全員の世話が全員の務め。

 それはアニーが前々から知っていた生き方だった。そして、そうではなくなったのだが。今や彼女の過去のその部分は、詳しくは覚えていないが振り払うこともできない夢のように感じられる。

 玄関に置かれていたあの籠。胸元を掴んでくるジョディの手。

 身内という神聖なものを失うこと、それは自分が少し死ぬということだ。再びそんな思いをしたいなどとは望めない。そうなってしまえば、その望みは自分を飲み込むほどに大きくなってしまうだろうから。

 景色を朝日が染める中、アニーは地平線を確認するため思考を押しのけて目を細めた。はるか遠方で何か動きがあった。何を探すのか分かっていなければ、全く気付かなかったかもしれない。まだ見間違いの可能性もあるが。

 彼女はブラスターを握りしめ、厳しい表情を浮かべた。先に何があるのかよくわからないまま近づくような危険は冒せない。

 「はたから見ると少し変に思うかもしれないが」とアニーはボーに予告した。「静かにして、見えない何かが起こってると思って。いいね?」

 「あ――えーと、はい? わかりました」

 これで準備ができた。アニーは判断がつかない動きの方角へと顔を向け、強化された視覚を用いた。

 他の感覚が鈍くなった。傍目には何も起きていないが、その内側ではアニーが空間を突き進んでいた。突然、彼女は数百メートル離れた砂山の頂点に立ち、きらめく鱗を見下ろしていた。ガラガラワームは地面を掘り進み、ほとんど姿を消した後、小さな砂丘の反対側から飛び出した。近くの砂地には穴がある。この生物の巣穴の入り口のようだ。

 「捉えた」と彼女が囁くと、握りしめていたブラスターが熱くなり、彼女を体へと繋いだ。

 引き戻されるまでの数秒、周囲に見えた青銅色の輝きにアニーは躊躇した。ひどく驚き、彼女はもう一匹のガラガラワームの出現を見つめた。こちらの個体はかなり小さい。それは用心深く頭を小刻みに動かし、そっと覗き込む……親の姿を。大きいほうのガラガラワームは、赤ん坊が追いつくまで身体を揺らして招き寄せる。二匹は一緒に砂の上を滑り、熱を持つ地面を鱗がこすった。

 今にも飛び出してしまいそうな心臓が、彼女の内で更に激しく脈打った。

 誰もひとりでは生きていけない。

 そして窮地に追い込まれたものなら誰でも、不利な状況を打破して生き延びるためにやるべきことをするだろう。

 あのガラガラワームはアクルではない。ミラを傷つけた生き物を殺しても、トミーの苦痛に復讐することにはならない。体に戻ったアニーは、自分が何をすべきかを理解した。

 「見つかりましたか?」ボーが尋ねた。

 「ああ。少し先にいる」彼女はブラスターをホルスターに戻す。「さて、これから私たちがどうするべきかって話だが……」

 サドルブラシの人々は怒ってもいいはずだった。ガラガラワームとその赤ん坊を生かすと決めたこと、そして約束した通りに駆除するのではなく、餌が豊富で人とは出会わない砂丘の遠くへと追いやることについて。流血を伴わない解決策を積極的に受け入れてくれた町の人々に彼女が驚かされるのは、今回が初めてではなかったのだが。

 丸一日よく働いて疲労したアニーが帰宅したのは、日が暮れてからのことだった。彼女は皆に別れを告げ、馬と共に去っていく様子を微笑みながら見送った。フォーチュンが彼女を小突き、笑うかのようにいななく。アニーは彼の横顔にキスをして、馬小屋へと送った。

 服掛けに上着を掛けるときも、彼女は内心でまだ微笑んでいた。

 「うまくいったの?」

 廊下の角の向こうからトミーの声が聞こえ、アニーは振り向いた。

 甥は今朝よりも具合が良いようで、廊下に立ち、杖の頭を手で掴んでいた。シャワーを浴びたばかりだろうか?

 「それなりにね。トミー、この町にはいい人たちもいる。ここで自分たちの人生を本当に築けるかもしれない。私は……」

 彼はたじろいだ。痛み、けれどどんな類の?

 アニーの瞳が再び甥を見つめる。そしてこの時、彼の足元にある鞄に気づいた。

 「どこかに行くのかい?」

 「待ってたんだ、さよならを言うために」

 「え――」アニーは戸惑いとともに甥を見つめ、自身の前で手を握りしめた。「いや。どこに行くんだ?」

 「家にだよ、叔母さん」

 「ここがお前の――」

 「家に」彼は強調した。トミーの瞳には、青い煙に頼り始めてからは見られなかった炎が燃えていた。「みんなのところに戻るよ」

 自虐的な沈黙がふたりの間に漂い、打ち砕かれる時を待った。

 トミーは静かに認めた。「叔母さんがここに落ち着いてくれたのは嬉しいよ。でもここは家じゃない。叔母さんが言う人生にどうやって加わればいいかわからない。それに俺には……」

 彼は床に目をやった。「本当の薬が必要なんだ」

 彼を非難するには、計り知れないほどの残酷さが必要になる。胸が張り裂けそうになるのを止めることができない。

 「わかったよ」彼女は頷いた。「でもひとりで暗闇を歩くのは無理だ、少なくとも今夜はここに――」

 「準備はしてあるよ。実は、ジョディさんが計画を立てるのを手伝ってくれて。いい人だよ」

 いい人。次に会ったときに首をへし折ってしまいそうなほどに。

 「わかった」彼女はこらえ、頷いた。「ああ……待っててくれてありがとう。気を遣ってくれてたわけだ」

 「気を遣う?」トミーは顔をしかめた。

 「どれだけ私を憎んでいたことか」

 「ハセヤ……」

 家族から彼女がもらった本当の名前、アティインの名をトミーは呟いた。息が詰まった。トミーは前に進み出て叔母を抱きしめた。少しでも息ができたらアニーは泣いていただろう。彼は囁く。「嫌いになんかなれなかったよ。大好きだよ。ただここは……俺がいるべき所じゃないんだ」

 ここは自分がいるべき場所だろうか? アニーにはわからない。そうでありたいと願う。自分の過ちを赦すことができたなら、一歩を踏み出して何かを築くことができたなら、もしかしたら。

 また過ちを犯すのかもしれないが。

 「もう行かないと」トミーは親指を彼女の顔に押し当て、鞄を持ち上げた。あらゆる動きにまだ震えがあり、痛みが続いていることははっきりと分かるが、アニーがずっと見てきたよりも良くなっているようだった。

 トミーは自分が何をしているのかをわかっている。

 「永遠の別れじゃないよ」彼は母屋の玄関をまたいだ。「また会おうね」

 「血は流れることもある、けれど最後には始まった場所にたどり着く」彼女も頷いた。「またね」

 家から遠ざかる道にトミーの影がどんどん伸び、やがて消えていくにつれ、アニーは静かな真実を意識していった。それは鉛のように彼女の腹の内に沈み、希望と恐怖のもつれた塊を押しつぶし、そのすべてを完全に洗い流した。

 今こそ、自分が失っていた絆を築くべき時なのだ。あの町の人々が自分の家族になり、この人生が自分の人生になるかもしれない。しかし夜に帰宅すると、アニー・フラッシュと彼女の亡霊はいつまでもそこにいるのだと。


(Tr. Yuusuke Miwa / TSV Mayuko Wakatsuki)

  • この記事をシェアする

Outlaws of Thunder Junction

OTHER STORY

マジックストーリートップ

サイト内検索