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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
第107回:日本を背負う青き侍たち
読み物
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
2012.06.21
第107回:日本を背負う青き侍たち
こんにちはー。
先週末はワールド・マジック・カップ予選東京、大阪、「StarCityGames.com オープントーナメント/インビテーショナル」、そしてグランプリ・マニラと盛りだくさんの週末でした。
結果として、これら全てのイベントを「青白Delver」が制することとなったわけなのですが、改めて「青白Delver」一強時代を印象付ける週末になりましたね。
それでは、まずは日本代表を見事に勝ち取ったお二人のデッキリストから。
ワールド・マジック・カップ2012予選 優勝デッキ
8 《島》 1 《平地》 4 《氷河の城砦》 4 《金属海の沿岸》 3 《魂の洞窟》 2 《ムーアランドの憑依地》 -土地(22)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 4 《聖トラフトの霊》 4 《修復の天使》 -クリーチャー(16)- |
2 《はらわた撃ち》 3 《ギタクシア派の調査》 4 《蒸気の絡みつき》 4 《思案》 2 《思考掃き》 4 《マナ漏出》 1 《四肢切断》 2 《戦争と平和の剣》 -呪文(22)- |
3 《幻影の像》 2 《変異原性の成長》 1 《精神的つまづき》 2 《天界の粛清》 1 《神への捧げ物》 1 《四肢切断》 2 《機を見た援軍》 1 《雲散霧消》 2 《月の賢者タミヨウ》 -サイドボード(15)- |
8 《島》 1 《平地》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 3 《魂の洞窟》 2 《ムーアランドの憑依地》 -土地(22)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 4 《聖トラフトの霊》 4 《修復の天使》 -クリーチャー(16)- |
2 《はらわた撃ち》 2 《ギタクシア派の調査》 4 《蒸気の絡みつき》 4 《思案》 2 《思考掃き》 4 《マナ漏出》 2 《四肢切断》 2 《戦争と平和の剣》 -呪文(22)- |
2 《幻影の像》 2 《聖別されたスフィンクス》 1 《精神的つまづき》 1 《外科的摘出》 3 《天界の粛清》 1 《神への捧げ物》 2 《雲散霧消》 2 《機を見た援軍》 1 《殴打頭蓋》 -サイドボード(15)- |
どちらも100名を超える参加者が集ったワールド・マジック・カップ予選。これら両予選を通過したのは比較的オーソドックスな「青白Delver」でした。先週紹介したLSVのリストに大きな影響を受けていると思われますが、サイドボードに少し多めにビートダウン対策を取っているのが印象的です。
《天界の粛清》と《機を見た援軍》がそれにあたりますが、これは特に「黒赤/黒青ゾンビデッキ」を意識してのことでしょう。
「ゾンビ」デッキは1ターン目から《墓所這い》や《戦墓のグール》などパワー2の軍団を大量展開してくることに加え、除去もしっかりしているので、メインボードは若干厳しい戦いを強いられます。
ですがしっかりとサイドボードを取っていれば安定した勝率が見込めるので、田中さんと中井さんのように《天界の粛清》と《機を見た援軍》をきちんとサイドボードに用意しておくといいでしょう。
先週も少し触れましたが、近頃では《血の芸術家》や《名門のグール》のような《機を見た援軍》に強いカードが「ゾンビ」デッキに採用される傾向にあるので、《機を見た援軍》だけで対抗するよりも《天界の粛清》と併用するのが好ましいと思います。
結果として奇しくも日本代表をふたつの「青白Delver」が掴み取ったわけなんですが、海を渡ったマニラでは、日本代表のリーダーがこれ以上ない結果を残しています。
グランプリ・マニラ優勝「Samurai Delver」
8 《島》 1 《平地》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 2 《ムーアランドの憑依地》 -土地(19)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 4 《聖トラフトの霊》 3 《修復の天使》 -クリーチャー(15)- |
4 《ギタクシア派の調査》 3 《はらわた撃ち》 1 《変異原性の成長》 4 《思案》 4 《思考掃き》 4 《蒸気の絡みつき》 3 《マナ漏出》 3 《ルーン唱えの長槍》 -呪文(26)- |
2 《幻影の像》 2 《精神的つまづき》 1 《はらわた撃ち》 1 《変異原性の成長》 3 《天界の粛清》 1 《マナ漏出》 1 《幽体の飛行》 1 《雲散霧消》 2 《機を見た援軍》 1 《戦争と平和の剣》 -サイドボード(15)- |
日本の頼れるチームリーダー、渡辺 雄也が自身6度目となるグランプリ優勝を果たしました。以前もお伝えしたように、彼のアベレージは驚異と言う他ありません。
グランプリ・クアラルンプールを個性的なリストで制したなべ君は、前回に引き続き今回もオリジナリティの強いリストで世間を驚かせています。海外では「Samurai Delver」なんて呼ばれ方をされているようですね。
まずは最近では21~22枚が一般的になってきた土地が19枚まで減量されていること。
第95回で《ギタクシア派の調査》or《思考掃き》という議論を展開したことがありましたが、今回は土地を削ったことで両方とも4枚ずつ採用されています。
ドローサポートが12枚搭載されているリストはかなり珍しいですが、これはマナフラッドに陥る危険性を減らすためにスペルを増量した形で、それに伴い《ルーン唱えの長槍》をより一層効果的に活用することができるようになっています。
余談ではありますが、今現在は《修復の天使》の存在ゆえに、《ギタクシア派の調査》は以前よりも重要なカードになったと感じています。手札さえ見ることができればその他の攻防もグッと楽になりますし、ミラーマッチが苦手だという方はぜひとも《ギタクシア派の調査》を多めに積んで練習してみていただければと思います。
それと《変異原性の成長》もまた、《修復の天使》を巡る駆け引きにおいて非常に重宝する1枚です。
これさえあれば《昆虫の逸脱者》や《聖トラフトの霊》で《修復の天使》に臆することなくアタックすることができますし、第95回で紹介した時よりも効果的な場面が増えているように思えます。
なべ君のリストは一般的なものと比べて「ファイレクシア・マナ」のカードが多少増えていますが、《四肢切断》を抜くことでライフの損失を抑えるように工夫されています。
前述の通りクリーチャーがいれば《変異原性の成長》でも《修復の天使》とのぶつかり合いを制することができるので、この辺りのさじ加減も絶妙ですね。ただしそうは言っても闇雲にプレイしているとライフの損失がとんでもなくなってしまうので、唯一マナを支払ってキャストできる《ギタクシア派の調査》は慎重にプレイするように心掛けておくといいでしょう。
サイドボードの《幽体の飛行》は、主に《古えの遺恨》を入れてくる「赤緑」系統のデッキ用だと思われます。
最近ではサイドボードカードとして定着してきた《押し潰す蔦》が良い例ですが、アーティファクトは割れてもエンチャントには触れないデッキは多いので、そういった相手に疑似装備品としての活躍が見込めます。
あとはなべ君もビートダウンデッキ対策を多めに採用している点が目を引きます。前述の通り少し「ファイレクシア・マナ」が多いこともあり、1戦目は一般的な「青白Delver」よりも「ゾンビ」デッキなどに手を焼くことが多いので、サイドボードではそれを補うべくしっかりと対策カードが取られています。
個人的には《魂の洞窟》がメインから搭載されるようになったくらいで「青白Delver」の進化もそろそろ終わるだろうと思っていたのですが、日本が世界に誇る名手は「青白Delver」の新たな可能性を世界に示してくれました。
最近では《魂の洞窟》を入れたデッキが増えてきているので、それを加味して《マナ漏出》をメインに3枚、サイドに1枚というバランスにしたのもさすがですね。
お次はその《魂の洞窟》を有効活用したデッキの好例ということで、Martin Juzaのデッキをご覧いただきましょう。
「4 Spell Naya(赤緑白)」
3 《森》 2 《山》 2 《平地》 4 《銅線の地溝》 4 《剃刀境の茂み》 4 《魂の洞窟》 4 《ガヴォニーの居住区》 -土地(23)- 4 《アヴァシンの巡礼者》 4 《極楽鳥》 3 《絡み根の霊》 3 《スレイベンの守護者、サリア》 4 《刃の接合者》 4 《国境地帯のレインジャー》 4 《高原の狩りの達人》 4 《修復の天使》 3 《霊誉の僧兵》 -クリーチャー(33)- |
4 《忌むべき者のかがり火》 -呪文(4)- |
2 《刃砦の英雄》 2 《ウルフィーの銀心》 3 《士気溢れる徴集兵》 2 《天界の粛清》 2 《焼却》 1 《古えの遺恨》 1 《垂直落下》 1 《押し潰す蔦》 1 《忘却の輪》 -サイドボード(15)- |
こちらはスペルが《忌むべき者のかがり火》だけの目新しい「ナヤ」デッキです。
このデッキはクリーチャータイプを「人間」に寄せることで、《魂の洞窟》をフル活用できるように構築されており、現環境の大本命デッキである「青白Delver」にはそれを駆使して攻めていくことになります。これくらいまでにクリーチャータイプが統一されていると《魂の洞窟》を引けばそれだけで相当に有利になりますし、これはこのデッキに限らず、「ナヤ《出産の殻》」デッキなんかでもよく見る手法です。
この系統のデッキは「アヴァシンの帰還」で大きくデッキパワーが向上しており、《魂の洞窟》を抜きにしても《修復の天使》と《忌むべき者のかがり火》のおかげでこのデッキの露出はかなり増えてきています。
実際にMagic Online(以下MO)でも見かける機会も多くなっていますし、今後更なる活躍が期待されるアーキタイプのひとつですね。
このデッキは《絡み根の霊》、《刃の接合者》、《高原の狩りの達人》と各マナ域にアドバンテージの取れるクリーチャーが採用されているので、ビートダウンデッキに強い構成になっています。
その反面でコントロールデッキ、とりわけ《審判の日》のような全体除去を擁するデッキに相性が悪いので、もしかするとサイドボードに《出産の殻》を入れてもいいかもしれません。
Juza曰く、対戦相手がこのデッキを「《出産の殻》」だと勘違いして無駄カードである《神への捧げ物》のようなカードをサイドインしてきやすいこともこのデッキの強みだ、とのことですが、全体除去を乗り越えるためにサイド後は《出産の殻》や《饗宴と飢餓の剣》《戦争と平和の剣》のような全体除去に耐性の付く(または少量のクリーチャーで誘いやすい)アーティファクトに頼るのも悪くない案だと思います。
真面目な考察はこの辺りにして僕の率直な感想を述べると、なぜ《出産の殻》が入ってないんだとびっくりしました。これだけ連鎖がスムーズにできそうなデッキに《出産の殻》を入れないなんて信じられません! 最近はあまり「《出産の殻》」デッキに触れていなかったこともあり、お次は「《出産の殻》」の入ったデッキを見てみましょう。
「青緑赤《出産の殻》」
10 《森》 4 《銅線の地溝》 4 《内陸の湾港》 2 《島》 2 《山》 2 《根縛りの岩山》 -土地(24)- 4 《極楽鳥》 4 《ラノワールのエルフ》 4 《絡み根の霊》 2 《幻影の像》 1 《国境地帯のレインジャー》 1 《夜明けのレインジャー》 1 《詐欺師の総督》 1 《霊気の達人》 1 《ファイレクシアの変形者》 4 《高原の狩りの達人》 1 《士気溢れる徴集兵》 1 《酸のスライム》 1 《ウルフィーの銀心》 1 《業火のタイタン》 -クリーチャー(27)- |
4 《出産の殻》 4 《緑の太陽の頂点》 1 《忌むべき者のかがり火》 -呪文(9)- |
3 《地獄乗り》 1 《グリセルブランドの猟犬》 2 《士気溢れる徴集兵》 1 《棘投げの蜘蛛》 1 《聖別されたスフィンクス》 3 《電弧の痕跡》 1 《古えの遺恨》 2 《押し潰す蔦》 1 《ケッシグの狼の地》 -サイドボード(15)- |
《修復の天使》の加入も相まって、最近では「ナヤ」カラーが一般的な《出産の殻》デッキですが、こちらは少し珍しい「青緑赤」バージョンです。
青を選ぶ最大の理由はデッキの動きと相性が良く、それでいて《聖トラフトの霊》を効率よく除去できる《幻影の像》が使用できることです。
これは対「青白Delver」戦で非常に重要なことで、サイドボード後は《棘投げの蜘蛛》や《押し潰す蔦》もあるので戦況をかなりコントロールしやすくなります。その気になれば《焼却》も使うことができますし、サイドボード後はいかにして「青白Delver」の攻めを防ぐかが焦点になります。
そういった場合、本来であれば唯一除去の効かない《聖トラフトの霊》の存在がネックになるものですが、《幻影の像》があればそれも対処しやすいというわけですね。
これらふたつのデッキだったり、先週紹介したいくつかのデッキが良い例ですが、多くのプレイヤーが「青白Delver」を倒すために試行錯誤を繰り返しています。
それでも勝ち続ける「青白Delver」の強さはお見事と言う他ありませんが、やはり《魂の洞窟》は最も簡単な解答のひとつだと思うので、Juzaのような構築は参考になるのではないかと思います。
今週は以上です。「青白Delver」のミラーマッチ対策も《魂の洞窟》だったり、なべ君のように《はらわた撃ち》多めだったりと様々な形が出てきていますし、その他のデッキもなんとかして王者の牙城を崩そうと四苦八苦している様子が伺えます。
日本代表最後の一枠を巡る戦い、ワールド・マジック・カップ予選・名古屋まで残り1週間強に迫ってまいりましたが、来週、再来週の連載では「青白Delver」以外のデッキの変化にスポットを当てられればと思います。
それと、スタンダードではありませんが、今週末にはグランプリ・横浜が開催されますね。僕は学校があるので家でカバレージのお手伝いをしつつの観戦になりそうですが、どんなデッキやプレイヤーが活躍するのか今から楽しみです。参加されるみなさんはがんばってください。
それでは、また来週ー!
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