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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
第106回:ワールド・マジック・カップ予選&グランプリ・マニラ メタゲーム予想
読み物
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
2012.06.14
第106回:ワールド・マジック・カップ予選&グランプリ・マニラ メタゲーム予想
こんにちはー。
今週末はいよいよワールド・マジック・カップ予選が東京と大阪の2箇所で開催されます。
一足先にアメリカで行われたワールド・マジック・カップ予選では、チーム「ChannelFireball」の総帥であるLSVことLuis Scott-Vargasが見事に予選突破をはたしており、すでにプロポイントで権利を獲得していたBrian Kiblerと合わせて、日本にとって大きな壁と言える凶悪なチームが形成されています。
今週の記事では、そのワールド・マジック・カップ予選とグランプリ・マニラに向けてメタゲーム予想をしていきますが、その前にひとつお知らせがあります。
みなさんの温かいご声援のおかげで、今まで2年以上の間連載が続いてきた「スタンダード・アナライズ」なんですが、来月の頭の7月5日を持って連載を終了させていただくことになりました。
これはそろそろ就職活動に向けて色々と動き始めなければいけないためで、本音としてはもっともっと連載を続けたい気持ちでいっぱいの中での苦渋の決断となりました。
連載を始めた当時から本当に多くの人々に支えられながら、なんとかここまで続けることができましたが、この場を借りて改めてお礼を申し上げたいと思います。今まで本当にありがとうございました。残り少ない連載期間になりますが、最後までお付き合いのほうよろしくお願いいたします。
さて、そんなわけでおそらくこれが最後のメタゲーム予想になります。今週はアメリカのワールド・マジック・カップ予選を中心に、最新のデッキリストを交えながら見ていきましょう。
~ワールド・マジック・カップ予選&グランプリ・マニラ メタゲーム予想~
Tier1
- 「青白Delver」
- 「赤緑《ケッシグの狼の地》」
- 「赤緑ビートダウン」
- 「黒青・黒赤ゾンビ」
Tier2
- 「エスパー(青白黒)コントロール」
- 「《出産の殻》(主に赤緑白、青緑白、4色)(第90回)」
- 「Delver-Spirits(青白黒)(第90回)」
- 「青赤Delver」
- 「白黒トークン(第93回)」
第99回で行ったメタゲーム予想と酷似していますが、当時よりも「青白Delver」の一強状態に拍車がかかっているという印象を受けています。
強いデッキというものは当然ながら使用者の数も多いので、やはりデッキが成長する速度も他に比べて圧倒的に早く、今では《刃の接合者》の入ったリストや、KJが紹介していた《秘密を掘り下げる者》の入っていない「青白No-Delver」など、実に様々なデッキリストが登場しています。
さらには「Delver」デッキは「青白」というカラーリングにとどまらず、《未練ある魂》を軸に据えた「Delver-Spirits(青白黒)」だったり、《火柱》《忌むべき者のかがり火》のために赤を足した「青赤Delver」だったり本当に多くのバリエーションが存在するため、Magic Online(以下MO)をやっていると対戦するデッキの半数以上が「Delver」デッキだった、なんてことも日常茶飯事です。
一応その他のデッキもそれなりの数はいるので上記のように分類しましたが、実質的には「青白Delver」がTier1でその他の3つのデッキはTier1.5といったところでしょう。
今週はその大本命中の大本命である「Delver」デッキを中心に見ていきたいと思います。まずは見事にアメリカ代表を勝ち取ったLSVのリストからご覧いただきましょう。
「青白Delver」
8 《島》 4 《氷河の城砦》 4 《金属海の沿岸》 3 《魂の洞窟》 2 《ムーアランドの憑依地》 1 《平地》 -土地(22)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 4 《聖トラフトの霊》 4 《修復の天使》 -クリーチャー(16)- |
3 《ギタクシア派の調査》 2 《はらわた撃ち》 4 《思案》 2 《思考掃き》 4 《蒸気の絡みつき》 4 《マナ漏出》 1 《四肢切断》 2 《戦争と平和の剣》 -呪文(22)- |
2 《幻影の像》 3 《刃砦の英雄》 1 《精神的つまづき》 3 《天界の粛清》 1 《神への捧げ物》 1 《四肢切断》 2 《雲散霧消》 2 《月の賢者タミヨウ》 -サイドボード(15)- |
王道中の王道。前述の通り「Delver」にはいくつものバリエーションがありますが、LSVが使用したデッキはこれぞ「青白Delver」といった、オーソドックスなものをアップデートしたリストでした。
試合後のLSVにインタビューをした動画が公開されていた(参考)ので、その内容も踏まえつつ、更なる進化を遂げたこのデッキを見ていきましょう。
まずは最早4枚採用が当たり前になってきた感のある《修復の天使》。先々週もお伝えしたように、この天使の存在ゆえに環境に《四肢切断》や《焼却》が増えたりと、スタンダードに多大な影響を与えた1枚です。
単体でも十分な戦闘能力を誇る《修復の天使》のおかげで、「青白Delver」は以前よりも装備品への依存度が下がっています。例えば第85回で紹介した《不可視の忍び寄り》+大量の装備品という形だと、サイド後の《古えの遺恨》や《神への捧げ物》に苦しめられることが多かったのですが、今の《修復の天使》入りのリストであれば単体で弱いクリーチャーが入っていないため、装備品を抜き切るサイドプランを容易に実行することができます。
4マナ起きている「青白Delver」を相手取る際には、常に《修復の天使》を考慮した上でアタックするかどうか決めなくてはなりませんし、「青白Delver」を更なる高みへと到達させた1枚ですね。
そしてミラーマッチが圧倒的に多い現状を加味し、メインに3枚も採用された《魂の洞窟》もまた、「青白Delver」の一強時代を象徴する1枚だと言えます。
ミラーマッチにおいて《聖トラフトの霊》が問答無用で通るだけでも土地とは思えない強力な効果ですし、ただ単に「天使」と宣言しておくだけでも対戦相手に大きなプレッシャーを与えることができます。
『アヴァシンの帰還』発売前は「青白Delver」対策として期待されていたカードですが、それがまさかミラーマッチを制する鍵になろうとはなんとも皮肉な話です。
それ以外に気になる点はサイドボードの《刃砦の英雄》と《月の賢者タミヨウ》でしょうか。
前者は「赤緑ビートダウン」や「《出産の殻》」デッキなどが《棘投げの蜘蛛》《垂直落下》《押し潰す蔦》あたりを使用するようになったために採用したとのことです。
前述の通り今現在の「青白Delver」は装備品にあまり依存していないため、それよりも《修復の天使》に効果的な飛行クリーチャー対策が取られることが多くなっています。《刃砦の英雄》はそんな対戦相手の思惑を外せる素晴らしいチョイスで、サイド後に《修復の天使》と入れ替えるようですね。
《月の賢者タミヨウ》は対コントロールの必殺兵器。
以前は《記憶の熟達者、ジェイス》が採用されていたスペースですが、最近のコントロールデッキと言えば《太陽のタイタン》《未練ある魂》《堀葬の儀式》などで墓地を活用するものが多いので、[0]能力を使いづらく、勝つまでに結構な時間がかかります。[+1]能力を自分に対して使い、毎ターンドローが増えるだけでも十分に強いカードですが、《月の賢者タミヨウ》ならば土地を寝かすことで《マナ漏出》の賞味期限を伸ばしてくれたり、《太陽のタイタン》を寝かすことで延命したりもできますし、盤面に干渉しやすいことが《月の賢者タミヨウ》の長所と言えるでしょう。
「青赤Delver」
9 《島》 5 《山》 4 《硫黄の滝》 2 《魂の洞窟》 1 《僻地の灯台》 1 《進化する未開地》 -土地(22)- 4 《秘密を掘り下げる者》 2 《渋面の溶岩使い》 4 《瞬唱の魔道士》 3 《枷霊》 1 《孤独な亡霊》 -クリーチャー(14)- |
4 《思案》 4 《蒸気の絡みつき》 4 《火柱》 3 《思考掃き》 3 《マナ漏出》 2 《熟慮》 1 《雲散霧消》 3 《忌むべき者のかがり火》 -呪文(24)- |
3 《幻影の像》 3 《士気溢れる徴集兵》 1 《聖別されたスフィンクス》 1 《圧壊》 2 《焼却》 2 《鞭打ち炎》 1 《古えの遺恨》 1 《雲散霧消》 1 《小悪魔の遊び》 -サイドボード(15)- |
グランプリ・ミネアポリスを優勝してからというもの、MO界でも密かに人気を集めているアーキタイプですが、時間が経つに連れリストにも変化が現れてきました。
《枷霊》は《修復の天使》にも負けないサイズと、その軽さが魅力の1枚。デメリットもほとんどないようなものですし、ビートダウン相手にも強いカードということで非常に重宝しますね。
もう一方の《孤独な亡霊》は密かに注目している1枚で、《修復の天使》の影響で単体除去が増えてきた現状であれば、《聖別されたスフィンクス》よりも強い局面があるくらいです。
《枷霊》も《孤独な亡霊》もクリーチャータイプが「スピリット」ということで、相手のデッキにカウンター呪文が含まれている場合には、《魂の洞窟》で「スピリット」を宣言してこれらのクリーチャーでプレッシャーをかけていくことになります。
「青白」バージョンでも《聖トラフトの霊》のクリーチャータイプが「スピリット」なので、《魂の洞窟》との兼ね合いという意味合いでも、《孤独な亡霊》は今後「青白」で採用される可能性があるのではないかと思います。
それとこのデッキは《戦争と平和の剣》を苦手としているので、サイドボードには_megafone_さんのようにアーティファクト破壊をしっかりと採用しておきましょう。
「赤緑《ケッシグの狼の地》」
4 《森》 3 《山》 4 《銅線の地溝》 4 《根縛りの岩山》 4 《魂の洞窟》 4 《微光地》 2 《墨蛾の生息地》 1 《ケッシグの狼の地》 -土地(26)- 4 《真面目な身代わり》 4 《高原の狩りの達人》 4 《業火のタイタン》 4 《原始のタイタン》 -クリーチャー(16)- |
4 《不屈の自然》 4 《太陽の宝球》 2 《火柱》 3 《鞭打ち炎》 3 《金屑の嵐》 2 《内にいる獣》 -呪文(18)- |
2 《士気溢れる徴集兵》 3 《焼却》 2 《帰化》 1 《古えの遺恨》 2 《内にいる獣》 1 《小悪魔の遊び》 2 《解放された者、カーン》 1 《ケッシグの狼の地》 1 《幽霊街》 -サイドボード(15)- |
アメリカのワールド・マジック・カップ予選を勝ち抜いたもうひとつのデッキは、「赤緑《ケッシグの狼の地》」でした。
このリストの特徴的な部分は、メインに《魂の洞窟》と《微光地》の両カードを採用しているところでしょう。
これにより《不屈の自然》《鞭打ち炎》などを序盤にキャストできなかったり、マリガンするリスクは多少なりとも増えていますが、その分《原始のタイタン》のポテンシャルは最大限に発揮できるようになっています。
このリストはMOで使ってみてかなり勝率がよかったので、ワールド・マジック・カップ予選に「赤緑《ケッシグの狼の地》」を持ち込むつもりのみなさんは、ぜひ一度お試しください。
「赤緑ビートダウン」
11 《森》 1 《山》 4 《銅線の地溝》 4 《根縛りの岩山》 4 《ケッシグの狼の地》 -土地(24)- 4 《極楽鳥》 4 《ラノワールのエルフ》 4 《絡み根の霊》 4 《国境地帯のレインジャー》 4 《高原の狩りの達人》 1 《最後のトロール、スラーン》 3 《ウルフィーの銀心》 -クリーチャー(24)- |
4 《緑の太陽の頂点》 4 《忌むべき者のかがり火》 2 《饗宴と飢餓の剣》 2 《戦争と平和の剣》 -呪文(12)- |
2 《最後のトロール、スラーン》 2 《士気溢れる徴集兵》 2 《古えの遺恨》 2 《焼却》 2 《押し潰す蔦》 2 《饗宴と飢餓の剣》 1 《戦争と平和の剣》 2 《殴打頭蓋》 -サイドボード(15)- |
グランプリ・神戸でも上位入賞をはたしているkbr3さん。その勢いはとどまることを知らず、プロツアー・ラヴニカへの回帰予選も突破してしまいました。
ここまででも何度か紹介させていただいたように、近頃の「赤緑ビートダウン」はサイドボードに《修復の天使》対策として《焼却》や《押し潰す蔦》を積むのが一般的になっています。kbr3さんはそのれに加え《修復の天使》でも止まらない《最後のトロール、スラーン》を採用することで、《修復の天使》に臆することなく攻勢を維持できる構成に仕上げています。
先ほどの「赤緑《ケッシグの狼の地》」もそうですが、赤いデッキならサイドボードに《焼却》を取ったりと、どのデッキを使うにしろしっかりとした《修復の天使》対策を心掛けておきたいですね。
「黒赤ゾンビ」
11 《沼》 4 《黒割れの崖》 3 《竜髑髏の山頂》 4 《魂の洞窟》 -土地(22)- 4 《戦墓のグール》 4 《墓所這い》 2 《煙霧吐き》 4 《名門のグール》 2 《血の芸術家》 2 《鬱外科医》 4 《ゲラルフの伝書使》 4 《ファルケンラスの貴種》 -クリーチャー(26)- |
2 《悲劇的な過ち》 3 《ゲスの評決》 3 《破滅の刃》 4 《四肢切断》 -呪文(12)- |
2 《鬱外科医》 2 《スカースダグの高僧》 2 《はらわた撃ち》 2 《死の重み》 2 《漸増爆弾》 2 《倦怠の宝珠》 1 《迫撃鞘》 2 《ヴェールのリリアナ》 -サイドボード(15)- |
最後はふたつの「ゾンビ」デッキを。
「ゾンビ」デッキは十分なデッキパワーを誇るものの、《天界の粛清》《機を見た援軍》という2種類のキラーカードが環境に存在するため、勝てるかどうかはそれらのカードの流行り具合次第と言ったところです。
《名門のグール》や《血の芸術家》を採用することで《機を見た援軍》ならなんとか乗り越えられると思いますし、《ファルケンラスの貴種》で強引に乗り越えることもできます。
ただし最近では《刃の接合者》の露出が増えてきているので、《名門のグール》の枠に関しては再考が必要かもしれません。
2色目を赤にする最大の理由は《ファルケンラスの貴種》であり、単純なカードパワーもさることながら、これもまた《修復の天使》を気にせず殴れるという点でも頼りになりますね。
「黒青ゾンビ」
9 《沼》 4 《闇滑りの岸》 4 《水没した地下墓地》 4 《魂の洞窟》 -土地(21)- 4 《戦墓のグール》 4 《墓所這い》 4 《血の芸術家》 3 《名門のグール》 4 《幻影の像》 4 《ゲラルフの伝書使》 3 《戦墓の隊長》 -クリーチャー(26)- |
4 《思案》 3 《悲劇的な過ち》 3 《ゲスの評決》 3 《迫撃鞘》 -呪文(13)- |
2 《外科的摘出》 1 《はらわた撃ち》 1 《精神的つまづき》 2 《脳食願望》 1 《虚無の呪文爆弾》 2 《否認》 1 《破滅の刃》 1 《喉首狙い》 2 《漸増爆弾》 2 《攻撃的な行動》 -サイドボード(15)- |
もうひとつの「黒青」バージョンは《聖トラフトの霊》対策としても最上級に位置する《幻影の像》を自然に採用できるところです。
最近では《思案》入りのリストをよく見かけるようになりましたし、他にも《奈落に住まう騙し屋》と《蒸気の絡みつき》を入れたアグレッシブなリストも見かけるので、「青白Delver」以外のデッキにもまだまだ成長の余地はありそうですね。
本編はここまでになります。《修復の天使》が与えた影響は本当にすごいですね。最後に、それを最もよく現した「青白No-Delver」をチェックしてお別れしましょう。
「青白No-Delver」
8 《島》 5 《平地》 4 《氷河の城砦》 4 《金属海の沿岸》 2 《ムーアランドの憑依地》 1 《魂の洞窟》 -土地(24)- 4 《瞬唱の魔道士》 4 《刃の接合者》 4 《修復の天使》 1 《聖別されたスフィンクス》 -クリーチャー(13)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《思案》 3 《蒸気の絡みつき》 4 《マナ漏出》 2 《四肢切断》 1 《審判の日》 3 《ギデオン・ジュラ》 2 《月の賢者タミヨウ》 -呪文(23)- |
1 《幻影の像》 1 《聖別されたスフィンクス》 1 《鋼の妨害》 1 《蒸気の絡みつき》 1 《天界の粛清》 1 《神への捧げ物》 1 《否認》 1 《忘却の輪》 2 《雲散霧消》 2 《機を見た援軍》 2 《審判の日》 1 《記憶の熟達者、ジェイス》 -サイドボード(15)- |
《修復の天使》の登場によって誕生したのがこちらの「青白No-Delver」。メインから大量に投入されたプレインズウォーカーや、メインとサイドで合わせて3枚取られた《審判の日》が象徴するように、どちらかというと「青白Delver」というよりは「青白コントロール」に近い構成です。
基本的には1対1交換を繰り返し、《瞬唱の魔道士》や《刃の接合者》を《修復の天使》で使いまわすことでアドバンテージ差を広げていきます。そして十分な時間が稼げればあとはプレインズウォーカーや《聖別されたスフィンクス》がゲームを決めてくれるという算段ですね。
土地が多めになっていることからも伺えるように、安定性は「青白Delver」よりも優れているとは思いますが、《秘密を掘り下げる者》がいないせいで失ってしまった爆発力は少し気になりました。
ただし《刃の接合者》を採用しているため、対ビートダウン性能は上がっていると思いますし、ビートダウンが多いと読むのであればこのようなアプローチも選択肢に入れていいでしょう。
今週は以上です。連載を終了することが決まって残念な気持ちでいっぱいですが、残り少しの期間も精一杯取り組んでいこうと思います。次週はワールド・マジック・カップ予選かグランプリ・マニラの結果を特集する予定です。
それでは、また来週ー!
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