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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ

第85回:1枚のカードが世界を変える!? 年末年始のメタゲーム

読み物

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ

2012.01.12

第85回:1枚のカードが世界を変える!? 年末年始のメタゲーム


 あけましておめでとうございます。みなさまのおかげで、今年も連載を続けさせていただけることになりました。今年はもっともっと分かりやすく、簡潔に、をモットーにがんばっていきたいと思います。今年は留年しなければ就職活動があるので、今のところいつまで連載を続けられるか不確定ではありますが、それまでは力の限りがんばらせていただきます! 今年も何卒よろしくお願いいたします。

The Finals 2011

 連載をお休みしていた間に、The Finals 2011と「StarCityGames・オープントーナメント・アトランタ」というふたつのビッグイベントがありました。今週は主にThe Finals2011の結果と、Magic Online(以下MO)から紐解く最新のメタゲームをチェックしていきたいと思います。

 前回メタゲームをチェックしてから結構な時間が経っているので、まずは年末年始にかけてのMOのメタゲームを見ていきましょう。


~Magic Online・年末年始のメタゲーム~

Tier1
  • 「青白イリュージョン(第79回)」
  • 「青白人間ビートダウン(第77回)」
Tier2

 辺り一面の銀世界。
 そんな冬にぴったりの台詞が当てはまる青白だらけのメタゲームとなりました。MOのトーナメントの結果が載っている「What's happening?」には、3勝1敗か4戦全勝をはたしたデッキしか載っていないのですが、その好成績を残したデッキのうち、なんと55%が「青白イリュージョン」と「青白ビートダウン」という驚きの結果だったのです。

 このふたつのデッキがここまで増えた理由は・・・
 ...っと本題に入るその前に、少し脱線してしまいますが、いつも読ませていただいてる記事をご紹介させていただきます。


MOメタゲーム分析記事紹介

 僕は記事用や大会に臨む際にメタゲームを調査する時は、「What's happening?」のほとんどのデッキを見ているのですが、これにはメリットとデメリットがあります。
 これを行うメリットは、それは至極簡単なもので、凄まじい勢いで知識が増えていくことです。流行のデッキやカード、はたまた珍しいデッキリストなど、「What's happening?」を見るだけでも相当に情報量が増えます。
 一方でデメリットはと言いますと、これにはかなりの時間が必要な上に、毎日のように見ていると、日に日に得るものが減っていき、かけた時間の割りにリターンが少なくなっていくというものです。僕はこの「What's happening?」の結果と、自身がMOで当たった回数を基にメタゲームを導き出しているのですが、最近見つけたとある方の記事で、MOのメタゲームを簡単に把握できるようになりました。それがこちらです。

 MOスタンDEの使用デッキタイプ集計(12/29~1/4) (isshii の MTG 日記 より)

 isshiiさんは、1週間ごとにスタンダードで3勝1敗、または4戦全勝を記録したデッキ分布を表にしてくださっています。他にも使用率の高いカードを調べてあったりと、まさに至れり尽くせり。この記事さえ読んでいれば、MOの流行はばっちりです。僕はisshiiさんと直接の面識はないのですが、この記事を見て一瞬でファンになってしまい、今では更新を楽しみにするまでに至りました。MOと現実世界では少しメタゲームが違うものの、僕みたいに主にMOをプレイしているプレイヤーにしてみれば、これ以上ないほど有益な情報を発信してくださっているすばらしい記事です。

 それに、MOで勝ち組になるデッキは、その後に必ずと言っていいほど現実世界でも活躍する傾向にあるので、MOをプレイしていない方にとっても、非常に役に立つ情報だと思います。最近で言えば「緑白/青白ビートダウン」や「青白イリュージョン」が良い例ですね。

 今回のメタゲーム表は、isshiiさんの記事のデータを引用させてもらいましたし、「What's happening?」「Decks of the Week」をチェックするお時間のない方は、ぜひisshiさんの記事を参考にしてみてください。


「青白」の強さ

 さて、それでは本題に入りましょう。このふたつのデッキがここまで増えた理由としては、メタゲーム云々というよりも、デッキの動きが安定していること、そしてぶんまわった際の爆発力が高いことが挙げられると思います。

 「青白イリュージョン」は、《秘密を掘り下げる者》などを《蒸気の絡みつき》や《マナ漏出》でバックアップする有無を言わさぬゲーム運びで、

 「青白ビートダウン」は《ミラディンの十字軍》や《聖トラフトの霊》を《清浄の名誉》、《天使の運命》でバックアップする圧倒的な攻撃力を持ってしてゲームを支配します。
 どちらも理想的な動きをされると手が付けられないほどに強く、それでいて安定性も高いので困ったものです。

 凄まじい勢いで押し寄せるこの青白の波は、MO界ほどではないとはいえ、現実世界にも確実に浸透してきており、実際にThe Finals 2011でもトップ8に2人を送り込む活躍を見せました。

中村 裕輔
The Finals 2011 / 準優勝[MO] [ARENA]
11 《平地
1 《
4 《金属海の沿岸
4 《氷河の城砦
4 《ムーアランドの憑依地

-土地(24)-

4 《宿命の旅人
4 《教区の勇者
2 《ギデオンの法の番人
4 《堂々たる撤廃者
2 《レオニンの遺物囲い
4 《ミラディンの十字軍
4 《聖トラフトの霊
2 《悪鬼の狩人
2 《刃砦の英雄

-クリーチャー(28)-
4 《清浄の名誉
2 《天使の運命
2 《迫撃鞘

-呪文(8)-
1 《レオニンの遺物囲い
4 《マナ漏出
1 《存在の破棄
2 《四肢切断
4 《機を見た援軍
1 《忘却の輪
2 《戦争と平和の剣

-サイドボード(15)-
阿部 裕司
The Finals 2011 / ベスト8[MO] [ARENA]
10 《平地
2 《
4 《金属海の沿岸
4 《氷河の城砦
4 《ムーアランドの憑依地

-土地(24)-

4 《宿命の旅人
3 《堂々たる撤廃者
2 《レオニンの遺物囲い
4 《ミラディンの十字軍
3 《悪鬼の狩人
2 《聖トラフトの霊
4 《刃砦の英雄

-クリーチャー(22)-
4 《清浄の名誉
3 《マナ漏出
1 《四肢切断
3 《忘却の輪
3 《天使の運命

-呪文(14)-
1 《レオニンの遺物囲い
1 《悪鬼の狩人
1 《神への捧げ物
1 《マナ漏出
1 《瞬間凍結
1 《四肢切断
3 《機を見た援軍
2 《審判の日
2 《迫撃鞘
2 《戦争と平和の剣

-サイドボード(15)-


 グランプリ・広島以降、輝かしい成績を残し続けているのが「青白ビートダウン」。
 同時期に注目を集め、当時は「青白」よりも数が多かった「緑白ビートダウン(参考:第77回)」は、移り行くメタゲームの前に圧し潰されてしまいましたが、「青白ビートダウン」は様々な工夫を施しながら見事に生き残りました。
 「緑白」は《極楽鳥》と《アヴァシンの巡礼者》が大量に入っている関係上、自由に動かせるスロットが少ないのですが、「青白」にはそういった縛りがないため、多様な構築が可能なんです。

 例えば、中村さんのように《ギデオンの法の番人》や《迫撃鞘》を入れて「青白イリュージョン」に強くしたり、《聖トラフトの霊》を増量して単体除去の多い「赤緑《ケッシグの狼の地》」に強くしたり。

 はたまた阿部さんのように《教区の勇者》を抜いてしまい、《業火のタイタン》や《審判の日》に突き刺さる《マナ漏出》をメインから採用したり、ユーティリティカードである《忘却の輪》を入れたり、といった具合ですね。

 このようにリストにいくつかの差こそあれど、優秀なクリーチャー陣+強力なバックアップ手段である《清浄の名誉》と《天使の運命》+息切れとは無縁の《ムーアランドの憑依地》、というデッキの根幹は変わらないため、どんな形にするにせよ、その高い安定性と爆発力が揺らぐことはありません。

 そんな「青白ビートダウン」の強さを垣間見ることのできる結果となったThe Finals 2011でしたが、トップ8デッキの中で最も注目を集めたのは、全く別のアプローチを用いたふたつの「感染」デッキでした。


「青黒感染テゼレイター」

大段 豪史
The Finals 2011 / ベスト4[MO] [ARENA]
10 《
3 《
4 《闇滑りの岸
4 《水没した地下墓地
4 《墨蛾の生息地

-土地(25)-

4 《疫病のマイア
4 《屍百足
4 《ファイレクシアの十字軍
3 《ファイレクシアの槽母

-クリーチャー(15)-
4 《悪性の傷
3 《喉首狙い
1 《破滅の刃
3 《ゲスの玉座
2 《伝染病の留め金
3 《ヴェールのリリアナ
4 《ボーラスの工作員、テゼレット

-呪文(20)-
2 《危険なマイア
1 《ファイレクシアの槽母
1 《肉体のねじ切り
3 《虚無の呪文爆弾
3 《堕落した決意
1 《伝染病の留め金
3 《転倒の磁石
1 《ヴェールのリリアナ

-サイドボード(15)-

 ひとつめは《ボーラスの工作員、テゼレット》を軸にしたリストです。《ボーラスの工作員、テゼレット》の[-1]能力で、《疫病のマイア》《屍百足》《墨蛾の生息地》を5/5にすれば僅か2回のアタックで勝つことができますし、[+1]を駆使すれば息切れも防止できます。

 そして、「感染」デッキを語る上で欠かせない存在が《ファイレクシアの十字軍》です。
 Tier1の片割れである「青白ビートダウン」に劇的に強いですし、「プロテクション(赤)」のおかげで「赤緑《ケッシグの狼の地》」の除去をも掻い潜ることのできる優秀なクリーチャー。単体でも十分にゲームを決めうる力を秘めていますが、《ファイレクシアの十字軍》の魅力をより一層引き出すように構築されたのが、見事にThe Finals 2011を制した岡田さんのリストです。


「青黒感染クロックパーミッション」

岡田 尚也
The Finals 2011 トップ8 (スタンダード)[MO] [ARENA]
6 《
5 《
4 《闇滑りの岸
4 《水没した地下墓地
4 《墨蛾の生息地

-土地(23)-

4 《荒廃の工作員
4 《ファイレクシアの十字軍

-クリーチャー(8)-
2 《ギタクシア派の調査
2 《変異原性の成長
4 《思案
4 《悪性の傷
4 《マナ漏出
2 《破滅の刃
4 《禁忌の錬金術
2 《堕落した良心
3 《ルーン唱えの長槍
2 《饗宴と飢餓の剣

-呪文(29)-
2 《ファイレクシアの破棄者
2 《ワームとぐろエンジン
1 《変異原性の成長
3 《蔑み
3 《漸増爆弾
3 《否認
1 《堕落した良心

-サイドボード(15)-


 The Finals 2011を制したのは、まさかまさかのオリジナルデッキでした。
 このデッキは「クロックパーミッション」に分類されるデッキで、基本的な動きは《荒廃の工作員》や《ファイレクシアの十字軍》を展開し、それらをカウンターや除去でサポートしていくこととなります。

 このデッキの良いアクセントになっているのが《饗宴と飢餓の剣》、そして岡田さんがデッキの顔と評する《ルーン唱えの長槍》というふたつの装備品です。

 ご存じ《饗宴と飢餓の剣》は、「Caw-Blade」時代から変わらぬ「クロックパーミッション」の必殺兵器で、土地をアンタップする能力がカウンター用のマナを残しつつ行動回数を増やすことを可能とし、もうひとつのハンデス能力が対戦相手の脅威を奪い、確固たるアドバンテージ差を築くことができます。

 《ルーン唱えの長槍》は、今まではあまり使われていないカードだったものの、今回の結果で世界中にその強さを知らしめることになりました。ゲーム中盤なら+4~+5は当たり前で、ゲーム後半であれば一撃で対戦相手をマットに沈める脅威の装備品。唯一序盤こそさみしいですが、キャスティングコストが2マナと軽いため、他にアクションがない時などに気軽に設置できるのもいいですね。

 《荒廃の工作員》と《墨蛾の生息地》には回避能力が付いていますし、《ファイレクシアの十字軍》も相手のデッキの色次第ではアンブロッカブル+除去が効かないので、上記ふたつの装備品はその力を遺憾なく発揮することができます。

 《ルーン唱えの長槍》以外にも、《変異原性の成長》や《堕落した良心》のように個性豊かなカード選択が光りますが、デッキリストが非常に綺麗で分かりやすい構成なので、デッキの動きは掴みやすいかと思います。

 KJの連載・第18回:The Finals 2011優勝 岡田 尚也の「青黒感染」をリプレイ!に対戦動画も載っていますし、そちらをご覧いただければ、デッキの動きや、《ルーン唱えの長槍》がどれほどまでに強力かご理解いただけるでしょう。


 そんなわけで、今回はデッキの動きではなく、岡田さんがいかにしてこのようなすばらしいデッキを組み上げたのかについて焦点を当ててみたいと思います。
 岡田さんに直接インタビューする場を設けていただいたので、このデッキができたきっかけや、このデッキの成長過程などを教えていただきました。
 誠に申し訳ないことに、僕の不甲斐ない質問内容のせいで、岡田さんの意図や構築理論などが伝わりづらいかもしれませんが、みなさんがオリジナルデッキを作るきっかけになれば幸いです。



~The Finals 2011 チャンピオンインタビュー~

The Finals 2011 チャンピオン 岡田 尚也さん

The Finals 2011 チャンピオン 岡田 尚也さん
Q1) 岡田さんのデッキリストを拝見して、独創的な構成、そしてデッキの完成度の高さに驚いたのですが、最初にこのデッキを作ろうと思ったきっかけはどういったものだったのでしょうか?

A1)
 自分がデッキを作る際、ほとんどの場合キーカードを見つける所から始めます。《セドラクシスの死霊》、《聖句札の死者》、《石鍛冶の神秘家》、《大建築家》、《出産の殻》、《紅蓮術士の昇天》などがこれに当たります。
 今回は「イニストラード」のリストを見た段階で《ルーン唱えの長槍》が頭ひとつ抜けていると感じました。ここが出発点です。

Q2) 調整を始めた時点での雛型のリストがあれば教えていただけますでしょうか?

A2)
 細かくは覚えていないのですが、最初期には「太陽拳」がやたら多かったため《否認》をメイン2、サイド2で積んでいました。また「赤単」に対して《屍百足》をサイドに用意していて、《堕落した良心》はまだ採用していませんでした。
 除去も《四肢切断》と《喉首狙い》と《破滅の刃》が2枚ずつで《悪性の傷》は不採用。後に対タフネス1環境の到来と共に採用しました。


Q3) Q1に関連して、特に《ルーン唱えの長槍》《堕落した良心》が印象的なのですが、これらを含めて個別のカードを採用するに至った経緯で、特に印象深かったこと・一押しの内容を教えてください。

A3)
 まずはこのデッキの核をなす《ルーン唱えの長槍》。このカードの特徴は準備に時間がかかるぶん、一撃がとても重く、またその割にコストが安いことです。地味につく「先制攻撃」が《墨蛾の生息地》同士の殴り合いでも効果を発揮します。

 次に《堕落した良心》。ここのスペースは割と流動的で、《瞬唱の魔道士》やら《四肢切断》になったりしていました。特に《瞬唱の魔道士》はこのデッキの弱点である各種プレインズウォーカーにも若干の耐性があり悩みましたが、「赤緑《ケッシグの狼の地》」とコントロール全般に圧倒的に強く、「緑白/青白ビートダウン」系にもそこそこ効く《堕落した良心》が採用されました。《堕落した良心》がほぼ効かない「赤単」の数が減少気味だと感じたのも理由の一つです。

 最後に《荒廃の工作員》。このクリ-チャ-のスペースこそメタによって最も頻繁に変動しました。
 最初は《荒廃の工作員》でしたが、赤単が流行りはじめ人権が無くなりました。そこで次に《ファイレクシアの槽母》を採用。《槌のコス》をがっちり受け止めるそのたくましさには幾度も命を救われました。
 が、いかんせん回避能力のない脳筋野郎なので、「緑白」系にはアタックが通らず、《ミラディンの十字軍》と《饗宴と飢餓の剣》の前では害悪でしかありませんでした。この頃は《墨蛾の生息地》も流行しだしていたため思ったよりデメリットも邪魔でした。
 そこで《荒廃のドラゴン、スキジリクス》御大将の出番がやってきたのですが、「緑白ビートダウン」全盛の時代に5マナはいささか重く、速度負けすることが多くなりました。
 最終的に速度、《ルーン唱えの長槍》との相性、「赤単」の減少から《荒廃の工作員》が再び日の目を見る事になりました。

Q4) The Finals 2011のメタゲームを、事前にどのように予想していらっしゃいましたか?メタゲーム上で多いと思われるデッキの中で、このデッキが相性のいいものはおありでしたか?

A4)
 とりあえず「緑白/青白ビートダウン」系と「赤緑《ケッシグの狼の地》」はトップメタ、次いで「太陽拳」系のコントロール、減ったとはいえ「赤単」、少数ながらも「《出産の殻》」と《秘密を掘り下げる者》入りの「クロックパーミッション」は居そうだと考えていました。「青白イリュージョン」は前日まで存在を知りませんでした(笑)。
 相性は「《出産の殻》」がとてもキツく、「赤単」と「クロックパーミッション」系が若干不利、「緑白/青白ビートダウン」が大体5分5分か若干有利、「赤緑《ケッシグの狼の地》」とコントロール全般は有利といった印象です。

Q5) 逆に、苦手なマッチアップはありましたか?

A5)
 マッチアップといいますか、「《出産の殻》」デッキの《酸のスライム》、「赤単」の《燃え上がる憤怒の祭殿》と《槌のコス》の他、《幽霊街》、《ヴェールのリリアナ》、《情け知らずのガラク》、《ギデオン・ジュラ》のような特定のカードを苦手としています。

 またサイドからの《古えの遺恨》、《死の支配の呪い》は致命打となります。特に《古えの遺恨》は完全に機能不全に陥りますので、そういう意味で「赤緑《ケッシグの狼の地》」からすればメタろうと思えばメタる事は可能です。

Q6) メインの完成度が高いぶん、サイドボードのイン、アウトが難しいように思えますが、以下のマッチアップのサイドボードプランを教えていただけますか?

A6)
 こう言っては何ですが、実にサイドが難しいので毎回微妙にブレます。相手のデッキ構成にも結構左右されます。(《極楽鳥》の採用枚数など)

・対「赤緑《ケッシグの狼の地》」
 基本的に《蔑み》は3枚全投入で、《堕落した良心》も追加します。《緑の太陽の頂点》が使われているならば《否認》も投入。《感電破》を見れば《変異原性の成長》を1枚追加。
 《ギタクシア派の調査》は2枚抜き、相手の《極楽鳥》採用状況により《悪性の傷》を数枚抜く。《感電破》を見なければ《変異原性の成長》を抜く場合もある(《情け知らずのガラク》の有無にもよる)。

・対「エスパーコントロール」
 《否認》3枚、《堕落した良心》1枚、《蔑み》2~3枚を投入。プレインズウォーカーが多いなら《ファイレクシアの破棄者》を入れる事もある。
 《悪性の傷》4枚、《変異原性の成長》2枚は確定で抜く。《破滅の刃》を1~2枚抜く場合もある。

・対「青白イリュージョン」
 実は対戦したことが無いので分かりませんが、《ギタクシア派の調査》と《堕落した良心》、《マナ漏出》数枚ほどが抜け、《蔑み》と《漸増爆弾》あたりが入ると思います。

・対「青白人間ビートダウン」
 《蔑み》3枚、《漸増爆弾》3枚投入。《変異原性の成長》も1枚増やす事がある。
 《ギタクシア派の調査》2枚は確定で抜く。先手後手、相手の1マナ域の生物の数にも依るが《悪性の傷》、《マナ漏出》、稀に《禁忌の錬金術》を少し抜く。
 致命的なのは《ミラディンの十字軍》、《聖トラフトの霊》と《天使の運命》。《堂々たる撤廃者》さえいなければ《マナ漏出》は抜きたくないが・・・。

Q7) The Finals 2011では無敗のまま優勝なされましたが、デッキに変更を加えたい点はありましたか?

A7)
 あの時点ではあれがベストに近かったと思います。ただ強いて言えば《ギタクシア派の調査》と《蔑み》の部分が調整しきれていないままでしたので、メタと好みで入れ替えたらいいと思います。
 また《変異原性の成長》はビートダウン系全般と《迫撃鞘》、《情け知らずのガラク》などの対タフネス1除去には有効なものの、コントロール全般に対してはあまり役に立たないので、今後のメタ次第で調整していかなくてはいけません。


Q8) 最後に、今回の調整過程についてお聞かせください。どのような相手と、どのような練習を行っていったのでしょうか? 普段一緒に調整されている方々やお店などへの想いがあれば、ぜひお教えください。

A8)
 大会は主に中野遊vic、晴れる屋、時々PWCや五竜杯におじゃましていて、普段の調整は「早大マジックザギャザリング研究会」で行っています。人数は多くありませんがカードショップの店員、level1ジャッジ、日本選手権9位などの楽しい人材がそろっています。入部、問い合わせは hissatupassenger@gmail.com まで!



 インタビューは以上になります。
 岡田さんのお話をうかがってみて、メタゲームに敏感に反応してカードを入れ替えたり、対戦相手のデッキ内容に応じて臨機応変にサイドボーディングを変えたりと、自身のデッキに対するデッキ理解度の高さに感銘を受けました。
 自分で一からデッキを作ることも、ひとつのデッキを使い続けることも、仮にすぐには結果が出ずとも、そういった努力は確実にあなたの糧となり、いつかは岡田さんのように結果となって現れるでしょう。

 先ほども少し触れましたが、The Finals 2011の与えたインパクトは凄まじく、《ルーン唱えの長槍》の強さは、海を越えたアメリカにまで浸透しています。その証拠に、500名を超える参加者の集った「StarCityGames・オープントーナメント・アトランタ」で、トッププレイヤーたちにこのような質問がなされたのです。

「《ルーン唱えの長槍》は今後も活躍を続けるでしょうか? それとも、《饗宴と飢餓の剣》や《戦争と平和の剣》が再び勢いを取り戻すのでしょうか?」

 これはThe Finals2011の結果を受けてのことでしょうし、何を隠そう、この大会を制したデッキもまた、《ルーン唱えの長槍》を採用したデッキだったのです。


「Delver-Blade」

Charles Gindy
StarCityGames.com オープン・トーナメント・アトランタ 優勝 (2012-01-08) [MO] [ARENA]
9 《
1 《平地
4 《氷河の城砦
4 《金属海の沿岸
3 《ムーアランドの憑依地

-土地(21)-

4 《秘密を掘り下げる者
4 《瞬唱の魔道士
3 《不可視の忍び寄り
2 《マーフォークの物あさり
3 《聖トラフトの霊

-クリーチャー(16)-
3 《ギタクシア派の調査
2 《はらわた撃ち
4 《思案
4 《蒸気の絡みつき
4 《マナ漏出
2 《深夜の出没
2 《ルーン唱えの長槍
2 《戦争と平和の剣

-呪文(23)-
2 《幻影の像
1 《はらわた撃ち
2 《神への捧げ物
2 《否認
1 《天界の粛清
2 《漸増爆弾
1 《雲散霧消
2 《忘却の輪
2 《機を見た援軍

-サイドボード(15)-

 攻め手が「感染」クリーチャーではないものの、このリストの思想は岡田さんのデッキと似通ったものです。《ルーン唱えの長槍》と同じく、デッキ内のソーサリー・インスタントカードを力に変える《秘密を掘り下げる者》。対処の難しさが売りの「呪禁」コンビ、《不可視の忍び寄り》と《聖トラフトの霊》。それぞれに回避能力だったり「呪禁」だったりがあるため装備品と相性が良く、それをカウンターなどでバックアップしていく「クロックパーミッション」系統のデッキになっています。

 このデッキの使用者であるGindyさんは、先ほどの質問に対して、「《ルーン唱えの長槍》は《饗宴と飢餓の剣》よりも強いね。次のセットが出るまでは《ルーン唱えの長槍》は活躍を続けるんじゃないかな」といったコメントを残していますが、これには岡田さんの優勝が少なからず影響していると思われます。

 僕はどちらかというとデッキ全体を見ながら構築を始めるタイプなのですが、今回のインタビューで、1枚のカードを軸にデッキを組み上げるという発想を学ぶことができました。非常にカードパワーの高い現代では、オリジナルデッキで結果を残すのが難しいですが、それだけに、結果を残せた場合の注目度の高さは以前よりもすごいものがありますね。次なる《ルーン唱えの長槍》見つけるのはあなたかもしれませんよ!


 今週は以上になります。年末年始の流れを追うということで、少し駆け足になってしまいましたが、いかがでしたか?
 来週は、今週末に行われるグランプリ・オークランドのトップ8デッキを見ていきたいと思います。カバレージをご覧になる際には、ぜひとも《ルーン唱えの長槍》の動向にも気を配っていただきたいですね。

 それでは、また来週ー!

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