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除去呪文のデベロップ
除去呪文のデベロップ
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2014年8月15日
今週は『Annihilation』特集ということで、我々がどのように様々な規模の除去をデベロップしているかと、どのような展望を将来に向けているかについてお話ししたいと思います。
除去の軍拡競争
マジックを楽しく興味深いものにする鍵のひとつは、デッキの組み方に常に異なる選択肢があるようにすることです。《思考囲い》のようなカードは環境で最も危険なものが物事を台無しにしないようにできますが、ただまっとうにプレイしたいだけのデッキやシナジーに大きく依存するデッキもまた、同じように咎めてしまうという問題点があります。手札が《ロクソドンの強打者》しかない場合を除けば、このカードに対してできることはほとんどないでしょう。
大昔に我々が印刷していた驚異的な強さの除去のほとんどはスタンダードから去っていきましたが、それらはまだモダンとレガシーに留まっています。例えば《剣を鍬に》はほぼ全てのマジックにあるクリーチャーを殺せる1マナのカードです。それが環境にある間、除去呪文の強さの基準が《剣を鍬に》以上に使われているかどうかという馬鹿げたラインでしたが、ほとんどの色には比較できるものがありました。結局、除去満載のデッキが簡単にクリーチャーを殺せるので、ほとんどのクリーチャーはほとんど何でも一緒になってしまいました。この環境で使い物になるクリーチャーは被覆か「戦場に出たとき」の誘発型能力を持っているものだけでした。
この驚異的に除去が強い時代は比較的最近まで続いていました。『基本セット2011』と『基本セット2012』が発売されたときでさえ《稲妻》と《流刑への道》が極めてマナ効率が良かったため、重いクリーチャーをプレイされるためにはタイタンや《ファイレクシアの抹消者》級のカードを作ることを強いられました。
定期的にタイタン級のパワー・レベルのカードを印刷しようとすることは、長期的に見て我々の負けです。つまり超強力な除去を使えても、これらのクリーチャーのうち1体に対して除去が引けなければ即死してしまうということです。タイタンのような「戦場に出たとき」の能力を持たせなくする試みの中で、我々は除去を満載するプレイヤーを咎めるために呪禁の方向に向かいました。
今度は別の問題が起こりました。プレイヤーが有意義な方法でのやり取りをやめてしまったのです。依然としてブロックはできますが(多くの《聖トラフトの霊》が青い《待ち伏せのバイパー》こと《瞬唱の魔道士》の不意打ちにより殺されました)、我々がスタンダードで見たいと思うような状況ではありませんでした。私は呪禁のような能力は有用ですが、呪禁なしではスタンダードで全く使われないようなクリーチャーだけが持っていて、理想的には少なくとも3マナであるべきだと思います。スタンダードが除去の強い環境であることへの対策としてそのような呪禁クリーチャーを使うことになるなら、それは素晴らしいことです。私はそれがこのゲームにとって良いことだと思います。
単体除去の変化
最近我々が考えているスタンダードのより良いバランスの取り方、そして楽しく興味深い方法でクリーチャーと除去の両方を機能させる方法は、効率的な除去に穴を作ることです。
そのフォーマットに1枚の超効率的な除去があることによる問題は、全てがそれに引っ張られることで、我々が向かっている方向は何でも殺せる3マナ除去を増やし、それより軽いが対象に制限があったり欠点がある除去を作ることです。例えば最近我々が印刷した《究極の価格》、《稲妻の一撃》、《アゾリウスの魔除け》にはすべて、どのようなクリーチャーに、もしくはどうクリーチャーに対処するかにおいて厳しい制限があります。クリーチャーを殺しにくくする必要はなく、その除去が腐る状況や対戦を作る制限があれば良いだけなのです。
スタンダードには《払拭の光》や《英雄の破滅》のような3マナ域のどんなクリーチャーも殺せる除去が依然として存在しますが、このコスト帯では「相手のクリーチャーを殺しながら自分のカードを展開する」プランがしにくくなっています。我々はパーマネントをほとんど出さずに除去とカードを引く方法を満載してそれを主戦略にするデッキをプレイすることに大きなリスクを与えたいと思っています。我々はまた、人々が最も使われている除去を回避したいと思ったときに使うことができるクリーチャーがあってほしいとも思っています。
《胆汁病》はこのように作用する強力な除去の素晴らしい例で、私はこれがとても上手く機能していると思っています。これは黒単デッキが多くの序盤の脅威を排除することを可能にしそして再生やトークン生成も対処できますが、デッキを《クルフィックスの狩猟者》や《嵐の息吹のドラゴン》、《世界を喰らう者、ポルクラノス》に対して弱くしてしまいます。黒単デッキが代わりに《究極の価格》を入れると、今度は《変わり谷》や《夜帷の死霊》、《羊毛鬣のライオン》に弱くなります。この手の堂々巡りは様々な対戦で両方のプレイヤーに、彼らのデッキを予想したメタゲームに対して明確な決定と改良を行わせます。
この除去の変更方法は、我々に圧倒的な存在にならずにその環境の強力な軸となるクリーチャーを作ることを可能にします。除去はしばしばクリーチャーのパワーやタフネス、色などを参照するので、全ての構築レベルのクリーチャーに「戦場に出たとき」の能力や呪禁を持たせなくても良いのです。我々は再生や明滅のような能力も付けてもよく、そしてそれは十分に使える範囲内です。我々が構築フォーマットで現れてほしいクリーチャー全てを推す必要は少なくなり、そのフォーマットの多様性は大きくなるでしょう。
これは、我々が《稲妻》や《流刑への道》を再びスタンダードで印刷することができないと言っているのではなく、それを行うときには注意するということです。この除去の変更は、強くて軽い呪禁クリーチャーと同じく実験をしています。意図した通りの効果があるかも知れませんし、ないかもしれません――しかしながら、個人的にはこの変更がFFLをどのような形にするかを楽しんでいます。例えば、私は我々が1つの色のペアに強力で効率的な除去呪文を与えスタンダードに少し変動を起こすために、《終止》を多色セットで印刷することを見ることができました。それはスタンダード環境全体からいつでもアクセスできる手段を与えるというより、ひとつの戦略や色のペアを推す方法として、我々が時々行うことです。
全体除去の移り変わり
去年を通して変化したのは単体除去だけではありません。もう一方の変更はより微妙なものですが、スタンダードの仕組みによって気づきにくいものでした。我々はスタンダードで《審判の日》や《神聖なる評決》のような4マナ全体除去のない環境を試してみました。例えば、『基本セット2010』が発売された『ローウィン』時代のスタンダード末期には、4マナ全体除去がありませんでした。その世界は滅亡しませんでした――《神聖なる埋葬》が依然として存在し、アグロ・デッキの支配は起こりませんでした。《審判の日》が『ゼンディカー』(その次のセットです)で印刷され、すぐに状況は元通りになりました。
しかしながら、これはとても良いデータになりました。
『ラヴニカへの回帰』で、我々は再び小さな変更を行いました。白単色の全体除去を、強力なおまけの付いた青白の全体除去に置き換えてみました。『ラヴニカへの回帰』の年のスタンダードを見てみると、《至高の評決》によって青白メインでないコントロールデッキはほとんどプレイ不可能になっていました(とは言え、《スフィンクスの啓示》がそれに大きく影響していたこともその通りだと思います)。より競技レベルの全体除去が黒にあれば、我々は青黒と青白をエスパーと一緒に明らかに違うアーキタイプとして見なすことができたかもしれません。
定期的に無条件な《神の怒り》のバリエーションがスタンダードの中にあることの問題のひとつは、アグロ対コントロールの組み合わせが4ターン目にそれを唱えられるかどうかに煮詰まってしまうことです。アグロ・デッキには、相手に全体除去がなかった場合に5ターン目に勝てるよう十分な強さが求められますが、全体除去側はそれほど問題はありません。それはつまり4ターン目に全てのクリーチャーを破壊できるようになるまでアグロから殴られることが基本的に一番いいということであり、その後は単体除去で残りを始末するか、アグロ側が再起しようとする時に2枚目の全体除去を打つかのどちらかです。伝統的に、序盤に2回全体除去を打たれるとクリーチャー主体の戦略が生き残るのは困難であり、それらのデッキのほとんどのコントロールとの対戦は本当に「全体除去を持っているか否か」だけで決まってしまい、それはゲームに勝っても負けてもとても満足の行く方法とは言えません。
このプレイパターンは我々がここ何年かに渡って奨励してきたものなので、このことは多くの人々にコントロール対アグロの対戦として考えられてきました。しかしこれは我々がそれが長期に渡ってより楽しいゲームにつながると信じているからです。将来、より多くの3マナや4マナの条件付き全体除去(《神々の憤怒》のような)や、より多くの5マナのおまけ付き全体除去が出る可能性はあります。この「スタンダードの代表的存在」である4マナの白い全体除去がなければ、これらのカードの多くがスタンダードでプレイできるようになり、そうなることはメタゲームを、プレイヤーがお互い戦うためにどの全体除去とどの脅威を選ぶかに変えていくでしょう。
4マナの無条件全体除去の不在は、スタンダードで実際に使われるようになる、もっと楽しく興味深い全体除去を作るチャンスも我々にもたらしました。『ローウィン』期のスタンダードで《神の怒り》と並行して《神聖なる埋葬》が生き残るために一瞬使われていましたが、このフォーマットでは基本的に、一番軽い全体除去だけが実際に使われるようになりました。《至高の評決》やその他の4マナ全体除去のない世界では、我々はより楽しく興味深いスタンダード向けカードを作ることができ、上手くいけばデッキを構築するときにより意味深い決断をさせることができます。
先程書きましたが、この方法は単体除去の変更とよく似ていて、スタンダードで使われている全体除去を上手くかわすために異なるクリーチャーをプレイすることによる、より多くのメタゲームの変化を許容しています。例えば、アグレッシブなデッキを《神々の憤怒》に対して耐性を持たせたいならクリーチャーのタフネスを4以上に寄せたり、他に《神々の憤怒》から生き残れる手段があるクリーチャーに焦点を当てたりできますが、そのデッキは人々が異なる全体除去を使っている場合は非効率的なものになるでしょう。
スタンダードで《神の怒り》のバリエーションが持つ、流行り廃りを起こして尖った部分を少なくするこの能力は、我々にコントロール・デッキのバランスを異なる方法で取ることを可能にし、より多彩なレベルのプレイ・パターンを供給します。私は全体的にスタンダードがより面白いものになると考えています。
今週はここまでです。来週は開発部の保管庫の深部へと向かい過去の壊れたカードのマルチバースの記録、「開発部の黒歴史・パート4」をお送りします。
ではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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