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リミテッドでの色のペア・パート1

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リミテッドでの色のペア・パート1

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2013年9月27日


 一般的にリミテッド、特にドラフトはマジックの歴史初期に追加された要素の中で最も重要なものの1つで、20年以上に渡りマジックの強さと活気を維持してきました。過去の最も強力なメカニズムやカードと競わせる必要なく、各セットの新しく面白い事柄を紹介する方法のみならず、カードをたくさん持っていなくてもお手軽にマジックをプレイする方法も作り出しました。


戦識の重装歩兵》 アート:Willian Murai

 マジックには生まれ持った要素が数多くあり、それが実際にリミテッドが機能させています。例えばマジックが5色であることは6人や8人のドラフトのときにプレイヤーに均等な色の住み分けをさせない素晴らしい働きをします。これは常に何かの色が下に流れることを意味し、単色をドラフトすることに大きなプレッシャーを与えます。そして2色目をピックすることを強いられるので、カードを卓の中の誰かと取り合うことになり、そしてそれはドラフトの駆け引きを増加させます。

 リミテッドの環境を作るのは大仕事であり、そしてできることが限られているので、我々はその環境が速やかに解明されないようなバランス調整に多くの時間を必要とします。それは、カードの強さの順位付けで全てを判断するのに十分にならないように、複雑に作るということです。幸運にも、我々はそれを助ける多くの確実な手段を持っています。

ロードマップの作成

 我々がリミテッド向けにセットをデザインしている間に最初にすることの1つは、十分な違いのある、追求するべき戦略を存在するようにし、そしてそれら全てを同じパワーレベルにすることです。我々は4番目に強いコモンが黒で、その上位の3つのコモンもやはり黒い『ウルザズ・サーガ』のようなセットはもう作りません。我々がしたいのは、全ての色が比較的同程度で、そのそれぞれの色の組み合わせで実行可能な戦略があるようにすることです。

 人々のドラフトの計画、あるいはどのカードを重視または軽視するかの違いは、当然ながら様々な戦略を時間とともに強くしたり弱くしたりします。我々はこの過程を、デザインでそのフォーマットの基礎的な10のデッキタイプをリストにすることから始めます。そしてその10のデッキタイプとは、ほとんどの場合2色のペアです。そのペアの焦点が少しづつ違う場合、カードの評価の観点からより多くの違いを作りだし、その違いはドラフトでのさらに大きな変化の可能性を生み出し、何度もドラフトをしても面白いセットになるでしょう。これはまた、我々がそのセットのリミテッドをどのように形を整えるかの助けになりますが、セットを作る格子のようなものも与えてくれます。我々は各色ごとについて、マナ・カーブや色ごとのクリーチャーの枚数、そして各メカニズムに何枚のカードを割くべきかを知っています。我々はそのセットをデベロップするにつれて後からその詳細を変更するでしょうが、初期に何かを規格化することで、我々の思う、違いのあるセットを強調するために変更するべき面を見つけることができます。

 『ラヴニカへの回帰』や『ギルド門侵犯』のような10種のペアが現実的な選択肢でないセットについては、我々はそれぞれのギルドに早いデッキと遅いデッキがあるようにし、さらにそれらには隣のギルドと上手く働く色の扇状の戦略があるようにしました。

 もうお気づきかもしれませんが、『テーロス』には10枚の多色アンコモンからなるサイクルが存在します。これらはプレイヤーが早期に2色のペアを固定する錨の役目だけではなく、そのペアにある程度方向性を与える目的もあります。《戦識の重装歩兵》は単なる低コストのアタッカーではなく、あなたにどういったドラフトをするべきかのアイデアを与えてくれます――すなわち英雄的を誘発させることです。この流れに沿っていけば、それなりのデッキが組めるでしょう。これらにはかなりの将来性があり、これらの「錨」を供給するために、我々は昔よりもう少し金色のカードを使うでしょう。


戦識の重装歩兵》 《難破船の歌い手》 《アクロスの重装歩兵》 《破壊的な享楽》 《魔心のキマイラ》 《英雄の記録者》 《地平線のキマイラ》 《死の国の歩哨》 《クラグマの戦呼び》 《ファリカの癒し人

学ぶ機会

 我々はドラフトの経験から難しさを全て奪いたいとは思いませんが(それが多くの楽しさを生み出すので)、プレイヤーにいくつか手掛かりを与えることはとても有用なことです。時にそれは、この上ない大声でインスタントとソーサリーをたくさんデッキに入れろと騒ぎ立てる《魔心のキマイラ》のようにとてもわかりやすいものですが、またある時はもう少し地味な、コンバット・トリックとして素晴らしい働きをする一方で英雄的カードを何枚か多く取る理由になるかもしれない《統率の取れた突撃》のようなものであることもあります。

 これはエリック・ラウアー/Erik Lauerの指揮の下で我々がグループで取り組む1つの構想に結びつきます――それは「隠れた案内」です。ドラフトは新人プレイヤーでなくとも難しいのは事実です。そのセットのことを詳しく知らないのであれば、カードが間違った情報を与えることから、いともたやすく存在しないデッキをドラフトしようとしてしまうでしょう。理想的には、我々は実際にパックに入っているカードを使って、そのセットでのドラフトの方法を教えたいと思っています。これは、ドラフトを強力かつ相互作用のある方向へと推奨する、強力なカードをたくさん作るということです。

 我々は《爆片破》のようなカードを『テーロス』に収録することもできましたが、あなたがそれをドラフトした場合、それを支援するアーキタイプが存在しないことに気がつくでしょう。その意味で、《爆片破》を収録することはプレイヤーに危害を与えていたでしょう。代わりに、我々は特にアンコモンでリミテッドで強力なカードを入れ、ドラフトをするプレイヤーのピックに方向性を示す役目を果たせるようにしています。実際に、それらのカードはプレイヤーにこう言っています。「このカード・プールで出来るからやってみな」と。

 デベロップの目標の1つは、それがいつの時期であろうと、そしてプレイヤーの経験がどれぐらいであろうと、楽しくプレイできるセットを作ることです。これは、プレイヤーがそのセットで初めてプレイするときでも良い経験ができて、さらに50回目やそれ以上のプレイでも、プレイヤーに新しく面白い選択を示すのに十分な深さを持つようにする、ということです。また、この目標はドラフトから技術を取り除くというわけではありませんが、新しいプレイヤーに初めてドラフトした後に続けるよう十分に案内し、さらに違う戦略をしようとして様々な種類のカードを取ってしまい、支援されていないタイプのデッキを作ろうと無駄な努力をしてドラフトを混乱させるようなことがないようにします。

色のペアとセットの創造

 最初のほうで触れましたが、色のペアを使ってリミテッド環境の枠組みを作ることは。皆さんにより良い製品をお届けするためにとても助けになります。開発部が1つの事柄を巧く行なうなら、それは繰り返されます。プレイし、改良し、何か新しいことに挑み、泡立て、すすぎ、繰り返し、などなどです。我々が合理的で良いものを早いうちに持っていれば、デベロップが完了するまでに素晴らしいリミテッド環境を得ることはとても簡単で、従って我々はそれを改良する方法を考え出すことができます。我々が色のペアの選択のような基本的な指標を使わずにセットを作り始める場合、ドラフトして面白いリミテッド環境にたどり着くまでに何週間どころか何ヶ月もかかるかも知れず、バランスを取り、深みを持たせる作業に使う十分な時間が残らないでしょう。これは常にカードが変更されていることに伴う問題で、変更は他のカードにも影響を与え、全ての過程をより難しくします。いったん事態がうまく行くようになってセットが楽しいものなら、我々はその適正なカードに、ゲーム・プレイをさらに良くするための種を蒔く作業に労力を向けることができるようになります。

 例を挙げると、『イニストラード』のデベロップの時、青緑は自分のライブラリーを削る色の組み合わせで、黒緑は墓地を活用(とは言えほとんどは陰鬱でしたが)していました。これらが交わる部分として、我々は《蜘蛛の発生》を作り、これはどちらか片方のペアでもそれなりに機能しましたが、真の力を発揮したのは2色の枠から出て3色デッキを使ったときでした。

 これらの戦略を用意することで、基本の10戦略を徹底的にやりこんだプレイヤーのための、深く、(願わくば)新しい環境を作ることができます。ドラフトを成功させる最良の方法の1つは、人気のない色や全くの横道戦略をとって、あなたのデッキにとって強いカードを遅い順目で取ることです。《記憶の旅》や《甲冑のスカーブ》、《骨までの齧りつき》のようなカードが、相対的なカードの強さで考えて5手目までに値するような強さを持っている場合、それらを最後の数手で取れることはとても強力です。両方の色のペアの働きを得ることは、我々にそれらのカードがどのように動くと想定されていたか、そして我々がそれらのカードにこのセットで焦点を当てることができるところについてのヒントを与えます。

色のペアの動き

 この動きをもっとよく見るために、『Modern Masters』をちょっと覗いてみましょう。このセットは我々がカードのテキストや数字を変えることができなかったので、我々は既にあるカードで仕事をしなければなりませんでした。また、我々はカードを入れ替えることはできましたが、マナ・カーブを埋めるためや何か役割のために新しいカードを作ることもできませんでした。我々が使いたいアーキタイプに十分なカードがない場合、それは絶対に不可能でした。もちろん、制限は創造性の元です。我々は十分に機能するカードと楽しいカードの両方を10のペアに見つけるまで、何かを探さなければなりませんでした。それらを当てられますか? さあ、試してみてください。

青白
白黒
青黒
赤青
赤黒
黒緑
赤緑
赤白
白緑
青緑

 これらをスタートにすることで、我々はどのメカニズムをセットに戻さなければならないかを正確に把握することができ、そして戦略が交差できる場所を考え出しました。例えば《ラースのわな師》はレベルであり、従って白黒デッキに入ります。しかしならず者でもあるので、青黒デッキに入れて3ターン目に攻撃して《掛け鍵のフェアリー》を徘徊コストで唱えることも可能です。我々は10種のペアが何かを知っていたのでこれらのような宝石を見つけることができ、そしてこれらの相互作用に基づいてセットを作ることができました。そうすることで、我々はデベロップ中に実際にドラフトする機会が少ししかなかったにも関わらず、ここ数年で最も人気のあるドラフト環境を作ることができました。

 今週はここまでですが、このテーマについてお話しすることはまだたくさんあります。次週、『テーロス』の10の色のペアについて、とそれらがリミテッドでどのように機能するかをお話しする予定です。

 サムより

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