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プレインズウォーカーのための『久遠の終端』案内




2025年6月20日
皆さんは『久遠の終端』にて、驚異に満ちたソセラ星系へと足を踏み入れることになります。そこでは宇宙が秘める無限の可能性が目の前に広がることでしょう。馴染みのある顔や見慣れない顔に出会い、星間勢力と共に戦い、ソセラの中心であるスーパーヴォイドに何があるのかを探るのです。
先だって私たちは『久遠の終端』を少しだけお見せしました。そしてもうその物語は始まっています! 第1話とそれ以降の『久遠の終端』ストーリーはMTGStory.comで読むか、同時公開のThe Magic Story Podcastをお聴きください(訳注:日本公式サイトでは翻訳が完了次第順次掲載いたします)。この型破りなフィクションを音声ナレーションでお楽しみいただけます。そして旅の準備のために、「プレインズウォーカーのための『久遠の終端』案内」をぜひお読みください。
星々へと旅立つ準備はよろしいですか? 『久遠の終端』は2025年8月1日に全世界同時発売、マジックの多元宇宙は全く新しいものへと生まれ変わるでしょう。『久遠の終端』はお近くのゲーム店、Amazonなどのオンライン小売店、その他マジック製品を取り扱う店舗で今すぐご予約いただけます。
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アート:Andrea Piparo |
テゼレット、アナタの出身星系ではピナクルも伝統的星間航行も知られていないと以前仰っていましたね。ですので、ピナクル宙域に慣れるための追加資料を入手しました。無限導線基地の工作員はアナタが要求した暗号化データに今なお取り組んでいますが、ピナクルに関する概要をワタシが作成しました。ピナクルが到着時に初遭遇したソセラ原生種族ふたつへと提供されたものに基づいております。
宇宙とあなた:
ピナクルとのファーストコンタクト入門
“終端”――環状宇宙
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アート:Ignacio Bazan-Lazcano |
ピナクルのソサイエント※ピナクル加盟集団に所属する者。は全員がその宇宙についての基本的前提である真実を共有している。それらはピナクルの教育、通俗科学、そして星間船舶工学と航行の中核に関わってくるため、現実に対する共通の理解は非常に重要である。ピナクルは宇宙とその真実に関するこの通念の理解を「共通合意」と呼んでいる。
共通合意は、「現実の基本的な物質は粒子と基質(霊気、マナ、光子、クォークなど)の集合体である」という点に全ソサイエントが同意していると仮定している。ほぼすべての知的な宇宙航行種族は様々な組成からなる岩石天体に居住しているが、一部の注目すべき例外(イルヴォイなど)は、岩石以外の宇宙的環境上またはその内で進化した。これらの天体(岩石型、ガス型など)は、マナや霊気や水素やヘリウムやその他の微量ガスが濃縮された恒星を周回していることが多い。恒星の重力と熱は惑星系を形成し、その特徴を作り上げている。そういった構造の中には、十分に生命を維持できるほど完璧なものも存在する。
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アート:Leon Tukker |
宇宙は広大である。ふたつの惑星系間の隔たりは、計量単位ではなく時間で測るのが最適である(ただしキロメートルや恒星単位なども特定の程度・規模では有用となる)。亜光速の星間航行は可能ではあるものの実用的ではない。そのためほとんどの星間航行は、ピナクルの「久遠の柱」システムによって駆動される各層で行われる。星系内での亜光速旅行、通商、探査、そして紛争はピナクル種族とその周縁部種族の間ではどれも非常にありふれたものである。事実、星系内での紛争と通商はピナクルの設立理念の根幹をなす課題である――すなわち、前者の停止と後者の促進だ。
ピナクルを構成する種族は、既知の空間についていくつかの一般的な呼び名を持つ。口語的に「空間」としばしば言われるが、それ以上に近年最も用いられているのは「終端」「久遠の終端」という呼び名だ。この言い回しは、ピナクルの歴史においては比較的最近の発見と、最先端のピナクル科学に対する一般的理解の結果として生まれたものである。それは宇宙の形状に関する新事実の発見だ。
既知の宇宙全体の地図はまだ作られていないものの、観測によってその形状を推測することは可能である。ピナクルは加盟集団の能力を総動員し、宇宙全体の形状は――直接観測可能な範囲外のあらゆる創造物は――輪の形をしていると、すなわち環状であるとかなりの確信を持って特定した。観測可能な空間のひとつの弧に沿ってわずかな青方偏移が見られる。あらゆる物質、空間、そして時間の出発点に向かって観測を進めたならやがて、吠えたけるような再結合粒子が荒れ狂う混沌とした「障壁」に辿り着き、その向こう側は観測不可能となる。これは俗に「混沌壁」と呼ばれている。
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アート:Raymond Swanland |
混沌壁のこちら側では、観測可能な弧内にあるすべての天体はわずかに赤方偏移しているように見える。つまり観測者から遠ざかっているということであり、これは膨張を示唆している。ピナクルは空間のこの「端」を完全に探査するための観測技術を持たないため、実質的には無限に等しいほど広大であると受け入れている。混沌壁が示す断固とした境界とは対照的に、この空間の端は観測の先を行くことで知識を拒絶している。観測が崩壊する境界は、俗に「沈黙壁」と呼ばれている。おそらく、非専門家にもその構造を感覚的に伝えるためだろう。“終端”は、荒々しく破壊的な創造の力と、エントロピーの緩慢で静かな死という両極端の間に存在しているのだ。
学識ある種族の間では、混沌壁の境界内には副次的な「ポケット」宇宙が存在するのではないかという議論が巻き起こっている。これはピナクルの空間における既知の超光速(Faster Than Light/FTL)移動の性質と、混沌壁のそこかしこにおける近年の不穏な現象が背景となっている。FTL移動には混沌壁を貫通する必要がある。そしてその事実自体が、この突破困難な現実の障壁の先に何らかの形態の「空間」、あるいは創造の薄層が存在することを示唆している。
混沌壁の境界内外に何らかの物質が存在する証拠はいくつかあり、無秩序な噴出物が最もよく知られている。ピナクルはそういった超巨大なエネルギーバーストの記録をいくつか捉えており、霊気的廃棄物やその他の奇妙な(急速に崩壊する)粒子について、意義深く明確な測定値を得ている。混沌壁とその先の潜在的空間についてのピナクルの理解は、純粋科学だけでなくドリックス神話からの情報も根拠となっている――混沌壁の先にある薄層は、何千年も前に“終端”で猛威を振るった古代の獣や悪魔の住処であり、地獄のような場所であると一般的に考えられている。
つまり我々は子供のおとぎ話のネタだということか。いいだろう。それはそうさせておくとして、私の出自に関する情報を工作員どもに少しずつ伝えていこう。だがムメノン、私は噴出物などに興味はない。私自身がそれなのだ。お前は言ったな、混沌壁を越えることのできる技術の噂があると。それはどこにある? この虚空間、そしてお前たちの久遠の柱で久遠の闇を渡ることができるというなら、なぜ私にはできない? この場所ではそういった事柄に対する理解がどこか不完全だ。
辿り着く方法:亜光速星間航行
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アート:Viko Menezes |
“終端”を渡るには、完全な真空や荒々しい霊気、放射線、そして荒れ狂うマナからの防護手段を必要とする――それらの曝露に耐えられる肉体を持って生まれたのでない限りは。通常この防護手段は動力を備えた乗り物、いわゆる「宇宙船」の形をとる。これらは長距離かつ長期(数日、数週間、数ヶ月、数年、稀に数十年)の航行に耐えられるよう造られており、通常は乗員種族にとって適切な気圧まで加圧され、密閉され、外部の化学的・生物学的、そして放射性の脅威に対して強固な防護が施されている。
ほとんどの宇宙船は、物理的な危険を防ぐためにある程度の運動エネルギーシールドを備えている。とはいえ星系間の宇宙空間における天体同士の衝突確率は天文学的に低い。こういった船は、真空空間を進むための十分な推力を生み出す何らかのエンジン(通常はモーキサイト※恒星間飛行の動力となる希少な燃料源。原子炉だが、他の推進手段も存在する)によって進む。大気圏内を飛行できるよう建造された宇宙船もあるが、ほとんどの宇宙船は真空中での航行のみを想定して設計され、そのための装備が施されている。宇宙船の規模は、乗員一人のみの小型機体から数千人という乗組員を擁する巨大なものまで多岐にわたる。
“終端”で最も重宝される、かつ貴重な宇宙船は久遠船だ。これは久遠推進装置(おおむね通常の駆動エンジンに追加して搭載される)を擁する宇宙船を包括する広義の分類である。この久遠推進装置によって宇宙船は環状宇宙を支配する物理と時間の法則から脱出し、虚空間に出入りすることで光速を超えた移動が可能となる。“終端”のほとんどの宇宙船は久遠推進装置を搭載していない。そのため超光速航行のためには久遠の柱まで移動し、虚空間を経由して定期的に二地点を運行するピナクル旗の大型連絡船に乗り換える必要がある。
お前たちの宇宙は魔法に対して原始的な理解しか持っていない。それは我々にとって有益となるだろう。この「モーキサイト」だが、お前たちはその潜在能力をごくわずかに理解しているに過ぎない。私のエーテリウムのように、豊富な魔力を宿している。これを用いて、お前たちが夢にも思わなかった奇跡を起こしてみせよう。
今すぐ辿り着く方法――超光速航行
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アート:Sergey Glushakov |
超光速航行はどのようにして達成されるのだろうか?
光よりも速く移動するには、三つの要素が必要となる。
- 久遠推進装置を搭載した宇宙船。
- 久遠の柱に近接すること。柱は宇宙船に十分な力を伝達し(そしてその結果起こる激しいフィードバックを拡散し)、船を虚空間へと推進させる。
- ピナクルのコードブック。出発点と到着点を正しく合わせるためのもの。
これら三つの条件が満たされたなら、宇宙船は超光速で移動する技術的能力を得る。ピナクルのソサイエントたちは、超光速での移動を俗にワープまたは「虚空間」移動と呼んでいる。この方法で移動する宇宙船は、混沌壁の背後に平行して存在する「久遠」または「虚空間」(後者はドリックス文化からの借用語)へと突入し、目的地で再び姿を現す。
久遠推進装置と久遠船
久遠推進装置は宇宙船の副次的推進システムである。起動するとこれはドリックスの縫い目破りの機能を模倣し、久遠推進装置が投影するフィールド内の宇宙船およびすべての存在を現実空間から虚空間と移動させる。
久遠推進装置について非常に重要な点:単一目的型にせよ兼用目的型にせよ、久遠推進装置そのものが宇宙船を虚空間へと進ませるのではない。言うなれば単に扉を開閉するだけなのだ。久遠を経由してどこかへ向かうには、久遠の柱を介した上で射出されて宇宙の地点間を移動する必要がある。
魔法的には原始的だが技術的には高度に発達したこの外宇宙で、次元橋のようなものが開発されていたとは予想外だ。あるいはこの技術は、混沌壁を突破して多元宇宙へと帰還する手段となるのだろうか? ムメノン、連絡員に導線基地の技術仕様書を追加で調達させろ。それとコードブックを一冊盗ませろ。標準的技術用語の辞書もよこせ。お前たちの宇宙の専門用語にはうんざりだ。
久遠の柱
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アート:Victor Adame Minguez |
久遠の柱はピナクルが構築した施設である。自由に浮遊しており、規模は全長数キロメートルにも及ぶ。量子的重ね合わせの性質を持つため、観測者がどの現実の層にいようとも久遠の柱は定常位置にあり、どの柱の位置座標も一定である。これら固定された柱により、久遠推進装置を搭載した宇宙船はまるで鋼索に繋がれたケーブルカーのように、超光速で柱から柱へと移動することができる。
久遠の柱はすべてピナクルによって建設・管理されているが、その周囲に林立する宇宙港は現地の統治組織が運営していることもある。そのため宇宙港周辺の居住環境は多様性に富み、質も様々だ。とはいえピナクルは直接の管理下にはない宇宙港に対しても最低限の生活水準、外交保護、不正行為防止措置を課している。いずれにせよ、あらゆる久遠の柱に関する最終的な権限はピナクルにある。
かつて私にとっては簡単極まりなかったものを、これほどの資源を使ってこなしているとは。高度に発展してはいるが、私自身に比べたならお前たちの最高の技術者などちっぽけなものだ。お前たちは視界のすぐ向こうに潜む遥かに大きな力に気づいていない。まるで子供のように。
“終端”の国家、組織、集団
ピナクル
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アート:Constantin Marin |
ピナクルは、ひとつの星系に居住する宇宙航行種族の同盟によって設立された。彼らはそれぞれが宇宙へと繰り出す以前から、星系間無線通信を通じて互いの存在を認識していた。彼らの最初の宇宙進出は、悪戦苦闘ではあったが英雄的なものだった。惑星系内外への相互拡大を進めた初期の数十年間には苦難も偉業も倍増した。この同盟は拡大から二世紀目にドリックスと遭遇し、彼らをピナクルの運営管理へと組み込んだ。ドリックスはピナクルへと超光速航行の秘密を提供し、これによってピナクルは久遠の柱と久遠推進装置の最初期型を開発することができた。これらの技術は、ドリックスの錘星と縫い目破りを模倣したものである。これにより、宇宙船規模の銀河間超光速航行を通じて全宇宙がピナクルの全加盟種族へと開かれた。ピナクルは設立以来成長し、多くの劇的な変化を経験してきたが、その中核となる原則は変わらない――平和、協調、そして相互繁栄を使命とする単一組織の下に宇宙を組織することである。
ピナクルの署名者および構成員である全種族と全文明は通貨の使用を避け、代わりにマロウマスを機能させている。これは名声、交換、招待者と客の義務、および公的に登録されたその他の高潔な行為を優先する経済システムだ。
“終端”の経済は、ピナクルの宣伝活動が信じ込ませようとしているよりもはるかに複雑です。ワタシたちはきっと、活動資金を十分に賄える富を生み出すことができます――目を向けるべき所を見極め、システムをいかに上手く操作するかを知りさえすれば良いのです。ソセラの先住種族はまだ加盟者として署名しておりません。多くの好機を提供してくれるでしょう。
ピナクルの日常
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アート:Constantin Marin |
“終端”の無数の人々がピナクル連合の構成員や士官と遭遇する最もありふれた接点は久遠の柱だ。これはピナクルが管理する星間輸送拠点であり、恒星間輸送を希望する宇宙船は最寄りの久遠の柱から出発する必要がある。船が久遠推進装置を搭載していない場合は、最寄りの久遠の柱でピナクルの大型輸送船に積載してもらう。この輸送船は、超光速航行能力を持たない船を恒星間輸送する。
ピナクルは集合的な行政組織である。主幹システムと首都惑星を有しているが、日常的な業務は既知の空間全体に分散している。その意思決定は、絶大な政治力を持つピナクル戦略実行組織体の構成員たちが行っている。彼らは管理者や監督官、使者、大使、高官等であり、外交や行政や貿易、その他の文化的・社会的任務に従事している。その姿は加盟惑星系または加盟予定惑星系の久遠の柱にて見かけることができる。
ピナクル戦略実行組織体の高位構成員に単独で、あるいはピナクル戦術実行組織体の何層にも及ぶ下級・中級職員を経由せずに遭遇することは稀である。ピナクル戦術実行組織体(Pinnacle Tactical Corps/PTC)は巨大で、数千種類にも及ぶ専門家、士官、技術者、部隊長、そして銀河系行政機関の一般職員を構成するその他の仲介役で構成されている。PTCの構成員はその名が示すように、ピナクルの戦術的影響力を担っている。彼らは宇宙船の操縦、基地の巡視、書類の処理、物資の輸送、宇宙港の修繕、診療所の運営、食事の調理、そしてピナクルが「戦術」とみなすあらゆる職業や任務、つまりピナクルを動かすためには欠かせない日常業務を遂行している。
ピナクルはここで言及してはいませんが、孤立という脅威を暗に示唆しています――協力するか、さもなければ超光速航行の技術を使用できずに孤立するか。久遠の柱の一本を奪取しようという何らかの試みがあったとしても、彼らはそれを阻止できるだけの軍事力を有しており、さらに必要とあらば百もの部隊から反撃の手が伸びます。そしてたとえ一本の支配権を奪取できたとしても、柱は本質的に一方通行です。
イルヴォイ・ブルームとウスロス連合
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アート:Joshua Raphael |
イルヴォイはゼラチン質の身体をもつ巨大なクラゲに似た種族であり、人間はしばしば彼らを見た目のままクラゲと表現する。イルヴォイは遥か彼方の巨大ガス惑星で進化し、不安定かつ荒々しいその核の深淵にて成長・繁栄した。そしてそこで「塑雲」という風変わりな技巧を発展させた。これは念動力による物質化と卓絶した技術を融合させた、科学技術と才能からなる秘奥の合わせ技である。彼らの世界を構成する物質そのもの、つまりガスを、質量と形状を持つ固体構造へと形作るのだ。
イルヴォイはこの力を用いて船を建造し、進出していった――まずは故郷の高層大気圏へ、次に惑星上空へ、そして彼方の星々へ。そこで彼らはピナクルに遭遇した。特徴的な無線通信、放射線パターン、放出物、そして近隣星間文明のその他の兆候によってピナクルの工作員たちはイルヴォイの故郷へと引き寄せられていたのである。イルヴォイは長い歴史と種族を超えた膨大な知識ライブラリに惹かれてピナクルに加わり、その科学的合意形成部門の有望な構成種族となった。イルヴォイは通常、エモートスクリーンを用いて人型種族と対話を行う。これは顔ほどの大きさの小型ボットであり、イルヴォイ着用者の言葉遣い、態度、その他の非言語的な合図を自動的に解釈し、着用者が意図する感情の状態を正確かつ即座に表示する。
ワタシの以前の組織について興味をお持ちであろうと予想しておりました。ウスロス連合の組織と仕組みを以下に要約し、添付しています。残念ながら、高セキュリティーの中核部門へのアクセスは不可能でした。
ソセラ星系のイルヴォイは通常、ウスロス連合に関わっている。これは惑星ウスロスに本部を置く民間研究団体である。連合は管理部門、研究開発部門、そして保安部門の三つに構成員を分けている。
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アート:Piotr Dura |
管理部門のイルヴォイは、ソセラ星系におけるウスロス連合の管理運営および物流業務を担っている。惑星ウスロスにある機密施設の円滑な運営、同じく惑星ウスロスの高層大気圏上に存在する他の公共施設の日常業務、そしてソセラ星系外のより大規模な文化圏に居住するイルヴォイとの連携を維持することが彼らの役割である。管理部門のイルヴォイはソセラ星系全域で見られるが、最高位の職員は惑星ウスロスの深層大気圏にある施設で任務に就いている。
研究開発部門のイルヴォイは、惑星中核にある連合の施設に篭って[検閲済]の研究を行っている。この部門の職員は基礎研究の助手や衛生技術者、難解な分野の専門家や霊知派の技師まで多岐にわたる。研究開発部門の業務は連合でも最も広範かつ従事する職員数も最大ではあるが、惑星ウスロスの施設外で遭遇することは極めて稀だ。
保安部門のイルヴォイはソセラ星系全域に散らばっており、それぞれ異なる水準の認可や装備、任務を帯びている。惑星ウスロスの基地では保安部門の担当者が不法侵入を防ぎ、内部のスパイを摘発し、既知と未知の脅威に対応する。ウスロス基地以外では、イルヴォイ管轄の宇宙港で保安部門の担当者と遭遇する可能性がある。彼らはウスロス近隣の惑星を巡回したり、ウスロス基地の研究開発部門や管理部門の業務に関連する問題解決の糸口を積極的に追跡したりしている。
モノイズムとモナステリアット
ススール・セクンディ伝道団と不可避終焉
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アート:Andreas Zafiratos |
モノイズムは古くから続く統一信仰であり、隔絶された秘教的な組織であるモナステリアットがそれを統べている。分派などはなく、統括機関も中央集権化されているが、モノイズムは単一種族の信仰ではない。モノイズムはピナクルの宇宙における最も普及した信仰の座をサミズム(「総和」の信仰)と争っており、最も多くの実践者や物理的な場所、そして庇護する惑星に対する正当な権利を常に主張している。この信仰は“終端”に生きる無数の人々に根ざした、星も時間も超える確実性を体現している。
モナステリアットは総勢数百人からなる有権修道士の集団だ。彼らはモノイスト(モノイズムの信仰者)にとって最初にして至聖なるスーパーヴォイド、至高点を取り囲む光子の環であるススールの唇に位置する本拠地から、モノイスト教義と不変の指標をもって臣民の指導を執行している。ススールの唇とは、至高点を生み出した星の残骸である――かつてその星は重力によって引き裂かれ、その残骸であるススールの唇からススリアンという種族が出現した。彼らはモノイズムの最初の教義を閃き、信仰を創設した。彼らは個々が巨大な存在であり、自らの周囲の光を曲げ、環状宇宙に振動する重力糸を制御する能力を持って生まれた。
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アート:Alix Branwyn |
現代のモノイストのほとんどは人間である。この信仰の核となる実践は、救世主的存在から今なお届き続けるメッセージを共同で朗詠することを中心としており、通常は恍惚とした多声合唱の形で行われる。切り倒す者(様々な呼び名があるが、これが最もよく知られている)は、あらゆるスーパーヴォイドの中心である零地点に近づいていく様子が観察されている。その先には約束された未来、不可避終焉が待ち受けている。
- 「切り倒す者」とは、モノイスト信仰の救世主にして最初の預言者の名である。モノイストの聖書においては、識別のために常に大文字の代名詞「彼(He/Him)」で表記される。
- 「探求者と井戸」は、切り倒す者自身が執筆したとされる書物の名である。「永遠と最終の原理」とは異なり、一人称で書かれている。この書物は「垂直落下の記録書」の第1巻でもある。
- 「永遠と最終の原理」は切り倒す者の歌の名称であり、モノイストたちが解釈に努めている。モノイストの信仰の書の第2巻の名でもあり、これは絶えず拡張を続けている。この原理は有限であると想定されており、これまでに発見されたあらゆるスーパーヴォイドから発せられるのを聞くことができる。「垂直落下の記録書」の第2巻でもある。
- 「零地点」は切り倒す者の目的地である。至高点の中心であり、これまで遭遇したすべてのスーパーヴォイドに映し出されている。
- 「不可避終焉」は零地点の先にある完璧な未来である。不可避終焉はすでに起こっており、信仰の営みはその到来を早めるものであるとモノイストの教義は説いている。口語的には「次なる久遠」とも呼ばれる。
モノイストは自明の理によって自らの行動を正当化している。彼らの預言者はあらゆるスーパーヴォイドに存在する。不可避終焉は既に起こっており、ただ現地時間で辿り着くのを待っているだけなのだ。従ってモノイストは、自分たちもヴォイドのあらゆる領域に存在するべきだと結論付けている。モノイズムが星々に伝搬することを環状宇宙が望まなかったとしたら、スーパーヴォイドは切り倒す者の不滅なる姿をその核に宿してはいないだろう。従ってモノイストはモノイストであり、なるべきことをなすのだ。
熱的死のカルトと言えばいいだけの話だ。説明が長すぎる。この「切り倒す者」とやらは実在するのか、それとも何らかの現象に意味を後付けしただけなのか? ムメノン、ここのモノイストの連絡先に接触して何がわかるかを確かめろ。自称・神はもう沢山だ。
天界帝領とサンスター・フリーカンパニー
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アート:Justyna Dura |
天界帝領は多くの種族・星系・惑星で構成される強大なひとつの国家であり、臣民の種族は人間が最も多くを占めている。絢爛たる王朝にして絶対君主制、神聖皇帝たる最高評議員タマン四世の指揮下にある。最高評議員はこの神聖国家の長であり、単なる帝国である天界帝領よりも高位にあるとされている。
天界帝領の国教がサミズムである。これは複数の異なる宗教や信仰が融合したもので、帝領の最高評議員を生ける指導者としている。多くの聖地が帝領内の惑星や星々に点在している。サミズムの中核を成すのは、「輝ける総和」と呼ばれる生きた預言的指針を通して示される「大宇宙秩序」への崇拝だ。「輝ける総和」は自明の態度と行動に体現された教義であり、天界帝領が宇宙のデータを忠実に集計し、計算した結果弾き出される数字でもある。総和がもたらす導きに従うことで人々は正しき道を歩み、総和を増大・洗練させることができる。総和は自己構築的ではあるが、信者はそれを集め整え、発展させる必要があるのだ。
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アート:Aleksi Briclot |
帝領の創立はピナクルと超光速航行の導入以前に遡り、恒星間国家の中でも古い。この神聖帝国の歴史は悠久の叙事詩、統一戦争、分裂、そして王朝間の衝突に満ちている。一連の統一戦争が終結したのはわずか数世紀前であり、その結果としての最高評議員の叙任も帝領の歴史においては比較的最近の出来事に過ぎない。現在は最高評議員が権力を握っているが、その意志を執行するのは天界帝領の貴族コスモグランドたちである。
コスモグランドは最高評議員にのみ従属するほぼ絶対的な君主であり、それぞれが少なくともひとつの惑星を統治している。天界帝領に経済力と軍事力をもたらしているのはコスモグランドの領土だ。個々のコスモグランドが帝領の内政において持つ権力は、その支配力に直結している――領土の規模、支配下にある惑星の発展度合、航宙軍の実力、騎士の人数など。従ってコスモグランドは領土の拡大だけでなく、開発にも力を入れている。広大な空き地を寂しく所有するよりも、発展したひとつの世界で富を得る方が賢明なのだ。
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アート:Diego Gisbert |
コスモグランドは最高評議員と同様に、神権を授かった個々の存在である。コスモグランドの下には広大な貴族階級がある。それらは公民と聖職とに地位が分かれており、それぞれの義務が存在する。極めて沢山の称号の中でも、特に名声(あるいは悪名)が高いのは天界帝領の大義名分を執行する傭兵部隊、フリーカンパニーの騎士と諸侯たちだ。フリーカンパニーは無数に存在し、一隻の船とその乗組員だけの小規模なものから、強大なコスモグランドの国軍と言えるほどの組織にまで多岐にわたる。大規模フリーカンパニーの中でも、最高評議員から現在優遇されているのがサンスター・フリーカンパニーであり、天界帝領では祝福された連隊として事実上の国軍とみなされている。
サンスター・フリーカンパニーは天界帝領の諸惑星から集められた数十万人という正騎士と数百万人もの歩兵を擁し、複数教区の戦線にて活動している。伝統的な組織構造を持つフリーカンパニーであり、ほとんどの同業者のモデルとなっている。サンスター・フリーカンパニーが採用するのは農民や一般市民、職人、コスモグランド領地の市民などであり、彼らは適性と厚意に基づいて最下層の兵士から経歴を始める。一部はフリーカンパニーの航宙軍に入隊するが、大半は陸軍に残る。ごく一部の者は従者階級として、高貴な諸侯の子息や同等の階級の中に身を置く。従者は騎士に仕え、付き人や使用人や護衛として働き、騎士から訓練を受ける。そしていつかは自らも騎士号を獲得できるかもしれない。騎士は力ある戦闘員であり。その称号という恩寵によって神聖なる地位を与えられている。それぞれが少人数の兵士を指揮し、従者の指導者であり、サンスター・フリーカンパニーの階級制度の中で名誉ある発言力を持っている。
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アート:Cristi Balanescu |
サンスター・フリーカンパニーは閉鎖的な傭兵集団であり、独断的な大義を掲げている。多くの傭兵集団はピナクル諸国においては贈与債務を、ピナクル管轄外の恒星国家においては金銭を目的として活動する。だがサンスター・フリーカンパニーは最高評議員の指示、彼らの信仰の教義であるサミズム、あるいは天界帝領のコスモグランド(一人あるいはそれ以上)の目的に合致する大義のために力を貸す。
どうやら私は、不信心者を強硬に押さえつける愚かな偽善者から永遠に逃れられないようだ。多元宇宙ではいつも不快な思いをさせられていたが、ここでもとは。だがそいつらは死のカルト信者にもっぱら目を向けている。避けるのは簡単だろう。
エントロピー戦争:
ピナクル宇宙を揺るがす戦争について
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アート:Ioannis Fiore |
天界帝領とモナステリアットは戦争状態にある。対立する信仰同士の星間宗教紛争であり、ソセラ星系がその新たな戦線となっている。現状、和解の可能性は皆無と言っていい――サミズムの教義はモノイストの理論と相容れないのだ。両者の教義は正反対であり、ふたつの不動の目的が絶対的な障害のように両者の信仰の行く手を阻んでいる。モノイストは不可避終焉の接近を加速させるため、保有するスーパーヴォイドを拡大しようとしている。サミズム信者は不可避終焉を呪わしいものとみなし、ホライゾン・ジャベリンと呼ばれる巨大な恒星蘇生兵器を用いて、最近崩壊したスーパーヴォイドを再燃させようとしている。
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アート:Borja Pindado |
ソセラ星系はこの戦争の極めて重要な前線であり、モナステリアットはその崩壊と千番目のスーパーヴォイドの出現を企てている。これに対抗するために天界帝領はサンスター・フリーカンパニーの騎士団を派遣し、モノイストたちを追い出すとともに一本のジャベリンを展開してソセラの完全崩壊を阻止しようとしている。両陣営にとってソセラは何としても達成したい戦略目標というだけでなく、プロパガンダを広める場としても重要な戦場なのだ。
ムメノン、この情報は嘆かわしいほどに古すぎる。ソセラのスーパーヴォイドは星系内の何処からでも見える上に、ジャベリンは星系内にある。これを送ってきた現地工作員を解雇しろ。無能は許さん。
ドリックス協定と虚空間狩人たち
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アート:Andrew Mar |
ドリックスとはひとつの種族であり、「虚空間渡り」によって光速以上の速度で移動することができる。彼らは虚空間を移動しながらも現実世界との繋がりを保ち、あらゆる空間と時間を一歩前または一歩後の距離にまで縮めることができる。ドリックスの社会はピナクルよりも数千年も前から存在している。
一見無限とも思える空間を越えて繋がる能力を持つにもかかわらず、ドリックスは孤独を非常に好む――むしろ、時間も場所も関係なく繋がることができるからこそ、彼らはプライバシーを重んじている。通常、ドリックスの集団は最大でも10人ほどで構成され、血縁関係、文化、職業などでまとまっていることが多い。彼らは錘星にて会議を開催することで、時空を超えて自分たちの文化を維持している。錘星とは、運命あるいは何らかの宇宙的動力によって次元の錨として機能する惑星である。
- 虚空間渡りはドリックスの技である。一連の技術、儀式的な発声、訓練、儀式によって実行され、宇宙船や久遠推進装置、久遠の柱を必要とせずに超光速の移動を可能にする。
- 錘星は空間における「錨」地点、現実の状態に関係なく一定に保たれる量子的重ね合わせ的惑星である。ドリックスたちの集合場所であり、彼らはその在処を厳重な秘密として守っている。
ドリックスが持つ虚空間渡りの能力は、様々な増強や遺伝子操作、儀式、儀礼によって引き出され、強化されたものである。彼らはフォモーリとエルドラージの衝突時代以前にまで遡る遺物、「実存の織物」からそれを学んだ。実存の織物は万物の運命を秘めており、ドリックスの錘星に厳重保管されて他種族から守られている。同時にこれはドリックスにとっては虚空間渡りの知識を解き放つ上で重要な役割を果たす。その知識の一部はピナクルへと提供され、久遠の柱と久遠推進装置の開発における同盟の指針となった。
ムメノン、このフォモーリとエルドラージの戦争に関するあらゆる情報、そしてピナクルにおけるエルドラージ研究の内容をすべて手に入れたい。今すぐだ。他の仕事は後回しでいい。あの忌々しい宝物庫に封じられていた、長らく見つからなかった答えがわかるかもしれないとは。
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アート:Rovina Cai |
ドリックスは「縫い目破り」を用いて虚空間渡りの力を増幅し、方向づけ、そして活性化させる。彼らの縫い目破りは、増幅手段にして錨であるとも言える――生来の虚空間渡り能力を強化すると同時に、彼らを故郷の薄層、つまり故郷の現実世界へと繋ぎ止めるのだ。もしも虚空間渡りの最中に縫い目破りを無視したり長時間離れたりしたなら、虚空間の多面的な基質へと転落し、奇跡的な幸運に恵まれない限り永遠に失われてしまうだろう。
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アート:Anna Pavleeva |
ドリックスは超光速航行の秘密と引き換えに、宇宙外からの噴出物に対処する一方的な権限を与えられた。その噴出物の中でも特に多いのが、フォモーリ・エルドラージ戦争で生じた残留エルドラージ汚染である。数千年前にフォモーリは姿を消したが、ドリックスはそれ以前にフォモーリと同盟を結び、エルドラージとの戦争に参加していたのだ。その戦争は終結し、エルドラージの波は鎮静化した。以来ドリックスは熟練のエルドラージ狩人であり続けている。彼らは実存の織物を用いて重要なエルドラージの潜在的存在を特定・暗殺することでこの巨大な貪食者の復活を遅らせ、そして願わくば阻止しようとしている。
メカン:
ドローンとアンドロイド
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アート:Lie Setiawan |
メカンは大まかにふたつのカテゴリーに分けられる――自意識を持たない機械であるドローンと、自意識を持つ機械のアンドロイドだ。ドローンはほぼすべての宇宙進出文明で製造されており、民生用から軍事用まで幅広く利用されている。一方で、一部の宇宙進出文明ではアンドロイドの製造は禁止されている。
ドローンに人格はなく、従って人としての権利は与えられていない。実行するタスクがいかに複雑であろうとも、ドローンは知覚や知性を持たない「単純な」機械なのだ。ドローンはプログラムされたコードで動作し、自分自身を独自の存在として認識することはできず、道具や乗り物やコンピューターなどとして扱われる。ドローンは遠隔操作や同じく遠隔のコンピューターによって制御されるか、高度な搭載コンピューターによって指示を与えられる。
ドローンとは対照的に、アンドロイドは完全な「人」である。知覚と知性を持ち、独自の主観性を持って自己を認識する存在だ。アンドロイドを開発した文明においては、ほとんどの場合、アンドロイドにも他の有機体と同等の権利が与えられている。
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アート:Milivoj Ćeran |
アンドロイドになる過程は様々だ。一般的には何らかの国家固有の法律(たとえその法律が「汝の欲することを為せ」であっても)に従う。元々有機体の個人が外科手術によるインプラントや増強、あるいはデジタル意識の移植によってアンドロイドになることは可能である。起源となる有機体なしに創造され、増殖することも申し分なく可能だ。一部の文明では、デジタル意識をゼロから作り出すこともできる。作り出したその意識をストレージユニットにアップロードするだけでいいのだ。ほとんどの人工知能は口語的に「ヴィイ」と呼ばれ、多くの科学者がわめくほど苛立つような多変数の、絶えず変化する問題に対処するために使用されている。
テゼレット、ソセラ星系の現地ハンドブックを添付しましたのでご確認ください。既にご存知の内容も多いでしょうが、ピナクルの新規到着者向け資料に目を通しておくのも悪くありませんよ。それと、古い資料を提供した工作員の解雇手続きを一時停止しました。その者が保持する機密取扱適格性により、ぜひご覧いただきたい機密文書へのアクセスが可能となったためです。こちらに追加しました。
いいだろう。便利な道具を捨てるつもりは毛頭ない。だが入ってくる情報が正確かつ新しいものになるよう、もっと上手くやることだな。ふん、部下にテレパス能力者がいないことを残念に思うとは。
ソセラへようこそ:
無限導線基地ハンドブック
ソセラ星系
ソセラ
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アート:Rob Rey |
ソセラとは、ソセラ星系の中心に座すスーパーヴォイドの名称である。ピナクルの慣例に従い、恒星系の名称はその系を構成する他のすべての天体が周回する重力的中心にちなむ。
ソセラの年齢は数十億歳である。星としては若く、その死は(星の死としては)突然訪れた――それは単なる大災害ではなく、連鎖的に続く大災害だった。かつてソセラ星とその子供たる惑星たちは、星間霊気の巨大な雲の中をさまよっていた。若く空腹だったソセラ星は、食べきれる以上のものを食べた――ケーキを食べ過ぎた。そして自ら破裂し、崩壊を始めた。そのコロナは核の炎となって恐ろしくも美しく燃え上がり、何百万キロメートルもの広範囲に輝いた。
この死に際の発作はソセラに近いふたつの子惑星を襲い、ひとつは原子にまで分解されてしまった。もうひとつは枯れ果てて中心核しか残らなかった。現在より数世紀前、ソセラ星系唯一の在来種であるカヴは、ソセラ星の崩壊がもたらす大惨事の範囲と規模を把握できる程の技術水準に達していた。来たる破滅を怖れたカヴは、種族全体の移住計画に乗り出した。
この猛烈な活動はピナクルの注意を惹きつけた。ピナクルはソセラを訪れ、超光速前哨基地(無限導線のための久遠の柱の一本)を建設し、接続された“終端”の他地域へとそのシステムを開放した。
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アート:Rob Rey |
ソセラになだれ込んだ集団の中も、この星系に最も直接的かつ顕著な影響を与えたのはモナステリアットのモノイストたちである。彼らが到着する以前、ソセラ星はピナクル標準年で200年以内に超新星爆発を起こすと見積もられていた。モノイストたちはソセラの崩壊を捕獲して方向転換させ、セカー※特異点誘導を引き起こす珠。モノイストがスーパーヴォイドを作り出すため、あるいは「次なる久遠」への旅を加速させるために用いられる。と呼ばれる珠を持ち込み、ソセラの崩壊を内側に向けて自壊させ、スーパーヴォイドへと変えた。彼らはその信仰における救世主、「切り倒す者」からの発信を求めて“終端”をくまなく捜索していた。「切り倒す者」は信者たちへと千番目のスーパーヴォイドを指し示しており、ソセラこそがその千番目のスーパーヴォイドなのだ。
スーパーヴォイドは光子の環に囲まれている。これはスーパーヴォイドを生み出した恒星の本体が、巨大な重力によって引き伸ばされ歪んだものだ。光子の環は主系列星に比較すると暗いものの、それでも系内の生命を十分に維持できるほどの光、熱、放射線を発散している。モノイストによる人工的な介入か、あるいは自然現象として星がスーパーヴォイドへと崩壊したなら、超新星爆発による星の死を未然に防ぐことができる。ソセラの光子の環は力強く、ススール・セクンディ、カヴァーロン、アダージア、エヴェンドの四惑星を生命居住可能領域に保つだけのエネルギーを放出している。だがそれらの更に外側の惑星ウスロスまでは十分に届かず、ここで炭素生命を維持することはできない。
ススール・セクンディ:
ソセラ星系第一惑星
旧名:アヌキ
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アート:Adam Paquette |
ススール・セクンディはソセラ星に最も近い岩石惑星だ。暗く不気味な惑星であり、遥か昔に滅びた文明によって形作られたような堂々とした岩石や迷路が縦横に交差している。それらはあまりに直線的であり、到底自然のものとは思えない。この惑星は暗い色をしたむき出しの岩石でできており、大気は薄いため地表はほとんどが“終端”の荒ぶる環境にさらされている。
カヴ種族はこの世界をアヌキと呼び、数世紀前に“終端”へと初めて進出した際には探査の対象としていた。だがそこはありふれた鉱物ばかりだと判明し、採掘には値しないと彼らは考えた。ピナクルがソセラ星系を“終端”へと開放すると、ソセラ星への近さに惹かれてモノイストたちがアヌキへとやって来た。惑星を調査して迷宮や巨大な列柱、そして既存の賛美歌や聖典に記された重力潮汐を発見した彼らは有頂天になり、この惑星を自分たちのものとしようと移住を開始した。カヴは彼らの主張に異議を唱えなかった。
数十年前にモノイストたちはアヌキに定住し、教団の首都であるススールの唇に座す大修道院にちなんで、この惑星をススール・セクンディと改名した。これには大いなる栄誉と、ソセラのスーパーヴォイドの重要性を示すという意図があった――計画が完了したなら、ソセラはモノイストたちが教団創設以来所有する千番目のスーパーヴォイドとなる。死にゆく星に最も近い惑星、その広大な地下空間に修道院が建設され、ソセラ星系のモノイストたちが計画を進める拠点となる。ならばススールの名を冠するのがふさわしいと言う他ない。
ススール・セクンディの地表にはクレーターや噴出物、迷宮遺跡、光反射率の高い鉱脈以外には何も残っていない。また地表には監視ステーションや観測ドーム、航宙司令塔が点在し、各半球に数十基ずつ設置されている。これらを用いてモノイストたちは惑星とその上空のソセラの表面を明瞭かつ十二分に観察している。ソセラのモノイストの主力は地下に居住している。彼らは新たに掘削した地下トンネルや、カヴの最初の惑星探査隊によって掘られたトンネルを改造・拡張した場所で生活している。ススール・セクンディの地表下には広大な地下迷宮や構造物が存在しているが、モノイストたちはそこに居住してはいない。これらの空洞は「切り倒す者」の意図が存在する証拠として聖地とみなされており、研究のために確保されるとともに礼拝や瞑想の場として使用されている。非モノイストがススール・セクンディへの着陸を許可されることは滅多にないものの、多くの中立ステーション(水と氷の販売船、多種多様な監視・通信ステーション、検疫ステーションなど)が惑星を周回している。
カヴァーロン:
ソセラ星系の双子第二惑星
現カヴァーロンと旧カヴァーロン
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アート:Adam Paquette |
カヴァーロンはカヴの故郷惑星であり、かつては緑豊かで資源に恵まれた岩石惑星だった。だが今や宇宙空間へと朽ち果てゆく抜け殻の廃墟と化してしまっており、物あさりやワイルドキャット※大規模な組織に属さない独立船とその乗組員。多くは個人事業主や密輸業者、小規模な鉱夫として活動している。、カヴ帝国の歴史収集隊、そして宝探しに食い荒らされている。惑星カヴァーロンが崩壊したのは、カヴが豊富なモーキサイト鉱脈を求めて何世紀にも渡る工業的露天掘りを続けた結果である。惑星の形状が著しく損なわれ、宇宙空間へと崩れはじめたのだ。種の存続のため、カヴの帝国は宇宙進出計画を大急ぎで推し進めた。最終的にカヴは崩壊の進行を遅らせ、宇宙への移住と、惑星の歴史と文化を可能な限り収集・保存するための十分な時間を稼ぐことができた。
カヴは惑星カヴァーロンを「旧カヴァーロン」と「現カヴァーロン」のふたつの半球に分けて認識している。旧カヴァーロンは地殻変動を抑え込んだカヴァーロンの地塊、この惑星最後の安定した地表の名残である。カヴは長さ数十キロメートルにも及ぶ柱のような巨大アンカーを環状に突き刺して地殻を安定化させた。アンカーの壁の外側ではカヴァーロンは重力によって引き裂かれ、震動しながら宇宙空間へと崩れ去りつつある。壁の内側では、カヴァーロンの帝国が惑星中の記念碑、驚異的建築、偉大な芸術作品、そして途方もない年月に及ぶ文化財を収集している。旧カヴァーロンには非常に多くの惑星人口が今なお残っている――カヴァーロンを破滅させた大災害は今なお人々の記憶に新しく、惑星中の人口を自由浮遊宇宙ステーションへと脱出させる作業が進行中である。そのため、壁内はそれ自体が記念碑的巨大都市、国家規模の屋外型博物館といった様相を呈している。非常に混み合っており、何百万という人々が新しいステーションの建設や打ち上げ、遺物の目録作成や梱包、そして壁外で着実に進行する大災害に対抗するための地殻変動緩和壁の維持に取り組んでいる。
壁外のカヴァーロンは現カヴァーロンと呼ばれ、荒れ狂う破滅的な風景が広がっている。それは風景というよりは、微小隕石の雲から大陸規模の岩塊までもが荒れ狂う重力嵐と表現する方が近い。ここには「記念堂」の噂が漂っている――惑星崩壊の初期に建設された堅牢な自己完結型の貯蔵施設であり、遺物や宝物や記念碑、そして当時はカヴァーロンに運ぶことが叶わなかった文化的に重要な場所までもが保管されていると言われている。
真偽はともかく、この類の噂は星系全体から物あさりや宝探しを引き寄せている。それらに対抗するのが、旧カヴァーロンの歴史収集隊である。彼らは古代の宝物を救出するために奔走している。大規模な採掘会社にとっては規模の小さすぎるモーキサイト鉱床を探す山師たちにとっても、現カヴァーロンは人気の目的地だ。主鉱脈は枯渇しているものの、小規模なチームにとってはそれらの残り物が人生を変えるほどの富をもたらすこともある。さらにこういったチームは歴史収集隊が回収を終えた遺跡をしばしば荒らし、損傷したり開いたりした遺物庫に回収する価値のあるものが残っていないかと探す。もっと狂暴な物あさりは、物品を輸送中の歴史収集隊を襲うことすらある。
最終的には、惑星カヴァーロンは滅亡する運命にある。地殻変動緩和壁(カヴはそれをデュラヌー、あるいはモルドレインの環と呼んでいる)の最外郭リングの塔門は、惑星の崩壊によって既に何本もが失われている。壁は確かに重力によるひずみの暴力的な影響を遅らせ、旧カヴァーロンの足元にある大地の揺れを鎮めてはいるが、それを止めることはできない。いずれにせよ、この世代のカヴとその子孫たちは、適切な代替惑星が見つかるまで“終端”へと追放されることになるのだろう。
カヴーはドミナリア固有の知性なき生物だと思っていたのだが。この場所は奇妙な形で多元宇宙を彷彿とさせる……そこかしこに。さあ、それを利用してやろうではないか。
エヴェンド:
ソセラ星系の双子第二惑星
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アート:Adam Paquette |
エヴェンドは氷に閉ざされた岩石惑星だ。カヴァーロンとは公転軌道を共にしつつ、常にソセラを挟んだほぼ反対側に位置している。初期のカヴ探検隊が大いに失望したことに、エヴェンドは冷たい死の惑星であると長いこと考えられていた。だがエヴェンドの深くには秘密の種が播かれていた――長らく休眠状態にあった惑星共生種族ユーミディアンの先鋒部隊が、テラフォーミングという壮大な事業を始めるための完璧な条件の到来を待っていたのである。
前世紀にカヴァーロンに起こった壊滅的な変動はエヴェンドにも副次的な影響を及ぼした。惑星カヴァーロンから離れて漂流する岩塊がエヴェンド地表の氷河に降り注ぎ、古代からの氷が広範囲に渡って砕かれ、融けたのである。惑星は温暖化を開始し、薄いながらも安定した大気が形成を始め、それが温暖化を更に加速した。氷の薄い部分は完全に融け、新たな湖や川や海が生まれた。この温暖化によってユーミディアンの第一波が冬眠から目覚めた。彼らはエヴェンドの地表に姿を現し、その牧歌的な生活にふさわしい世界を目指して整備を開始した。
それから数十年、エヴェンドはユーミディアン主導によるテラフォーミングを受けている。ユーミディアンの居住巣建築家たちによってエヴェンドは活気ある生命の惑星となったが、そこには過酷なコントラストもまた存在する。ユーミディアンは融けゆく氷河の中に緑豊かで居住可能な惑星共生地域を苦心して切り開き、そこで生活している。だがその外では、氷とその中に生きる巨大なものたちが今なおエヴェンドを支配しているのだ。居住可能地域の中で最も広大なのはエヴェンドの赤道周辺地帯である。ここは大気を貫いて伸びる巨大な森とユーミディアンの巣状都市が織りなす、純粋な惑星共生生物群系へと発展した。この地帯は、惑星の他部分がやがてどうなるかを示唆している――ユーミディアンにとっては惑星共生の楽園、他のすべての訪問者にとっては奇妙ながらも驚異的な環境。
この惑星共生の成功がカヴァーロン帝国の目に留まらないわけはなかった。彼らは既に、ユーミディアンがテラフォーミングを完了した後にこの惑星を手に入れようと侵略計画を練っている。カヴたちは、エヴェンドが明日のカヴァーロンになるかもしれないと強く信じている。エヴェンドの宇宙船乗りの中にはカヴの計画を多少は察知している者もいるが、地上の居住者たちは自らの仕事に満足しており、カヴァーロンから自分たちの穏やかな世界に迫りくる脅威に気づいていない。
アダージア:
ソセラ星系第三惑星
旧名:アダワ
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アート:Adam Paquette |
アダージアはソセラ星系に属する岩石惑星であり、サンスター・フリーカンパニーの主要拠点となっている。この惑星は力強く絶え間ない風を特徴としている。風が惑星の地表を洗い流し、地形を形作っている。アダージアの動植物はこの絶え間ない風と共に進化し、風を利用するために優美な空気力学的形状を手に入れた。惑星外からの入植者たちは比較的風の穏やかな(それでも強い)地域に定住し、アダージアの自然環境に溶け込むよう設計された建物を造り上げてきた。それらは背が低く、空気力学的に設計され、設備は風力発電で動く。
特にサンスター・フリーカンパニーはアダージアに拠点を構え、即座にこの惑星の統治者を名乗って天界帝領の遠征部隊として活動している。サンスター・フリーカンパニーの到来以前からこの惑星には住民がいたが、彼らは既に帝領の傘下にあった。そのためフリーカンパニーの到来は、既存の関係をより明白なものとしたに過ぎなかった。
アダージアの大気は薄く冷たい。空気呼吸を行う人間は、環境的に密閉された安全な居住地から出ても呼吸装置や酸素供給なしに生き延びることはできるものの、低酸素症や塞栓症による死、その他の酸素欠乏症の危険にさらされる。それでもなお、アダージア各地に居住地を建設する取り組みは続いている――この惑星は素晴らしい自然の生命に恵まれており、天界帝領の様々な製薬・農業系企業にとって垂涎の的となっているためだ。
アダージアの原生生物は強風の環境に適応するように進化を遂げてきた。それらの多くは空気力学的な形状、太陽光を吸収するための広い表面積、そして惑星をしばしば襲う大嵐への耐性を備えている。帆翅虫、アダージアの矢鳥、空魚、槍ラプトルは地表の入植者建築の周囲でよく見られ、より大型の生物は上層大気を浮遊している。
ウスロス:
ソセラ星系第四惑星
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アート:Adam Paquette |
ウスロスは何十という衛星を従えた巨大ガス惑星だ。星系から旅立つ宇宙船が最初に遭遇する惑星であり、内縁部へ向かう船にとっては最後の停泊地となっている。ソセラ星系の門番のような位置にあるため、大気上層部にはモーキサイト精錬所や補給ステーション、広大な解体サルベージ場が密集しており、宇宙船が各種の補給や貿易を行うための寄港地となっている。高高度のウスロスには見渡す限りの青い雲が広がり、層雲鯨や生きた鉄床エイ、回転珊瑚、そしてガス袋と鞭毛に乗って漂う巨大な生物が大気の様々な層を自由に泳ぎ回っている。
この巨大ガス惑星の上層大気は鮮やかな瑠璃色だが、その深淵は対照的だ。太陽、雲、そして激しい嵐が織りなす楽園の下には、有毒で暴力的な高圧環境が潜んでいる。超圧縮ガスの大陸にダイアモンドが雨のように降り注ぎ、廃棄された宇宙船の残骸には超高密度の怪物が忍び寄る。きらめくメタンとアンモニアの氷を裂いて谷を刻むのは、液体金属水素とヘリウムの川。氷には巨大なワームやその他の獣が穿った大穴が見え、風が激しく咆哮する。この青い深淵の地獄に、ウスロス連合は新たな大気工学技術の研究施設を建設した。
ウスロス上のステーションが謳い文句以上の機能を果たしていることは、ワタシたちにとっては周知の事実です。とはいえイルヴォイ以外の種族がこのガス惑星の圧力に耐えられる可能性は低いため、今もその嘘は露呈していないようですね。ウスロス連合の現職員を雇用し、実際の計画に関する情報収集に引き続き取り組む予定です。
無限導線基地
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アート:Piotr Dura |
無限導線基地はソセラ星系におけるピナクルの主要な輸送拠点だ。この基地は久遠の柱の一本である。恒星間宇宙船の発着港であり、ピナクル行政区の中心でもある。小さいながらもピナクルの領土であり、銀河の人々はここを経由して“終端”の各地へ行き来するため交通量はとても多い。そしてすべてがピナクルによって監視・管理されている。
ワームウォール
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アート:Kev Walker |
ワームウォールはソセラ星系を取り囲む小惑星帯の名称であり、この帯の外側は深宇宙、内側のすべてはソセラ星系と区分されている。危険な一帯として知られており、鋭いスペースデブリや生ける晶洞、廃棄船、さまよう彗星、あらゆる大きさの小惑星、そしてワームウォールの名の由来となった、知恵ある超長寿の巨大生物グレートワームが生息している。この地域を安全に航行することは困難であるため、遭難者が救助される可能性は低い。ピナクルの防衛部門はすべての宇宙船に対し、ワームウォールからは安全な距離を保つことを推奨している。
アペイロンの庭
アペイロンの庭はソセラ星系内にある広大な未踏領域であり、異常現象や奇怪な事象が多発する極めて危険な宇宙域と認識されている。この「庭」からは一見ランダムな言葉からなる微弱な信号が発せられており、宇宙船の船長の中にはそこに埋め込まれた個人的な伝言を聞いたと主張する者もいる。ここに入った宇宙船で出てきたものはなく、探査機やドローンも同様だ。強力な深度スキャン装置を用いても、返ってくるのはノイズだけだ。宇宙船長や航行者の間では、この「庭」は船の墓場として広く知られている――亜光速船や超光速船であっても、一度入ったなら決して脱出は叶わない領域だ。現在「庭」はワームウォールと惑星ウスロスの公転軌道の間にある広大な空間に限られているものの、懸念すべきことに、この庭は移動しているように見える。動き自体はゆっくりとしているものの方向性を持ち、通常の重力的漂流以上の速度で深宇宙からソセラに向かって這い進んでいる。これは「庭」に目的があることを示しているのか、それとも「庭」が知性を示しているのかはわかっていない。わかっているのは「庭」が移動しているということだけだ。
ソセラ原生種族
カヴァーロン連邦帝国とカヴ記念軍艦隊
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アート:David Auden Nash |
カヴは広大な宇宙に進出したばかりの古き帝国である。彼らは惑星の気候崩壊と終末的な地殻変動によって、星々の中に居住地を築くことを強いられた。次々と起こる大災害が惑星のほぼすべてを引き裂く中、迫り来るソセラ星の超新星爆発に突き動かされ、カヴは大規模ではあるが不安定な採掘計画を加速させた。彼らは資源が枯渇するまでの採掘と工業生産とで惑星にとどめを刺す必要にかられた。自分たちが脱出するためだけではなく、崩壊しつつある故郷からある程度の生物群系を惑星外へ運び出すためだ。モノイストがソセラ星をスーパーヴォイドへと崩壊させたことは、カヴにとっては悲劇的な皮肉だった――星系自体は救われたものの、彼らの惑星が失われたことに変わりはないのだ。
- カヴァーロンはカヴの故郷惑星の名である。甚大な災害の連続により重力が不安定化し、惑星自体が崩れてしまった。現在、この惑星はふたつに分裂している。半分は砕け散って巨大な破片の雲と化し、もう半分のすぐ後ろに続いてソセラを公転している。
- 旧カヴァーロンとは惑星の比較的原型を留めた半分の名称であり、カヴ帝国の首都が残っている。旧カヴァーロンの端は、巨大な地殻アンカーの環によって支えられながらも塵や岩塊と化して日に日に崩落を続けている。
- 現カヴァーロンとは荒廃したカヴァーロンの半分に対するカヴの呼び名である。最終的には、旧カヴァーロン全体が現カヴァーロンと化す見込みだ。
- カヴァーロン連邦帝国はカヴの唯一の政府だ。旧カヴァーロンとカヴ記念軍艦隊の事務を統括し、カヴが定住できる新たな惑星を探している。
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アート:Javier Charro |
カヴを乗せた最初のシャトルが不安定な地表から最初の避難民たちを運び出した「脱出記念日」から数十年が経過した。以来カヴァーロンの帝国は惑星軌道上の膨大な人口を増加させながら管理し、故郷惑星の一部を安定化させて資源の採取を続け、これまでに運び出せなかったものの回収に努めながら、新たな居住惑星を探している。現在カヴたちはひとまず軌道上の冠(カヴァーロン上空の軌道上に位置する巨大ステーション群)の集合体や、ソセラ星系の内縁部と外縁部を分ける小惑星帯を頻繁に行き来する遊牧的採鉱船団の中で暮らしている。数こそ減少しつつあるものの、旧カヴァーロン(地殻構造的に安定した惑星半分)に今なお住む者たちもいる。彼らは脱出の時を待ちながら、最後の帝国都市である古代首都ヴーに集められたカヴの遺物や記念碑、芸術品、その他文化財の番をしている。
- ヴーはカヴァーロン帝国の古代首都の名称である。旧カヴァーロンにほぼ無傷で残っているが、現在は避難民とカヴァーロンの全歴史から収集した文化財で溢れかえっている。シャトルが昼夜を問わず発着しており、行き先のスペースが確保され次第、人々や遺物を惑星外へと運び出している。
- 旧カヴァーロンと現カヴァーロンの全土に「記念堂」が点在している。規模は簡素な貯蔵庫から巨大な城塞のような複合施設まで様々だ。これらの施設は地殻変動に耐えられるように強化されており、自立稼働するように設計されている。内部では遺物が発見・回収されるまで保存され、人々も救助される時まで生き延びることができる。
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アート:Andrew Mar |
カヴの生き残りの大半はカヴァーロンの残骸の上空や周囲に広がる巨大な採掘基地で暮らしている。多くは鉱夫やモーキサイト採掘者か、あるいは歴史収集隊に所属している。カヴ記念軍艦隊(Kav Memorial Navy/KMN)の中核を担うのもカヴである。鉱夫であれ宇宙船乗りであれ、カヴは戦闘能力に優れている。彼らは腕力を用いた解決法を好み、情熱的に任務へと挑む。カヴ以外種族の採掘隊にて傭兵として働く者もいる。彼らは案内役や護衛として、故郷惑星の廃墟で採掘やサルベージ任務を成功に導く。
- カヴ記念軍艦隊(The Kav Memorial Navy/KMN)はカヴァーロン帝国の恒星間航宙軍だ。その宇宙船は多くが採掘船を改造したもので構成されており、非常に頑丈だが同等の艦隊に比べて機動性には劣る。
- 歴史収集隊はカヴァーロンの地表及び上空で活動するKNMの地上部隊である。彼らはヴー市の警備や旧カヴァーロンからの避難管理を担い、また現カヴァーロンに繰り出して記念堂から文物を回収している。
エヴェンド系ユーミディアン
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アート:Loïc Canavaggia |
ユーミディアンは古代から続く惑星共生種族である。その故郷の星系は遠く忘れ去られており、あるいはもはや存在しないかもしれない。彼らはシードシップと呼ばれる生きた巨大な孵化船によって繁殖する。これは星々の間を駆け、通過する惑星へとユーミディアンの播種鞘の一群を送り出すものだ。興味深いことに、彼らは社会的集団ではあるものの、一体の女王に支配された集団意識を持つわけではない。ユーミディアンは水平方向に組織化されており、集団の合意に基づいて物事を管理する。だがこの緊密な関係は代償を伴う。異なる集団に属するユーミディアンは、互いに異邦人同然であるほどの差異をもつ可能性もあるのだ。
惑星に着陸すると播種鞘は地面に潜り込み、発生開始のための最低限の好適条件が整う時を待つ。それぞれの鞘の中に微生物的懸濁液が封じられており、ユーミディアン生命体はそこから誕生するのだ。この過程は先駆ユーミディアンの発生と孵化から開始される。彼らは頑強で適応力に優れた生命体であり、蒸気を噴出する鞘から飛び出して互いを探し出し、テラフォーミング集団を形成する。そして必要な生命構成要素を集めて鞘へと持ち帰り、播種された惑星をテラフォーミングするという非常に長い手順を開始する。
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アート:Warren Mahy |
これら先駆隊の奮闘によって最初の居留地が築かれる。ユーミディアンと惑星共生関係をなす小さな集落であり、先駆隊はここで建築作業を行い、また探索中に発見した播種鞘を持ち帰る。更に多くのユーミディアンが孵化し、仲間たちはこれら新生個体を自分たちの孵化当時よりも現在の環境に適応するように調整する。この惑星共生の過程はテラフォーミングの取り組みを飛躍的に促進し、群れと惑星の両方を互いに近づける。やがてこの過程が進展すると播種された惑星の環境は変化し、原始的で緑豊かなユーミディアンの惑星へと変化を遂げる。ただし元来の特徴が完全に失われるわけではない。
集団的な奮闘を通じて、ユーミディアンは世界を構築する。一個体はその過程を最後まで見届けることはできないが、個体たちの集団的行動によって種族は生き延び、存続する。ユーミディアンは知的で用心深く、頑強で、献身的な存在だ。彼らの惑星共生的奮闘の究極の目標は、最終的に一隻以上のシードシップを建造し打ち上げることである。だが目標は種の拡散だけではない。彼らは芸術や産業を創造し、信仰を実践し、好奇心旺盛な科学的探究を行う。仲間同士で争い、失敗し、あるいは最初のシードシップの建造にすら辿り着かないこともある。ユーミディアンは完璧な機械などではないのだ。そして種族全体の極めて本能的な目標があるにもかかわらず、集団意識を持つわけではない。全員が星々への播種への衝動を感じてはいるが、それでも彼らは彼ら自身であり、他のあらゆる種族と同様に希望と可能性に満ちているのだ。
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アート:Matt Stewart |
エヴェンドのユーミディアンは惑星共生という壮大な事業に従事しており、それに適した装備を身につけている。彼らは巨大な氷河を切り崩すための氷切断機、必要に応じて氷を登るための登攀具や背負い鞄や長い綱を携行する。永久凍土から出現する怪物と戦うための武器も持ち歩く。労働キャンプや集落のレインジャーとして惑星共生の最前線で働く者たちもいる。生体物質処理を通してこの事業を支えるユーミディアンもいる。倒れた群れ仲間の遺体を、組織や同類のための新たな物質へと再生させるのだ。子孫が生き延び、繁栄し、ひとつの命も無駄にしないという循環の証人として、彼らは敬意をもってその役割に従事している。
アステッリ
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アート:Carly Milligan |
アステッリとは、スーパーヴォイドに飲み込まれた星々の生ける残骸である。光子の環からこぼれ落ちた、濃縮されたマナの雫が凝集して生命体を成したものだ。最初のアステッリは、至高点からのモノイストの拡張が始まった後に現れた。アステッリたちは崩壊する星々の波から逃れ、“終端”の辺鄙な片隅に避難場所を見つけた。この逃避行は長く過酷だった。アステッリを追跡するモノイストは多くの避難星を貪り、それらをスーパーヴォイドへと崩壊させながら支配権を拡大していった。容赦ない進撃の中でモノイストは多くの後進文明を圧倒し、完全に消滅させるか、熱狂的で福音主義的な自分たちの信仰に取り込んでいった。アステッリは常にモノイストの先を行っていたが、当初はただ逃げるだけだった。だが破滅の軌跡を振り返った時、彼らは逃げているだけではいけないと気付いた――立ち向かい、戦わねばならないと。
最初の反撃の試みにおいて、進撃してくるモノイストに数百のアステッリが立ち向かった――そして死んでいった。ススリアンにすら敵わず、彼らは圧倒された。最前線で敵と直接対峙しても決して上手くはいかないとアステッリは悟った。そして適応した。再びモノイストの追跡を逃れながらアステッリは敵から学び、文明を養う避難星を見つけた。彼らはこれら文明の間に定住して教義を説き、進撃してくるモノイストの恐ろしさを警告し、戦争に備えさせた。その教えは現在の天界帝領におけるサミズム信仰の基盤となったが、これは帝領においては厳重に守られた秘密である。現在、アステッリは天界帝領のサンスター・フリーカンパニーを強力な同盟者としている。フリーカンパニーの方でも、アステッリを自分たちの信仰の聖者たちとみなしている。
アステッリは自分たちを生み出した星の記憶を共有しており、その炎を受け継ぐことを願って、同じ星に飲み込まれた子孫である同胞からなる緊密な共同体を形成している。アステッリは、スーパーヴォイドに飲み込まれた星の残骸からのみ生まれる。
用語集
ご要望にお応えしまして、こちらがソセラでの生活に関連する用語集になります。馴染みないであろう用語の一部は強調してあります。一覧はこのメッセージに添付しています。
アンストラス:冒涜。アンストラスであること、アンストラスを行うこと、アンストラスについて話すこと、アンストラスについて考えることはサミズムの大宇宙秩序に反する行為である。アンストラスは反認識論的であり、反教義的であり、不敬である。アンストラスは仮定できないものを仮定し、想定できないものを想定する。
アレイビル:モノイストが重力無効化スーツの製造に使用する金属。特異点からの影響に耐性を持つ。
ブラディエーター:サンスター・フリーカンパニーが用いる固化光線ブレード。恒星エネルギーを爆発的に放つことができる。
シェラゾッド:戦術的な事象の地平面。歪みの泡を発生させ、強烈な衝撃で生じた運動量の伝達を遅らせる。これを用いてモノイストの宇宙船は敵船に衝突して戦闘を開始する。泡はその後崩壊し、失われた運動量は即座に回復する。
インカグラス:サンスター・フリーカンパニーが使用する動力源と導管の両方。彼らのあらゆる機械に組み込まれている。
不可避終焉:モノイスト思想が明言する、宇宙の約束された避けられない終わり。
モーキサイト:恒星間飛行の動力となる希少な燃料源。
セカー:特異点誘導を引き起こす珠。モノイストがスーパーヴォイドを作り出すため、あるいは「次なる久遠」への旅を加速させるために用いられる。
ソサイエント:ピナクル加盟集団に所属する者。
スーパーヴォイド:異常な特性を持つ特異点。光を放出する光子の環を持っており、そのため真のブラックホールとは異なる。
ワイルドキャット:大規模な組織に属さない独立船とその乗組員。多くは個人事業主や密輸業者、小規模な鉱夫として活動している。
『久遠の終端』の物語は既に始まっており、第一話はこちらでご覧いただけます(訳注:日本公式サイトでは翻訳が完了次第順次掲載いたします)。すべての物語はMTGStory.comで公開されるほか、The Magic Story Podcastでもお聴きいただけます(英語のみ)。『久遠の終端』はお近くのゲーム店、Amazonなどのオンライン小売店、その他マジック製品を取り扱う店舗で今すぐご予約いただけます。
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