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『From the Vault: Lore』

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『From the Vault: Lore』

Katie Allison / Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori

2016年8月1日


 マジックは常にストーリーを語ってきました。全ての次元が他とは異なる世界であり、それぞれの歴史と文化を持ち、特有の生態系や一目でわかる風景があります。あらゆるカードがそのセットのストーリーを多少なりとも表現しています、例えそれが、一人の名も無き兵士が戦いへ突撃するというものであっても。ですが他よりも際立って、とりわけ重要なキャラクターや出来事、場所、物が描かれてゲームプレイへと翻訳されているカードもまた存在します。

 『From the Vault: Lore』では、マジックの全歴史から15枚の記念すべきカード(と1枚のトークン・カード)を、これまでに多元宇宙で起こった最も熱い物語の瞬間を切り取って皆様にお届けします。それらの場面が、豪奢なアートが、初めて『From the Vault』式の特別フォイル加工でお手にとっていただけるのです!

 さあ、果たしてどのカードがマジックの壮大な伝承を代表するものとして選ばれたのでしょうか? ご覧ください!

(注:以下のカードリストはアルファベット順であり、時系列順ではありません)


女王への嘆願/Beseech the Queen

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 『シャドウムーア』から収録のこのカードが示す「女王」とは《妖精の女王、ウーナ》、「大オーロラ」の仕掛け人です。ここで女王は雲の中に姿を成し、目の前で嘆願する小さな人影を無感情に値踏みしています。ジェイソン・チャン/Jason Chanのアートワークは女王の希薄な、人知を超えた姿を申し分なく表現しています。彼女は真のフェアリーというよりも純粋な魔法的存在に近く、対価無しに好意を与えることはありません。


陰謀団の儀式/Cabal Ritual

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 陰謀団はオデッセイ・ブロックの物語における真の悪役であり、黒に列する宗教的集団として神秘的な儀式と黒魔術によってその権力を保持していました。《陰謀団の儀式》が初めて収録された『トーメント』は黒に重きを置いたセットです。多くの墓地関係能力が含まれていたため、このカードは物語とゲームプレイの完璧な交点となっていました。キーラン・ヤナー/Kieran Yannerによる新アート(と最新のフレイバーテキスト)は、今も陰謀団はその邪悪な方針を捨ててはいないことを想像させてくれます。


衝合/Conflux

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 「衝合」はアラーラの断片世界の再統合という、莫大な量のエネルギーを放つと予想された出来事に与えられた名称です。そしてこの多色のマナの衝突を掴む鉤爪の持ち主こそ、《衝合》によって放たれたエネルギーを手に入れようと画策するニコル・ボーラスに他なりません。物語における《衝合》と同じくこのカードも究極の計画を始動させてくれます、何もかもが異なる破片が一つに合わさるように。


暗黒の深部/Dark Depths と マリット・レイジ/Marit Lage

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 マナを生み出さない土地というのはどれも奇妙なものですが、少なくともこの1枚がマナを生み出さない理由は明白です。《暗黒の深部》の中には巨大な、この世のものとは思えない触手の怪物がその魔法的エネルギーを抑えこまれ、もしくは消耗させられて凍り付いているのです。氷のテリジア大陸は『コールドスナップ』の物語にて融け始め、隠されているべきであったものが姿を現しました......マリット・レイジもそのひとつです。彼女は謎に包まれた起源と途方もない力を持つ宇宙的存在であり、今日に至ってもマジックのあらゆるクリーチャーの中で最大のパワー/タフネスを保持しています。


裏切り者グリッサ/Glissa, the Traitor

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 哀れなグリッサ。ミラディン世界の《グリッサ・サンシーカー》という名のエルフとして、彼女は長いこと家族の死への復讐を追い求め、ですが常に不運と裏切りに見舞われてきました。最終的に、彼女は多大な犠牲を払いながらも狂気の構築物《メムナーク》を打倒し、同族のもとへと帰還します――そして対抗すべく戦ってきた暴虐を、自身のものとして非難されたのです。愛した存在から閉め出され、ファイレクシアの油に堕落させられ、グリッサはファイレクシアの感染を受け入れてヴォリンクレックスの最強の勇者となりました。今や彼女はファイレクシアのために戦っています。


獄庫/Helvault

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 《獄庫》は《ソリン・マルコフ》によって《大天使アヴァシン》と同時に創造されました。《獄庫》は強い魔力を帯びたイニストラードの銀の月から創造されており、次元を苛む悪魔の群れを封じる力がありました。ですがアヴァシンが古の大悪魔《グリセルブランド》を捕えようとした時、彼女は悪魔によって道連れにされ、そのためイニストラードの邪悪は抑制を失って繁栄することになってしまいました。結局、《獄庫》が破壊されることによってアヴァシンは解放され、次元に今一度平衡と守護がもたらされました――少なくとも『イニストラードを覆う影』の出来事までは。


メムナーク/Memnarch

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 格別の好奇心を持つ造物であるメムナークは、持つ者を狂わせる強力なアーティファクト《ミラーリ》の知性ある化身として《銀のゴーレム、カーン》によって創造されました。カーンは彼に金属次元アージェンタムを任せて離れるのですが、メムナークはファイレクシアの油と触れてしまい、次第にその影響に侵食されていきます。彼はその次元をミラディンと改名し、他次元から誘拐してきた生命で満たし、それらを用いて恐ろしい実験を繰り広げました。プレインズウォーカーの灯を求めるという執念を燃やしながら。


精神の願望/Mind's Desire

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 《ミラーリ》は危険なアーティファクトであり、その力は誘惑的です。そして莫大な魔力を提供するだけでなく、使用者の最も深い夢と欲望を顕現する力もありました。しかしながら、同時に使用者へと最終的には破滅を招く不幸な特性もまた持っており、ドミナリアへと魔法的な混乱をもたらしました。アダム・パケット/Adam Paquetteの手による躍動的な新規アートは、『スカージ』の元アートと同様に、《ミラーリ》によって揺れ動く、望みを叶える力を垣間見せてくれています。


シミックの幻想家、モミール・ヴィグ/Momir Vig, Simic Visionary

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 シミック連合が抱く生命進化への情熱。モミール・ヴィグほどにそれを体現する者はありません。彼の影響下、このギルドはラヴニカ世界の生命の本質的な姿を保持する戦いではなく、それらを改良させる方向へと転換しました、その対象自体が改良を望んでいるかどうかはともかくとして。ヴィクター・アダム・ミンゲス/Victor Adame Minguezによる新規アートは、『ディセンション』での元アートよりもさらにクローズアップし、モミール・ヴィグが明らかに自作なのであろうカエルとトカゲの混種らしきものを冷静に観察する様を示してくれています。


臨死体験/Near-Death Experience

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 カードに描かれている人物はギデオンですが――消耗し、負傷し、ですが途方もない不利を乗り越えて勝利した――このカード名はゼンディカーの全てに相応しいものでしょう。まず『エルドラージ覚醒』にてエルドラージの巨人が目覚め始めた時、その怪物的な落とし子らが徹底的に次元を破壊するかに思われました。ですがギデオンの力を得てゼンディカー人は生き伸びて最初の猛攻撃を阻み、エルドラージを一時的に食い止めて『戦乱のゼンディカー』へと舞台を整えることになるのです。


抹消/Obliterate

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 《練達の魔術師バリン》はその人生の中で多くの重要な役割を果たしてきました。《トレイリアのアカデミー》の校長、ウルザの右腕、ケルドの勇者殺し。ですが彼は妻のレインと娘のハナを守ることはできませんでした。レインは戦いにて倒れ、ハナはファイレクシアの疫病によって命を落としてしまいます。アカデミーへと戻った時、彼はその地がファイレクシアによって蹂躙されていると知って怒りと悲しみに打ちひしがれ、自分自身ごと地域一帯を破壊し尽くす禁断呪文を放ちました。彼の最後の行動が、まさしく強力な全体除去呪文としてここに描かれています。


ファイレクシアの処理装置/Phyrexian Processor

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 長きに渡って、ファイレクシアは多元宇宙の巨悪であり続けています。その始祖ヨーグモスは支配下のあらゆる生命を、金属と肉体と魔法の忌まわしい融合によって「完成させる」という情熱に囚われていました。彼の死後もファイレクシア人はその務めを続け、あらゆる地へとその堕落を広めています。『ウルザズ・サーガ』収録の《ファイレクシアの処理装置》は彼らの思想を象徴しています。真の力を手に入れるためならば、苦痛と死など全くもって安価なものなのだと。


トレイリア西部/Tolaria West

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 マジックの物語において、ドミナリアは何処もかしこも多種多様な破壊の力を受けてきました--時の裂け目、残忍な戦争、氷河期、等々――ですがトレイリア島、かの有名なアカデミーが置かれた島こそ、最悪の被害を被ったものかもしれません。悲嘆に打ちひしがれた魔術師バリンによって「抹消」されてから長い年月を経て新たな魔法の学院が創設され、その滅びた先駆者を称えてトレイリア西部と名付けられました。このカードは元々『未来予知』に収録されており、ゲームにおいては「変成」能力を持つ唯一の土地という独特の存在でもあります!


梅澤の十手/Umezawa's Jitte

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 《梅澤俊郎》、通称俊(トシ)は神河次元のはぐれ者の侍でしたが、その旅の中で彼は犯罪組織の用心棒から闇の精霊のしもべ、そして神の乱の英雄となりました。彼は「漢字の魔術」を振るい、強力なアーティファクトを保持し、世界のあらゆる影の中を渡り歩くことができました。『神河謀叛』に収録されている彼の十手は、マジックでも最も珍重される装備品のひとつとして、私達に彼の狡猾さと多芸さを垣間見せてくれます。


暴露/Unmask

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 ウェザーライト号とその乗組員達のサーガ、彼らの多次元に渡る一連の冒険譚はマジックの複数のブロックに渡っています。そのひとつが『メルカディアン・マスクス』です。ウェザーライト号がメルカディア次元へと墜落し、乗組員らはメルカディア人とチョー=アリム人との紛争に巻き込まれました。それだけでなく、多相能力を持つ宿敵ヴォルラスがタカラへと扮して乗組員達の間に混乱と疑念を振りまき、後にタカラの父スタークを殺害しました。ヴォルラスがタカラの姿を解く瞬間を、私たちはこのカードに見ることができます。


 バックストーリーは以上になります。『From The Vault: Lore』は皆さまの最寄りの店舗にて8月19日発売です! それまでは、キーラン・ヤナーによる《陰謀団の儀式》の新規アートを大判でご覧いただきながら、今しばらくお待ちください。


陰謀団の儀式》 アート:Kieran Yanner
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