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ギルド門侵犯日記

Mark Gottlieb / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2012年12月31日


 私はニューヨーク市で生まれた。今日に至るまで、その事実は私のもっとも誇らしいことの一つだ。

 生まれつきのニューヨーカーであるということは、頼りになり、気骨があるということだ。私が他の人よりも秀でていると言える、いくつもの細かなことの1つに挙げられる。よしんば、そうではなかったとしても、そう主張することはできる。栄光の称号なのだ。

 ニューヨーク生まれニューヨーク育ちの私の母は、私のことを田舎者と呼んだ。私が赤ん坊の時、私の父母はニューヨーク市の郊外に引っ越し、そして私はニュージャージーの郊外で育った。大学を出て2年経ってから、私はニューヨークに住みたいという生涯の夢を叶えることができた。私のマンションはクイーンズ通りのアストリアにあり、私の仕事場はマンハッタンの50番、3号の角にあるランダムハウス・ビルにあった。そして、そこで落ち着きはしなかった。残念なことに、私はニューヨーカーであることに向いていなかったのだ。私のニューヨーク暮らしは2000年、アメリカを横断して引っ越し、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストで働き始めたときに終わりを告げた。ニューヨークで私が得た最後のものは、強烈なピザもどきと、私が他の誰よりも優れているという厳然たる知識だった。ああ、そうじゃないかもしれないが。

 ここで重要なのは、5000キロの彼方にあっても、ニューヨークは私の血となり肉となっているという事実だ。そして、これからも。


繁殖池》 イラスト:Rob Alexander

都市国家

 ラヴニカもまた、私の血肉となっている。いや、気味の悪い意味じゃなく――私はラクドスじゃないからね! 私がウィザーズの一員となったのは、デザイナーではなくエディターとしてだった。私のねじくれた脳みそが開発部の一員となり、デザイン・チームやデベロップ・チームに参加するようになるまでには、数年の時間が必要だった。私が初めてデベロップ・チームに参加したのは、ブライアン・シュナイダー/Brian Schneiderがリーダーを務めたラヴニカ:ギルドの都で、私が初めてデザイン・チームに参加したのは、アーロン・フォーサイス/Aaron Forsytheがリーダーを務めたディセンションだった。私はラヴニカ・ブロックが好きだ。私はその構築に携わるのが好きだった。私はギルドが、中でもオルゾフとシミックが好きだ(私のお気に入りの統率者デッキの統率者は《オルゾヴァの幽霊議員》だ)。当然、私は第2のラヴニカ・ブロックの一員となることを楽しみにしていた。

 その関与の仕方は、今までにないものだった。ケン・ネーグル/Ken Nagleがラヴニカへの回帰のデザイン・リーダーに選ばれ(彼が大型セットのデザイン・リーダーを務めるのはこれが最初だ)、マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterがギルド門侵犯のデザイン・リーダーを務めることになった。このギルド門侵犯が、リミテッドにおいて単一セットで使われる大型セットであるということもまた今までにないものだった。しかし、マークはここで問題に直面した。マークは「Friends」という開発名で呼ばれる、2013年秋の大型拡張セットのデザイン・リーダーでもあったのだ。彼は素晴らしく多くの仕事をしている。基本セットを除いて、あらゆる拡張セットのデザイン・チームに在籍し、そして年に1つの大型セットではリーダーを務めている。しかし、そんな彼でさえ、同時に2つの大型セットのデザイン・リーダーを務めることは不可能だった。ギルド門侵犯は冬の発売であり、秋の発売である「Friends」のデザインと衝突することは確実だった。

 アーロン・フォーサイスはこの難問を解決する手を思いついた。ギルド門侵犯のデザインは、ローズウォーターをリーダーとして始める。私はそのチームの一員となる。その後、途中で、入れ替わるのだ。私がリーダーとなり、ローズウォーターはギルド門侵犯のデザイン・チームの一員として残りながら「Friends」のデザインを立ち上げる。これで、マジック史上最も経験豊かなデザイナーの手によってギルド門侵犯は非常に安定した形で立ち上げることができ(つまり私が失敗してもそれほどひどいことにはならず)、そして私にはデザイン・リーダーを務めたという貴重な経験を1から立ち上げるというプレッシャーなしでもたらしてくれる。私はその時点で7つのデザイン・チームに在籍していたが、リーダーを務めたのはたった1度、ミラディン包囲戦の時だけだったのだ。私はこの機会と、その責任に興奮し、喜んで受け入れた。

都市新聞編集部

 そして。私のギルド門侵犯での話は、デザイン・チームの一員として始まった。私はカードを作り、そしてまたカードを作った。ボロスのカード、シミックのカード、ディミーアのカード、グルールのカード、オルゾフのカード。それに、いくつかのキーワード・メカニズムも作った。読者諸賢も想像できる通り、素晴らしいことだ。忙しいが、めくるめく楽しさだ。

 一番最初に私が作ったレアが、白黒の、オルゾフの天使だった。教会で崇拝されるようなアンデッド、あるいは不死――死後の生命、である神聖で宗教的な存在で、そうでありながらなんとなく不吉な存在。理想的に言うなら、ゾンビの天使。私は過去のカードから《センギアの吸血魔》や《炎まといの天使》を見つけ出し、オルゾフ・ギルドらしさを付け加えた。喜ばしいことに、そのカード・デザインはファイルに採用され、そして驚くべきことに、そのカードは外見上の変更を加えただけでほぼそのまま印刷にまで至った。これが、その完成品、私の1枚目のプレビュー・カードである。

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 最終的にゾンビではなくなったが、そんなことに文句はない。彼女は美そのものだ。そしておまけに、セレズニアはこのクレリック・トークンを居住できる!

都市議会

 私がデザイン・チームのリーダーに昇格して、私の恐怖の時代が始まった。この時点で、我々はいい状況にあった。カードのファイルもあり、5つのキーワード・メカニズム全ての原形ができていた。その一方で、まだまだやらなければならないことが山積みだった。中でも、5つのキーワードのうちで3つは充分な出来とは言えず、究極的には入れ替える必要があった。

シミック

 進化はほぼそのまま完成と言えた。これは、イーサン・フライシャー/Ethan Fleischerがグレート・デザイナー・サーチ2で提出したメカニズムであり、シミックにちょうどよかった。施された変化といえば、パワーだけでなくタフネスも見るようになったということだけだった。

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ボロス

 大隊の仮名は「突撃/Assault」で、これを発明したのはショーン・メイン/Shawn Main。これもまたグレート・デザイナー・サーチ2の産物だった。ボロスにふさわしいものだったので、これも最初からファイルに収められていた。

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グルール

 グルールの能力を見付けるのはそう簡単ではなかったが、多くの議論を呼んだ。何週間かの間「乱暴」というキーワードを試していたが、巧く行くことはなかった。その後、「キックボクシング」を2ヶ月試したが、デベロップ・チームはそんな私たちのことを間抜けだと言った。その時、チームの別のメンバーが新しいキーワードを思いつき、それの試作カードをそれ以外は普通のデッキに投入して、実際にプレイしてみて楽しいと言うことを確認した。「奇襲/Ambush」と呼ばれるそのメカニズムは面白かったのだ。思いついたのも、セットに入れたのも私だと聞いたら偏った見方だと思うかも知れない。

 奇襲は最終的に「湧血」という名前に決まった。湧血能力を持つクリーチャーは、2種類の使い方ができる。クリーチャーとしてプレイすることもできるし、攻撃クリーチャーを強化する呪文のようにプレイすることもできるのだ。攻撃的なデッキでは、まさに必要とされるものだろう。

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オルゾフ

 残りの2つのキーワードは、私が担当になってから作られたものだが、思いついたのは私ではない。私の役割は、他のメンバーがそれらを発想する手助けをすることだ。よくやった、私! オルゾフに関しては、元のキーワードをデザインしたのは私で、「圧迫/Oppress」というものだったが、かなりの間プレイしたあとでボツになった。もしこのキーワードをデザインして却下したのが私自身だったら、思い出を語ることはできなかっただろう。そうだったなら、それは幸運だったと確信している。役立たずのらせんはほとんど含まれていなかったのだ。

 この時点で、私たちはグルールで採ったのと同じ戦略を採っていた。人々がキーワードを思いつき、見本のデッキを作り、テストする。違いは、このときは成功しなかったということだった。グループでブレインストーミングをして、他のデザイナーを列記したりもした。それでも、見付けることはできなかった。やがて、私が休みを取っていた週の間に、デザイン・チームのメンバーにして後にこのセットのリード・デベロッパーを務めることになるデイブ・ハンフリー/Dave Humpherysはオルゾフのメカニズムを見付けるための小チームのリーダーになり、ショーン・メインが強請を思いついたのだ(これが、ごくごくまれな例外として、ギルド門侵犯のデザイン・チームの一員でないショーンがデザイナーとしてクレジットに名を連ねている理由である。ショーンはこのセットの5つのキーワードのうち2つを作ったのだ!)

 強請を皆がすぐに受け入れたわけではないが、それをプレイしていくうちにどんどん好きになっていった。ぴったり来た。オルゾフらしかった。対戦相手に少しずつ損害を与え、長期戦に持ち込み、お決まりの結果に向けて状況を進めていく。このセットのメカニズムは攻撃的なものばかりだったので、余剰のマナを使うことができる遅くて防御的なメカニズムを作るのは美しい対照性をもたらした。じわじわと積み重なっていく効果は、まさに無慈悲そのものだ。

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ディミーア

 ディミーアのメカニズムにも物語が存在する。発端は、マーク・ローズウォーターがディミーアのキーワードにライブラリー破壊機能を与えたいと言ったことだった。ライブラリー破壊は旧ラヴニカにおけるディミーア・ギルドの重要な特徴だった。それを中心に据えない理由があるだろうか?

 チームとして、私たちは2段構えの計画を練った。1段目:このセットの多くのカードが、土地が置かれるまで対戦相手のライブラリーから墓地にカードを置く、「研磨/Grind」というキーワードを持つ。これは枚数不定のライブラリー破壊としては面白いもので、そうでなければ何もライブラリー破壊にならないカードにつける優秀な効果だった。例えば、呪文1つで、クリーチャーを破壊しそして研磨するのだ。あるいは、飛行クリーチャーが、戦場に出たときに研磨するのだ。リミテッドにおいてこの種のカードを充分な枚数仕込めば、ライブラリーアウトで勝つこともできる。相対的に見て、頻度はかなり低いが。

 そこで2段目だ。対戦相手のライブラリーを偶然削ったときに働くカードだ。墓地にあるカードの枚数を数えたり、墓地にあるカードを戻したりする。それ単体でも働くが、研磨カードと組み合わせるとより強力になる。対戦相手のライブラリーを研磨することのメリットになるのだ。

 開発部には、このプレイ・パターンの大ファンがいた。特にマーク・ローズウォーターだ。しかし、その一方で、デベロップ・チームには強烈な批判者がいた。問題は、研磨カードはそれそのものではゲームを一切進めない(2マナでライブラリー破壊をする!)上に、メリットを得るカードは研磨カードによる事前準備なしでは爆発力に欠けるというのだ。半分孤立的で、他の4つのギルドとまったく別の軸に沿ったゲーム・プレイを求めるものだった。ボロス?グルールのデッキを組んだとしたら、両方の力を合わせてひたすら攻撃することができる。グルール?シミックのデッキを組んだなら、両方の力を合わせて強大なクリーチャーを並べられる。シミック?ディミーアのデッキを組んだなら、んー......えーと......相手のライブラリーを破壊しながら、クリーチャーを進化させる......?

 デザイン・チームのリーダーとなって、最初に私が下した大きな決定はディミーアの扱いについてだった。ローズウォーターがリーダーだった間は、彼が全力で研磨を守っていた。しかし、彼はもうリーダーではない。私も別に気紛れにその決定をしたわけではなく、周りの意見を集約し、耳を傾けたのだ。そして、ディミーアという観点から見て、ライブラリー破壊を誤った方法で使おうとしているという合意に至った。ラヴニカにおいて、ディミーアには大量の使い捨てライブラリー破壊カードがあるわけではない。何度も使える重要なライブラリー破壊カード(《ヴィダルケンの幻惑者》《秘密の王、ザデック》《隠れ潜む密通者》)が数枚あり、他のコントロール・カードの支援や、コストの重い使い捨てのライブラリー破壊カード(《不可思の一瞥》《妄想の誘導》《精神の吸収》)があればそれだけでゲームを決められたというだけだ。


ヴィダルケンの幻惑者》《秘密の王、ザデック》《隠れ潜む密通者》《不可思の一瞥》《妄想の誘導》《精神の吸収

 これがギルド門侵犯の目指したところだ。研磨はファイルに残っているが、キーワードではなくなった。一部のカードがその行動をするだけだ。通常のライブラリー破壊カードと混ぜられているのは、そのほうが面白いからだ(もしライブラリー破壊カード全てが研磨カードであれば、その枚数が変わりうるという性質が目立たなくなる。相手の土地がなくなるまでライブラリー破壊をするだけなら、他のカードが何枚その途中で墓地に送られたかは関係なく、ただ土地を数えるだけになる。しかし、ライブラリー破壊の一部が「土地を墓地に送るまで続ける」ものであり、一部が「3枚を墓地に送る」ものであれば、研磨効果で墓地に送るカードが1枚か5枚かに意味が出てくる)。ギルド門侵犯には、低レアリティにもそれだけでゲームを決めることも可能な、再利用可能なライブラリー破壊カードが数種類存在しているし、また使い捨ての強力なもの(そのなかの少なくとも1枚はものすごく重い)も入っている。懐かしい気分だ。

 研磨をキーワードでなくしたことで、新しいディミーアのキーワードが必要になった。これを見付けるのはすぐだった。マーク・ローズウォーターは研磨の強烈な支持者で、全力を尽くしてディミーアのキーワードにライブラリー破壊を含めようとしたが、その流れはもうなくなっていたのは明らかだった。そこで彼はすぐに新しい、戦闘ダメージを与えたときの能力を作る能力を作り出した。これは暗号能力と呼ばれるようになる。

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都市計画

 ラヴニカを舞台にする拡張セットには、2つの重要な「雰囲気」が存在する。

  1. カードはギルドからのものだと感じられなければならない。
  2. カードは都市の中にあるものだと感じられなければならない。

 この1つめも簡単だとは言わないが、それ自体は開発部の私たちが普段からやっていることに近い。通常の手順、すなわち何らかの方針、何らかのプレイスタイル、何らかの目標に従ってカードをデザインするということに近い。これは非常に自然なことで、ラヴニカへの回帰にせよギルド門侵犯にせよ(そしてドラゴンの迷路にせよ)、間違いなく充分にギルドらしいものになっている。

 2つめの目標は別の話だ。マジックのセットを都市内の存在にするということは、いつもとは全く異なる。実際、ファンタジーにおいて都会の環境というのは比較的一般的ではない(今までに存在しないというわけではないが)。私たちが慣れていることではないので、より直接的で協調した努力が必要となった。

 私がギルド門侵犯のデザインのリーダーになる前、私は、ラヴニカへの回帰において、芳醇でフレイバー的でトップダウンの都市をテーマとしたデザインを作るという小チームのリーダーを務めていた。このチームには、私の他にイーサン・フレイシャー、ショーン・メイン、ビリー・モレノ/Billy Morenoが在籍していた。期間は2週間だけだったが、非常に有意義だった(し、そしてとても楽しかった)。私たちの仕事のほとんどは、クリエイティブ・チームのメンバーであるダグ・ベイアー/Doug Beyerが作った、都市をテーマとしたカード名の候補一覧に基づいて行われた。私の数えた限りでは、このチームが作ったカード・デザイン11枚が何らかの形でラヴニカへの回帰で印刷された。

印刷されたカード名 デザイン名/都市の呼び名
市場のクロヴァド》[RTR] Transport Beast(輸送獣)
慢性的な水害》[RTR] Filth-Choked Streets(腐敗まみれの通り)
写本裁断機》[RTR] Sewer Grate(下水格子)
樫の木通りの亭主》[RTR] Innkeeper(亭主)
ならず者の道》[RTR] Secret Door(隠し扉)
市内捜査》[RTR] Scavenger Hunt(ゴミあさり狩り)
封鎖作戦》[RTR] Security Gate(封鎖門)
通りの掃除機》[RTR] Street Sweeper(通りの掃除機)
酒場の詐取師》[RTR] Bookie(賭け主)
地下世界の人脈》[RTR] Underground Market(地下市場)
都の芽吹き》[RTR] Urban Renewal(都の再生)

 中でも、このチームの最初のミーティングでおこなったブレインストーミング中に4人でデザインした《市内捜査》や《都の芽吹き》は私の心の中で重要な位置を占めている。

 都市をテーマとしたカードがこのブロックで重要なものになったので、私はこれらのカードがギルド門侵犯のデザインでも最初から――いや、うん、途中から――配置されるようにした。このために採った3つの手法と、それぞれに該当するプレビュー・カードを紹介していこう。

1丁目

 ラヴニカへの回帰の小チームが作り上げたのは11枚だけではない! デザインの一部はラヴニカへの回帰で使われず、このギルド門侵犯で使われることになった。デザイン名が「該当柱/Lamppost」「企む店主/Scheming Shopkeeper」「傘/Umbrella」「取引市場/Trade Bazaar」というカードがその一例だ。この最後の1枚が、《ブリキ通りの市場》になった。

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2丁目

 ギルド門侵犯のファイルの管理者となった私は、望むままにプレイテスト名を変更できる権限を得た。カードに都市らしい名前を付けられると思ったら、そうするのだ! その中には冗談のようなものもあって、「テリムトーの新しい投げ矢/Telim'Tor's New Dards」と呼ばれていた1点ダメージ・アーティファクトを「落ちた電力線/Downed Power Line」(時代錯誤の都市らしい名詞で、実際の名前としては印刷されていない)にし、「自動強盗/Automatic Mugger」を「装甲車/Armored Car」(これも。ただし実際のカードは想像以上にこのイメージに近いモノだった)にしたりした。「怒り管理/Anger Management」というカードは「点滅灯の展示/Fireworks Display」(これもどれほど重要ではない名前だ)、「衝撃的ショック/Shocking Shock」は「路上強盗/Mugging」に。「聖剣/Holy Sword」は「暴動用具/Riot Gear」に。また、「屋根が火災の上に/The Roof is on Fire」(これは私自身が作ったカードに付けた変な名前だ)は(ダグ・ベイアーのリストにあった名前ほぼそのままの)「五連火災/Five-Alarm Fire」に改名した。

 「食肉研磨機/Meat Grinder」を「サディスト的理髪師/Sadistic Barber」に変えたときには、「てっぺんをちょっと刈るだけ」というフレイバー・テキストを加えた(カードリストが公開されたら、これがどのカードの話かわかるだろう!)。サディスト的何とかというカードはこのセットに他にも存在したが、完全にスウィーニー・トッド(訳注:19世紀の怪奇小説に登場する連続殺人者である理髪師)にしたかったので、「悪魔の理髪師/Demonic Barber」に再度改名した。こいつは街中で働いているんだ! クリエイティブ・チームは彼に他の仕事を与えたが、私にとっては彼はやっぱり理髪師なのである。

 ファイルには、「切り替え/Toggle」という青のカードが存在した。{X}{U}のコストを持ち、「パーマネントX個を対象とする。同時に、アンタップ状態であるそれらをそれぞれタップし、タップ状態であるそれらをそれぞれアンタップする。」というものだった。ニューヨーク市を念頭に置いて、私はカード名を「雑踏/Hustle and Bustle」にした。調整中に、効果は変更され、パーマネントをタップするだけになった。クリエイティブはカード名を変更したが、都市をテーマとしていることは維持され、カード名は《交通渋滞》になった。

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3丁目

 都市をテーマとしたカードをギルド門侵犯に取り入れる3つめの方法は、もっともスマートなものだった。都市をテーマとしたカードをデザインし、それをセットに入れるのだ。アッハッハッハッハ! 私は「農民の市場/Farmer's Market」「公園のレインジャー/Park Ranger」「煙霧の精霊/Smog Elemental」「通りの祝祭/Street Festival」「構造崩壊/Structure Collapse」「縄張り争い/Turf War」といったカードをデザインし、それらはセットに含まれることになった。カード名はそのままとは限らないし、カードのイメージが維持されていないものすらある。しかし、それで充分だ。もう1枚、私がデザインした都市をテーマとしたカードがある。これは(法と正義の眼鏡を通した)ニューヨーカーという私の背景に基づいているもので、その名前は《殺人の捜査》。このカード名はこのカードが作られてから印刷に至るまでずっと変わらなかったものだ。

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 デザイナーとして、カード名をつけるというのは幸せな余録だ。特に、その名前が最終決定される何ヶ月も前にそのファイルが手から離れていたならなおのことだ。私はギルド門侵犯の都市というフレイバーを中心に置き、メカニズム的独自性だけでなく、このセットのクリエイティブ的な独自性をもたらすようにした。私はこのことを非常に誇りに思っているし、この都市が私にとってそうであるのと同じように皆さんにとっても魅力的であることを望む。最初に言ったとおり、この都市は私の血となり肉となっているのだ。

 数ヶ月間、私はギルド門侵犯のリード・デザイナーだった。今日に至るまで、その事実は私のもっとも誇らしいことの一つだ。

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