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メイキング:『Premium Deck Series: Graveborn』
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メイキング:『Premium Deck Series: Graveborn』
Dave Humpherys / Translated by Yusuke Yoshikawa
2011年11月14日
去年のこと。アーロン・フォーサイス/Aaron Forsythe が、
「次のプレミアム・デッキ・シリーズはリアニメイト系デッキを取り上げようと思うのだけど、誰に手がけてもらったらいいかな?」
と聞いてきたとき、私は非常にうれしかった。つまり、誰よりそれをやりたいと思っていたのは、まさに私だったからだ!
私はことさらに興奮していた。なぜなら、我々の視点から見て、リアニメイト戦略というものは多くの楽しみを含んでいるからだ。これらのデッキには、幅広いプレイヤー層にアピールするいくつもの要素がある。また、イニストラードが墓地テーマでまとめられていることも、このデッキに花を添えている。
君は巨大なクリーチャーで攻撃するのが好きか?
君はコンボを操るのが好きか?
君は対戦相手の弱点を見つけ出し、それに対する適切なツールを選び使うことが好きか?
君は対戦相手を防戦一方に押しやり、迅速な決着への脅威を感じさせるのが好きか?
『Premium Deck Series: Graveborn』ではそれらすべて、それ以上のものをご提供しよう。
デッキ
すべてを語りだす前に、まずはデッキリストをチェックしてみよう。
21 《沼》 1 《水晶鉱脈》 1 《漆黒の要塞》 1 《汚染されたぬかるみ》 -土地(24)- 2 《朽ちゆくインプ》 2 《隠された恐怖》 1 《顔なしの解体者》 1 《粛清するものクローシス》 1 《鋼の風のスフィンクス》 1 《よじれた嫌悪者》 1 《新緑の魔力》 1 《悲哀の化身》 1 《魅力的な執政官》 1 《テラストドン》 1 《墨溜まりのリバイアサン》 -クリーチャー(13)- |
3 《強迫》 1 《陰謀団式療法》 1 《納墓》 1 《再活性》 3 《動く死体》 3 《死体発掘》 2 《不快な夢》 1 《ゾンビの横行》 2 《生き埋め》 2 《戦慄の復活》 2 《最後の儀式》 2 《悪魔の隷従》 -呪文(23)- |
少し古く、少し新しく
このプロジェクトが立ち上がったとき、私はマジックの開発部のデベロップ側のメンバーとしては比較的新参のマネージャーだった。私は、自分のチームから誰か代表を出してこのデッキを担当させてほしい、ということが意図だろうと考えた。しかし、このプロジェクトを自分自身のものとして掘り下げたくて仕方がなかったし、なにより自分の、マジックの墓地利用へ長年注いだ愛情そのものを、利用したかった。
《動く死体》 アート:Anthony Jones |
私が墓地への執着を誇張していると思われるかもしれないが、私が初めてアメリカ選手権でトップ8に入賞したときは、《自然の反乱》《突撃の地鳴り》《ヨーグモスの取り引き》を《補充》で出すデッキによって勝利がもたらされた。1998年のプロツアー・ローマで成績を残せたときは、「フリー・ホエーリィ」と呼ばれる、《繰り返す悪夢》と《巨大鯨》の無限コンボデッキを使っていた。私の唯一のグランプリ優勝のときは、最期の一押しに《ヨーグモスの行動計画》を使ったデッキであった。
そして何より、私に2回の構築プロツアー・トップ8を与えてくれたのは、《ゴブリンの溶接工》でアーティファクトを発掘するデッキと、そう、黒単のリアニメイトデッキだった。そのリアニメイトデッキのアップデート版は、2003年の世界選手権で最後の6ラウンドをともに戦い、私をトップ8に連れていってくれている。『Premium Deck Series: Graveborn』をつくるにあたり、これら2つのリアニメイトデッキから、私は多くのインスピレーションを得ることができた。
私は、こうした長期的な観点を持てることをうれしく思う。なぜなら、このデッキシリーズは、新しいプレイヤーたちに古くからのカードを紹介し、ベテランたちに懐かしさを想起させるものだからだ。もしくは、私が古参で、願わくば賢明であることが、そのことを助けているともいえる。加えて幸運なのは、私が過去からの洞察と、近年に再生されたデッキタイプからの新鮮なアイディアを混ぜることができたことだ。
プロジェクトが始まるとほどなくして、世界最大となったグランプリ・マドリード(リンク先は英語カバレージ)が行われ、ここで勝ったのは他でもない、リアニメイトデッキだった。2200名を超えるプレイヤーたち、広大なレガシーのフィールドにあって、青黒バージョンのこのデッキが、アンドレアス・ミュラー/Andreas Mullerに勝利をもたらしたことは特筆すべきことだった。
4 《汚染された三角州》 4 《Underground Sea》 2 《血染めのぬかるみ》 2 《島》 2 《沼》 2 《新緑の地下墓地》 -土地(16)- 1 《浄火の大天使》 1 《鋼の風のスフィンクス》 2 《エメリアの盾、イオナ》 1 《魅力的な執政官》 2 《墨溜まりのリバイアサン》 -クリーチャー(7)- |
4 《渦まく知識》 4 《入念な研究》 4 《納墓》 4 《神秘の教示者》 4 《再活性》 2 《思考囲い》 1 《暗黒の儀式》 4 《目くらまし》 4 《死体発掘》 1 《残響する真実》 1 《実物提示教育》 4 《Force of Will》 -呪文(37)- |
3 《呪文貫き》 1 《蒸気の連鎖》 1 《動く死体》 1 《残響する真実》 1 《ハーキルの召還術》 1 《拭い捨て》 2 《非業の死》 1 《実物提示教育》 1 《誤った指図》 1 《鋼の風のスフィンクス》 1 《森滅ぼしの最長老》 1 《エメリアの盾、イオナ》 -サイドボード(15)- |
ミュラーの結果を踏まえ、この製品についての大きな決定のひとつに、マナベースを黒単にするか青黒にするか、ということがあった。最終的には、私のチームメイトの過去の成功を踏まえて、黒単で製作されることに決まり、私はこの構造から始めることに確信を持っていた。2003年の世界選手権においては、最終的に多くのプレイヤーが青黒を選択していたが、ゲイブ・ウォールズ/Gabe Wallsと私は黒単のデッキによって勝ちあがることができた(リンク先は当時の観戦記事・英語)。この成功は、チームメイトのロブ・ドハティ/Rob Doughertyが2001年のプロツアー・ヒューストンにて、黒単のバージョンで準優勝するという成果あってのことだ。
黒単のマナベースを選択することによって、私はマナベースがきちんと機能するかどうかよりも、釣り上げられる強力なクリーチャーやリアニメイト・カードの選択を優先することができた。青を加えることで、適切なマナベースを引いた場合にドローを均一化することができ、潜在的にいくらかのカウンター呪文を加えることができるが、本来的には青のカードはリアニメイトのパッケージ全体に何かを加えるものではない。これらのカードを加えることで、製品の味を薄める可能性があった。これらの青いカードは他のデッキに入れるべきものであろう。
黒単の良い面として、より多くの妨害手段を入れることができるということがある。特に黒の手札を攻める能力によって、対戦相手の手札に潜む君のクリーチャーへの回答を叩き落とすことは、マナベースと矛盾がない。
ナイフの戦いに銃を持ち込む
このデッキのクリーチャーについての話をしよう。『Premium Deck Series: Graveborn』は、よく「道具箱」にたとえられる類のデッキだ。それは少なくともいくつかの、対戦相手の戦略を打ち砕くことに最適化されたカードを探し出す効果を持っている。《納墓》や《生き埋め》はこのデッキの「道具箱」にアクセスするための手段だ。《納墓》は無害なカードに見えるかもしれないが、まさにこのカードがリアニメイト戦略を競技レベルに引き上げた。このカードと《死体発掘》、《動く死体》、《再活性》、その他の手段との組み合わせによって、第2ターンに確実に巨大な脅威を釣り上げるデッキが誕生したのだ。
加えて興味深いことに、このデッキに最もよく似た先駆者として、《適者生存》と《繰り返す悪夢》による強度に「道具箱」化したデッキが挙げられる。典型例が、1998年の世界王者に輝いたブライアン・セルデン/Brian Seldenのデッキだ。
8 《森》 3 《真鍮の都》 2 《カープルーザンの森》 2 《反射池》 2 《地底の大河》 2 《知られざる楽園》 1 《宝石鉱山》 1 《沼》 1 《ヴォルラスの要塞》 -土地(22)- 4 《極楽鳥》 4 《花の壁》 2 《スパイクの飼育係》 2 《根の壁》 1 《オークの移住者》 1 《スラルの外科医》 2 《ネクラタル》 2 《ウークタビー・オランウータン》 1 《大クラゲ》 1 《スパイクの織り手》 1 《雲を追う鷲》 1 《貿易風ライダー》 1 《新緑の魔力》 1 《夜のスピリット》 -クリーチャー(24)- |
2 《炎の嵐》 4 《適者生存》 4 《繰り返す悪夢》 2 《ロボトミー》 2 《巻物棚》 -呪文(14)- |
3 《エメラルドの魔除け》 2 《夜の戦慄》 2 《紅蓮破》 2 《ファイレクシアの炉》 1 《宝石の広間》 4 《沸騰》 1 《堅牢な防衛隊》 -サイドボード(15)- |
多くの「道具箱」デッキと同様、『Premium Deck Series: Graveborn』は「1枚差し」のカードが多く含まれる。この考えは、その時々において君の対戦相手が最も戦いたくないであろうクリーチャーを探し出して墓地に置き、それを戦場に戻せばいいというものだ。この構造は、好都合なことに、カッコいいモンスターたちの詰め合わせを提供したい、またいろいろな対戦相手に対して多様な戦いができるものにしたい、という我々の目的に合致する。
《粛清するものクローシス》 アート:Chris Rahn |
このデッキのリアニメイト先となるカードを見ていこう。
《鋼の風のスフィンクス》
かつては《怒りの天使アクローマ》や《幻影のニショーバ》がこの役割を担っていた。今や、実質その両方が1枚のパッケージで得られるのだ。対戦相手が何をしてくるかの情報がない場合、私はこの《鋼の風のスフィンクス》を戦場に持ってくる最初の選択肢としてお勧めしたい。飛行、絆魂、警戒のおかげで、ダメージレースでこれに打ち勝つのはほぼ不可能だ。クリーチャーの大軍、あるいは直接ダメージによって君を打ち倒そうと思っているすべてのデッキは、こいつに即座に対応する術を見つけなければならなくなる。去年製作された、『Premium Deck Series: Fire & Lightning』相手にこのクリーチャーを送り出すのは、いささかフェアではないだろうね。
《粛清するものクローシス》
この製品のためにつくられた新規アートで注目の《粛清するものクローシス》は、コンボデッキに圧力をかけるのに優れている。例えば、2001年のプロツアー・ニューオーリンズにて、カイ・ブッディ/Kai Buddeは(対戦相手である)私が《粛清するものクローシス》にスロットを割いていないことにほっと胸をなで下ろしたひとりだ(リンク先は当時の観戦記事・英語)。一方で、チームメイトのダーウィン・キャスル/Darwin Kastleはこれを取っており、トップ8に入賞したのだった。《粛清するものクローシス》は低速の単色デッキにはとてもよく効く。この手のデッキに対しては、往々にして生き残ることに全力を傾けなくともよく、ならばクローシスは最高の一撃だ。手札にカードを保てないとあらば、コンボとなるカードを集めるのは難しいだろう。
《墨溜まりのリバイアサン》
これは、多くのコントロールデッキ、あるいは《破滅の刃》や《忘却の輪》のような対象をとる手段を多く持つとわかっているデッキに対して劇的な1枚となるだろう。被覆能力はその手のデッキにとって真に頭痛の種となるし、島渡りもトランプルも、それらのデッキが時間を稼ぐことを難しくしてくれるだろう。
《悲哀の化身》
このデッキが最高の居場所かどうかは別としても、《悲哀の化身》は巨大なクリーチャーを運用してくる他のデッキに対しての回答として定番となっている。しばしば、君は恐ろしいクリーチャーと対峙することになるだろうが、《悲哀の化身》はそれらに対処する素晴らしい方法であり、さらに将来の脅威に対して保険をかけつつ、攻撃に行くこともできる。
《魅力的な執政官》
対戦相手の軍勢があまりに数が多く、《鋼の風のスフィンクス》でもダメージレースで勝てないとしても、《魅力的な執政官》は十分な時間を稼ぎ、君は空から4ターンで相手を打ち負かすか、新たなクリーチャーを呼び寄せることができる。
《新緑の魔力》
私の記憶の中で、《新緑の魔力》は《繰り返す悪夢》が成功した昔にさかのぼるまで、リアニメイトの対象の父祖と言っていい存在である。特に歴史的には、戦場をトークンで埋め尽くすことで、生け贄を強いるソーサリー・スピードの効果、例えば《ヴェールのリリアナ》などを妨害する効果がある。これらのトークンは、《陰謀団式療法》や《戦慄の復活》のフラッシュバック・コストとしても役に立つ。
《テラストドン》
「道具箱」の最後にして忘れてはならないのが《テラストドン》だ。この象は、やっかいなアーティファクト、エンチャント、土地、そしてプレインズウォーカーの一切合切に対応できる。また、自分自身の土地を破壊してバックアップの象を生み出すことにより、《新緑の魔力》同様、《悪魔の布告》タイプの効果から身を守ることができる。対戦相手が君のクリーチャーへの回答をするためのマナを奪ったり、あるいは「オールイン」の勝負を望むなら、自分の土地を吹っ飛ばして極めて速いクロックを用意することができるなど、万能である。
全体として、このデッキにはさまざまな問題のある盤面において、根本的な対処ができるクリーチャーであふれている。多くの場合、それは「オーバーキル」に感じられるかもしれないが、それもまた楽しみのひとつだろう。
墓地へ、そして戦場へ
今や、君は手駒となるクリーチャーについての理解を深めた。今度は、それらを戦場に戻す方法について見ていこう。前述のとおり、このデッキは典型的なコンボデッキの形をなしている。2種の異なるカテゴリーのカードを自力で引けるかにかかっている。その2種とは、
カテゴリーA) クリーチャー・カードを墓地に送り込むカード
カテゴリーB) クリーチャー・カードを墓地から戦場に出すカード
である。
《陰謀団式療法》 アート:Raymond Swanland |
全体のカードを、カテゴリーAとBにほぼ分類することができるが、実際のところは、墓地にカードを送り込むカード群においては意味においてさらに2種に分かれる。ひとつは、ライブラリから送り込むもので、《納墓》と《生き埋め》がそれにあたる。もう一方は、手札から墓地に落とすもので、これには《朽ちゆくインプ》《不快な夢》《隠された恐怖》《最後の儀式》《ゾンビの横行》、そして万能の《陰謀団式療法》がある。それらのカードすべてがそれぞれの役割においてゲームを維持することができ、一方で君のコンボの片輪を担ってくれる。《朽ちゆくインプ》と《隠された恐怖》はキーポイントとなる何点かのダメージを与えてくれるし、または大事な場面でチャンプブロックをこなす。《最後の儀式》は君のクリーチャーに対処する対戦相手の能力を無にする。《不快な夢》は限度を越えて押し寄せるウィニー戦略を台無しにする。
パズルの最後のピースは、どうやって墓地のクリーチャー・カードを戦場に出すか、だ。《動く死体》《死体発掘》《戦慄の復活》《悪魔の隷従》、そして《再活性》がこの役目を果たす。《動く死体》はアルファ版の昔から、この効果を代表してきた。《再活性》は迅速な手段だが、ライフが危険域に落ちてしまう側面も持つ。《悪魔の隷従》はより長期戦をもたらすことになるだろう。対戦相手の墓地に良いクリーチャーがいないかどうか見張ることも忘れてはならない。なぜなら、《動く死体》や《再活性》は対戦相手のクリーチャーも戻し、もはや守るものもいないオーナーに仕向けることもできるからだ。こうした対戦相手の墓地への干渉は、《死体発掘》の反動をなくすことにも役立つ。
そして・・・
他のカードについても、わずかばかりだが述べておこう。これらには《強迫》《顔なしの解体者》などがあり、加えて何枚かの土地が柔軟性を与えてくれている。特に《強迫》は、君が最善の攻撃プランを組み立て、リアニメイトしたクリーチャーが生き残るのを助けてくれる。
このデッキは、11月18日に『Premium Deck Series』の3番目の製品としてリリースされる。先発製品同様、君を楽しませてくれるものと思う。すべてがプレミアム・カードで、マジックの過去の幅広いカードのショーケースともなってくれる。何枚かのカードには新規イラストが描き起こされている。《陰謀団式療法》《動く死体》《粛清するものクローシス》だ。目にすればちょっと笑ってしまうカードもあるし、好きなカジュアル、あるいは競技的デッキに入れてもフィットするようにできている。そして最後に、このデッキは一貫して恐るべきカードで組まれてはいるが、何度も何度もプレイしようと思わせるだけの多様性も持っている。
もし君が、マジックの5色の中で最強のクリーチャーを使いたいと思い、けれどもそんな恐ろしいクリーチャーで遊ぶほど長いゲームまで待てないというのなら、このデッキは、まさに君のためにある!
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