READING

読み物

翻訳記事その他

火力を感じよう

読み物

翻訳記事

/

火力を感じよう

Mark Rosewater

2010年11月15日


 火力特集へようこそ。プレミアム・デッキ・シリーズ「Fire and Lightning」の発売を祝して、今週は直接ダメージについて語ることになった。今日は直接ダメージのデザインを検証し、一見して思うよりも遥かに多くの内容が込められていることを見ていこう。

燃えろよ燃えろ

 開発部は元気な議論が大好きだ。私が彼らに今回は火力特集にすると伝え、直接ダメージのデザインについて語るつもりだと伝えたとき、私はそこに残っている厄介な問題に気づいていなかった。火力と直接ダメージは同義なのか? 火力とは厳密には何なのか? 直接ダメージとは厳密には何なのか? その議論はさまざまな興味深い点を生み出していったが、その辺の話はトムのコラム(リンク先は英語)に譲り、今日のテーマは直接ダメージのデザインで行くことにしよう。

/

 始める前に、まず直接ダメージという言葉の定義をはっきりさせておこう。デザインについて議論する場合、定義はできるかぎり広く取るようにしている。デザインは、異なった種類の効果の意味合いに強く焦点を当てるので、メカニズムを大きなグループに分けることを好みがちである。それを踏まえて、私は直接ダメージを「クリーチャーやプレイヤーにダメージを与える呪文や能力によって作られた、戦闘でないダメージ」と定義することにする。この定義において、その効果を持つ呪文やパーマネントがそのダメージの発生源であることを仮定しておこう(つまり、クリーチャーやプレイヤーに直接与えられる、というわけだ)。

 マジックのメカニズム全ての中で、直接ダメージはもっとも柔軟性の高い物の一つである。今日のコラムでは、直接ダメージを使いたいときにデザイナーが取り得る様々な選択肢を諸君にお見せしよう。

 これから、どのように直接ダメージを用いることができるか、列記していく。

1. インスタントやソーサリーによって、クリーチャーやプレイヤーに直接与えられるダメージ。色:赤

 直接ダメージと言うとき、多くの人が思い浮かべるのはこれだろう。このタイプの直接ダメージは、赤にしか存在しない。他の色に存在するバリエーションも色々あるが、それについては後で触れる。

 直接ダメージは伝統的なものなので、新しいメカニズムを導入するときにもっともよく用いるものの一つである。赤が「新しいもの」を使う方法を見せたい場合、それをこの種の直接ダメージ呪文にくっつけるのだ。

2. インスタントやソーサリーによって、プレイヤーに直接与えられるダメージ。色:赤

 デザイナーにとってもっとも大きな道具の一つが、制限である。制限は創造の母であるだけでなく、さらなるデザインの選択肢を作り出してくれる。例えば、これは古典的な直接ダメージから選択肢を切り落としたものである。この種のものも、赤にしか存在しない。

/

 この種のものは赤のソーサリーになることが多いが、時々はインスタントにも存在する。この種の直接ダメージは、直接ダメージ呪文によってクリーチャーを攻撃することの大切さをプレイヤーに理解させる助けになる。また、逆の直接ダメージに比べて評価が低くなる傾向にある。

3. インスタントやソーサリーによって、クリーチャーに直接与えられるダメージ。色:赤

 ある種の制限を取り払うことが出来るなら、もう一方の制限を取り払うこともできる。この種の直接ダメージは、クリーチャー除去が非常に重視されるリミテッドでは非常に有用である。また、この種のものの開発部から見た利点は、どうやってもクリーチャー1体を破壊できるだけだということが挙げられる。これも一つ前の物と同じく、赤の独占物である。

 このカテゴリーには《スズメバチの一刺し》も含まれるが、私はそれを緑の能力だとは認めていないので緑がここに入るとはしなかった。《スズメバチの一刺し》を認めない理由について、このコラムを借りて短く言っておきたい。ある色が、ある方面のことを苦手としていることを、非常に弱いカードを作ることで示すことができると信じている人たちがいる。緑にクリーチャー除去能力がほとんどないということを知りたいなら、《スズメバチの一刺し》と《稲妻》を比べてみればいい。――私は、その方法は取らない。

/

 ある色がある方面のことを苦手としていることを示すには、その色ではできないようにすればいい。ある能力の欠如は、非常に雄弁に語ってくれる。カードを単体で見た場合、

A. カードの強さを比較できない。

B. 同種のカードが存在することを仮定し、他の物のほうが強いかも知れないと判断できる。

 緑のデッキがクリーチャーに直接ダメージを与えるためにアーティファクトを使う(もちろん赤よりずっと弱い)のは構わない。緑のカードを見て、プレイヤーが誤った知識を得てしまうことが問題だ。カラー・パイは全てのデザインの根本であって、色の弱点ははっきりわかるようでなければならない。――と、まあ、この話はこれぐらいにしておこう。

4. インスタントやソーサリーによって、戦場にいるクリーチャーの複数に直接与えられるダメージ。色:赤

 今日列記している分類の中で、これは直接ダメージに分類されないと思う人が多いだろう。しかし、デザイン上の観点で見ると、「クリーチャー1体を対象とする。[カード名]はそれに2点のダメージを与える」と、「[カード名]は各クリーチャーにそれぞれ2点のダメージを与える」にはそれほどの差異はないのだ。

 我々が直接ダメージ効果を分類する方法の一つに、その直接ダメージがいくつのクリーチャーにダメージを与えるかというものがある。2体、対戦相手のクリーチャー全て、あるいは全てのクリーチャー。この種の効果のほとんどは、アンコモン以上の希少度に存在する。例外として、1点のダメージを与えるものや、2体だけにダメージを与えるものがコモンにも存在しうる。

/

 これらの効果はほとんどが赤である。黒には、感染のように全てのクリーチャーに-N/-Nを与える効果が存在するが、それはダメージではないのでここでは数に入れない。

5. インスタントやソーサリーの副次効果として与えられるダメージ。色:赤

 ダメージが呪文の中心でない呪文も多いが、それらの呪文もダメージを与えるために使うことができるので、デザイン上の観点からは直接ダメージに分類されることになる。それらの効果の最良のものは、その中心となる効果の延長としてダメージが与えられているというフレイバーをもたらしてくれる。つまり、何かが破壊され、その余波を受けてコントローラーが痛みを感じるという類のものである。

/

 これらの効果はまず確実に赤である。他にこのようなことを引き起こすのは黒で、黒の副次効果はダメージでなくライフの喪失になることがほとんどだからである。

6. パーマネントの、起動型能力のような複数使用可能な効果によって与えられるダメージ。色:赤

 GDS2の選択問題の解答で書いた通り、我々は「再利用可能な除去」をコモンに存在しないようにした。つまり、この種のカードは今はアンコモン(ダメージが大きいならそれ以上の希少度)に存在することになる。この分類に入るカードの多くはダメージを与えることのできるクリーチャーである。この種の効果を持つアーティファクトやエンチャントもしばしば存在している。

 かつて、非常に象徴的な青のクリーチャー《放蕩魔術師》[TSB]が存在した。この能力は、約8年前に開発部が行なったカラー・パイの大変革の際に、青から除かれ、赤の物になった。青には多くの能力が存在し、赤には能力が足りなかったので、このまったく青くない能力を、それに相応しい色へと移動させたのだ。

 起動型能力だけでなく、何らかの処理が行なわれたときに誘発する誘発型能力にも直接ダメージを与えるものがある。その誘発イベントがどれぐらい起こるかに応じて、その能力にマナを必要とすることもある。

/

 これらの能力が、クリーチャーでもプレイヤーでも狙えることもある。その一方で、クリーチャーのみ、あるいはプレイヤーのみに制限されているものもある。

 一般論で行って、この種のカードによるダメージは可能な限り低く(通常は1点か2点程度)抑えることにしている。それ以上のダメージを与えることができるクリーチャーは、クリーチャー除去として優秀すぎるからだ(そういうデザインをする場合、レアか神話レアになることになる)。

7. パーマネントの、(多くは誘発型能力である)一度だけ使える効果によって与えられるダメージ。色:赤

 より大きなダメージを与えられるようにしたい場合、我々は以下のような方法でその効果を一度しか使えない物にする。

* 「戦場に出たとき」の誘発型能力(開発部ではETB効果と愛称をつけている)

* 「戦場から墓地に置かれたとき」の誘発型能力(開発部では「死亡効果」と呼ぶ)

* 生け贄を必要とする起動型能力

* ダメージを与えるためにそのパーマネントを生け贄に捧げなければならない誘発型能力

 多くの場合、それらの効果は使うためにいくらかのマナを必要とする。他の能力と同じように、この分首位もやはりほとんどが赤のものである。

/

 再利用可能な能力はクリーチャーもプレイヤーも選べることが多かったが、このタイプの能力はどちらか一方だけに制限されている物が多い。

8. その後で呪文やパーマネントのコントローラーがある量のライフを得るような呪文や効果によって与えられるダメージ。色:黒、赤-白

 黒と赤を分けることの一つ(黒赤以上に共有部分が多いのは白緑だけである)に、赤はダメージを与え、黒はライフを失わせるというものがある。例えば、赤と黒のクリーチャーを想像して貰いたい。両方とも1/1で、タップ能力で対戦相手のライフを1点減らすものだ。赤なら「プレイヤー1人を対象とする。[カード名]はそのプレイヤーに1点のダメージを与える」だろうし、黒なら「プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは1点のライフを失う」だろう。

 これには一つの大きな例外があり、それは黒の直接ダメージのもっともよくあるものでもある「ドレイン能力」だ。リチャード・ガーフィールドはアルファ版に《生命吸収》を入れていて、生命を吸い取るというのは完璧に黒らしかったのでこれは黒の中心的な能力になった。黒のドレイン能力は、対象にダメージを与え、それとまったく同じだけのライフを得るというものだ(例外となる奇妙な《生命吸収》の変種も存在する。与えた以上のライフを得たりする奴だ......が、それは置いておこう)。ドレイン能力がライフの喪失でなくダメージになっているのは(ダメージでライフは減るが、この2つは別だ)、ダメージがライフに匹敵するとして効果のイメージをよりよい物にする必要があるからだ。

/

 この能力は、黒単色と赤白2色のカードに存在するという奇妙な性質を持つ。赤が直接ダメージを、白がライフを得ることを持ち寄って出来たのがドレイン効果というわけだ。赤白2色が協力すると黒単色よりも効率が良くなるということで、赤白ドレインのほうがコストが安くなった。

 ドレイン効果の存在は、未来予知でのクリーチャーのキーワード拡張の際に、絆魂を黒に動かすことの違和感を減らしてくれた一因であった(キーワード拡張の意味がわからなければこちら(リンク先は英語)を見てくれたまえ)。

9. 攻撃クリーチャーやブロック・クリーチャーに直接ダメージを与える呪文や効果によって与えられるダメージ。色:白

 赤はダメージを好きなところに与えられるのに対し、白はそれほど自由ではない。白は、「善人の弱み」を持っている。白は挑発されなければダメージを与えられない。白は先制攻撃をしない。これはスター・トレックの宇宙連邦が良く表している。彼らは闘いに怖じ気づいているのではないが、自分から闘いをはじめたりもしない。白も同様である。

 白が直接ダメージを与えるためには、そのクリーチャーが戦闘に関与している必要がある。攻撃? ブロック? 大抵の場合、どちらでも問題はない。クリーチャーがあなたやそのクリーチャーと闘っているなら、叩きつぶすのに遠慮はいらない。

/

 この能力は呪文にもクリーチャーにも見受けられる。呪文は、戦闘中に唱えなければならないので、常にインスタントである。クリーチャーはタップ能力(開発部は「遠隔攻撃」と呼ぶ)を持っていて、ときおりマナも必要になっている。赤の「ピンガー」(《放蕩紅蓮術士》など、起動すると1点や2点のダメージを与える類のクリーチャーを示すスラング。今日は開発部スラングが大漁だ)と同じように、遠隔攻撃クリーチャーもコモンにはいなくなっている。

10. 呪文や能力によって飛行クリーチャーに与えられるダメージ。色:緑

 《スズメバチの一刺し》について文句を言うとき、緑のカラー・パイには直接ダメージが存在するという指摘を受ける。それは飛行クリーチャーに対するものだ。これは、アルファ版のころにリチャード・ガーフィールドが考えていた、白、青、黒には飛行クリーチャーが多く、赤や緑には飛行対策が多い、というアイデアに基づく。例えば《大蜘蛛》や《Earthbind》がこの考えに基づくものだ。

 時を経て、赤の対飛行というイメージは薄れていったが、緑には残った。大型セットには開発部曰くの「蜘蛛」、つまり到達を持ち、パワーよりもタフネスが大きく、その多くは蜘蛛のクリーチャー・タイプを持つクリーチャーが入っている。また、伝統的に、緑にはアンコモンで(《葉の矢》のようにコモンに落ちることもあるが)飛行対策の呪文が与えられている。盤上の飛行クリーチャーを一掃するのだ。破壊することもあれば、-N/-Nであることもあれば、直接ダメージであることもある。

/

 アルファ版には《ハリケーン》というカードがあり、これは緑に飛行クリーチャーへの直接ダメージを可能にするだけでなく、プレイヤーにも直接ダメージを与えるものだった。《ハリケーン》のような効果はそのあとも何年か存在したが、開発部はプレイヤーへの(全てのプレイヤーであっても)直接ダメージは緑では与えられないように変更した。

11. 他のクリーチャーにダメージを与え返すようなクリーチャーの効果によってクリーチャーに与えられるダメージ。色:緑

 今回の定義によると、もう一つ緑には直接ダメージを与える能力が存在する。開発部では最初のカードにちなんで「追跡者」と呼んでいるこの種の能力は、2体のクリーチャーを直接「闘わせる」ものだ。このダメージは戦闘ダメージではないので、ここに公式に登録しておこう。

直接ダメージを測る

 直接ダメージは、一見したよりも遥かに多くの種類に分類されることが判ってもらえただろう。ダメージはマジックの非常に重要な要素であり、デザインはそれを適宜切り分けたわけだ。今日のコラムを見て、デザイン空間の大部分を占めるダメージをどう掴んで扱っているのかを理解してもらえれば幸いである。

 今日はコレまで。この種の(特定のメカニズムの)分類を楽しんでくれたなら、またいずれこういう機会を設けたいと思う。分類して欲しいメカニズムについても教えてくれたまえ。

 次回は、ミラディンの傷跡についての最終総括を始めよう。

 その日まで、あなたのカードがクリーチャーやプレイヤーに狙いを付けることの喜びがあなたとともにありますように。

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索