READING
企画記事
2019年に一番マジックプレイヤーを増やしたのはこの人!「BESTマイスター」にインタビュー
みなさんは、マジックを始めた時、どうやって始めましたか? もしくは、友人が「マジックを始めたい!」と言っていたらどうしますか?
マジックを始めたい人にとっての主な入口として、「ティーチングキャラバン」があります。これは専門のスタッフによる初心者講習に加えて、簡単な対戦会も行なうイベントです。
さらに「ティーチングマイスター」と呼ばれるスペシャリストがいるカードショップでは、定期的にティーチングキャラバンが開催されているほか、そのマイスターからいつでもティーチングを受けることができます。
ティーチングキャラバンとは?
カードゲームがまったくわからなくても、基礎からマジックのルールを教えてもらえる初心者講習会がティーチングキャラバンです。実際にどんなふうに行なわれるかは、こちらのレポート記事もご覧ください。
また、参加すると、下のようなウェルカムデッキやデッキボックス、遊び方ガイド付き紙製プレイマットがもらえます。
この「ティーチングマイスター」という肩書きは、認定試験を受けなければもらえません。まさにマジックにおける初心者案内のスペシャリストと言ってよいでしょう。
この制度は2018年にスタートしましたが、全国のカードショップにティーチングマイスターは現在70人ほどいて、さらに増え続けています。
さて2019年、ティーチングマイスターとしてもっとも多く新規プレイヤーを獲得したのは、「東京MTG」の店員である植草孝さんでした。なんと1年で約100人もマジックプレイヤーを増やした(新たなアカウントを発行した)そうです。
このたび、その「BESTマイスター」にインタビューを行ない、どうやってプレイヤーを増やしていったのか、実際のティーチングとはどういうものなのかなどを、詳しく伺いました。
「BESTマイスター」植草 孝さんインタビュー
東京・水道橋のカードショップ「東京MTG」にてティーチングマイスターを務める、植草孝さん。手にしているのがティーチングマイスター認定証です。
ハイドラに育てられマジックの道へ
――最初に、マジック歴を教えていただけますか?
植草:『基本セット2012』が出たころ、大学の友人に「パックを6つ買うだけで遊べるゲームがあるからとりあえず買え」と誘われて始めました。
それまでカードゲームはちょっとさわってみてすぐやめちゃうような感じだったんですけど、マジックは始めて3日くらいでどっぷりはまりました。
僕はコンボとかを考えるのが好きなんですが、マジックはカードの種類が多いから、やろうと思ったことが何でもできるんですよね。「もしかしてこんなことできるかな?」と思って調べてみると、ちゃんとそういうカードが存在してたりして、マジックの包容力に魅力を感じました。
ただ昔から人見知りなところもあって対戦の機会はあまりなく、当時あった「チャレンジデッキ:ハイドラとの対峙」という製品を使って、1人で対戦してました。
――自動的に行動してくる構築済みデッキでしたっけ。昔の『テーロス』で発売されましたね。
植草:そうです。コンピューター戦のような感じで、敵が勝手にわいてくる。ただそのハイドラデッキはめちゃくちゃ強く作られてるんですよ。時には3ターンで負けてしまうこともあります。
――そんなに強いんですか!
植草:でも当時はそれに気づかなくて、「みんなこんな難しいゲームやってるのか、すごいな」と思いながらやってました。
ハイドラを倒せるようになったので思い切って実際の大会に出てみたら、ゲーム性が全然違って衝撃を受けました(笑)。皆優しいし、思ったより敷居も低いとわかったので、そこからは対人戦するようになりました。だから、ハイドラが師匠みたいなものです。
――ハイドラに育てられたんですね(笑)。
植草:それからお店に行ったり、大学のサークルで広めたりして対戦相手を増やしていきました。そのときマジックを人に教えるのがすごく楽しかったので、「マジックを教える仕事に就きたい」と思って、5年前くらいからこちらのお店で働き始めました。
で、ここで働き始めるときの目標が、「日本にカジュアルプレイヤーのコミュニティを作る」ことだったんです。今はネットで調べれば強いデッキもすぐに作れますし、競技プレイに進む道はわかりやすいんですが、使いたいカードを使ってカジュアルに楽しむ場所や対戦相手を見つけるのは難しいと感じていて、それなら自分で作ろうと。
なので、まず人にマジックを広めて、その中にカジュアルに楽しみたい人がいたら「ここで一緒に遊ぼうよ」と案内できる存在になりたかったんです。
――なるほど。こちらのお店で働くことが、目標にちょうど合致した感じなんですね。今もプレイヤーとして遊んでいるんですか?
植草:はい、毎日遊んでます。相手をびっくりさせるのが好きなので、いかに普通は使われないようなカードを使うかに日々工夫を凝らしている感じです。
――それは面白いですね! では『テーロス還魂記』ではどのカードが特に気になりますか?
植草:うーん、こういう話をすると長くなっちゃうんですよね……《ニヴ=ミゼット再誕》を使った《めでたしめでたし》デッキに、『テーロス還魂記』でうまくハマりそうなカードが多いんですが……特に注目のカードとしては《裏切る恵み》ですね。これはいい感じに悪さをしそうだと思っています。
ティーチングキャラバンの様子
――マジックを人に教えたくて働き始めたわけですから、植草さんがティーチングマイスターになったのは必然でしたね。なったのはいつですか?
植草:2018年6月です。
――この制度ができて最初のころですね。
植草:そうです。「これだ!」と思ってさっそく応募しました。
――なるためには実地試験があるんですよね。
植草:試験では、緊張はしましたけど、いつもやっていることをやる感じでしたので……。
――それ以降、ティーチングキャラバンをお店でどれくらい実施されているんですか?
植草:毎週月曜の15時と19時から、2回やっています。ティーチングキャラバン自体は1回につき1時間前後ですが、人によってプラスアルファがあります。
――と、いいますと?
植草:僕はティーチングの前にアンケートをして、何が好きでどういう人なのか聞いておくようにしています。
――どういう質問をするんですか?
植草:基本的には、今までにほかのカードゲームをやったことがあるかどうか聞いて、やったことがない場合は、どんなファンタジー作品が好きかを聞きます。「某国民的RPG」とか「某有名ファンタジー小説」とかの答えによって、どういう方向性なのかわかります。
――その人のルール理解度や興味のある分野によって、教える内容が変わるんですか?
植草:いえ、ティーチングキャラバンは多人数向けの講習で、全国で一律に行なわれているものなので、みんなに同じ内容を教えます。基本部分は同じで、アフターケアが変わる感じですかね。その追加部分が……たとえばうちの特色でもある統率者戦に興味を持ってくれたりした場合、1人1~2時間とかになることもあります。
――なるほど。でも、ファンタジー作品も全然知らないような方もいらっしゃいますよね?
植草:もちろんいるので、ティーチングの際に特に注意を払います。教える内容を変えるわけではないですけど、「この人にはこの話がわかりにくい可能性があるな」といった感じで、注意深く進めることになります。説明が先に進んでしまうと、あとから質問はしにくいですからね。
――そういった、マジックを知るきっかけがなさそうな方って、どういうルートでティーチングキャラバンにいらっしゃるんでしょうか?
植草:「子供が興味を持って」とのことで、親御さんがお子さんと一緒に来ることもありますし、「子供に秘密で」という親御さんもいます。
――えっ、秘密で!?
植草:先に自分が覚えて、家で子供に教えようという意図ですね。「ティーチングに子供を連れて行って大丈夫かな?」と遠慮されたりというのもあるみたいで……ぜひ来ていただきたいんですけど。
そういう親御さんの場合は、「もし家でお子さんに教えてるときにわからないことがあったら、お店に電話してください」と言っています。
――なるほど、そういう1人1人への気配りがあると。確かに、ひと口に「初心者」と言ってもさまざまですもんね。
植草:そうですね。ほかのカードゲームの経験者は多いですが、未経験の方も体感で半分くらいはいます。ただデジタルのカードゲームにはさわったことがあったり、カードゲームのアニメを見ていて用語は知ってるという方も多いですね。
最近はMTGアリーナがすごくはやっているので、ルールも理解していてデッキも持っているけど参加する、という方もいらっしゃいますし。
――MTGアリーナから入ってきた方は、ルールはわかっているわけですよね。どうしてティーチングに来られるんでしょう?
植草:皆さん「独学でルールを覚えた」という認識で、ちゃんとルールを確認したい、公式のお墨付きがほしいという目的の方が多いですね。
――公式のティーチングキャラバンだから安心感につながると。
植草:あと、「所作を確認したい」という人が多いですね。シャッフルの仕方はこれでいいのかとか、相手のカードを見たいときはどうすればいいのか、ターンを終わるときはなんと言うのかとか。
――ああ、なるほど! MTGアリーナにはない部分を、実戦の前に練習できる。ティーチングって、そういう役にも立つんですね。
植草:それから、決まったスケジュール以外の突発的なティーチングもかなり多いです。
教える内容はティーチングキャラバンと同じですが。たとえば、プレリリースに「初めてだけど参加できますか?」という方が来られて、デッキ組みながらルールを教えて、参加していただいたことがあります。
――そんな感じでふらっと来ても、なんとかなるってことですね。
植草:はい。友達の付き添いで寄ったけどやっぱり興味がわいてきたとか、あと近所の薬局の店員さんがうちの看板を見て、何の店なのか気になって入って来られたので、せっかくだからティーチングを受けていただいたこともありました(笑)。
――それは面白いですね!
植草:完全に初心者の方だと、ティーチングキャラバンというもの自体を知らなかったり、いつどこで開催されているかわからなかったりすると思うので、僕はいつ来ていただいてもうれしいです。「ティーチングキャラバンの時間をちょっと逃しちゃった」とかでも、気にせずどんどん来ていただければと。
ティーチングマイスターは、ロゴ入りの黒いエプロンをつけてティーチングを行ないます。某コーヒーショップの「ブラックエプロン」(専門知識を持つバリスタ)みたいでカッコいいですね!
ティーチングをやってよかったこと
――ティーチングで苦労するのは、どういう点ですか?
植草:いつも100%楽しくやってるので……店員の立場としては、特にMTGアリーナから入ってきた人たちに、どうやって商品の購入につなげるかはすごく難しいですけど、ティーチング自体で苦労することはないですね。
――ティーチングに時間をかけても製品が売れるとは限らないけれど、新しい人にマジックを広めることが大事というマインドでやっているんですね。
植草:ティーチングキャラバンについては「営業活動」だと考えているんです。
うちはカードショップでもありますが、居心地を提供しているというところもあって、いらした方にはまずうちのお店のファンになってもらいたいと。それが無理でも、ここにいる時間を楽しんでもらう。マジックと「楽しい時間」を結びつけられれば、友達に話したり、あとでまた来てくれるかもしれないし、購入層になってくれたりもする、というマインドですね。
――なるほど、その日直接売り上げにならなくても、将来的なお店のファンを増やすと。それでは、ティーチングでやりがいを感じる、手ごたえを感じることは何ですか?
植草:ティーチングが終わった後、参加者同士が仲良くなってくれることがわりとあるんです。終わったあと、5時間くらいずっと2人で対戦してて、「あなたたち初対面ですよね?」ってなったり(笑)。
――それはすごい。
植草:同じ趣味を求めているうえにスタートラインが同じなので、そういうことも珍しくはないんです。
そうやって自分の教えた方々がまたお店に来てくれて、仲良くゲームをして、コミュニティが育っていくところを見ると、本当にやっていてよかったなという気持ちになりますね。
――植草さんは昨年、日本一新規プレイヤーを増やしたわけですが、何か工夫はされたのでしょうか?
植草:アカウント(ウィザーズ社の公認イベントに参加するための会員番号)の新規発行については、ネットであらかじめ作成しておいてもらうのはちょっとややこしいところもあるので、店頭で一緒に作ってあげるようにしたら作成率が上がりました。
あとは、終わったあと「よかったら友達も連れて来てね」と言っているので、紹介で来てくださる方は増えてきました。ただ、友達同士だけで完結してしまうとコミュニティはそれ以上広がらないので、趣味や好みのデッキタイプが似通っている人がいたら、こちらで紹介したりもします。
――そういうのってお客さん同士では知りえない情報ですから、お店の人が紹介してくれたらありがたいですね。
植草:コミュニティって、何もしないと広がらないですが、やれば広がっていくものなので。
――それでは最後に、この記事をご覧の方にメッセージをお願いします。
植草:手ぶらでも知識がなくても、ともかく来ていただければ、遊びたい遊び方に沿って何かしらの体験をご提供できると思います。お一人でも友達や家族と一緒でも、ぜひ一度遊びに来ていただけたらと思います。
東京MTG
お店の入り口を入ると受付があります。マジックに興味があればぜひ「ティーチングを受けたい」と言ってみてくださいね!
- ウェブサイト:https://tokyomtg.com/
- 住所:東京都千代田区神田三崎町3丁目4-10 庄司ビル2階
- 電話:03-6261-5928
STEP FORWARDの方々(順不同)
このコーナーでは、全国のマイスターの中からティーチングの開催数や新規の獲得が多かった方をご紹介していきます!
ティーチングマイスター 枝吉さん
「MTGの楽しさを皆様に伝えていけるようにティーチングを行なっていきます。是非お気軽にご参加ください。MTGを始めよう!」
イエローサブマリンマジッカーズ福岡店
- ウェブサイト:http://www.yellowsubmarine.co.jp/shop/shop-054.htm
- 住所:福岡県福岡市中央区天神2-7-14 天神シティビル3F
- 電話:092-739-1970
ティーチングマイスター 野口さん
「MTGのティーチング、ゆったりと開催しています。MTG始めよう、復帰しようとお考えのお客様、お気軽にご参加ください!」
カードショップふらっと
- ウェブサイト:http://www.cs-flat.com/
- 住所:大阪府大阪市北区中津1-2-21 共栄ファイブビル601
- 電話:06-6147-7855
ティーチングマイスター 丹野さん
「弊社に足を運んで頂き、お友達やお仲間の方々とぜひ楽しく遊んでいきましょう。新しい世界が見えてくると思いますよ。是非宜しくお願いいたします!」
タンヨ玩具店
- ウェブサイト:http://tanyo-miyagi.mystrikingly.com/
- 住所:宮城県塩竈市本町6-9
- 電話:022-362-4527
マジック未経験の方はモチロンですが、経験者の方でもマジックに興味のある友人がいたら、ぜひティーチングキャラバンに誘ってみてください。
また、今週末の2月1日(土)~2日(日)には、全国各地のカードショップにて「マジック初心者体験会」が実施されます(内容はティーチングキャラバンと同じ)。新セット『テーロス還魂記』から始めるのにうってつけのチャンス!
楽しくマジックへの門をくぐってもらい、広大な世界を一緒に楽しみましょう!
RANKING ランキング
NEWEST 最新の読み物
-
2024.11.22戦略記事
今週のCool Deck:コーマをコーナと秘宝で……スゥルタイ・レジェンズ(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.11.21戦略記事
とことん!スタンダー道!難解パズルなカワウソ・コンボ(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.11.20戦略記事
緑単アグロ、原初の王者の帰還!(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.11.19戦略記事
ボロス・バーン:基本セットと火力の関係(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.11.18戦略記事
世話人型白単コントロール、『ファウンデーションズ』の注目カードは?(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.11.15戦略記事
今週のCool Deck:イゼット厄介者で機織りの季節を楽しもう(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
CATEGORY 読み物カテゴリー
戦略記事
コラム
読み物
BACK NUMBER 連載終了
- Beyond the Basics -上級者への道-
- Latest Developments -デベロップ最先端-
- ReConstructed -デッキ再構築-
- Daily Deck -今日のデッキ-
- Savor the Flavor
- 射場本正巳の「ブロールのススメ」
- 津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
- 浅原晃の「プレミアイベント三大チェックポイント!」
- ガフ提督の「ためになる」今日の1枚
- 射場本正巳の「統率者(2017年版)のススメ」
- かねこの!プロツアー食べ歩き!
- ロン・フォスターの統率者日記
- 射場本正巳の「統率者(2016年版)のススメ」
- マアヤのマジックほのぼの日記
- 金子と塚本の「勝てる!マジック」
- 射場本正巳の「統率者(2015年版)のススメ」
- 週刊連載インタビュー「あなたにとってマジックとは?」
- なかしゅー世界一周
- 中村修平の「デイリー・デッキ」
- 射場本正巳の「統率者(2014年版)のススメ」
- 中村修平の「ドラフトの定石!」
- 浅原晃の「プロツアー観戦ガイド」
- 鍛冶友浩の「プロツアー観戦ガイド」
- ウィザーズプレイネットワーク通信
- Formal Magic Quiz
- 週刊デッキ構築劇場
- 木曜マジック・バラエティ
- 鍛冶友浩の「デジタル・マジック通信」
- 鍛冶友浩の「今週のリプレイ!」
- 渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
- 「明日から使える!」渡辺リミテッド・コンボ術
- 高橋優太の「このフォーマットを極めろ!」
- 高橋優太の「このデッキを使え!」
- 黒田正城の「エターナルへの招待」
- 三田村リミテッド研究室
- 新セットめった切り!
- シングルカードストラテジー
- プレインズウォーカーレビュー
- メカニズムレビュー
- その他記事