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中村修平の「ドラフトの定石!」
中村修平の「ドラフトの定石!」 第3回
中村修平の「ドラフトの定石!」 第3回
こうやって文章にして書いているだけだと、「ドラフトとはなんと考えることが多く自由度が高いゲームなのだ」と私自身が錯覚しかねないのですが、現実は違います。実際のドラフト中に考えることのほとんどは23枚のカード集めプランです。
それがドラフトというゲーム。
策を巡らせても、それがどれだけ上手くいっても駄目な時は駄目ですし、例え自分の手元だけに集中していても変わりません。いや、だからこそドラフトに情熱を傾けている人間はわずかな情報から多くのことを引き出せないか、もしくは発信できないかと考えるのです。
ドラフトはここから中盤、そして終盤へと進んでいきます。第2回では序盤は8人視点こそが他の2つの視点を抑えて優勢ということを書いてきましたが、ここから徐々にその位置は揺らいでいき、やがて23枚という制約、デッキ視点に取って代わられてしまいます。
さて、それでは変転の2パック目、3パック目の話に参りましょう。
- 第1回
- ドラフト前
- イントロダクション
- 定石
- デッキの組み方 前篇
- 第2回
- ドラフト中 前半
- 取るカードの優先順位
- なぜ2色なのか
- 3つの視点
- ドラフト前半
- 第3回
- ドラフト中 後半
- 取ったカードを見て考えること
- 2マナ域がないドラフトは失敗ドラフトだ
- 2パック目
- 3パック目
- ヘイトドラフト
- 第4回
- ドラフト後
- 第1回
- ドラフト前
- イントロダクション
- 定石
- デッキの組み方 前篇
- 第2回
- ドラフト中 前半
- 取るカードの優先順位
- なぜ2色なのか
- 3つの視点
- ドラフト前半
- 第3回
- ドラフト中 後半
- 取ったカードを見て考えること
- 2マナ域がないドラフトは失敗ドラフトだ
- 2パック目
- 3パック目
- ヘイトドラフト
- 第4回
- ドラフト後
取ったカードを見て考えること
競技レベルでのイベント規定に従うなら、各パックの終了毎にプレイヤーには1分間、それまで取ったカードのチェック時間が与えられます。......なのですが、カジュアルでやる分にはそこまで厳密にやる必要はなく、ドラフト中にも自由に確認をすべきだと思います。自分のこれまで取ったカードから何を考えるべきか、ということを説明するにはちょうど良いタイミングなので、ここで説明することにしましょう。
この時間で特に必要になってくるのは、第2回ではあまり触れることがなかった、デッキとしてという視点です。前回までの復習になりますが、ここで「デッキ視点」からドラフトデッキで必要とされる条件を思い返してみましょう。
■ドラフトデッキに入る土地以外のカードは23枚が基本である
プラスマイナス2枚程度は変動することがありますが、23+17というのはドラフトをやる上で絶対ともいえる構成。デッキに入れても良いと思えるカードを、最低23枚ドラフトする。強いカードを取らなければ、という自分本位の視点も、8人がどういう風に動くかという思索も、デッキを完成させるという目標のためにあるのです。
この23枚という数字、単純計算だと1パックあたり8枚のカードを取り続けていれば良いのです。
さらに単純に考えれば、8人のプレイヤーは全員が「自分が考える強いデッキ」を組もうとして強いカードから取っていくわけですから、早い順から順番に1〜8手目のカードでデッキを揃えられます。
しかしもちろん、実際のドラフトではそう上手くはいかないですし、上手くいったケースについてはこの連載の内容は不要。色を決める過程でそれまで取ったカードを切り捨てるのはもちろん、パックの出が悪く、何も悪いこと(?)はしていないのにカード不足に悩まされたりすることすらあります。
また、それとは全く逆の考えもあります。つまり、「1パックあたり14回もカードを取る機会があるのだから、その内の8回だけデッキに入るカードを取れれば良い」という考え方です。
さらに考えを進め視点を増やすと、「毎パック無駄にできる『6枚』をどう自分に有利に使い切ろうか」という考え方すらあります。どちらが正しいというわけではありません。どれを選択するかは、ドラフトの状況次第、あなたの考え方次第ですね。
■ドラフトデッキは2色が基本である
なぜ2色が基本なのか?
デッキという視点からその理由になるのは、使用するであろう呪文の色マナ要求と土地配分からです。
セットにあるほぼ全てのカードを使わなければならないリミテッド戦では、ダブルマナシンボルを2色に渡って、例えばデッキで{W}{W}と{B}{B}のカードを併用しなくてはならないという事態が頻発します。これが{3}{W}{W}と{4}{B}{B}なのであればそれほど問題になりません。5ターン目までに{W}{W}、6ターン目までに{B}{B}が揃えば問題がないのですから。
ですがこれが{W}{W}と{B}{B}という両方とも2マナのカードであったらどうでしょうか?
マジックではコストが1つ違うとカードの強さが大幅に違う、というのは周知の通りです。そして同コスト内で格差をつけるため、より強いカードに対しては色マナの要求が厳しくなっています。
6ターン目にようやく唱えることができた{B}{B}のカードは、大抵の場合{4}{B}{B}のカードよりも大幅に下のパフォーマンスしか発揮できません。
もっと悲惨な事態になると、土地はあるのに色は揃わず、いつまでたっても手札の呪文を打てずにそのまま負ける、いわゆる色事故で負けてしまうことになります。
なので、デッキはせいぜい2色までが基本。大ざっぱに言ってしまえばデッキに入っている土地がちょうど半分ずつであれば、だいたいの場面で戦場に並んでいる土地も双方半分ずつだろうということになります。
少し数学的な話をすると、40枚デッキでの9枚の特定の土地カードを用意してやれば、先手3ターン目までには2.025枚のその土地が見込めます。それより色拘束が厳しいカードを入れているのであれば10対7。もしくは相当に振り絞った11対6というところまでが通常のドラフトで見かける土地配分ですね。
■ドラフトデッキはマナカーブという概念を下敷きに構築されている
ドラフトで構築するデッキは、ほとんどの場合マナカーブという概念を受けて構築されています。
私が初心者の頃、「ドラフトデッキで2マナ域がないというのは即ち失敗デッキだ。」と教わりましたが、これなどはまさにドラフトにおけるマナカーブの重要性を表している言葉ですね。
ドラフトの中盤から終盤にかけては、単純なカードの強さよりも、「マナカーブが要求するマナ域に沿ったカードを取らなければならない」という局面が頻発するようになります。強いカードだけを取り続ければ良いとする自分視点と、デッキとして何が必要であるかというデッキ視点の対立です。最終的に優先させるべきなのは、当然ながらデッキ視点になります。1枚のカードでどうにかなるならともかく、そんなに強いカードがほとんど取れないがゆえに、トータル戦術で勝ちに行こうとするのがドラフトなのですから。
これから解説する第3回では、前回までの自分視点、8人視点重視から、話を進めるごとにデッキ視点の比重が高まっていきます。それと同時に、デッキ視点からの要求に対してどこまで他の2つの視点からの要求を折り合わせていくか、この綱引きが今回のテーマです。
そのために必要なのは、「状況を確認すること」。やらなければならないのは、これまでの経過からデッキの完成に向けての進捗状況確認です。
- デッキに入るカード数のカウント
- クリーチャーの枚数と呪文の枚数
- クリーチャーのマナ域
- 自分が考えているマナカーブから逆算して、どのマナ域のカードを優先的に取らなければならないか?
- さらに、自分が色を変えた場合にデッキに入るカードは何枚か?
常にカードを見ながらでもかまいませんから、このあたりまで把握できるようになれば充分でしょう。本当にプロレベルまで目指すのであれば、競技ルールにおいては1分間しか存在しない、パックとパックの間の確認時間でこの作業を終えておく必要があります。
ドラフトデッキで2マナ域がないというのは即ち失敗デッキだ
少し極論が過ぎる気もしますが、よく言われる言葉です。
ここでいう2マナ域というのはもちろん、デッキのひな形でもそうだったように2マナ域のクリーチャーのこと。初心者がドラフトでやってしまいがちな、そして上級者になればなるほどめったにしなくなる、2マナ域が0枚、あるいは極端に少ないデッキを作ることへの警告です。
また、2マナ域での1手分が最後までゲームに影響を与え続けることへの戒めでもあります。古くから言われているドラフトの定石で、いかにマナカーブが大切か、それを端的に言い表した良い言葉だと思います。
でも実はこれ、かつては定石どころか「いっそのことドラフトをやる時のルールにしても良かったのでは?」という時期すらあったのです。
はるか昔、クリーチャーの質が今より低かったセットでは、それこそ2ターン目から5ターン目までずっと2/2サイズを出し続ける環境があったのです。しかも当時は除去が強いので、どんなサイズを出しても殺される時はあっさり殺される。結果としてどうなるかというと、2ターン目に2/2を出してからはずっと2/2同士が1対1交換。後手で2ターン目にクリーチャーが出せなければ自動的に死んでしまうのです。
それに比べれば、今は抜け穴がそれなりにはあります。クリーチャーの質は高くなり除去は弱くなりました。壁役にある程度の信頼がおける時代になったのです。例えばどういうデッキなら2マナ域をそれほど必要とせずに構築できるか、考えてみてください。
2パック目
さて、ドラフトの3分の1が経過していよいよ次のパックです。
ここからはドラフトの進行方向が逆転し、これまでの下流である左側のプレイヤーが上流に、右側のプレイヤーが下流となります。
2パック目でやらなければならないのは、あなたが使うデッキの色を「完全」に決定することです。そして8人視点、左側のプレイヤー編の答え合わせの時間でもあります。
これまで流してきたカード、自分の思惑が上手くいっているのか? 目論見通りなら、自分にとって必要なカードがちゃんと流れくるでしょう。
理想的なドラフトをしていれば、左隣のプレイヤーから自色の強いカードをもらいつつ、自分も右隣のプレイヤーに自色以外のカードを流してそれを取ってもらい、3パック目の流れを確定させることができます。1パック目にやったことを、今度は再び上流になる右側のプレイヤーにやるのです。これにより自分の立ち位置を確立すれば、ドラフトはほぼ成功のようなもの。ほとんどの場合2パック目の中盤までにデッキの大勢は決まります。
もっとざっくり言うと、時計回りの時は右がやっていない色を取って、反時計回りの時は左がやっていない色をやれば良いのです。
異変があるとすれば、8人視点の認識が大幅に間違っていた時ですね。
1パック目で大量に流していた色のカードが逆回りでも溢れていたりした場合、非常に困った事態に立たされることになります。両サイドからカードが溢れているというのは、「誰もやっていない」というという事態が濃厚ではあるのですが、果たしてここからこの色に参入して間に合うのか、3パック目では再び時計回りになることもあって、1パック目の途中で参入するよりも遥かに難しい決断を迫られることになります。
これもまた手番を使って勝負に行けるかという場面。ただし、捨てなければいけないのがこれまでのドラフトのほとんど、という非常にリスクの大きなものになり、どちらを取っても裏目があります。
もう少しリスクが低い場合は自分から波風を立てる時もありえます。
Case: 例えばこんな状況
概ね自分がやるべき色が固まりました。下流のプレイヤーについて確証は得られませんが、上流にあたる右のプレイヤーたちとは住み分けが上手くいったようです。
これまで取ってきたカードの把握もチェック時間で済ませましたし、あとは立てた計画通りにカードを集めていくだけ。
ですがここで問題が発生しました。よりによって2パック目の初手で、あなたがやっていない色の、強力な神話レアが出てきてしまいました。
さて、あなたはどうすれば良いのでしょう?
回答1:神話レアを取らずに流す。
回答その1にして最も手堅い選択肢は、せっかく出た神話レアカードですが、諦めて右隣のプレイヤーに流してしまうことです。3視点で考えるとこんな感じでしょうか。
自分視点 | ベストではないが、次善である2番目に強いカードを取る。 |
8人視点 | 自分がやっていない色のカードを流すということによって、右側のプレイヤーに自分がやっていない色であるというメッセージを送ることができる。 |
デッキ視点 | カードの強さという点では次善になってしまうが、カードの確保ができている。 |
もし右側のプレイヤーが流したそのカードを取ってくれたなら、それは幸せな結末です。あなたの推測が当たっていたということは、3パック目では今度はあなたにとって幸せなものになる可能性が高いですし、運に恵まれるとそれがレア以上となるかもしれません。
ですが右のプレイヤーがドラフトを悩むようでは黄信号ですね。そのレアがそのプレイヤーにとって使えるカードではなくてカットしようか悩んでいる、ということになります。これが次から次へと右に連鎖してしまおうものなら、「その色はがら空きだったのか」と暗澹たる気持ちになってしまいます。
とはいえ、悔やんだ時にはだいたい遅い、というのがドラフトの日常風景。もちろんそこからその色に行くという選択肢もゼロではありませんが、このリスクは先ほどの例と比べてもさらに高いと言わざるを得ません。
回答2:神話レアを取り、自分では使わない(カットする)。
2つ目はそのカードをカット、自分のデッキでは使わないことを覚悟の上で取ってしてしまうというもの。いわゆる「ヘイトドラフト」です。
ドラフト中には忘れがちになってしまいますが、ドラフトでデッキを作りにいくのは勝つためです。この1枚を渡してしまうとどうしても勝てなくなる相手ができてしまう、そして代わりに取るカードがあまりにも弱すぎる。あるいはトーナメントでのドラフトで、ここはどうしても3連勝しなくてはならない。そういった時に、この1枚を「42分の1」としてみるならばこの選択は十分な働きをする。これもまた1手を使って勝負に行っているのです。
自分視点 | 使わないカードはどんなに強くても意味がない。ただ悪い選択肢である。 |
8人視点 | 場合によっては卓内全体にとって必要なことになるかもしれないが、自分とその周囲の環境にとってマイナス。 |
デッキ視点 | デッキに影響を与えない。ただ悪い選択肢である。 |
それでも3つ全ての視点でネガティブな評価になるのは仕方ありませんね。実際、自分と8人のうちのもう1人が一方的にマイナスを背負うのに対して、他の6人にとっては何もしていないのに相対的にプラスになる、という選択をするわけですから。
「ヘイトドラフトはするな。」
長らく言われ続けられている定石で、それはほとんどの場合においてはその通りなのです。
回答3:神話レアを取り、デッキの色を替えて自分で使うことを考慮する。
そして3つ目の選択肢。
とりあえずそのレアカードを取ってみて、2パック目の間にカードが集まるか様子を見て色替え、それができなさそうであればカットとして扱うというもの。1と2の折衷案的な内容ですね。お察しの通り、この選択肢は状況に非常に左右されやすく一概には言及しきれません。
自分視点 | 使うという前提で一番強いカードを取るのであれば容認できる。 |
8人視点 | これまでの色主張からリスクを取りにいく選択肢で、お勧めはできない。 |
デッキ視点 | そこから色替えをしてデッキになるのであれば問題はない。 |
ありそうな状況を想定すると、1パック目が上手くいっていない時、例えば右側のプレイヤーたちと自分のやっている色がどうも被ってしまっていている中で色替えをする転機が必要だというシーン。つまり1パック目初手に近い条件下で、どのみち一度リセットして不確定要素の海に飛び込まないといけないのであれば、少しでも強いカードを取ってみるのも良いかもしれないといったものですね。
これだと悪すぎる現状を打開するためにギャンブルに向かっていると取られても仕方がありませんね。しかし、以下のような状況もありえます。
1パック目で1色目は相当枚数を取って決まったが、2色目は数が少なく、それほど強いカードもないので切り替えることにした。
もっと具体的に枚数を出すならば、
1色目が6枚、2色目が2枚で、たまたまここで出現したレアと同じ色でデッキに入れても良いレベルのカードが1枚取れていた。
これも上の状況とほぼ同じであり、2パック目初手の段階で1パック目初手状況の再現をしています。ですが自分の1色目が決まっているという土台と、1パックが経過している分の情報があるという点で随分と良い状態です。
この状況から見れば、流れてくれば新たに始めた2色目のカードを取り続ければ良いですし、そうでなければ1色目のカードを再び取れば良いのです。しかも1パック目の履歴から、3パック目では再び1色目のカードを確保できる可能性が高い、といいことずくめです。
これ以外のほとんどのケースでは、色替えとカット、強力カードのスルーの板挟みになってしまっていますが、なぜこのケースでは良い条件で色替えを果たしているように見えるのでしょうか?
「手を絞る」と「手を広げる」の本質、色が確定するとき
それは序盤の色決めに際して、大きく分けて「手を絞る」という方向性と、「手を広げる」という2つの方向性があるという話と関連しています。
どちらか一方が優位であるというわけではないとも言いましたが、それはドラフト中にする色の変更をどのタイミングでやるかという違いです。
「手広い」と説明した方は最序盤に、「絞る」と説明した方はそれをなるべく後半に持っていこうという違いであると言い換えることができます。
結果的に捨ててしまうような選択をせずに、デッキが相当弱くなるというリスクまで背負って1色を集中的に取っていたからこそ、2パック目の強力なレアを取れる。いわば、序盤での極端な不自由を代償として、中盤での自由を得ているのです。
何からの自由なのか? それはデッキ視点の要求からの自由です。
これまでとは逆説的な物言いになりますが、ドラフトの手番は42回しかありません。しかも、各パックの後半はほとんどデッキに入るカード取れる見込みがないもの。1パックで8枚程度がノルマというのは何度か使った表現ですが、ほとんどドラフトではそのノルマを達成するので手一杯というのが基本です。
23枚のデッキに入るカードさえ確保できる目処があるならいくらでも手を捨てても良いのですが、逆にそれをする余裕がなくなった時というのが、ドラフトにおいて色が確定した瞬間と言えます。
これはほとんどの場合は2パック目の中盤あたり、デッキに入るカードが11〜12枚を超えたあたりになります。これを超えて色替えをすると、どうしてもそれまで使うつもりだったで最低4〜5枚が使えなくなってしまい、将来的な23枚の確保ができなくなってしまいます。この臨界点を超えてしまうとデッキ視点からの圧力により、カードを集めることに注力せざるを得ず、良くも悪くも一気にデッキの完成という道を進むことになるのです。これが「色が確定するとき」です。
実はこの圧力を軽減することができる場合もあるのですが、その方法については第4回までの宿題にしておきましょう。
3パック目
ほとんどの場合において、3パック目というのは一本道です。
これまでのドラフトで住み分けが完了していた場合、1パック目より質の良いカードがどんどん流れてきます。その上流からの贈り物を受け取りつつ、あなたのデッキに取って必要なもの、多くの場合は各マナ域で不足しているカードを補充していくことになるでしょう。
また、ここまででデッキ視点でのドラフトに注力していたプレイヤーにとってはチャンスとなることがあります。
卓内のほとんどのプレイヤーはデッキの完成に注力していて、足りないマナ域のカードを優先して取り、強さは二の次となりやすいのです。それは他の色をやっているプレイヤーにしても同じことで、自分のデッキを優先させるために結果として信じられない遅い巡目で強力なカードを拾えてしまうことがあります。
もちろんこれは運の要素が大きく絡んでいますが、それを拾う努力をするかしないかでデッキを大きく強化できるチャンスが手に入るのです。これもまた、無理ができる使いどころをどこでするか、それに向けて3視点のバランスを取れていけたのかということです。
ありがちなケーススタディ、「2マナ域の強力カードか?高マナ域の超強力カードか?」という設問も、2マナ域が2枚しか取れていない状態と、既に4枚あるという状況では答えが違ってくるのです。
自分視点 | もちろん強いカードが欲しい! |
8人視点 | 上流に関してはもうあなたができることは何もありません。ただ流れてくるカードを取るのみです。 |
デッキ視点 | これまでバランスよくドラフトを進めて、自分視点を制御できていたのならここで強いカードを取っていける。 |
3パック目において言及したいことがもう1つあります。それは23枚のカードを確保し終わった後についてです。
紆余曲折の末、あなたは3パック目の7手目に、終盤間際にデッキに入るカードを23枚確保することができました。ですがドラフトはもう少しだけ続きます。8手目というまだあなたが知らないパックがありますし、9手目にはおそらく返ってくるだろうと予測したあのカードが待っているのです。ここで注意しておかなくてはならないのが、あなたが取ろうとするその24枚目のカード、それについてちゃんと考えて取っているか、ということ。
最も駄目なケースは、デッキに入る23枚目のカードと同じカードを何の気もなしに取ってしまうことです。
デッキに入る最低ランクのカードを重複させて何になるのでしょう? それは意味があるように見せかけて、その実、ただ意味のない選択をしているに過ぎません。左側のプレイヤーにこれまでと同じく色主張をしても、見返りは何もありません。もう返しのパックはないのです。自分の色のカードを取るのであれば、23枚目を押しのけてデッキに入るカードである、という理由付けで取るべきなのです。
そして、それがもし無いようであれば、下流のプレイヤーのカードをカットして邪魔をするというのも1つの手です。あなたにとって、もはや下流のプレイヤーはドラフトに何の利益ももたらしません。意味のないカードを取ってまで、不必要に強化する義理はないのです。
ヘイトドラフト
3パック目でなぜカードが流れてくるのか? 協調ドラフトの成果ではないのか?
ヘイトドラフトが一般的になってしまったら、そういったことに期待が持てないからドラフトが違うゲームになってしまうのではないか?
もっともな心配ですが、それは違います。
3パック目序盤でヘイトドラフトが発生しないのは、上流に座るプレイヤーがそれをしたくてもできないからです。なぜできないか?それは自分のデッキを組み上げるために、余計な行動、捨て手を取ることができないからです。
「ヘイトドラフトは悪である」という定石は、言葉だけがひとり歩きしてしまっています。なぜそれが悪いものであるかについては、「自分にとって損失の方が大きいから。」というところで思考停止しがちであり、どのような損失が発生するかまでは見落とされがちです。
なぜ損失が大きいか、というのをもう少し詳しく分析してみましょう。
ヘイトドラフトのデメリットは先ほどあげました。「自分と仕掛けられるプレイヤーの2人のみが相対的に弱くなり、他のプレイヤーに勝てなくなるから」です。また対となる協調ドラフトが良いとされる理由は、「ヘイトドラフトによる自分のデッキの戦力低下が起こらず、デッキが順調に強化されるから。」となります。
しかし、3パック目に自分の色のカードが流れてくるのは、別の論理が働いていることを見逃してはいけません。上に挙げたとおり、3パック目でカードが流れてくるのは決して仲良くしていたからによるボーナスポイントではないのです。
もし行き過ぎた協調ドラフトの結果として、2パック目までに既に充分な23枚の強力カードが揃ったのなら。
よほど強力なカード以外は、先ほどの23枚目と24枚目の論理と同じく、下流のプレイヤーのカットに走った方が効率的ではないでしょうか? 自分にとって被害がない状況、やったほうが利益が出る状況であれば、ヘイトドラフトは仕掛けた方が良いという結論になってしまいます。
そして当然これは自分以外のプレイヤーについても同じ。競争者である他のプレイヤーに楽をさせないヘイトドラフトというのは、ドラフトにおいて覚えなければならないプレイングの範疇です。それが、後半の自分のカードの流れを良くすることにも繋がるのです。
カットもまた戦術の1つ。そうすることで結果的に自分のドラフトを守ることになるのです。
ここではヘイトドラフトをしたほうが良いとされる、典型的なケースを2つ、そしてその応用を1つあげておきましょう。
■3パック目後半、既に自分のデッキに入るカードがないパックのとき
既にデッキが完成していて、そこから取るものに価値がないのなら、まさにヘイトドラフトをしなくてはならない局面です。
■ドラフト中に特定の色のみが溢れているとき
1つの強力すぎるデッキの誕生は、他の7人からみれば災厄以外の何者でもありません。理想としては、全員で協調してカットすることにより、その1人のプレイヤーが誕生するのを阻止しなくてはならないのです。
■サイドボード用のカードを取っておくとき
挙動としては若干違いますが、デッキ視点ではメインボードに入れないカードを敢えて取り、8人視点においては特定のプレイヤーにとって打撃になるカードを押さえる点で発想はヘイトドラフトと近いものです。
ここまでのまとめ
- ドラフトをするにあたって
- どういうデッキを組むかイメージ作りが必要。
- デッキは土地17枚、クリーチャー16枚、その他呪文が7枚が基本
- それにマナカーブを意識してデッキを組む
- →早い、ビートダウン型
- →遅い、コントロール型
- →別軸、コンボ型
- ドラフト中に考えること
- カードの選択基準は代替性をメインに考える
- 爆弾>除去>クリーチャー>その他
- ドラフトのデッキ構築は2色が基本
- ドラフト中は3つの視点で考える必要がある
- 自分視点
- 8人視点
- デッキ視点
- 初手だけを考えるならただ一番強いカードか一番使いたいカードを取ればこと足りる
- ドラフトには手を狭めると広げるという2通りの考え方がある
- 9手目は追加の卓内情報を得られるチャンス
- ドラフトデッキとは23枚近辺の呪文で構成された、2色が基本の、マナカーブを意識においたカードの集合物である
- 1〜2パック目までは8人視点、2パック目以降は徐々にデッキ視点での考え方にドラフトは支配されていく
- デッキという目的のためには、協調ドラフトはした方が良いのではなく、せざるを得ない
- その中でどのタイミングでわがままに振る舞うか、または被害を少なくわがままに振る舞えるかがドラフトというゲームである
- ドラフトをするにあたって
- どういうデッキを組むかイメージ作りが必要。
- デッキは土地17枚、クリーチャー16枚、その他呪文が7枚が基本
- それにマナカーブを意識してデッキを組む
- →早い、ビートダウン型
- →遅い、コントロール型
- →別軸、コンボ型
- ドラフト中に考えること
- カードの選択基準は代替性をメインに考える
- 爆弾>除去>クリーチャー>その他
- ドラフトのデッキ構築は2色が基本
- ドラフト中は3つの視点で考える必要がある
- 自分視点
- 8人視点
- デッキ視点
- 初手だけを考えるならただ一番強いカードか一番使いたいカードを取ればこと足りる
- ドラフトには手を狭めると広げるという2通りの考え方がある
- 9手目は追加の卓内情報を得られるチャンス
- ドラフトデッキとは23枚近辺の呪文で構成された、2色が基本の、マナカーブを意識においたカードの集合物である
- 1〜2パック目までは8人視点、2パック目以降は徐々にデッキ視点での考え方にドラフトは支配されていく
- デッキという目的のためには、協調ドラフトはした方が良いのではなく、せざるを得ない
- その中でどのタイミングでわがままに振る舞うか、または被害を少なくわがままに振る舞えるかがドラフトというゲームである
以上でドラフト編は終了です。ここからはデッキ構築へと進みます。
それでは次回、またお会いしましょう。
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