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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:ビビと大釜で溢れるマナ(スタンダード)

岩SHOW


 マジックのデッキやカードをについて語ることでこのコンテンツさのクールを再確認し、どっぷり浸る。それが今週のCool Deckの目的だ。さて『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』、そのクールさを味わい尽くしているだろうか?カードゲームとビデオゲーム、媒体は違えど長きにわたってそれぞれのファンタジー世界を追求していったコンテンツが夢の交流を果たし、これに関する各種イベントも爆発的な盛り上がりを見せた。その最たるものがプロツアー!

 高額賞金とプレイヤーとして歴史に名を残す栄誉、それらを求めて世界中の予選を勝ち上がったプレイヤー達が集う夢舞台、プロツアー。今回は『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』リリース記念のプロツアー、俄然注目度は高かった。激闘に次ぐ激闘が終わってみればイゼット(青赤)カラーの果敢デッキが最多勢力。これは予想の範疇ではあったが……140名、約42%と断トツどころではない使用率。そしてトップ8には形は多少異なれど、半数の4名がこの果敢デッキにて入賞。イゼット大勝ちの週末になったわけで……しかしながらその果敢だけがこのイゼットというカラーリングのデッキではない。

 

 果敢デッキのユーザーらにとってこのトーナメントで重要だったポイントは《迷える黒魔道士、ビビ》を採用するか否か。テストの結果、採用しない形に至った調整チームもあれば、そもそも果敢デッキには不要!《コーリ鋼の短刀》で十分に戦えると判断してテストすらしていないチームも。結果としてトップ8入賞者のリストはすべてがビビを採用していたが、その枚数や他のカードとの兼ね合いはリストによってまばらだ。このアーキタイプがビビを採用するべきかどうかの答えは、このプロツアーを経てからの各地の競技イベントの結果を見ることでわかるのではないだろうか。

 そしてここで改めて、冒頭で触れた「イゼットは果敢デッキのみにあらず」という話に戻ろう。《迷える黒魔道士、ビビ》は非クリーチャー呪文を唱えることで+1/+1カウンターを得つつ対戦相手にダメージを与えるクールな誘発型能力を持つ。非クリーチャー呪文ということでそれらを連打する果敢デッキがまず思い浮かぶのだが、もう1つの能力にも注目すると別の道が見えてくる。自身のパワー分の青か赤のマナを加える、起動型能力。ビビは元のパワーが0であるため初期は何のマナも加えられないが、自身の誘発型能力でサイズアップして加えるマナの量も増えるという作りだ。この起動型能力をどうすれば活かせるか、というアプローチでデッキを組んでみるのも1つの手である。それを追求したクールなプレイヤー達が、少数ながら今回のプロツアーに参戦していた。

Paulo Vitor Damo da Rosa - 「Izzet Cauldron」
プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』 / スタンダード(2025年6月20~22日)[MO] [ARENA]
2 《
3 《
4 《リバーパイアーの境界
4 《シヴの浅瀬
2 《魂石の聖域
4 《尖塔断の運河
3 《轟音の滝
-土地(22)-

4 《逸失への恐怖
4 《略奪するアオザメ
3 《光砕く者、テルサ
4 《迷える黒魔道士、ビビ
3 《ヴォルダーレンの興奮探し
-クリーチャー(18)-
2 《削剥
4 《アガサの魂の大釜
2 《氷河の龍狩り
3 《洪水の大口へ
4 《プロフトの映像記憶
1 《呪文貫き
4 《冬夜の物語
-呪文(20)-
1 《削剥
2 《竜航技師
2 《永劫の好奇心
3 《石術の連射
2 《否認
1 《焦熱の射撃
1 《呪文貫き
3 《声も出せない
-サイドボード(15)-
 

 「イゼット大釜」!その名の通りキーカードは《アガサの魂の大釜》。このアーティファクトは墓地からカードを追放する、所謂墓地対策の側面も持っているが、もう1つ面白い働きを担う。これにより追放されているクリーチャーの起動型能力、それを自身のクリーチャーに持たせるのだ。+1/+1カウンターが置かれているクリーチャーがその能力を得るというもので、大釜でクリーチャーを追放した際にはそのカウンターをクリーチャーに乗せられるため自己完結もしている。

 しかし別の方法でこれらのカウンターをクリーチャーに乗せることができればもっとスムーズに能力の共有が可能になる。というわけでビビを墓地に落として大釜で追放、カウンターの乗ったクリーチャーらでこの黒魔道士の能力を起動してマナをたっぷり確保。マナがあればなんでもできる、怒涛の展開を見せるデッキがこの「イゼット大釜」という新しいアプローチ。様々な手段でビビを捨て、自力でカウンターを得る《略奪するアオザメ》や《プロフトの映像記憶》などでそれをばら撒き、大釜でビビを追放して全員ビビ状態に……という腕白でクールな目的をマジで実行する、実に面白いコンセプトで組まれている。

 

 《逸失への恐怖》《光砕く者、テルサ》《氷河の龍狩り》……これらのカードは手札を捨てつつカードを引くため、ビビなどの起動型能力持ちを墓地に捨てるという大釜へのセットアップ、そして《プロフトの映像記憶》の誘発も促すため、このデッキにとっては重要なカード群だ。その中でも《冬夜の物語》はかなり重要。3マナで3枚ドロー、一気に掘り進んで大釜などその時に欲しいカードを引き込める。その後手札を2枚捨てるか、クリーチャーを1枚捨てるかを選ぶことになる。ビビを捨てられれば最上ってところだね。またこのソーサリーは、一度唱え終わってもまた墓地から唱えなおせる。そのコストは比較的重たいが…そのコストはクリーチャーをタップすることで軽減できる。戦場に出したビビやアオザメを成長させてそれをタップしたり、ビビ(及びその能力を得た面々)から得たマナで普通に払うなどすれば、この3枚ドローを簡単に使いまわせる。溢れるマナからドローを繋げて、フィニッシュへと向かうのだ。

 そしてデッキにとってのクールなゴールは《ヴォルダーレンの興奮探し》!これは自身を生け贄に捧げることでそのパワー分のダメージを任意の対象に与え、賛助能力でそれを他のクリーチャーにも持たせる。その賛助でサイズアップしているクリーチャーを投げつける、あるいは《アガサの魂の大釜》でこの起動型能力も他に共有し、兎に角クリーチャーをブン投げて対戦相手のライフを一気に溶かす!大釜のマナ供給とドローのかみ合わせがハマれば、一瞬で対戦相手を焼き切ることも可能という、そんなビックリドッキリクールなコンボデッキに仕上げられているのだ!

 《コーリ鋼の短刀》だけでなく《アガサの魂の大釜》もまた《迷える黒魔道士、ビビ》と組み合わせて使うべきカードということが今回のリストから判明したわけだが、もちろん各アーキタイプの完成形というものにはまだ至っていない、そんな印象を受ける。これらのカードやそれを用いたデッキ、これだという逸品に完成させるのは君かもしれない。それじゃあ今週はここまで。Stay cool!Build your own Izzet!!

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