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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ラクドス・トカゲ:スリルを求めて攻めまくれ(スタンダード)

岩SHOW

 マジックをしばらく離れていて、最近の盛り上がりで復帰したプレイヤーが「今そうなってんの?」とちょっと驚く要素は色々あると思うが……まずどのパックを剥こうかとなった時にあることに気付き、そして「はぁ~」となるのだろう。それは“ブロック”が存在しないこと。

 かつてマジックのセットは3セットで1つのブロックを形成していた。300種前後のカードが収録された大型セットがリリースされ、その後に追いかけるように140種ほど収録した第2、第3セットがリリースされていた。第1セットが新しいメカニズムやそのセットのテーマを提示、セットを追うごとにカードデザインが深まっていくという形式だ。特に第3セットは昔のスタンダードのローテーション的に使える期間が短めだったためか、その分構築に影響を与える強いカードが収録されているイメージが強く、盛り上がったものだ。

 

 このブロックという概念は段階を経て撤廃され、最近は基本的に1セットで完結する形になっている。そのため新しい要素が登場した!と思ったら次のセットではまた全く異なるメカニズムがメインテーマになるので、カードの雰囲気がガラッと変わる。その切り替わりがエキサイティングではあるのだが、ブロック制の頃の1年かけてデッキが強くなっていく感覚はちょっと実感しにくくなっているのかも。直近のローテーション後でも『ブルームバロウ』で動物たちの同族デッキが推奨され、個人的にストライクだったトカゲデッキを組んでみたものの……後続の2セットではなかなか新戦力を得られずに、ムムムというところだった。

 ブロック制はなくなったが、次元同士は領界路で繋がるようになったこともあって、微妙に前のセットの雰囲気を踏襲したカードが収録されていたりもする。そこになかなか味わい深いものがあったりして、これはこれで面白いものだ。《鱗の焦熱、ゲヴ》を中心に、《雇われ爪》のような黒と赤のアグレッシブなトカゲで固めたデッキ。ライフをザクザクと刻んでいくことには定評がある「ラクドス(黒赤)トカゲ」にもそろそろ新顔がほしい……そんなところに『霊気走破』だ。果たしてこのセットにトカゲはいたのか?いた!しかも、なかなか良いんじゃない?

Brian A - 「ラクドス・トカゲ」
地域チャンピオンシップ予選(ドイツ、ベルリン) トップ8 / スタンダード (2025年2月24日)[MO] [ARENA]
4 《硫黄泉
4 《黒割れの崖
3 《ブレイズマイアの境界
2 《魂の洞窟
1 《泥干潟村
2 《岩面村
2 《
4 《
-土地(22)-

4 《雇われ爪
4 《玉虫色の蔦打ち
4 《鱗の焦熱、ゲヴ
4 《火硝子の導師
4 《炎貯えのヤモリ
4 《ガスタルのスリル探し
3 《笑う者、ジャスパー・フリント
2 《渓間の炎呼び
2 《運命を笑う者、アリーシャ
-クリーチャー(31)-
3 《切り崩し
3 《保安官を撃て
1 《逃げ場なし
-呪文(7)-
2 《苦痛ある選定
2 《十字砲火
1 《大群への給餌
1 《削剥
1 《アガサの魂の大釜
2 《除霊用掃除機
1 《過去と未来の剣
3 《思考忍びの邪術師
2 《ウラブラスクの溶鉱炉
-サイドボード(15)-
MTGTop8 より引用)

 

 

 というわけでトカゲ界の期待の新星《ガスタルのスリル探し》を採用したリストを紹介しよう。このスリル探しは戦場に出ると対戦相手に1点ダメージを与える。トカゲは対戦相手にダメージを与えることが何よりも重要で、それによって《火硝子の導師》《炎貯えのヤモリ》などの能力が誘発。ダメージを与えれば与えるほどドンドンと有利になっていく仕組みだ。そんなわけで戦場に出るだけでダメージが飛ぶスリル探しは、攻撃できない時に火硝子を誘発させられるなど、大いにウェルカムだ。

 またスリル探しはエンジン始動!を持っている。この能力は速度1から始まり、対戦相手に自ターンのうちにダメージを与えれば速度が1上昇。上昇は1ターンに1回のみで、最高速度は4。4になることで恩恵を受けられるカードが多く、スリル探しもその例に漏れない。対戦相手にダメージを与えるアグロデッキなトカゲであれば、最短で最高速度に持っていけるわけだな。スリル探しは最高速度で速攻と接死を持つようになる。どんな強敵が立ちはだかろうともガツンと殴りに行けるのは有望だ。この新顔や《玉虫色の蔦打ち》などのお馴染みのトカゲを《渓間の炎呼び》でバックアップ。歩のお呼びはトカゲが与えるダメージを増やしてくれるので、スリル探しの飛び道具もたかが1点とは笑えなくなるのである。

 

 アグロデッキは手札切れが弱点になる。相手のライフを削り切れなかった時に、手札が切れて毎ターンの1ドローのみに頼って戦うと相手とのアドバンテージ差が開いて苦しい展開に。それを避けるために重いカードを採用は出来ないが、現実的なコストでカード1枚分以上の働きができるクリーチャーがいるなら喜んで採用したいところだ。その点トカゲには《笑う者、ジャスパー・フリント》がいる。ジャスパーは無法者の数だけ対戦相手のカードを奪う。トカゲデッキは自然と無法者が揃うので、このジャスパーはえげつないアドバンテージを稼ぎ出したりする。

 そしてこのリストにはもう一人、笑う者と呼ばれる伝説が。《運命を笑う者、アリーシャ》だ。アリーシャはトカゲでも無法者でもないが、色があってコストも3ということで採用されている。アリーシャは攻撃する度にサイズアップするため打点に優れており、また各ターンに攻撃していれば能力が誘発。墓地にいるクリーチャーで、アリーシャのパワーよりもマナ総量が低いものを戦場に戻す。この能力はアリーシャ自身で攻撃していなくても誘発するのが優れており、このデッキのすべてのクリーチャーを巣の状態で戻せるため、1枚で2体以上のクリーチャーとなってくれることが大いに期待できる。なるほど、トカゲでなくともデッキを強化するものはあったんだなぁ。

 ブロックという概念はなくなったが、カードのデザインは各セットで微妙に繋がりが見える。自分のデッキと一見関係のないテーマのセットだったとしても、意外と新戦力は潜んでいるかもしれない。そういったカードに巡り合うというのは、今のセット構成ならではの楽しみ方だ。トカゲデッキ、まだ戦えそうで安心だ!

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