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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ジェスカイ召集:新カード、使わないも良し使うも良し(スタンダード)
スタンダードは使用可能なセットが直近の3年以内のものに限られる。他に比べると狭いプールになるので、即ち新セットがリリースされると多大なる影響を受けることになる。ただ、当たり前のことだがスタンダードのセットはすべてが同じ方向を目指して作られているわけじゃない。たとえばこの2024年にリリースされたセットだけを見ても……
『カルロフ邸殺人事件』:変装や偽装による裏向きクリーチャー、墓地を用いる証拠収集、探偵や手掛かりなどのタイプを参照するカード
『サンダー・ジャンクションの無法者』 :無法者タイプを参照するカード、対象を取ることで悪事を働くカード、計画や放題といった別コストを持つ呪文、砂漠や乗騎
『ブルームバロウ』:人間が収録されず小さな動物たちのタイプにフォーカス、新生・贈呈・給餌といった新能力
『ダスクモーン:戦慄の館』:新サブタイプの部屋やクリーチャーなどエンチャントが多数、それらとシナジーを形成する違和感や生存に昂揚とホラーな雰囲気の能力
セットごとにかなり雰囲気は異なり、カードのデザインも多種多様だ。それら別々のセットのカードが絶妙に噛み合ってスタンダードのデッキは構成されているが、必ずしもすべてのデッキがそうであるわけではない。『ブルームバロウ』のカードを主に使うデッキが、どんな強力な人間が登場しようと無関係であるように……新セットの影響は絶大だが、すべてのデッキがそれを受けるわけではないのだ。
4 《戦場の鍛冶場》 4 《アダーカー荒原》 4 《感動的な眺望所》 4 《金属海の沿岸》 4 《尖塔断の運河》 1 《ミレックス》 1 《平地》 -土地(22)- 4 《内なる空の管理人》 4 《ひよっこ捜査員》 4 《遠眼鏡のセイレーン》 1 《ヨーティアの前線兵》 4 《毅然たる援軍》 4 《イモデーンの徴募兵》 2 《血滾りの福音者》 4 《イーオスの遍歴の騎士》 -クリーチャー(27)- |
4 《上機嫌の解体》 4 《門道急行の事件》 3 《戦導者の号令》 -呪文(11)- |
1 《地盤の危険》 3 《塔の点火》 2 《稲妻のらせん》 1 《魔女跡追いの激情》 1 《邪悪を打ち砕く》 1 《失せろ》 4 《交渉団の保護》 1 《トーテンタンズの歌》 1 《ウラブラスクの溶鉱炉》 -サイドボード(15)- |
たとえばこの「ジェスカイ(青赤白)召集」などは『ブルームバロウ』以前と変わらない、新カードを採用しないリストをよく目にする。低コストのクリーチャーやアーティファクトのトークンを並べ、それらを《イーオスの遍歴の騎士》の召集コストの支払いに充てたり、《内なる空の管理人》の能力起動のためにタップする。早いターンから全力で盤面を作り、対戦相手の体制が整う前に一気に押し切る……スタンダードのアグロデッキの一派閥だ。
召集などに使うトークンは《上機嫌の解体》で用意するのが理想的だ。自身のアーティファクトを破壊することでゴブリンを3体生成するこのソーサリー、たった1マナでクリーチャーのカウントを大きく増やせるこれを運用するために、《ひよっこ捜査員》《遠眼鏡のセイレーン》らアーティファクトを生成するクリーチャー、あるいは《ヨーティアの前線兵》を用いる。これらのカードと解体でクリーチャーを4・5体準備して2ターン目にイーオスなんて動きも可能だ。そこから《イモデーンの徴募兵》を獲得したり、《門道急行の事件》《戦導者の号令》を貼ったりして打点を跳ね上げ、勝負を決める。
この「ジェスカイ召集」はカードを選ぶデッキだ。その要求は結構うるさい。まず低コストであること、そしてクリーチャーが最優先。あるいはそれらのパワーを上昇させるなどしてダメージに繋げるカード、息切れを防げるカード……求めているカードの条件が限られるため、すべてのセットがこのデッキを強くしてくれるとは限らない、というわけだ。ただ最近は、旧来の召集のリストから少し進んで、ダスクモーンのカードを取り入れたリストが出回り始めた。
4 《戦場の鍛冶場》 2 《アダーカー荒原》 2 《シヴの浅瀬》 4 《感動的な眺望所》 4 《金属海の沿岸》 4 《尖塔断の運河》 1 《ミレックス》 1 《平地》 -土地(22)- 4 《内なる空の管理人》 4 《ひよっこ捜査員》 4 《遠眼鏡のセイレーン》 2 《機械仕掛けの打楽器奏者》 4 《毅然たる援軍》 4 《イモデーンの徴募兵》 4 《イーオスの遍歴の騎士》 2 《マネドリ》 -クリーチャー(28)- |
4 《上機嫌の解体》 4 《門道急行の事件》 2 《画家の仕事場 // 汚された画廊》 -呪文(10)- |
2 《塔の点火》 1 《邪悪を打ち砕く》 2 《失せろ》 2 《幽霊による庇護》 4 《除霊用掃除機》 4 《交渉団の保護》 -サイドボード(15)- |
こちらがその最新カードを取り入れたリストの一例だ。召集デッキが求める基準を満たした新カードとは……《機械仕掛けの打楽器奏者》!太鼓を叩く猿のオモチャこそ待望の新戦力だったのだ。打楽器奏者は死亡すると、ライブラリーの上を追放。これにより追放されたカードは、次の自分のターンの終わりまでプレイすることが可能だ。
この打楽器奏者はクリーチャーであると同時にアーティファクトだ。つまり《上機嫌の解体》の対象とすることができる。そして解体で破壊してトークンを用意しつつ、トップを追放することでカードの損失が実質的に0で済む……可能性がある。これはエラいッ!もしイーオスやイモデーンを追放したりしようもんなら、その瞬間に決着がつくかもしれない。またこの猿は速攻を持っているため、全体除去を受けたりした後に展開して途切れない攻撃を仕掛けることもできる。それでいて1マナなのだから、これは召集デッキのニーズにこたえるには十分な1枚!
そしてダスクモーン発の新要素、部屋エンチャントも召集デッキの新たなエッセンスになりつつある。2つのモードを持つ赤いエンチャント、主に使うのは《汚された画廊》。攻撃クリーチャーのパワーを+1する、それだけのカードではあるがトークンが並ぶこのデッキでは笑えないレベルのダメージを弾き出す。《門道急行の事件》や《イモデーンの徴募兵》とあわされば、トークンの素のサイズは1/1でもそれが与えるダメージは3点以上の致命的なものになる。
この画廊のもう一つの部屋が《画家の仕事場》。これは打楽器奏者のように者のようにライブラリートップを追放して次の自分のターンエンドまで使える、衝動的ドローと呼ばれるアドバンテージをもたらす。2枚追放なのでカード1枚がそれ以上の手数に繋がるのは嬉しい。3マナでこのアクションは少々重めにはなるが、全体強化の画廊にこのオプションが付いてくると考えれば、文句は言えないどころか有難すぎるものだ。ゲームが長引いて決め手を持っていない時には仕事場、盤面の頭数が揃っていれば画廊、どちらかで出してからもう片方のモードも使える、その便利さが召集デッキの動きに深みを与えている。
新カードの影響を受けにくいデッキはある。時間が経ってカードの研究が進み、そういったデッキに新たな選択肢がもたらされることもある。変わらなくても良いし、変わっても良い。これがスタンダードの素晴らしさだ。好きなデッキリストを見つけたらそれを延々プレイし続けるか、あるいは野心的に改良を重ねるか。それは君の自由なのだ。
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