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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
イグラ・フード:「すべて」と書かれたカードは強い!(パイオニア)
「すべての○○は(を)~」と書かれているカードは強い。古より語り継がれる、マジックのセオリーだ。すべてのクリーチャーを破壊する《神の怒り》、すべての土地を破壊する《ハルマゲドン》……これらはすべての範囲が広すぎて、自分にも被害をもたらすがその分相手のものも何もかも跡形も残さず吹き飛ばす。これらのカードの後継モデルも含めて、すべてのというフレーズが書かれたカードはヤバいぞ、注意しろよ!というのがかつてのセオリーであった。最近では上記のものほどインパクトを放つものはなくなってきたが、それでも《太陽降下》のような強力なカードがあるので、この鉄則は今も生き続けていると言えよう。
『ブルームバロウ』にはこのすべて系カードの最新モデルが登場。その名も《全てを喰らうもの、イグラ》と、名前にすべてが仕込まれている。
そしてカード名に違わぬ能力が実によくデザインされている。イグラ以外のすべてのクリーチャーは、敵も味方も問わずすべて食料となる。これは一見相手にとってお得に見える。適当なクリーチャーが食物になることで、いざとなれば回復できるからだ。ただイグラは、食物が戦場から墓地に置かれると+1/+1カウンターを2個も得てしまう。これも敵味方問わず誘発するので、味方の小粒クリーチャーを生け音に捧げて回復したり、相手のクリーチャーを除去したりすることでイグラの腹は満たされていく。また護法は食物の生け贄がコストになっており、要するにクリーチャーを一匹差し出せと。これで生け贄が発生してもサイズアップするので、ダメージを与える除去でイグラを対処するのはかなり厳しい。全てを喰らうものという通り名にも納得な素晴らしいデザインだ。
さて、このイグラが発表された時に話題になったのが《大釜の使い魔》との組み合わせだ。食物を生け贄に捧げることで墓地から戦場に戻る使い魔。イグラがいるとクリーチャーを生け贄に捧げてこの能力を起動できるようになる。つまり……戦場と墓地に1枚ずつあれば、使い魔が使い魔を喰らい戦場に戻って喰われて……と、無限に出し入れすることが可能になる。使い魔は戦場に出た時に対戦相手のライフを1点吸い取るので、この無限ループは即ち無限ライフルーズになって即勝利!
こんな素敵なコンボ、狙わないわけにはいかないだろう、ということでブルームバロウ環境が始まって少しばかり時間も経って落ち着いてきたタイミングで、出回っているリストをチェックしてみた。これがかなり面白いものだったので、ここで紹介させていただこう。パイオニアの「イグラ・フード」だ!
4 《草むした墓》 4 《花盛りの湿地》 4 《闇孔の小道》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 2 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《噴水港》 4 《沼》 2 《森》 -土地(22)- 4 《大釜の使い魔》 4 《金のガチョウ》 4 《縫い師への供給者》 3 《全てを喰らうもの、イグラ》 -クリーチャー(15)- |
4 《致命的な一押し》 4 《泥沼の略奪》 3 《命取りの論争》 4 《魔女のかまど》 4 《パンくずの道標》 4 《清掃人の才能》 -呪文(23)- |
1 《湧き出る源、ジェガンサ》(相棒) 2 《減衰球》 2 《機能不全ダニ》 4 《毒を選べ》 2 《食肉鉤虐殺事件》 4 《思考囲い》 -サイドボード(15)- |
使い魔を生け贄に捧げて食物を作り、その食物で使い魔を戻す……《魔女のかまど》と使い魔のタッグは、飛行やトランプルなどを持たない相手のクリーチャーをブロックしては生け贄にする鉄壁の防御法を提供する。ここに《パンくずの道標》が加わると、毎ターンこのアクションを行うだけでパーマネント・カードがどんどん手に入る。これらはかつてパイオニアでも頂点を極めていたフード系デッキの最強ムーブだ。
最近元気のなかったジャンルであるが、イグラが加わったことで一気に活性化!かまど使い魔で相手を食い止めながらライフを保ち、パンくずでライブラリーを掘り進めてイグラに到達。そのままフィニッシュへ……実に理にかなったデッキとして、黒緑2色のフードデッキがここに復活だ。
このイグラと使い魔のコンボに噛み合いまくっているのが《清掃人の才能》。最初このデッキを実際にプレイするまでは「クリーチャーが死亡すると食物、まあ猫から2つでたらお得ではあるね」くらいの気持ちで今一つこのカードの役割を理解していなかったのだが……見聞きするよりも実体験は勝るね。この才能はレベル3に達すると毎ターンの終了時に能力が誘発。土地以外のパーマネントを3つ生け贄に捧げて墓地のクリーチャーを戦場に戻せる。これでイグラを釣り上げて、そのままターン終了ステップの間に食物となった使い魔をループさせて勝つことができる。戻すために必要なパーマネントは、才能自身の能力も絡めて大量の食物を並べて簡単に用意することができる。
そしてレベル2、これも非常に重要だ。パーマネントが生け贄になるたびに、プレイヤー1人のライブラリーを2枚切削する。使い魔とかまどでグルグル回すことで、かなりの枚数のライブラリーを墓地に落とすことが可能だ。この切削の対象を自分自身にすることで、イグラを墓地に落としてレベル3のリアニメイトに繋げるという、この無駄のない動きが素晴らしい。コンボには使い魔が2枚必要で、それらは墓地に落ちていて構わないので、レベル2の切削をガンガンと誘発させてコンボパーツである猫たちを墓地に落とし込もう。パーツが何もなくとも、食物を生け贄にしてパンくずと清掃人を誘発させているだけでみるみるうちに3枚揃う……というのがこのコンボの強みだ。
すべてのクリーチャーは食物になる。《全てを喰らうもの、イグラ》はすべてと書かれた強いカードの伝統を引き継ぐ、全く新しい能力でマジックを面白くしてくれる。食物になるということはアーティファクト化するということでもあるので、何かそこを活かすような構築にチャレンジするのも面白い。パイオニアのフードデッキは勿論のこと、それ以外のフォーマットでも使って観たくなること間違いなし!
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