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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:ネクロ・ストーム、炸裂19枚ドロー(レガシー)

岩SHOW
 

 《ネクロポーテンス》は最もクールなカードの一つだ。これぞ最上級のクール。黒マナのトリプルシンボルというコスト、支払ったライフ分のカードを追放し、それをターン終了時に手札に加える。ドロー・ステップを飛ばすという強烈なデメリットを帳消しにする、強力無比なアドバンテージ獲得能力。イラストも髑髏がこちらに向かって手をかざしており、まさしく死がもたらす力を我々に伝えてくれる最高にカッコイイものに仕上がっている。ただ強いだけでなくしっかりと弱点も用意されているのが良いんだよな。

 そしてリスクを背負うカードではあるが、噛み合った際のリターンが大きすぎることや相性抜群の《暗黒の儀式》などの存在も相まって、トーナメントをネクロ一色に染め上げた「ネクロの夏」と呼ばれる事件もマジック史に刻まれている。それ故に現在はあらゆるフォーマットで禁止や制限に指定されている。何から何まで、ネクロほどクールなカードはそうそうないのだ。

 

 そしてこの夏、《ネクロドミナンス》なる後継機が『モダンホライゾン3』にて登場。マナコストと名前だけでなく、その能力もおおむねネクロだ。ライフを支払うタイミングはターン終了時に固定され、その時に支払った分だけドローするという形に。手札に加える先代ネクロに対して、ドローであるこちらは《覆いを割く者、ナーセット》のように対策がしやすくなっているが、《黙示録、シェオルドレッド》などこれをプラスに置き換えるカードとの組み合わせも期待できるようになった。墓地に置かれるカードが代わりに追放されるという、墓地利用は不可能になる点も本家と同じ。そしてドミナンスには手札の上限が5枚になるというデメリットが設けられた。これでかつてのように常に7枚補充して戦うようなことはなくなり、2024年にネクロをよみがえらせても良しとの判断が下されたわけだ。

 

 さてこの新ネクロ。待っていたのは……かつての最愛の友《暗黒の儀式》が控えるレガシーだ。このマナ加速を用いれば1ターン目にネクロを貼るという往年のクールなムーブが蘇る!手札の上限は5枚まで?いやそんなことは関係ない、19点支払ってやる!

TonyScapone - 「ネクロ・ストーム」
Magic Online Legacy League 5-0 / レガシー (2024年6月12日)[MO] [ARENA]
3《宝石鉱山
4《囁きの大霊堂
-土地(7)-

1《野生の朗詠者
4《エルフの指導霊
4《猿人の指導霊
4《別館の大長
-クリーチャー(13)-
4《水蓮の花びら
1《金属モックス
4《暗黒の儀式
4《陰謀団の儀式
4《魔力変
3《風に運ばれて
4《否定の契約
4《召喚士の契約
4《ネクロドミナンス
3《ヴァラクートの覚醒
4《鏡に願いを
1《苦悶の触手
-呪文(40)-
3《金属モックス
1《オパールのモックス
4《神聖の力線
2《夏の帳
3《自然の要求
1《基盤砕き
1《ヴァラクートの覚醒
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)

 

 

 そんなわけで今週紹介するのはレガシーの「ネクロ・ストーム」。やっぱり手札をたんまりと握りしめるデッキは、ストームで勝つに限るな。そのターンに唱えられた呪文の数だけコピーされるストームという能力。マナを加えたりドローする呪文を連打した後に《苦悶の触手》を撃ち込んで対戦相手のライフを吸い尽くすデッキはレガシーで伝統と実績を誇るクールな一派。最近では《鏡に願い》をからこの触手に繋げるという動きも定番になっている。このリストもそのセットを備えている。ドローをスキップするネクロを《鏡に願いを》の生け贄に捧げて処分できるのはなかなかクールだ。

 ……ん?そもそもどれだけネクロでライフを払おうと、手札の上限は5枚。ストームで勝つほどの呪文の連打はできない?いやいや、そんな心配は無用だよ。その点はぬかりなし。では実際にこのデッキが勝つまでの一例を紹介しよう。

 

 それでは先攻でゲーム開始。まず開始時に《別館の大長》公開、これで《意志の力》などの介入を防ぐ。公開後は《金属モックス》に刻印。

 

 《囁きの大霊堂》から黒マナ加えて《暗黒の儀式》、この大霊堂を生け贄にして《鏡に願いを》を唱える。鏡からは《ネクロドミナンス》を持ってきてそのまま唱える。ここまでで手札は5枚消費、ストームは5。

 

 そして終了ステップに突入。ネクロが誘発したら19点のライフを支払い、19枚ドロー。残り手札は21枚。そこから《猿人の指導霊》《エルフの指導霊》を追放してマナを加える。《召喚士の契約》もエルフをサーチして追放し、マナとストームを稼ぐ。それらのマナを使って《魔力変》。青マナを含む組み合わせでマナを加えつつドロー。そしてそのマナを使って《風に運ばれて》。これですべての呪文を瞬速持ちかのように唱えられるように。

回転

 

 《水蓮の花びら》《暗黒の儀式》《陰謀団の儀式》などを連打。あれば《苦悶の触手》を、なければ《鏡に願いを》で探したり《ヴァラクートの覚醒》で手札を入れ替えるなど動き、最後はたっぷりとストームを稼いだ触手でフィニッシュ!

 そう、この「ネクロ・ストーム」は終了ステップ中に勝つという荒業で、ネクロの手札上限問題をクリアし、それがもたらす圧巻の19枚ドローの恩恵を活かしきる。このはちゃめちゃぶり、これぞネクロデッキ!早速magic Onlineのリーグ戦にて全勝を遂げ、一気にプレイヤーの注目を集めることになったクールな存在なのだ。

 コンボの経路を改めてみると、それほど安定感はない。19枚引いたところで、その内容がフィニッシュまで繋がるものと約束されているわけではない。そうだとしてもベストな5枚を残して次のターンに繋げ、そこからなんとかして…と望みは繋がる。返しでクリーチャーに殴られて終わり、あり得る。しかしそういうギリギリのラインを攻めて、完走できれば勝ち……そういうデッキにこそロマンとクールさを感じるプレイヤーは少なからず存在しているのだ。彼ら彼女らがさらにネクロを洗練されたデッキに研ぐかもしれない、より歪な異形のコンボへと高めるかもしれない。いずれにせよ、レガシーについにネクロがやってきたのである。これを楽しまずしてクールは語れまい。

 それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Pay 19 life!!

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