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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:すべてを使え!禁止解除ヒストリック!(特殊フォーマット)

岩SHOW

 Channel Fireball。マジックの歴史で最も知られたこのチーム名には元ネタがある。

 それはそのまんま《チャネル》と《火の玉》のこと。チャネルは古いカードなのでテキストがちょっとわかりにくいかもしれないが、これを唱えたターンの間あなたはライフ1点を支払って無色マナを1つ加えられるようになる、ぶっ飛んだマナ加速である。これでモリモリとライフを支払って《火の玉》をX=20で唱えて対戦相手を一撃粉砕!非常にお手軽なコンボであり、マジック黎明期であれば各種アーティファクトを経由してこのコンボを1ターン目に決めることも可能だった。初心者でも決められるわかりやすさと確実性、極悪コンボとして名を馳せた《チャネル》と《火の玉》がかつて世界最強と讃えられた強豪プレイヤーが多数所属するチーム名になっているというのは、なんともクールな話だね。

 というわけで今週もやってきました、マジックのデッキを「クール」という観点から解説するCool Deckのお時間だ。今回紹介するのは……真夏に突然訪れた、最もエクストリームでクールなマジックのイベントに関するデッキだ。MTGアリーナで開催された「禁止解除ヒストリック」。皆は参加したかな?僕はこんな祭りが開催されるとは知らなかったので、アリーナプレイ中、日を跨いだ瞬間に画面に表示されたイベントに驚きの声を上げてしまった。

 MTGアリーナの独自フォーマット、ヒストリック。マジックの歴史が詰まっており、ヴィンテージやレガシー、モダンとも異なるカードプールがヒストリックでしか味わえないマジック体験を提供しており、好きな人はガッツリハマっている環境だ。ヒストリックのぶっ飛び感を伝えるなら……《夢の巣のルールス》が問題なく相棒として使える!これだけでもうヤバいよな。

 ただそんなヒストリックでも禁止されているカードが沢山ある。なんだったら、アリーナでリリースされたもののそれと同時にヒストリックで禁止となり、ほとんどプレイする機会を与えられていないカードもゴロゴロある。『兄弟戦争』の旧枠アーティファクトや『機械兵団の進軍』の多元宇宙の英雄、次のセット『エルドレインの森』におけるおとぎ話など、最近のパック特有の過去の名カードを特殊なアートで再録したもの。その中でも特にデンジャラスなカード達は「こりゃさすがに」とヒストリックで使用するチャンスを与えられなかった。

 これで終わればクールではない話だが、プレイヤーらの思いにこたえるかのように時折開催される禁止解除ヒストリック。こんなクールなことがあるからマジックってやつはたまらない!今回は所持していないカードも自由に使ってデッキを構築し、対戦可能という大盤振る舞い!「夢のカードで遊べ!」こんな熱い命令には「応ッッ」と返事するのがクールなプレイヤーというものだ。冒頭で触れた《チャネル》。今回は使ってオッケーです!マジで?いいのか?だったら……。

NicolGolas - 「ジャンド・チャネル」
MTGアリーナ 15-9 / 禁止解除ヒストリック (2023年8月22日)[MO] [ARENA]
4 《銅線の地溝
4 《花盛りの湿地
2 《黒割れの崖
4 《草むした墓
4 《ラノワールの荒原
4 《硫黄泉
-土地(22)-

4 《敏捷なこそ泥、ラガバン
4 《大いなる歪み、コジレック
4 《絶え間ない飢餓、ウラモグ
2 《約束された終末、エムラクール
-クリーチャー(14)-
4 《強迫
4 《コジレックの審問
4 《悪魔の教示者
4 《チーム結成
4 《むかしむかし
4 《チャネル
-呪文(24)-

-サイドボード(0)-
Twitter より引用)

 

 遠慮なく使わせてもらうぜ!世界中のプレイヤーがそう思い至った結果、かつてないほどまでに《チャネル》デッキが現れるという珍事が発生!そもそも《チャネル》はスタンダードというフォーマットが制定された時点でデッキに1枚制限、同年のうちに禁止カードになり、その後ヴィンテージで制限・レガシー制定当初から禁止と、この呪文を扱える空間はごくごく限られたものだ。そんな抑圧された30年近い年月を吹き飛ばすかのように、4枚使って良いぞ!所持してなくてもデッキ組んで良いぞ!と発破をかけられたら…答えなきゃクールじゃない!

 《チャネル》から得られる無色マナの供給先にも悩む必要はない。アリーナに存在するエルドラージの3つの柱!《大いなる歪み、コジレック》《絶え間ない飢餓、ウラモグ》《約束された終末、エムラクール》、これらを叩きつけて文字通り圧勝するッ!コジレックでドロー&打ち消しのロック状態、ウラモグで土地などパーマネント2枚吹き飛ばし、ゲーム序盤で決まれば何もさせずに勝利することは確実なムーブ。どちらも魅力的だが……個人的にはエムラクールで対戦相手のコントロールを得る動きは、この“チャネル・ウォーズ”と化した特殊フォーマットだからこそ狙ってみたい。先にチャネル×エムラクールを決めて、対戦相手のターンを迎えたら……その手札にある《チャネル》を唱えて全ライフを支払い!釣りはいらねぇと言わんばかりに、クールに葬り去ってやるのだ。

 対戦相手のコンボ要素を妨害したり、打ち消しや手札破壊による妨害を防ぐために《思考囲い》《コジレックの審問》と黒の手札破壊を用いているリストは多かった。そうやって黒を足すと自然と、マジックの歴史上最強のサーチ呪文も採用出来るからね。《悪魔の教示者》!ライブラリーから何の制限もなくサーチできて。かつ何のデメリットもない。この悪魔は随分と親切なヤツだ。チャネルでもエルドラージでも、その時に必要なものをこれで揃えて瞬殺!このカードも制限なしで4枚使える環境なんてものはこの禁止解除ヒストリックくらいしかない。貴重な機会だ。良き悪魔と接触しておくのはマジックプレイヤーとしてプラスになるクールな経験であることは間違いない。

NicolGolas - 「イゼット・デルバー」
MTGアリーナ / 禁止解除ヒストリック (2023年8月23日)[MO] [ARENA]
4 《蒸気孔
4 《尖塔断の運河
4 《焦熱島嶼域
3 《シヴの浅瀬
3 《河川滑りの小道
-土地(18)-

4 《敏捷なこそ泥、ラガバン
4 《ドラゴンの怒りの媒介者
4 《秘密を掘り下げる者
-クリーチャー(12)-
4 《ミシュラのガラクタ
4 《渦まく知識
4 《表現の反復
2 《ロリアンの発見
2 《呪文貫き
3 《対抗呪文
4 《記憶の欠落
4 《稲妻
3 《邪悪な熱気
-呪文(30)-

-サイドボード(0)-
MTGAZone より引用)

 

 せっかくなので他のデッキも紹介しよう。先ほどのリストにも採用されていた《敏捷なこそ泥、ラガバン》。これもアリーナにやってくると同時にヒストリックで禁止されており、遊べる場が限られ過ぎていた1枚。遂にアリーナで暴れ回る時が来た!この猿の良さを最大限に味わえるのは、やはりクロックパーミッション。低コストのクロック、即ちライフを削るクリーチャーを展開し、それらを打ち消しで守り、また相手の動きを妨害するパーミッション戦術を仕掛けるアーキタイプのことだ。青のドローと打ち消し、赤のダメージ呪文とクロックの組み合わせは鉄板だ。ラガバンは攻撃が通れば宝物を作れる上に、対戦相手のライブラリーからカードを奪える。低コストのカードで固めて土地を切り詰めた構築をするクロックパーミにとって、ラガバンのもたらす恩恵はこの上ない極上クールなものなのだ。

 パーミッションの基本中の基本、打ち消し。これも禁止解除により大幅強化。まずは何と言っても《対抗呪文》!マジック最初の打ち消しにして、最高のマナ効率を誇る逸品だ。2マナで何でも確定で打ち消し、久しぶりに唱えるとこれが強くて懐かしくて……。さらに以前はヒストリックで使用可能だったが禁止となった《記憶の欠落》も解禁。これも2マナと軽く、必要な青マナは1つと少ない。扱いやすい打ち消しであるため、打ち消した呪文は墓地でなくライブラリーの上に置かれる。つまりすぐにもう1回唱えられてしまうのだが、それを逆手にとって対戦相手のドローを1ターン遅れさせるという使い方も出来てしまう。クロックパーミであればこれで1ターン稼げればそれは十分な時間。ラガバンや《ドラゴンの怒りの媒介者》、《秘密を掘り下げる者》で殴り切れ!

 ドローの面でも《ミシュラのガラクタ》や《渦まく知識》など、低コストで扱いやすいものが解禁されてクールな事態に。以前短い期間使うことが出来た《渦まく知識》を懐かしむのはもちろん、これまたアリーナで遂に使えるようになった《ミシュラのガラクタ》に歓喜したプレイヤーも少なくないだろう。《ドラゴンの怒りの媒介者》との組み合わせは天下一品。高速で墓地に多種のカードタイプを揃えて、一気に3/3飛行へと成長させよう!そう、《ドラゴンの怒りの媒介者》は現在ヒストリックで修正を受けており、昂揚してもタフネスが上昇しないものになっていた。その修正も禁止解除と共に撤廃!久しぶりに3/3に成長する媒介者をプレイしたが、気分が良かったぜ……。

Linden Koot - 「バント・オーダー」
MTGアリーナ / 禁止解除ヒストリック (2023年8月22日)[MO] [ARENA]
4 《神聖なる泉
4 《繁殖池
4 《氷河の城砦
4 《内陸の湾港
1 《ヤヴィマヤの沿岸
2 《英雄の公有地
1 《天上都市、大田原
1 《
-土地(21)-

4 《金のガチョウ
4 《喜ぶハーフリング
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ
1 《産業のタイタン
1 《偉大なる統一者、アトラクサ
-クリーチャー(13)-
4 《剣を鍬に
2 《呪文貫き
4 《対抗呪文
4 《むかしむかし
4 《自然の秩序
4 《王冠泥棒、オーコ
4 《時を解す者、テフェリー
-呪文(26)-

-サイドボード(0)-
Twitter より引用)

 

 最後にパワーカードの集合体とも言えるバント(白青緑)のデッキを。言わずもがな、《王冠泥棒、オーコ》と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》、青緑2色で3マナと共通のコストを持った象徴的な2枚……これらを共演させるデッキを組めるとは、何とも感慨深い。久しぶりに使ったオーコは、あまりにも強くて脳が受け付けないレベルだった。当時は毎日これを巡るゲームをやってたんだな……(遠い目)。ウーロのマナ加速とライフ回復っぷりもヤバい、攻撃されても全然ライフが減らなかった。かつてはこれも(以下略)。これらを《喜ぶハーフリング》から2ターン目に出す。この動き、マジクールすぎたな。

 《自然の秩序》もこんなタイミングでこそプレイしておくべきパワーカードの代表格。銅系カードは後に多く作られたが、それらでは到底かなわない驚異のクリーチャーサーチ!直に戦場へ!小粒のエルフやガチョウを餌に、《偉大なる統一者、アトラクサ》を早いターンに降臨させよう。あとは《対抗呪文》《剣を鍬に》などで満たされたクールすぎる手札でコントロールするだけだ。

 いや~ちょっとクールすぎるイベントに興奮してしまった。また次に禁止解除ヒストリックが開催されるのが楽しみでしょうがないよ。フォーマットをクールなものに保つための禁止カード、ネガティブなイメージもあるものだが……そこには歴史があるものだ。強すぎたカード、当時は色々と思うことがあっても、時間が経ってから今回のようなイベントで触れると、不思議な気持ちになる。これが愛というものなのだろうか。

 そんなことを考えつつ、今週はここまで。Stay cool!……そういえば、今回はデイリー・デッキの通算1900回目(多少ズレている可能性アリ)。2000の大台、待ってろよ………Let’s go 2000!!

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