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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
赤単プリズン:イニシアチブをつかめ(レガシー)
「イニシアチブとか、見られますかね」
これはBIG MAGIC OPEN Vol.12の初日、レガシー本戦開始前。実況席で配信開始前の演者間で雑談しながら待機している時に出たひと言である。それも冗談交じりでのことだった。
「イニシアチブ」とは、『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』で登場したメカニズム。既存のダンジョン探索の要素と、統治者を掛け合わせたようなものだな。
イニシアチブを得たプレイヤーは《地下街》というこれでしか入ることのできないダンジョンに踏み込むことになる。以降、イニシアチブを持ち続けている限り、毎ターンのアップキープの開始時にこのダンジョンを探索していくことになる。
自動的にさまざまなメリットが毎ターン得られるというのは何とも素敵だが、ただこれには先に述べたように統治者の要素がある。クリーチャーにより戦闘ダメージを受けると、イニシアチブは対戦相手のもとに渡ってしまう。地下街の覇権をめぐって争うというフレイバーをうまく表現しているね。
ただその奪われるという点がデメリットでもあり、またそもそもイニシアチブを持つカードの大半は多人数ドラフト向けのデザインが施されており、レガシーで使うにはコストが重すぎる。これらの点から恐らくはイニシアチブに関するカードが使われることはない……そういう読みもあっての半ばジョークなやり取りだった。
しかしながら、我々の予想に反してイニシアチブを搭載したデッキが、300名を超える規模のこのトーナメントで4位に入賞していたのである。おみそれしましたッ!
5 《冠雪の山》 2 《バグベアの居住地》 1 《反逆のるつぼ、霜剣山》 4 《古えの墳墓》 4 《裏切り者の都》 -土地(16)- 4 《エインジーの荒廃者》 4 《再鍛の刃、ラエリア》 4 《猿人の指導霊》 4 《混沌の洞窟の冒険者》 4 《激情》 -クリーチャー(20)- |
4 《金属モックス》 4 《血染めの月》 4 《鏡割りの寓話》 2 《三なる宝球》 2 《死亡 // 退場》 4 《髑髏砕きの一撃》 4 《虚空の杯》 -呪文(24)- |
4 《紅蓮破》 1 《魔術遠眼鏡》 4 《焦熱の合流点》 4 《虚空の力線》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -サイドボード(15)- |
というわけでイニシアチブ要素を持った「赤単プリズン」を紹介しよう。
「プリズン」とは対戦相手に自由な行動を許さないアーキタイプの総称。マナを縛ったり攻撃をさせないなど、その様を牢獄に捕らえることに例えているのだ。
昔のプリズンデッキはそれこそ引きこもってしまうものだったが、昨今のそれは攻めの要素も持ったデッキだ。どちらかというと昔はそれを「ドラゴン・ストンピィ」と呼んだものだが、ドラゴン・タイプのクリーチャーを主体にしたデッキに見えるのでややこしいというのもあってか、プリズン呼びが主流になっているね。
《古えの墳墓》《裏切り者の都》とレガシーを代表する土地に加えて《猿人の指導霊》《金属モックス》も併せて、1ターン目から赤マナ含む3マナ以上を捻出することが可能な設計。
これを用いて《血染めの月》で土地を機能不全にしたり、《虚空の杯》《三なる宝球》で低コストの呪文を妨害するなど、ド開幕からクライマックスなプリズン攻めを行う。
そうやって相手の出足が止まってもたついているところを、3マナ以上の優れたクリーチャーで圧殺するというわけである。
そのクリーチャーの中にイニシアチブを用いる者がいた! これは正直驚いた、《混沌の洞窟の冒険者》参上ッ!
4マナ5/3トランプルという攻めのボディにイニシアチブがついてくる。《地下街》に入るということで、まずは最初の部屋能力でライブラリーから《冠雪の山》をサーチ。さらに次のアップキープを無事に迎えると+1/+1カウンターが2つ置かれる。そう考えるとこいつは実質4マナ7/5トランプル! かなりヤバいスペックだ。
もし除去されていた場合でも、隣の部屋を選んで占術2、ドローの質が上がるので隙が無い。さらには5点のライフを失わせたり4/1のスケルトンを生成したりと……いろいろあった末にもしこのダンジョンを完走するようなことがあれば、最後はライブラリーの上から10枚見て、その中にいたクリーチャーに+1/+1カウンターを3個置いて戦場へ。そこに至るまでゲームが長引くことは珍しいかもしれないが、決まれば勝ったようなもんで気分が良いだろうね。
この地下街を抜きにしても、冒険者は攻撃するたびにアドバンテージを稼げるチャンスをもたらす。手札を序盤に全力で吐き出すプリズンデッキにとっては、五臓六腑に染みわたるものだな。
そんなわけでしっかりイニシアチブ持ち新戦力を得ていた「赤単プリズン」。他のクリーチャー陣を見て見ると……最近ヒストリックにも来て話題になったパンチ力のあるアドバンテージ源《再鍛の刃、ラエリア》、レガシーにモダンにとフィーチャーマッチでもあらゆる赤いデッキで大活躍だった《激情》と優秀なスタッフが揃っている。
さらに注目は《エインジーの荒廃者》。
前からプリズンで見かけるクリーチャーではあったが、最近その強さに磨きがかかっている。《鏡割りの寓話》のおかげだ。
これのⅡ章能力で手札を捨ててカードを引く、その際に《エインジーの荒廃者》を捨てることでマッドネス能力を活用してそのまま唱えることが可能なのだ。《鏡割りの寓話》というただでさえ強いカードをさらに美味しいものに引き上げつつ、荒廃者の攻撃が通ればさらに3枚ドローのチャンス! このわんぱくさ、たまらないぜ。寓話の生成するゴブリンが宝物を生成するのもありがたく、1ターン目に強気の寓話プレイもアリだね。
いや~侮っていたね、イニシアチブ。正直構築シーンで見ることはないかなと思っていたのだが、大型トーナメントの復活と同時にすかさず存在感を示してきた。《混沌の洞窟の冒険者》が今後プリズンの定番カードとなるか、要注目!
マジック、どんなカードや能力も、実際に試したりこの目で見るまではその実力はわからないもの。いい勉強になりました、『団結のドミナリア』もきちんと実体験で見極めさせていただきます。
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