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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ディミーア・コントロール:相手の力を利用する眼識(スタンダード)

岩SHOW

 相手の力を利用して勝つ。バトル漫画とかだと定番の表現だね。合気道などは相手の力が強ければ強いほど技の威力が上昇するなどと書いてあり、幼少時からそれを信じて今日まで生きてきているという人も少なくないだろう(僕もそう信じたい)。

 相手が強ければ強いほど効果が大きくなる、というのはマジックにおいても通じる概念だったりする。《反逆の行動》などの一時的にコントロールを奪って攻撃する類のカードは、奪うクリーチャーが強ければ強いほどその必殺性が増す、リミテッドの切り札的な1枚だ。もちろん《マインド・フレイヤ―》のような永続的に奪うものも強いものに対して使いたいものだし、「コントロールを得る」と書かれているカードは相手のデッキが強ければ強いほど火を噴くというものだ。

 《反発》のようなトリッキーに相手のパワーを利用するカードもあり、当時はこれを護身と言いながら唱えていたものである。

 合気道が相手の力を返すように、マジックには相手のカードの力をそのオーナーに返す強力なカードが存在するものだ。中にはそれを主な勝ち手段に据えているものさえある。

 今回はそんな合気の考え方を体現したかのようなデッキを紹介だ!

Carlos Nuñez - 「ディミーア・コントロール」
スタンダード(BO1) (2021年9月26日)[MO] [ARENA]
6 《
7 《
4 《難破船の湿地
4 《清水の小道
2 《ストーム・ジャイアントの聖堂
3 《廃墟の地
-土地(26)-

1 《竜亀
-クリーチャー(1)-
4 《血の長の渇き
4 《冥府の掌握
3 《眼識の収集
2 《軽蔑的な一撃
1 《才能の試験
4 《襲来の予測
3 《ゼロ除算
4 《記憶の氾濫
2 《悪賢い隠蔽
2 《影の評決
2 《食肉鉤虐殺事件
1 《蜘蛛の女王、ロルス
1 《オニキス教授
-呪文(33)-
2 《環境科学
1 《過去対面法
1 《害獣召喚学
1 《アルカイックの教え
1 《殲滅学入門
1 《マスコット展示会
-サイドボード(7)-
Carlos Nuñez氏のTwitter より引用)

 

 スタンダードでBO1(メイン戦のみ1本勝負)形式の「青黒(ディミーア)コントロール」だ。

 このカラーリングでのコントロールデッキは前環境からも使用されていた、生粋のコントロール好きには人気の勢力。しかしながら前環境から存在したということは、ローテーションで多くのカードを失っているということである。その損失を埋められるカードがあれば、と願っていたプレイヤーも少なくなかったことだろう。

 安心してほしい、このリストのように立派なディミーアはまだ組める! そしてそれを支えるのが相手の力を我がものとして利用する新カード《眼識の収集》だッ!

 このカードは青黒の多色カードによく見られる、対戦相手のカードを奪ってプレイできるという系統のものだ。対戦相手のライブラリーの上から2枚見て1枚選ぶということで、その射程は短い。ゆえに決して有効なカードが手に入るわけではないが、大当たりをめくった場合……例えば現環境なら《レンと七番》などが奪えた日には、本当にそれだけで勝ててしまえることだろう。

 そこまで派手でなくても、アグロデッキ相手に相討ちさせられるクリーチャーや、あるいは軽量除去を奪えれば、それでカード1枚分の仕事は十分、対コントロールでも打ち消しが奪えればゲーム終盤にかなり優位に立ち回れることだろう。

 たとえ何もなくても、土地さえ取れればそれを置けるというのは地味ながら本当にエラい。コントロールにおいてはこうしたコツコツと積み重ねるアドバンテージは勝利への小さなステップである。

 そしてこの《眼識の収集》には驚くべきことにフラッシュバックがついている。そしてそのコストもたったの3マナと非常に軽い。お手軽にアドバンテージを取りつつ、フィニッシャーの獲得もできる一粒で二度美味しいカード……これがインスタントなのだから青黒マニアにはたまらんよな。

 というわけで、じっくり戦いながらその眼識で対戦相手と差をつける、コントロールの王道とも言えるリストに仕上がっている。

 デッキの他の部分はコントロールなので対戦相手の自由なゲーム展開を妨害し、こちらがゲームに敗北しないようにするためのカードで構成されている。

 青のコントロール要素と言えば打ち消し、これはローテーション後も優秀な《襲来の予測》などが残っており、さらに《悪賢い隠蔽》という追放とライブラリー修復機能も付いた味わい深い1枚が追加されている。このリストにはないが《雲散霧消》などもかなり良い選択肢となるだろう。

 黒のコントロール要素といえばクリーチャーやプレインズウォーカーへの除去。こちらも優秀な《血の長の渇き》などが残留しているので、数は減ったとはいえ十分に相手のクリーチャーを捌ける陣容になっている。

 《冥府の掌握》という2マナインスタントが加わったのも隙のないコントロールの展開を支えてくれる。

 ただこの掌握はライフが2点減るというデメリットが。除去しきれずに何度か攻撃を受けている時にはこの2点が重くのしかかり致命傷となることもある。そこでこの問題を帳消しにしてくれるのが《食肉鉤虐殺事件》。

 最高の名前のクリーチャー除去だが、ソーサリーのような能力を持ったまさかのエンチャントである。戦場に出てからは相手のクリーチャーを死亡させるたびに1点回復させてくれるという、コントロールにとってまさしく欲しかったというデザインが施された1枚だ。このカード、たかが1点と甘く見ていると、無尽蔵にライフを補給するその光景に裸足で逃げ出すことになるので気を付けろ。

 そしてコントロールにとってこれが欲しいという第3の要素、ドローなどの手札補充。これも新カードがしっかり補ってくれる。《記憶の氾濫》だ。

 4マナのインスタントでカードが2枚手に入るというのはマナ効率に優れている。その際にまず4枚カードを見て2枚選べるというのが強い。そしてこのカードにもフラッシュバックが付いている。そのコストは7マナと決して軽いものではないが、支払ったマナの分だけカードが見られるのでなんと7枚見て2枚選べる。これだけの枚数ライブラリーを掘り下げれば、相当強いカードが見つかるはず。これをフラッシュバックした時点で、手札の枚数と質の両面で差が付けられたとして投了してしまうプレイヤーも少なくないだろうね。

 BO1用なのでサイドボードは講義カード7枚のみだが、これをいじればサイド入れ替えありのBO3でも戦えるリストに昇華することができるはず。その際にはクリーチャーをあまり入れていないデッキ用に、クリーチャー除去を抜いて打ち消しや手札を捨てさせるなどのカードと交換できるように用意しておくと、無駄なドローが減少して良いゲーム展開が望めるはず。このあたりは実際にゲームを重ねて調整していくのが醍醐味だね。

 《ストーム・ジャイアントの聖堂》のような最小限の勝ち手段と《眼識の収集》という相手の力で勝つカード、後は全力でコントロール要素に振った「ディミーア・コントロール」。まだこの手のデッキを経験していないのであれば、今こそコントロールデビューしてみても良いんじゃないかな? 合気道のようにゲームを支配する感覚を一度は味わってほしいね。

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