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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

白ウィニー、2021年の目覚め(スタンダード)

岩SHOW

 どんなことがあっても生き延びるもの。そりゃあ某昆虫と白ウィニーだと言われたものだ。

 マジックでもいくつかのカードで人々を震え上がらせたかの昆虫は、確かにどんな環境においても適応できそうだ。おそらく人類が滅びた後もその文明の残骸を住処に生き続けるのだろう。

 で、「白ウィニー」ってのは何かというと、マジックにおける白い軽量クリーチャーを用いたデッキのことである。現在のデッキ分類における「アグロ」というジャンルは、実は比較的最近に使われるようになった言葉だ。マジックの黎明期からしばらくはウィニーというフレーズが用いられることが一般的だった。

 ウィニーとは「ちっぽけな」という意味。1マナのクリーチャーはタフネスが1だったりして、高コストのものと比べると、そりゃあちっぽけである。ただ、それらの重いカードが戦場に出てくるまでの間、ウィニーたちは先に出てきて何度も攻撃することができる。これは重いカードには真似できない、小さき者たちの特権だ。

 1マナクリーチャーをズラリと揃え、デッキに採用するのは重くても3マナ以下のクリーチャーに限定し、デッキ内の土地の枚数を最小限に切り詰める。とにかく1ターン目からノンストップでクリーチャーを展開し、それらを相手の本陣に向けて突撃させてライフを攻めて攻めて攻めまくる――そんなデッキをウィニーと呼んだわけだ。

 で、白ウィニー。これがなぜ「どんなことがあっても生き延びる」と言われたのかというと、こう言われた当時の基本セットには《白騎士》《ハルマゲドン》といった白ウィニーの根幹を成すパーツが常に収録されており、また各セットにおいて必ず白の1~2マナの優秀なクリーチャーの姿を見ることができたからだ。どれだけスタンダード環境が変遷しようとも、白ウィニーの系譜は途絶えることなくトーナメントシーンに存在感を示し続けるだろう、と考えられていたわけ。実際に、かなりの期間は白ウィニーが定番デッキのひとつとして、手を替え品を替え生き残り続けていた。

 しかし近年、マジックは白ウィニーが全盛を極めた1990年代に比べると、多色化が容易になった。ほとんどのセットでそれを促す土地が用意され、また2~3マナ程度のコストが軽い多色のクリーチャーらも多く見られるようになり、単色でデッキを組むよりもそういったカードを用いた多色のアグロデッキを使う方が一般的になっていった。純粋な白ウィニーが生き延び続けることはなかったかもしれないが、その姿勢は各種多色のアグロデッキに引き継がれたと見ることができるだろう。

 ……とか考えていたら、たまにポッと純然たる白ウィニーが飛び出してくる。これだからヤツらは不滅の存在と言われるのかもしれない。今日は2021年に出現した白ウィニーの姿を見ていただこう。

dafore - 「白ウィニー」
スタンダード (2021年1月31日、『エルドレインの王権』~『カルドハイム』)[MO] [ARENA]
18 《平地
3 《アーデンベイル城
-土地(21)-

4 《フェアリーの導母
4 《巨人落とし
4 《堕ちたる者の案内者
4 《尊い騎士
4 《クラリオンのスピリット
4 《歴戦の神聖刃
1 《光輝王の野心家
4 《石とぐろの海蛇
-クリーチャー(29)-
4 《栄光の頌歌
2 《スカイクレイブの大鎚
4 《バスリ・ケト
-呪文(10)-
3 《無私の救助犬
4 《静寂をもたらすもの
3 《スカイクレイブの亡霊
4 《ガラスの棺
1 《スカイクレイブの大鎚
-サイドボード(15)-
MTG Arena Zone より引用)

 

 白ウィニーが成立する前提条件は大きく2つ。第一に、クリーチャーがいなくては話にならない。基準となるのは《サバンナ・ライオン》クラスが複数種類いるかどうか。1マナでパワー2のライオン級であれば、現環境にはさらにメリット能力を持ったものがいるから、時代は流れたもんだなぁと。

 中でも『カルドハイム』からの新入り《堕ちたる者の案内者》は、パワーが2あって単騎の打点も1マナなら十分なのに加えて、誇示能力で1/1トークンを生成してカード1枚で複数体のクリーチャーとして働いてくれるというすごいヤツ。

 思い切って手札を全部吐き出したところに《ドゥームスカール》などで全滅、となると悲しいが、かといってクリーチャーを並べなくては相手にプレッシャーはかけられない。そんなジレンマを解決してくれる、1マナのエース格を担える期待がかかる。

 同様に頭数を揃えることを後押しするのが《クラリオンのスピリット》。こちらはむしろ、相手に盤面を掃除された際の立て直しに大いに貢献するだろう。

 上述のクリーチャーたちは、白ウィニーの第二の条件との相性もすこぶる良い。それはクリーチャー強化だ。小粒のクリーチャーを並べ、それらをまとめて強化することができれば、たとえ+1/+1修整であっても大きく打点を向上させる。

 そういった全体強化の中でも、歴史ある《栄光の頌歌》が現在のスタンダードに帰ってきている。

 これで全員まとめて強化し、たとえ数体が討ち取られようとも強引に攻撃して相手のライフを削り取るのだ。

 また、複数体まとめて全体強化するカードのみでなく、単体のクリーチャーをサイズアップさせるカードも充実している。毎ターン+1/+1カウンターを置く《光輝王の野心家》、サイズアップだけでなく飛行と先制攻撃でダメージをねじ込む《スカイクレイブの大鎚》、そしてプレインズウォーカーとして戦場に残る《バスリ・ケト》!

 いずれも既存のカードだが、『カルドハイム』の新人ウィニーたちを獲得したことで、より輝きを増すことになるかもしれない。

 白ウィニーの体制は整った。多色化が主流とは言え、ほぼ《平地》のみでマナ基板が構成され色マナトラブルの心配がない単色デッキの良さは失われてはいない。ちょっとつまずいた相手に対して雪崩れ込み、一気に詰みへと持って行くのが白ウィニーのお家芸。土地をタップインしたりとゆっくりスタートしてくる相手には、容赦なく襲いかかれ!

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