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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ハンマー・タイム:ネタと思いきやどっこいガチかも(モダン)
世界を変えた発明の数々が、構想段階では世間から笑いものにされたように、新しいものが端から真剣に受け止めてもらえるとは限らない。ジョークと思って聞き流していたことがこの上なくシリアスな内容だったということも度々ある。笑い種のようなことでも馬鹿にせずに真剣に向き合えば大きな発見があるものだ。
マジックにおいても例外ではない。頂点を取ったコンボデッキの中には、作られた当初はネタデッキ扱いされていたものが少なくない。デッキが強いか否かは実際に使ってみないと分からないのだ。一見無茶苦茶、支離滅裂に見えるものでも手に取ってみれば、何かしらの可能性を見いだせるかもしれない。使ってみようぜ、ネタデッキ。
というわけで今日のデッキはモダンから、初出時はそのルックスからネタデッキかと思われていたが、時が経ちリストが洗練されたことですっかり強力なデッキの1つとして躍り出た逸品を紹介しよう。
当コラムでも昨年に取り上げ、その時のリストはインパクトにあふれるものだったのだが、半年以上経過してかなりシャープに仕上がっている。ネタじゃなかったぞ、「ハンマー・タイム/Hammer Time」。
5 《冠雪の平地》 1 《神無き祭殿》 4 《溢れかえる岸辺》 2 《吹きさらしの荒野》 4 《無声開拓地》 4 《墨蛾の生息地》 -土地(20)- 4 《羽ばたき飛行機械》 3 《メムナイト》 4 《ルーンの与え手》 4 《純鋼の聖騎士》 4 《石鍛冶の神秘家》 1 《コーの装具役》 -クリーチャー(20)- |
4 《ミシュラのガラクタ》 4 《シガルダの助け》 4 《鋼打ちの贈り物》 3 《バネ葉の太鼓》 4 《巨像の鎚》 1 《影槍》 -呪文(20)- |
1 《夢の巣のルールス》
-相棒(1)- 4 《オーリオックのチャンピオン》 2 《レオニンの遺物囲い》 4 《思考囲い》 2 《致命的な一押し》 2 《虚無の呪文爆弾》 -サイドボード(14)- |
ハンマーのお時間というデッキ名の通り、主役は《巨像の鎚》。
{1}とコストは激軽ながら、装備クリーチャーに与える修整は+10/+10と巨像の名にふさわしいぶっ壊れっぷり。しかしながらその装備コストもまた巨像級、{8}はそう簡単に支払えるものではない。
そこで白や赤にある装備品に関するカードを用いてこのコストを踏み倒し、最序盤からとんでもないサイズのクリーチャーを降臨させて殴り勝とうというコンボ要素の強いビートダウンデッキだ。
以前は白赤のデッキを紹介したが、今回はそこから進化した白単にサイド後《思考囲い》などのカードを使えるように黒の要素を足したものだ。赤の《磁力窃盗》は見た目のインパクトが異常に強いためネタデッキに見えたものだが、白単にまとめ上げるとなんともガチ感が高まる。
白の装備品サポートは手厚い。まず鎚を手に入れるための《石鍛冶の神秘家》と《鋼打ちの贈り物》。これらでライブラリーから手札に持ってきてスタートライン。
そこから装備コストを踏み倒すには……
と3つのアプローチ。これだけあればいずれかを引けるだろうという算段である。白単色でも十分運用できるね。
そしてそれを装備したクリーチャーの攻撃を通すため、またそれに対して飛んでくる除去呪文を回避するために《ルーンの与え手》でプロテクションを付与してやろう。
このデッキの特徴のひとつは、コストが{0}のクリーチャーを多く採用している点。《羽ばたき飛行機械》と《メムナイト》だ。
1ターン目に《鋼打ちの贈り物》や《シガルダの助け》《ルーンの与え手》などを唱えつつ出せて、2ターン目にはハンマーを担いで攻撃にいけるという点を買われての採用である。これらはどちらもアーティファクトでもあるので、《純鋼の聖騎士》の装備コスト軽減能力も後押しする点が偉い。
さらに《バネ葉の太鼓》と絡めてマナを出せば、よりスピーディーに金属術の達成およびハンマーを担ぐ準備が行える。まるでかつての「親和」デッキのような進化を遂げている。《墨蛾の生息地》のパワーを上げて一撃必殺を狙っている点も似通っている。
また、デッキを構成する要素がすべて低コストでまとめられるので《夢の巣のルールス》を相棒に。金属術およびデッキ圧縮のための《ミシュラのガラクタ》も、ゲームがグダった時にルールスから再利用連打で手札を一気に潤してくれることだろう。マナ・コストが{0}のアーティファクト、モダンではそのステータスだけで価値があるのだ。
このデッキと相対した時に、決して忘れてはいけないことを最後に。それはハンマーの能力。《巨像の鎚》を装備しているクリーチャーは飛行を失う。これを忘れて、うっかり装備した《羽ばたき飛行機械》の攻撃をスルーしてしまうという事例を何度か耳にしたことがある。
冗談のようだが、本当の話。見慣れないカードはテキストを読んでも、身体が正しい判断ができないことってあるのだ(笑)。今後このデッキがモダンにおいて活躍を続ければそのようなことも常識となり、うっかりミスするプレイヤーもいなくなるのだろう。ネタがガチに置き換わる、その変革期に目にする現象だ。今後どこまでハンマーの快進撃が続くのか、新しい定番が生まれる様を見届けていきたい。
と、そうなると今度はネタ要素が強く感じられた《磁力窃盗》が対策カードとして使われる展開もあるのか? 《ティムールの激闘》と併せて使いたくなっちゃうなぁ。
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