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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
シンプルにしてディープ、バーンの道(パイオニア)
シンプルなものほど奥が深い。食でも芸術でも、どんなジャンルにでも当てはまることだ。
マジックだって例外にあらず。やることがシンプルなデッキはプレイングが簡単に見えるものだが、それすなわち勝つことが簡単というわけでは決してない。
マジックにおけるシンプルなデッキといえばアグロデッキがまず思い浮かぶことだろう。マナ・コストが軽いカードで序盤からライフを最優先で狙っていき、手数で勝負するデッキのことである。そういったデッキは結果的に「ブン回って引いてきたカードを順次プレイしていったら勝っていた」ということはあるだろうが、毎度毎度そんな幸運に恵まれるほど生易しいもんじゃない。
スピードに特化したためにやれることは少ない。その中で選択肢を間違えずに相手のライフを削り切るには、各種計算をしっかりと行う必要がある。このターンに与えられる最大ダメージは何点か、何ターンに渡ってどのような攻撃を続ければ相手のライフを0にできるか、その間に相手が何をしてきたらプランを変更するのか、自分のライブラリーに何が何枚残っていてどのようなカードを引く可能性があるのか……などなど。
特にこういった計算を求めてくるデッキが「バーン」だ。
《乱撃斬》などの赤が誇るプレイヤーへとダメージを与えられるインスタントやソーサリー、そして速攻を持つ軽量クリーチャー。これらを用いて速やかに勝つのを狙うのだが、ダメージを与える呪文・通称「火力」は使い捨てのカードである。また同時に、火力はプレイヤーだけでなくクリーチャーに対しても撃ち込むことが可能なものが多い。無計画にクリーチャーを除去しまくれば最後の詰めを失うことになり、逆に本体にばかり撃ち込んでクリーチャーをスルーしていると殴り合いで負けることもある。
また、バーンデッキにはカードを引いたりするアドバンテージ獲得源が少なく、ごく限られたもののみになる。与えられた手札を1枚も無駄にすることなく勝つ。そういった計画性が求められるのである。
序文が長くなってしまったが、今日は簡単に見えて極めるのは難しいバーンデッキを紹介しよう。まもなくグランプリ・名古屋2020#1を控えているパイオニアのものだ。
7 《山》 4 《聖なる鋳造所》 4 《感動的な眺望所》 4 《戦場の鍛冶場》 -土地(19)- 4 《僧院の速槍》 4 《損魂魔道士》 2 《ギトゥの溶岩走り》 4 《ヴィーアシーノの紅蓮術師》 4 《大歓楽の幻霊》 -クリーチャー(18)- |
4 《乱撃斬》 1 《ショック》 1 《巻き添え被害》 4 《ボロスの魔除け》 2 《稲妻の一撃》 4 《批判家刺殺》 4 《魔術師の稲妻》 3 《舞台照らし》 -呪文(23)- |
3 《サテュロスの火踊り》 3 《暴れ回るフェロキドン》 3 《岩への繋ぎ止め》 3 《安らかなる眠り》 3 《灼熱の血》 -サイドボード(15)- |
お手本ともいうべきリストである。軽い火力と軽いクリーチャーをカードプールから総動員して、土地の枚数は少なめ。土地は3枚もあれば回るし、残りライフ数点まで追い込んでから使い道のない土地をドローし続けることは避けたいからだ。
ただ、だからと言って土地1枚の手札をマリガンせずにキープしていいのかというと、そういうわけでもない。先にも述べたように、コストの軽いカードを使って手数で勝負するデッキである。1枚の土地でキープして以後土地を引けないターンが続くと、毎ターン1マナのカードを唱えるだけのデッキと化してしまう。
やれることを極限までシンプルにしているデッキなので、カード1枚あたりのカードパワーは低めだ。なので順調にマナを伸ばして3マナ、4マナのカードを出されたり、逆に手数で攻められると、バーンというデッキはどうしようもなくなってしまうのだ。もちろんすべての状況で土地1枚の手札をキープしてはいけないというわけではなく、1マナクリーチャーと《舞台照らし》でなんとかなったりもする。ただ、ならなかったりもする(笑)。
プレイに関しては何度も言うようにシンプルにしてディープだ。《僧院の速槍》《損魂魔道士》など果敢持ちがいるので、その誘発を計算に入れながらダメージを計算してしっかりと詰めていきたい。
《大歓楽の幻霊》は軽いカードを連打する類のデッキに対して牙を剥く強烈な抑止力となってくれるが、自分にも被害が及ぶ点には要注意。《巻き添え被害》で処分してしまえることを忘れずに。
慎重に計算することも大事と言ってきたが、大胆にぶっ放さないと勝てないデッキでもある。そのバランスを身に着けるには練習あるのみだ。勝っても負けても早いデッキなので、1ゲームが短い。すなわちたっぷり練習できるので、この強みを活かさない手はない。
ほぼ赤単の構成だが、メインでは《ボロスの魔除け》のためだけに白が足してある。
この2マナ4点という効率に優れた火力には、色を足すだけの価値がある。《感動的な眺望所》などの土地も強くて無理なく足せるね。
また、白を足したおかげでサイドボードに確定除去である《岩への繋ぎ止め》を採用可能というのは大きなメリットである。
これで相手のクリーチャーを排除して一方的に殴れる状況に持ち込むか、あるいは殴り合いは諦めてこれで除去して火力を投げ続けるプランを採るか。もちろん、これをサイドから入れるということは何か他のカードと入れ替えるということである。せっかく殴り合いで勝つためのカードを入れたのにクリーチャーがいなければ意味がないし、その逆もまた然り。強いカードではあるが、どう用いるか考えながらサイドインするようにしよう。
墓地対策の《安らかなる眠り》も白を足したことの特権であるが、これもまた同じで中途半端な入れ替えを行うとデッキの中身がちぐはぐになって、相手に対抗する術があるのは良いが勝つための手段が手薄になってしまった、なんて事態に陥ってしまう。
サイドボーディングもしっかりと考えて行わなければならない、それがバーンデッキだ。
長々と「簡単に見えて難しい」ということを書いてきたが、まあそれでも簡単に勝ててしまうデッキであることも事実だ。ガシガシ攻めて攻めて攻め切った時の快感はこのデッキならではのものでもあり、初心者にもオススメしやすいデッキでもある。はじめはなんとなくプレイして、勝てなかった時にどうすれば良かったのかを考えていけば、自然とレベルアップしているはず!
さて、パイオニアの赤いデッキを紹介したが、明日もまた同じくパイオニアの赤いデッキを紹介すると予告しておこう。ただ、このバーンデッキとはアプローチが大きく異なるものだ。火力以外の赤の特性を全面的に打ち出したデッキである。お楽しみに!
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