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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
My Fires 2019(スタンダード)
ズヴィ・モーショヴィッツ/Zvi Mowshowitzというプレイヤーを知っているかな。
若い人・最近マジックを始めた方は知らないことが多いだろう。主に1990年代後半から2000年代前半にかけて競技シーンで活躍したプレイヤーだ。ミシックチャンピオンシップの前身であるプロツアーにてトップ8以上に複数入賞し優勝も果たしており、偉大なる功績と競技シーンへの影響力が高かった人物が選ばれるマジック・プロツアー殿堂にもその名を刻んでいる、伝説的な人物だ。
彼は当初、他のプレイヤーには真似のできない特殊なデッキを操る鬼才として知られていたが、上記のような華々しい成績を残すにつれ、そのマジック理論が正しいものであることを世間に知らしめた。彼が提唱した理論は現在では一般的な常識になっているものもある。
最も有名なデッキとその解説記事が「マイ・ファイアーズ/My Fires」だ。当時大流行していた《ヤヴィマヤの火》を核としたビートダウンデッキ「ファイアーズ」。主役である3マナのエンチャントを2ターン目にプレイすることを主眼に置き、《ラノワールのエルフ》と《極楽鳥》の1マナ・マナクリーチャー8枚体制を推奨。そして、これらのおかげで2ターン目に2マナのクリーチャーをプレイすることはないので不要である、とすっぱり断じたのである。今となっては当たり前のことかもしれないが、当時中学生だった僕はその和訳を読んだ時には衝撃を受けたものである。その理論をちゃんと自分で結果を残すことで、説得力のあるものにしているのがまたカッコイイ。
古くからのマジックファンには憧れの人物であるズヴィだが、嬉しいことに今もまだマジックをプレイしている。しかもストリーマー限定の賞金制イベント・Twitch Rivalsにて初日に6勝0敗の成績を残している。さらに、使っているデッキは現代の「ファイアーズ」だ。ズヴィがファイアーズを使う、こんなにテンションの上がる光景があるだろうか!
というわけで、今日は11月19日の禁止改定を経た新たなスタンダード環境における有力デッキを紹介しよう!
2 《島》 2 《山》 1 《平地》 4 《蒸気孔》 3 《天啓の神殿》 4 《神聖なる泉》 2 《聖なる鋳造所》 3 《凱旋の神殿》 3 《ヴァントレス城》 3 《寓話の小道》 -土地(27)- 3 《砕骨の巨人》 4 《予見のスフィンクス》 4 《炎の騎兵》 4 《風の騎兵》 1 《帰還した王、ケンリス》 -クリーチャー(16)- |
3 《可能性の揺らぎ》 4 《轟音のクラリオン》 4 《創案の火》 1 《抽象からの抽出》 1 《時の一掃》 4 《時を解す者、テフェリー》 -呪文(17)- |
4 《軍勢の戦親分》 2 《霊気の疾風》 2 《敬虔な命令》 2 《魔術遠眼鏡》 4 《神秘の論争》 1 《陽光の輝き》 -サイドボード(15)- |
現代のファイアーズこと《創案の火》を用いた、白青赤の3色デッキ「ジェスカイ・ファイアーズ」だ!
相手のターンに呪文を唱えられなくなり、また自分のターンでも2回しか唱えられなくなるというデメリットを背負う代わりに、自分がコントロールしている土地の枚数以下の点数で見たマナ・コストの呪文がタダで唱えられるという……要するにマナを支払わずに何でもできるようになるスーパーエンチャントだ。
本来なら5ターン目には5マナの呪文を1回唱えて終わりだが、《創案の火》を置いた状態で迎えれば2回唱えられる。これは非常に強力なマナ加速で、この5ターン目の畳みかけにより対戦相手と大きく差をつけようというのがデッキの狙いだ。
《創案の火》を設置するまでは、《可能性の揺らぎ》《抽象からの抽出》でこれを探しに行きつつ、各種除去呪文で対戦相手に殴られないようにしのぐことになる。
《創案の火》を置いたターンもそのまま《轟音のクラリオン》を唱えたりして盤面をクリアな状態に保てれば完璧だ。そういう意味ではこのデッキはコントロールであるとも言える。
《創案の火》を置いた状態で、勝負の5ターン目を迎えれば……5枚目の土地を置いて、5マナ以下の呪文を2連打して圧殺を狙おう。その決め手は2枚の騎兵だ。
《風の騎兵》は5/5飛行で、かつ戦場に出れば3枚引いて2枚戻す、アドバンテージの化身だ。これを唱えて要らないカードをライブラリーに戻しつつ、シャッフルする手段を併用することで無駄なドローを避けられる。《寓話の小道》と上手く組み合わせたいね。
この騎兵のドローも使って探したいのが《炎の騎兵》。こいつも手札を捨ててその分ドローする能力で手札の内容を入れ替えてくれるし、そして重要なのが起動型能力! マナを支払うことで自軍の全クリーチャーのパワーを上昇させつつ速攻を与える。《創案の火》があれば呪文を唱えるために土地自体は必要だが、そこから出るマナは余っている。これを《炎の騎兵》の能力に注いで速攻を与えて……ガツン! 5ターン目にこれらの騎兵2体を走らせていきなり10点以上のダメージを与えよう。この重たい攻撃を、5ターン目以降毎ターン繰り出して勝負アリの瞬間まで持っていくのだ。
速攻を与える枠として《帰還した王、ケンリス》も採用されている。
青マナでドローもできるのが強く、この能力と《ヴァントレス城》で余ったマナを有効活用し、騎兵を探しに行くことが可能となっている。
このデッキは『エルドレインの王権』リリース直後にも紹介させてもらった。あの初登場時のリストから、ズヴィが進化させた部分。それが《予見のスフィンクス》の採用だ。
このカード、ゲーム開始時に手札にあれば公開し、自分の最初のターンのアップキープに占術3が行えるというなかなかにニッチな能力を持った4マナ4/4飛行だ。このデッキは《創案の火》に依存しており、これが初手にあるかないかで動きは大きく変わってくる。さらにデッキの特性上、5ターン目までは滞りなく土地を置き続けたいのでその枚数も多い。これらの要素が組み合わさり、マリガンが難しいデッキでもある。
そこにこのスフィンクスである。占術3という値はとても大きい。《創案の火》か土地か、欲しいものが見つけられる可能性は高い。土地が十分にあって除去とスフィンクスがある手札などはキープしやすいね。とりあえず上から3枚が全部土地という状況を回避できるだけでも十分だ。4ターン目に火を設置してそのまま唱えることも可能で、壁役やそのまま殴りに行く役目もこなしつつ、毎ターンの占術1で騎兵や除去も見つける……まさしく、「ファイアーズ」デッキが求めていたカードだと言える。
Twitch Rivalsの他の参加者からも人気の高かった「ジェスカイ・ファイアーズ」。《王冠泥棒、オーコ》や《むかしむかし》が去った後のスタンダードでは有力デッキのひとつだ。コントロールから一転、突然の猛攻モードに切り替えて戦いたいならこのデッキがオススメだ!
……ところで、肝心のTwitch Rivals優勝デッキはなんだったのかって? それは次回、取り上げることにしよう!
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