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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

氷雪ブリンク(パウパー)

岩SHOW

 マジック用語の話をしよう。今日のお題は「ブリンク」だ。

 かつて《一瞬の瞬き》というカードが一世を風靡した。自分のクリーチャーをいったん追放してから戦場に戻す、という効果のインスタントである。一体それにどんな意味があるのか、初心者には少しわかりにくいカードかもしれない。

 例えば、自分のクリーチャーに《殺害》のような除去が飛んできた時にこれで一度追放してから戻すと、戻ってきたクリーチャーは追放される前のものとは別物としてカウントされる。《殺害》の対象になっていたクリーチャーはいなくなったので、この呪文は対象不適正となり打ち消されることとなり、結果クリーチャーを護ってやることができる。

 同様に、戦闘中に相手のクリーチャーが《巨大化》などで強化されて一方的に倒される際に逃がしたり、《平和な心》が貼り付けられたクリーチャーを出し直して戦闘に参加できるようにしたり。使い道はいくらでもあるわけだ。

 この手のカードは《ちらつき》以降白にたびたび与えられ、その中でも特に強かった《一瞬の瞬き》の英名から、このように追放してから戻す呪文や能力を「ブリンク」と呼ぶようになった。

 特に強いのは、クリーチャーが戦場に出た際に誘発する能力をこれで使いまわすという手法。何度も何度も能力を誘発させ、アドバンテージを稼ぐことを狙ったクリーチャーデッキは使っていて大変に楽しい。

 このブリンク界に実は新入りが加入しており、一部のフォーマットでは話題となっている。《儚い存在》だ。

 1マナとコストが軽いため使いやすく、また「反復」がついているのでカード1枚で2度ブリンクが可能だ。

 『モダンホライゾン』のコモンであるこのカードは、コモン限定構築戦・パウパーに新しい風をもたらした。同期のコモン《アーカムの天測儀》もセットになって、パウパーにおける新たな強力デッキを生み出したぞ!

Cracudo - 「氷雪ブリンク」
Magic Online Pauper Challenge #11958538 優勝 / パウパー (2019年9月1日)[MO] [ARENA]
9 《冠雪の島
2 《冠雪の山
2 《冠雪の平地
4 《灰のやせ地
2 《進化する未開地
-土地(19)-

4 《コーの空漁師
2 《呪文づまりのスプライト
3 《古術師
4 《熟考漂い
-クリーチャー(13)-
4 《アーカムの天測儀
4 《雪崩し
2 《稲妻
4 《定業
3 《渦まく知識
2 《払拭
3 《儚い存在
4 《対抗呪文
1 《未達への旅
1 《ムラーサの胎動
-呪文(28)-
2 《孤独な宣教師
2 《軍旗の旗手
2 《青霊破
1 《赤霊破
2 《紅蓮破
1 《電謀
1 《虚無の呪文爆弾
2 《未達への旅
2 《痕跡消し
-サイドボード(15)-
 

 《アーカムの天測儀》と氷雪基本土地でカウントを稼いで《雪崩し》のダメージを上昇させ、これでクリーチャーを捌く。

 その他の除去と《対抗呪文》などの打ち消しと併せて相手の攻勢を食い止めるコントロール・デッキだ。そこに《儚い存在》とクリーチャーの能力再利用メカニズムを仕込み、アドバンテージの差をつけて勝利する形に仕上がっている。

 このデッキで《儚い存在》が使いまわすのは……まず《呪文づまりのスプライト》。

 1マナの呪文が多数使われるパウパーにおいて、これを出し入れできるのはゲームを支配する強さだと言っても過言ではない。これは《コーの空漁師》で戻して構える直すという動きもなかなかに強力だ。

 そして、アドバンテージ部門。《古術師》は《雪崩し》などを使いまわせて、かつ《儚い存在》も拾える点が超優秀。

 これらが組み合わさると毎ターングルグルとこのウィザードを出し入れさせて、《対抗呪文》などで相手を完封できる。

 さらに手札を増やすという点では《熟考漂い》も強い!

 これは5マナを真面目に支払って2枚ドローしつつ2/2飛行として戦場に出しても良いが、「想起」能力で3マナで唱えるととんでもないことになる。2枚ドローと同時にこれを生け贄に捧げる想起のデメリットが誘発するのだが、それを解決する前に《儚い存在》で追放して出し直してしまえば……《熟考漂い》を失うことなく2枚ドローからの2枚ドロー! さらに漂いが生きて次のターンがやってくれば「反復」した《儚い存在》でさらに2枚! カード2枚と4マナで、実に6枚もドローできてしまうのだ。コモン2枚でこんなエクストリームなことができてしまうなんて! パウパーというフォーマット、なかなかやんちゃでしょ。

 青白を中心に、《灰のやせ地》《アーカムの天測儀》のおかげで赤を足すのも楽勝。緑に至っては《ムラーサの胎動》1枚のみだが、アーカムの色マナ変換に完全に頼った形になっている。そこまでして採用する価値のある1枚、ということだ。

 6点回復は赤単などのデッキに対してカード2枚分を無効化しているようなもの。それに加えて序盤に想起で使い捨てた《熟考漂い》を拾ったりできるのは最高ってわけ。

 《アーカムの天測儀》を確実に手に入れるために《粗石の魔道士》を採用しているリストもある。このテクニカルさ、試してみたくなったんじゃないかな?

 パウパーでは割と古いカードも使わているが、コモンなので手に入りやすいのでデッキを組むハードルはそこまで高くないのも嬉しいところ。特にこのリストだと『モダンホライゾン』で多くのカードが集まるし、再録されているものも多いのがありがたいね。

 《熟考漂い》×《儚い存在》は決まればゲームに勝てるレベルのコンボだ。あふれるアドバンテージを味わってほしいね!

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