READING

戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

正真正銘のドラゴン・ストンピィ(レガシー)

岩SHOW

 形骸化。マジックにおいてはデッキ名で見られることのある現象だ。

 最も有名なのはモダンの「親和」デッキ。元々は『ミラディン』で登場した《金属ガエル》《マイアの処罰者》《物読み》などの「親和(アーティファクト)」能力を持ったカードをコスト軽減して使用するために、《大焼炉》などのアーティファクト・土地や、その他低コストのアーティファクトを序盤からばら撒き、初速にすべてをかけたアーティファクト山盛りデッキのことである。《電結の荒廃者》などが参入した『ダークスティール』時のスタンダードで全盛を極めた。

 このころの反省を活かして、モダンはフォーマット設立時から《ダークスティールの城塞》以外のアーティファクト・土地を禁止にした。しかしそれでも、のちの時代に生まれた《オパールのモックス》《バネ葉の太鼓》《メムナイト》などを1ターン目にばらまいて《頭蓋囲い》や《刻まれた勇者》、そして変わらぬ強さの《電結の荒廃者》を使うアーティファクト主体のビートダウンは強く、そのスピード感から「親和」と呼ばれ続けている……親和能力持ちがデッキに0枚でも! これぞまさしく形骸化。

 レガシーにおいても同様に、入っていないカードがデッキ名になっているものがある。「ドラゴン・ストンピィ」だ。

 ストンピィとは《裏切り者の都》《古えの墳墓》などの2マナ土地や0マナアーティファクトを用いて1ターン目から《虚空の杯》や《三なる宝球》を設置、レガシーの大多数にあたる低コストに寄せたデッキの行動を阻害し、こちらは4マナ以上のパーマネントで勝利へと向かうというデッキの相称だ。

 「ドラゴン・ストンピィ」はレガシー黎明期に活躍した赤いストンピィ・デッキのことで、《ラクドスの地獄ドラゴン》を用いることからこう呼ばれていた。ドラゴンに寄せた部族デッキというわけではない。赤なので《血染めの月》で対戦相手のデュアルランドをはじめとした多色土地を封じることができ、その隙に地獄ドラゴンの二段攻撃で一気に勝負を決めるのだ。

 今よりもクリーチャーが弱かった時代の話である。段々とクリーチャーやプレインズウォーカーが強くなることで地獄ドラゴンもお役御免となり、リストから消えることとなった。このデッキは「赤単プリズン」や「フリー・ウィン・レッド」などに名前を変えるのだが、攻撃的な仕様のものは未だに「ドラゴン・ストンピィ」としてデッキリスト掲載サイトに載っていたりする。ドラゴン入ってないやん!といつもツッコんでいる。ドラゴンが入ったリストが見たいんや……。

 こんな気持ちに応えてくれる、ドラゴン魂にあふれた正真正銘の「ドラゴン・ストンピィ」が、エターナル・ウィークエンド・アジア2019のレガシー選手権にてトップ32入賞を果たしていた! 参加者約640名の大規模トーナメントで、ドラゴンがストンプした! それだけでテンションは否応なしに上がるってもんだ。眼福、ありがたや。

 ドラゴン大好きサルカン・ヴォルも拍手で賞賛しそうな、そのリストをとくと見よ!

Ogawa, Yusuke - 「ドラゴン・ストンピィ」
エターナル・ウィークエンド・アジア2019 レガシー選手権 29位 / レガシー (2019年8月17~18日)[MO] [ARENA]
5 《
5 《冠雪の山
4 《古えの墳墓
4 《裏切り者の都
2 《魂の洞窟
-土地(20)-

4 《ゴブリンの熟練扇動者
4 《猿人の指導霊
4 《雷破の執政
3 《領空のヘルカイト
3 《嵐の息吹のドラゴン
1 《栄光をもたらすもの
-クリーチャー(19)-
3 《金属モックス
1 《削剥
4 《血染めの月
2 《三なる宝球
2 《焦熱の合流点
4 《虚空の杯
3 《反逆の先導者、チャンドラ
2 《目覚めた猛火、チャンドラ
-呪文(21)-
2 《ゴブリンのクレーター掘り
1 《紅蓮破
2 《魔術遠眼鏡
1 《削剥
1 《三なる宝球
1 《転倒の磁石
1 《焦熱の合流点
2 《死亡 // 退場
4 《虚空の力線
-サイドボード(15)-
 

 2マナ土地に《金属モックス》《猿人の指導霊》で加速して開幕から《虚空の杯》《三なる宝球》《血染めの月》でハメる、ストンピィの基本戦略を踏襲しつつ……《魂の洞窟》でドラゴンを指定し、打ち消されない4マナ以上のドラゴンを叩きつけ続けてパワーでゴリ押す!

 そのドラゴンのチョイスがまたシブい。4マナ4/4飛行とバランスの良いスペックで、ドラゴンが呪文や能力の対象になるたびに3点ダメージを飛ばす《雷破の執政》。

 除去されなければ殴り続け、除去されても最低限噛みつくというドラゴンの獰猛さが詰まった、このデッキのエース格である。他のドラゴンが対象になってもダメージが飛ぶ点が良いね。

 同じ4マナ域の《領空のヘルカイト》は『統率者(2017年版)』のカードで、それゆえに初めて見たという人も少なくないだろう。

 4マナにして6/5飛行・速攻とスペックは化け物中のバケモノ。ただ、多人数戦用に設定されたその能力により、攻撃は2ターンに1回しか行えない。それでも出して殴って6点、1回おやすみ挟んでまた6点と、3ターンで12点与えれば勝負は決することだろう。

 5マナ域の連中はサイズは4/4と劣るが、飛行・速攻に加えてさらに能力が強い。《嵐の息吹のドラゴン》はプロテクション(白)のため、レガシーを代表する除去《剣を鍬に》を寄せ付けない。《虚空の杯》X=1でこれを止められなくても、ナチュラルに効かないという点で安心できる。怪物化することは滅多にないだろうが、そういう選択肢もあるのは良いことだ。

 《栄光をもたらすもの》は2年ほど前のスタンダードで暴れまくっていた懐かしい1枚。《殴打頭蓋》などで殴り合いを挑んでくる相手にはこれの4点ダメージを浴びせかけて、どちらが頂点に君臨する生物なのか教えてあげよう。

 ドラゴンのみならず《ゴブリンの熟練扇動者》やチャンドラたちといった多角的な攻めが可能な点もこのデッキの強みだ。特に新戦力の《目覚めた猛火、チャンドラ》は待望の1枚というところ。

 除去としての性能も高く、紋章というどうやっても対処できない方法で継続的にダメージを与えてくれる凄いヤツ……これに加えて「打ち消されない」という一文が嬉しい。「ドラゴン・ストンピィ」は開幕から手札を浪費してパワーカードを叩きつけるデッキだ。これを対戦相手も指をくわえて見ているわけもなく、あの手この手で全力で抗ってくる。お互いの手札が噛み合った時には、ゲームがかなりグダるもの。トップの叩きつけ合いになった際に《意志の力》《否定の力》で打ち消されない《目覚めた猛火、チャンドラ》は何も考えずにオラァと唱えられるとっても素敵なレディなのだ。《魂の洞窟》経由のドラゴンと彼女で、青いデッキを否定してやろう。

 真夏にはもってこいの激アツな「ドラゴン・ストンピィ」。そこから感じたのはドラゴンへの確かな愛。まさか《領空のヘルカイト》を使うなんて、これは本物のマニアじゃなきゃ読めないよ! 改めて、レガシーとは自己表現の場でもあるということがわかった。良い意味でのなんでもありを、君も体感してほしい。Let’s play Legacy!!

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索