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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
グリクシス・デルバー(レガシー)
人はやはり、本来できないことをやるのが好きな生き物である。
平日のど真ん中に公園の芝生で寝っ転がりたい、1食で1日の摂取すべきカロリーを越えてしまいそうなラーメンを夜中に食べたい(スケールが低くて申し訳ない)、普段抑えられていることを「やっていいよ」と許してもらえたら……
マジックでは一度使ったインスタントとソーサリーとはお別れである。しかし墓地に置かれたそれを「唱えちゃっていいよ」と言われたら、嬉々として毎ターン唱えてしまうだろう。そんなわけで《戦慄衆の秘儀術師》は愛されているのである。
前々回、前回ときて、本日はこの秘儀術師が文字通りムチャクチャするデッキを紹介しよう。
ここまではスタンダードのデッキを紹介してきたが、今日は一足飛んでレガシーのものだ。レガシーというフォーマット、普段プレイしない人はどのような印象を持っているだろうか? やれ瞬殺コンボだ、世紀末フォーマットだと、そういうイメージは未だに強くありそうだが、実際のところはそうでもなかったりする。
スタンダードと最も違うのは、とにかくコストの軽いカードを用いたデッキが大多数である点かな。1マナあれば何でもできると言わんばかりに、マジック歴代の低コスト呪文を寄せ集めたデッキがひしめきあっている。1マナで唱えられるドロー呪文がこれまた優秀なものばかりで、それらのおかげで土地を切り詰めてとにかく手数で勝負するという構築が可能だからだろう。
ということは、秘儀術師で使いまわす呪文にも一切困らないということである。それじゃあリストを見てもらうとしよう。戦慄衆という異名は伊達じゃない、パワー1にして毎ターン対戦相手を震え上がらせる驚異のアタッカーがここに躍動する!
4 《Underground Sea》 3 《Volcanic Island》 4 《汚染された三角州》 2 《沸騰する小湖》 2 《血染めのぬかるみ》 4 《不毛の大地》 -土地(19)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《戦慄衆の秘儀術師》 2 《真の名の宿敵》 2 《グルマグのアンコウ》 -クリーチャー(12)- |
4 《渦まく知識》 4 《思案》 2 《定業》 4 《稲妻》 1 《稲妻の連鎖》 3 《思考囲い》 1 《コジレックの審問》 2 《呪文貫き》 4 《目くらまし》 4 《意志の力》 -呪文(29)- |
3 《外科的摘出》 3 《赤霊破》 1 《青霊破》 1 《電謀》 1 《狼狽の嵐》 2 《削剥》 1 《リリアナの勝利》 1 《コラガンの命令》 1 《最後の望み、リリアナ》 1 《覆いを割く者、ナーセット》 -サイドボード(15)- |
《渦まく知識》《思案》《定業》。土地を19と少ない枚数に抑えたデッキではこれらを1ターン目に唱えて2枚目の土地を探しに行きたいところ。
だが同時に、ここぞという勝負所で特定のカードにたどり着くための手段でもある。このジレンマも、秘儀術師がいれば問題なし。とりあえず1ターン目に唱えて手札を整え、2ターン目に秘儀術師、3ターン目にもう1回手札を整え次なる攻め手を……これだけでもう、強いね(笑)。
《思案》などでカードを得てライブラリーを操作して、というデッキの代表格が《秘密を掘り下げる者》を用いる「デルバー」と呼ばれるデッキ。
ライブラリーの上にインスタントかソーサリーを置いて、それを公開して《昆虫の逸脱者》に変身。3/2飛行で空から殴りつつ相手の行動は極力妨害して勝つという攻めのデッキである。今日紹介するデッキは青黒赤の3色、「グリクシス・デルバー」と呼ばれるデッキに《戦慄衆の秘儀術師》を加えたものだ。
ドロー以外にも1マナの呪文はある。《稲妻》でクリーチャーを捌きつつ攻撃時に墓地から唱えて今度は相手本体に、という動きだけでもメチャ強だ。この動きを促すために5枚目の《稲妻》として《稲妻の連鎖》も採用されているくらいだ(相手の秘儀術師を除去する手段を増やしたいというのもある)。
そしてこれも連発されてはかなわないというのが手札破壊! 《思考囲い》に《コジレックの審問》も1マナで、秘儀術師パンチで戦闘中に飛んでくる。とりあえず軽いカード、秘儀術師やその他のクリーチャーにとって害をなすカードを捨てさせて、心置きなく殴ってから重たい本命カードを捨てさせてやるというのは大変に心地よいゲーム展開だろう。
これまでは《瞬唱の魔道士》がこの役を担っていたわけだが、1マナの呪文を再利用するのに計3マナ必要だった。秘儀術師は戦場に出れば仕事をする瞬唱と違い、除去されれば使いまわしはできないが、2ターン目に先置きしてプレッシャーをかけることができる、生きてさえいれば2枚以上使いまわして莫大なアドバンテージを生み出せるという点が前任者と異なる。このような攻めのデッキには秘儀術師が向いていると言えるが、速効性では瞬唱が勝っているというのもまた事実である。
《昆虫の逸脱者》と《戦慄衆の秘儀術師》で殴って、《目くらまし》《意志の力》《呪文貫き》でら打ち消しと手札破壊で行動を阻害、そのまま押し切るというのが理想のゲームプランだが、そうもいかないこともある。そのために《真の名の宿敵》と《グルマグのアンコウ》も控えている。
宿敵は3マナでパワー3と打点は控えめだが、単体除去を受け付けずブロックされないため最後の数点を削りきるにはこの上ない適任者。逸脱者で空から殴っている時に地上の守りを不死身のボディで一身に担ってくれる姿にも惚れてしまう。
アンコウは墓地を食って唱える探査呪文なので、墓地を利用していく秘儀術師との相性は良くはない。が、秘儀術師で殴り続けられているのであればそれはそのまま勝てるだろうし、秘儀術師を出して即除去された時には墓地が余ってしまうだろう。お守り的な存在だね。デッキに入っていれば《思案》などで探しに行けるし、いらない時には《渦まく知識》でライブラリーに戻して《汚染された三角州》らを起動してシャッフルしてしまえば良い。やっぱりこれらの1マナ呪文を再利用できる秘儀術師はバケモンだなと、書いていて再度実感。
青赤2色タイプと併せて、今後この手の秘儀術師デルバーデッキは多数見ることになるだろう。レガシーと言えば、この夏横浜にて開催される、エターナル・ウィークエンド・アジア2019のレガシー部門は事前受付を開始してすぐさま600名の定員に達したようだ。日本のレガシーの勢いはまだまだアツいね! このトーナメントでも《戦慄衆の秘儀術師》は存在感を発揮することだろう!
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