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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

不死鳥復活! イゼット・フェニックス(スタンダード)

岩SHOW

 「100%」ってのはどんなジャンルにおいても良いもんだ。簡単にはじき出せる数字でない、凄いことが起こったというのがよくわかる。100%は、マジックにおいてはそうそう見る数字ではない。どんなに相性が良いデッキと対戦しても、運の要素が絡むため100%という勝率は叩き出せない。またどんなに強力なデッキが誕生しても、それがトーナメントで100%の使用率を誇った、なんてのも見たことがない。

 このレアな「100%」が、記念すべき第1回ミシックチャンピオンシップにて正式な数字として公開された。それはメタゲーム・ブレイクダウンにて見ることができる。

 改めてメタゲームというものについて、ザックリと説明しておこう。例えばスタンダードにおいてAというデッキが強いとする。このデッキは多くのデッキを相手に有利に戦えるが、Bには相性が悪い。トーナメントに出るにあたって、Aが多いと読んでBを使うか、あるいはBに勝てないのでAが減って、Bに勝てるデッキを選択した方が良いのか。はたまた、同型とBに対してサイドボードを多く割いた新型のA’を作り上げるか……こういった、実際に席についてゲームを始める前からすでに始まっているプレイヤー同士の読み合い。それを一言でまとめたものがメタゲームである。

 この言葉が広まるにつれ、いつしかその意味も多様になり、環境に君臨する有力デッキをトップメタと呼んだり、特定のデッキを対策することをメタる、などと形容するようになったわけだ。メタゲーム・ブレイクダウンとは、実際のトーナメント参加者が選択したデッキの内訳はこうなっていて、そこからメタゲームを読み解く・正解の選択肢はなんだったのか答え合わせをする……そんな感じに楽しむ記事である。

 話は戻って、今回のメタゲーム・ブレイクダウンで存在感をアピールしたデッキについて。参加者全体の2割以上が使用した堂々のトップメタ、「スゥルタイ」……ではなく、わずかな7名のみが使用した「イゼット・フェニックス」だ。

 前環境ではかなり人気のデッキタイプだったが、『ラヴニカの献身』で登場した《プテラマンダー》に注目が集まった結果、《弧光のフェニックス》を用いない「イゼット・ドレイク」がイゼット(青赤)カラーの主流となった。このミシックチャンピオンシップでも30名が使用している。

 しかしながら、ミシックチャンピオンシップのような大規模トーナメントにおいては、使用者数よりも大事な項目がある。それは「2日目進出率」だ。初日を勝ち抜き、2日目に進出したプレイヤーの割合が多いデッキこそ、そのトーナメントにおいて正解により近い選択肢、勝ち組と呼ぶことができる。

 この「2日目進出率」において、「イゼット・フェニックス」は例の「100%」という数字を叩き出したのである。使用者がそもそも1人や2人であれば、100%になることはあるが、7名とも勝っているというのはこのデッキを選んだことが正しかったという証明になるのではないかな。

 事実、その7名の中から、決勝ラウンド進出者が現れている。前置きが随分長くなったが、そのリストを見てみよう!

Luis Scott-Vargas - 「イゼット・フェニックス」
ミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019 4位 / スタンダード (2019年2月22~24日)[MO] [ARENA]
8 《
4 《
4 《蒸気孔
4 《硫黄の滝
1 《血の墓所

-土地(21)-

4 《ゴブリンの電術師
4 《弧光のフェニックス
4 《弾けるドレイク

-クリーチャー(12)-
4 《選択
4 《ショック
4 《航路の作成
4 《溶岩コイル
4 《急進思想
2 《苦しめる声
1 《標の稲妻
2 《発見 // 発散
1 《幻惑の旋律
1 《イゼット副長、ラル

-呪文(27)-
1 《つぶやく神秘家
2 《パルン、ニヴ=ミゼット
1 《シヴの火
1 《呪文貫き
3 《否認
2 《魔術遠眼鏡
1 《軽蔑的な一撃
1 《標の稲妻
2 《幻惑の旋律
1 《イゼット副長、ラル

-サイドボード(15)-

 使用者はかの殿堂顕彰者ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargas、マジックプレイヤーの中でも屈指の人気と桁違いの実力を兼ね備えたヒーロー、通称LSVだ。ミシックチャンピオンシップの前身、プロツアーにおいて決勝ラウンド進出は計9回。今回で10回目、しかもプロツアー『ラヴニカのギルド』から2大会連続という……さらっととんでもないことを成し遂げている強豪の中の強豪だ。

 「イゼット・フェニックス」を選択したプレイヤーには彼が率いる世界トップクラスの実力者チームが含まれているため、そもそもプレイヤーが強いという点で2日目進出率が高かったというのもあるだろう(予選ラウンドは構築のみではなくドラフトも含むため、デッキが強いだけでは簡単に勝ち切れない)。ただ、そのメンバーがドレイクではなくフェニックスを選択した、という点は重要だ。

 《弧光のフェニックス》の強みは2つ。まずは爆発力。軽量のインスタントとソーサリーを大量に備え、そしてそれらのコストをさらに軽くする《ゴブリンの電術師》と組み合わせることで、早ければ3ターン目に複数体の《弧光のフェニックス》を並べて大ダメージを与えることが可能だ。中速~低速のデッキが態勢を整える前に勝負を決めることができ、前のめりな高速デッキとの速度勝負も狙える、という点は大変に魅力的である。

 もう1つの強みは継戦能力。墓地から戦場に戻る能力により、何度破壊されても瞬く間に再出撃させることが可能だ。追放除去にはさすがに抗えないが、いざとなれば追放される前に自分の《ショック》で焼くという形で対処もできる。ドレイクも除去に対しては《潜水》というアンサーを持っているが、これでは対象を取らない除去には対処はできない。

 この2つの強みが、多くの使用者を誇ることが予想されたデッキの1つ「エスパー・コントロール」には効果的だ。体制が整う前に押しきれて、《ケイヤの怒り》によるリセットも苦にしない。

 ネクサス系相手にもドレイクよりも一段階上の速度で勝負できる。白や青のアグロデッキも多いという形になったこのトーナメントにおいて、結果として秀でた存在となったのである。

 新環境になってすっかり鳴りを潜めていたフェニックスが、大舞台で結果を残したというのは不死鳥をモデルにしたカードに相応しく実に印象的だ。最初のミシックチャンピオンシップに彩りを添えてくれた。さあ、この結果を踏まえて、この3月にはグランプリ・京都2019が控えている。国内初のマジックフェストの一部という形にもなる同トーナメント、一体どのような熱戦が繰り広げられるのか? ワクワクが連鎖していく、これぞマジックの競技シーン!

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