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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ハイドロ・ゴルガリ(スタンダード)

岩SHOW

 新環境の始まりは、発売週末に各地で開催される大型イベントの結果を見てから!というスタイルでデッキを構築していた方も少なくないだろう。ただ最近は、オンラインで先行リリースが実施され、そこでカードパワーや強いデッキがかなり研究される傾向にある。たかが1週間、されど1週間あればマジックプレイヤーにとって研究を進めるのには十分な時間だ。

 『ラヴニカの献身』リリース後のMTGアリーナでのスタンダード環境を見ると、赤単やそれに準ずる速攻系のデッキが強いのはよくわかる。また、《運命のきずな》で延々と自ターンを繰り返す白青緑のコンボデッキ「バント・ネクサス(ターボフォグ)」もそれに並ぶ人気デッキである。これらのデッキは《舞台照らし》に《荒野の再生》と強化パーツを得たので納得の躍進である……が、同時にひとつの疑問が浮かぶ。

 これらのデッキが猛威を振るっているのはMTGアリーナにおけるランク戦だ。ランク戦は今のところ、メインのみの一本勝負である。赤い速攻デッキにコンボデッキといえば、どちらもサイド後に対策されやすいもの。果たして三本勝負で行われる通常のマジックではどうなるか?

 そういう意味でも、今回の発売週末、リアルの大会というのは注目すべきステージであった。さあ、700名近いプレイヤーが参加したトーナメントを制したのは? それは前環境から存在する、対応力抜群のこのデッキだ!

Anthony Devarti - 「ハイドロ・ゴルガリ」
StarCityGames.com Standard Open Indianapolis 優勝 / スタンダード (2019年1月26~27日)[MO] [ARENA]
4 《
2 《
1 《
4 《草むした墓
4 《森林の墓地
4 《繁殖池
2 《湿った墓
1 《水没した地下墓地
2 《愚蒙の記念像
-土地(24)-

4 《ラノワールのエルフ
4 《マーフォークの枝渡り
4 《野茂み歩き
1 《探求者の従者
4 《翡翠光のレインジャー
2 《真夜中の死神
2 《貪欲なチュパカブラ
2 《殺戮の暴君
3 《ハイドロイド混成体
-クリーチャー(26)-
2 《喪心
2 《ヴラスカの侮辱
3 《採取 // 最終
3 《ビビアン・リード
-呪文(10)-
1 《若葉のドライアド
4 《強迫
2 《否認
1 《軽蔑的な一撃
3 《肉儀場の叫び
1 《押し潰す梢
1 《ヴラスカの侮辱
2 《最古再誕
-サイドボード(15)-
StarCityGames.com より引用)
 

 黒緑の中速デッキ「ゴルガリ」の最新バージョンだ!

 《野茂み歩き》と探検能力持ちのクリーチャーを組み合わせて、ライフ回復・盤面強化・アドバンテージ獲得と3つを同時にこなす器用さ。

 《真夜中の死神》《貪欲なチュパカブラ》というシンプルに強いカードが揃った中マナ域。

 《ビビアン・リード》などプレインズウォーカーにも恵まれ、《採取 // 最終》というリセットボタン兼墓地回収、最強フィニッシャー《殺戮の暴君》となんでもござれな、マジックプレイヤーの好きなもの・勝つために必要なものが詰め込まれた優秀なデッキ、「ゴルガリ」だ。

 黒緑という色の組み合わせで考えれば。『ラヴニカの献身』で得たものはない。ただ、「3色目」という選択肢を得た、これが大きい。『ラヴニカのギルド』時点では2色でカードパワーは十分、3色目を無理に足してまで使いたいものは……という状況だったが、今回はこのデッキに色を足してでも採用したい! そんなカードがやってきた。《ハイドロイド混成体》、ハイドラ・クラゲ・ビーストのお出ましだ!

 「ゴルガリ」はマナを得ることに優れたデッキである。探検能力は土地が獲得できるので、これを連続して用いているとゲームが終わるころには10マナくらい得られる状態になっていた、なんてのは日常茶飯事だ。ただ、黒と緑の2色ではこのあふれかえったマナを直接ゲームエンドに繋げる手段はあまりなかった。そのマナの注ぎ先として白羽の矢が立ったのが《ハイドロイド混成体》だ。

 X呪文なので状況に合わせて器用に使えて、マナを注げば注ぐほどその強さは増す、まさしく理想の1枚だ。8マナ払って6/6飛行トランプルを得ながら、その能力で3枚ドローと3点回復……何でも同時にやりたいゴルガリ主義とも調和する。

 この手札補充が、たとえこのカードがサッと処理されてしまっても二の矢・三の矢を供給してくれるというのが素晴らしい。そしてこれはハイドロイド自身が打ち消されてしまっても、唱えただけで誘発するという点が大変に優秀だ。打ち消し呪文を前に叩きつけて、たった3マナでポンと消されてがっかり、なんてことはないので安心して用いることができる。

 ライフ回復も、赤いデッキがあとちょっと、あと2枚の火力で……と粘っている状況を否定してくれるのが頼もしい。《野茂み歩き》の回復だけで十分では?と思われるかもしれないが、手札が尽きにくくなった今の赤いデッキにはこういう大回復を備えておいた方が憂いなし。「あぁ、こりゃもう無理だな」と思わせる説得力もあり、これぞゴルガリが色を足してまで得たかった何かだったんだよ、と言いたくなるグッドカードだ。

 青を足したことでサイドにもちょろっと打ち消し呪文を仕込める点も良い。特に環境最初期、何がいるか読み切れない時の《強迫》と《否認》の合わせ技の頼もしさったらないね。

 これまで《黄金の死》が用いられることが多かった3マナ全体除去の枠も《肉儀場の叫び》にアップデートされ、死亡時に誘発する能力を持ったニクいヤツらも安心して流せるようになった。このサイドボードの安定感も、今回ゴルガリ×ハイドロイドデッキが最高のスタートを切った要因だろう。

 この結果を踏まえて、環境に存在するデッキはさらに進化をする。前環境の横綱とも言えるゴルガリは、新戦力を得てどこまで勝ち星を挙げ続けられるのか? うーん、これから開催されるイベントの結果からも目が離せないぞ!

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