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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ジャンド(モダン)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ジャンド(モダン)
by 岩SHOW
先日、「バント・コントロール」をご紹介した際に、2017 Magic Online Championshipのモダンにおける最大勢力は「ジャンド」であったことを添えた。
この黒赤緑の断片の名を与えられた中速デッキは、各色の攻撃的なカードと妨害手段の集合体だ。かつてこのデッキに搭載されていた《血編み髪のエルフ》は一度環境を去ったが、カムバックを果たしたことでこの「ジャンド」にも注目が集まった。
《死儀礼のシャーマン》こそが真の問題児であって、血編み単体では高速化が進む現在のモダンにおいて決して環境を支配するようなオーバーパワーな1枚ではない、という判断の元にこのカードは解き放たれた。実際に、確かに「ジャンド」は強化され使用者もグッと増えたが、血編みを得たからと言ってその強さが何倍にも上昇したようには感じなかったし、各種試合結果を見てもそれがわかる。
それでもMagic Online世界一を決める大一番で「ジャンド」を選択したプレイヤーが多かったのは、その安定感が評価されたということだろう。2016年の世界選手権でも「アブザン」を選択したプレイヤーが多かったのだが、黒と緑を用いる「BG系」とくくられるデッキは《思考囲い》《コジレックの審問》という手札破壊で相手にやりたいことをさせず、《タルモゴイフ》など戦闘力の高いクリーチャーが低マナ域にしっかりあって、クリーチャー除去もお茶の子さいさい。理論上、あらゆるデッキと戦えるので仮想敵を絞りづらいトーナメントにおいては頼れるデッキとなることだろう。かつてのようなぶっ壊れでなくなったとはいえ、血編みからの続唱トップデックは不可能を可能にする力があるしね。
今日は同トーナメントより、プロツアー王者でもあるスティーブ・ルービン/Steve Rubinが使用し準優勝という成績を残した「ジャンド」を紹介しよう。
2 《沼》 1 《森》 1 《血の墓所》 2 《草むした墓》 1 《踏み鳴らされる地》 4 《新緑の地下墓地》 3 《血染めのぬかるみ》 1 《樹木茂る山麓》 4 《黒割れの崖》 1 《黄昏のぬかるみ》 3 《怒り狂う山峡》 2 《樹上の村》 -土地(25)- 4 《闇の腹心》 4 《タルモゴイフ》 3 《漁る軟泥》 4 《血編み髪のエルフ》 -クリーチャー(15)- |
3 《思考囲い》 3 《コジレックの審問》 3 《致命的な一押し》 3 《稲妻》 1 《戦慄掘り》 1 《大渦の脈動》 2 《コラガンの命令》 4 《ヴェールのリリアナ》 -呪文(20)- |
2 《渋面の溶岩使い》 4 《大爆発の魔道士》 1 《最後のトロール、スラーン》 2 《墓掘りの檻》 2 《古えの遺恨》 1 《集団的蛮行》 2 《神々の憤怒》 1 《最後の望み、リリアナ》 -サイドボード(15)- |
実にオーソドックスな、This is Jundと言わんばかりのリストだ。手札破壊・除去・頼もしいクリーチャー・そしてリリアナ。それぞれの構成要素を見ていくとしよう。
手札破壊は安定の《思考囲い》《コジレックの審問》を合計6枚。それぞれ3枚ずつの採用となっている。
この比率にはプレイヤーの好みなども色濃く反映される。どちらにも長所と短所があり、対戦するであろうデッキが絞り込めていれば《思考囲い》を4枚にしたり、その逆もあり得る。合計6枚という数字がかつての「ジャンド」と比べると少なく感じるが、これは《血編み髪のエルフ》が参入した影響だろう。4マナ払ってさあ追撃だ一気に詰めるぞ!というところで相手の手札に何もないのに手札破壊が続唱でめくれると......少々残念な気持ちになる。同じ手札を攻めるカードで《コラガンの命令》や《ヴェールのリリアナ》というめくれて最高なカードがあるので、1マナ手札破壊は最小限に抑えてある。
除去も同じく1マナ枠が《致命的な一押し》《稲妻》を3:3の比率で。
これらのカードもどちらが上とは言い難い、どちらも便利な1マナ除去なのだが......一般的には《稲妻》の方が優先される傾向にある。プレイヤー本体に撃って速やかにゲームを終わらせるプランを取れることと、やはり血編みでめくった際に空振ることを嫌って《致命的な一押し》よりも《稲妻》を多く、場合によっては一押しを不採用というプレイヤーが目立つ。ルービンの場合はクリーチャーデッキと対戦する機会が多いと踏んで、一押しが腐りにくい・むしろ強いと判断してのこの構成なのかもしれない。
あとは万能な《大渦の脈動》《戦慄掘り》、そして除去枠としてもカウントできる便利呪文《コラガンの命令》を。《終止》ではなく《戦慄掘り》が採用されているのは、《精神を刻む者、ジェイス》の影響が少なからずあるだろう。
「ジャンド」といえば《闇の腹心》と《タルモゴイフ》という2マナタッグ。
毎ターン着実にアドバンテージをもたらしつつ殴りに行けるパワー2を持つ《闇の腹心》は、リスクこそあれ2ターン目に出すクリーチャーとしては最高のものの1つ。対戦相手はこれに対処できなければ苦しい戦いを強いられることになり、仮にすぐさま除去できてもその後に控えるのは打点がウリの《タルモゴイフ》。片方がやられれば片方が生き延びて仕事を果たす、「BG系」を支えているのはこの2枚と言っても過言ではないかも。
ここに《漁る軟泥》がメインより加わる。
《タルモゴイフ》とは一見アンチシナジーにも見えるが、《未練ある魂》《瞬唱の魔道士》、そして《御霊の復讐》デッキなど......メインから墓地に触れることができる手段があるに越したことはない。このデッキは血編みを用いるために土地を25枚と多めに採用しているため、後半余りがちなマナを有効活用できるという点でも軟泥はベリーナイス。
土地と言えば、クリーチャー化する土地も使えるのが「ジャンド」の強み。《神の怒り》や《至高の評決》で流されようが、《樹上の村》《怒り狂う山峡》による猛攻は止まらない!
これらもまた、ジェイスに対して睨みを利かせるカードとして以前にもまして重要なパーツとなっている。
そしてジャンドと言えばリリアナ。メインには《ヴェールのリリアナ》が4枚、サイドには《最後の望み、リリアナ》が1枚。
どちらもクリーチャーに対処可能で、アドバンテージも稼ぎ、ゲームを終わらせることができる......3マナとは思えない大活躍を見せるプレインズウォーカーだ。やはりこのデッキはリリアナあってこそ。外すことのできない必須パーツである。
そしてこれらのカードを、続唱で唱えてアドバンテージを得させてくれるのが《血編み髪のエルフ》だ。
4マナ3/2速攻にオマケつき、そのオマケが《コラガンの命令》で相手のクリーチャーを焼きながら墓地のもう1枚の血編みを回収......なんてことになったら対戦相手はオイオイオイと思わざるを得ない。これで以前よりはカードとして落ち着いたというのだから、全盛期の「ジャンド」がいかに最強デッキだったかよくわかるね。その時代を知るプレイヤーにとっては、また続唱チャンスでワクワクできるだけでも嬉しいので自ずと使用者が増えている、そんな状況かもしれない。
グランプリ・京都2018のモダン担当者で、この全天候型デッキを用いるプレイヤーも少なくないだろう。使う場合も使われる場合も手札破壊と除去の各カードの比率を考えるというのは大事なことになる。《致命的な一押し》が採用されているのか否か? 困っても一人じゃないって素敵だね、そんな時はチームメイトに相談だ! でもあんまりいちいち相談して、時間切れにはならないようにね(笑)。
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